今回は令和6年度上期 電力科目 A問題3を解説します。一般的な排熱回収方式のガスタービンコンバインドサイクル発電を、同一出力の汽力発電と比較した記述から誤っているものを選ぶ問題です。
コンバインドサイクルは「効率が高い・起動が速い・追従性がよい・温排水が少ない」といいことずくめですが、弱点が1つあります。それが外気温の影響を受けやすいこと。ガスタービンは空気を吸い込んで燃やす機械だからです。
出題のポイント:コンバインドサイクルと外気温

コンバインドサイクルは起動・追従・効率に優れますが、ガスタービンが外気を吸い込むため、最大出力は外気温の影響を大きく受けます。
令和6年度上期 電力科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題3
電験3種 電力科目 【火力】 令和6年度上期 A問題3
一般的な排熱回収方式のガスタービンコンバインドサイクル発電を、同一出力の汽力発電と比較した記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
コンバインドサイクル発電の方が、始動・停止時間が短い。
コンバインドサイクル発電の方が、負荷変化に対する追従性が高い。
コンバインドサイクル発電の方が、熱効率が高い。
コンバインドサイクル発電の方が、外気温の最大出力に与える影響が小さい。
コンバインドサイクル発電の方が、温排水量が少ない。
コンバインドサイクルと外気温の関係

ガスタービンは空気を吸い込む機械——その空気の状態に出力が左右されます。
| 外気温度 | 空気の密度 | 吸い込める質量 | 出力 |
| ★0 ℃ | ★大きい | ★多い | ★定格の110 % 前後 |
| 15 ℃(基準) | 基準 | 基準 | 100 % |
| ★35 ℃ | ★小さい | ★少ない | ★定格の90 % 前後 |
圧縮機は「体積」を吸い込みます——暖かい空気は薄いので、同じ体積でも質量が少ないのです。
吸い込む空気が減れば、燃やせる燃料も減ります——そのまま出力の低下になります。
0 ℃ と35 ℃ では2割前後の差——無視できない大きさです。
汽力発電では、燃料も空気も必要な量だけ送り込みます——外気温度が変わっても出力はほとんど変わらないことになります。
コンバインドサイクルと汽力発電の比較

電力需要が最も大きいのは、夏の昼——まさにそのときに出力が落ちます。
| 対策 | 内容 | 効果 |
| ★吸気噴霧冷却 | ★吸気に霧を噴いて気化熱で冷やす | ★数 % の出力回復 |
| 吸気チラー | 冷凍機で吸気を冷やす | 効果は大きいが動力を食う |
| 吸気フィルタの管理 | 目詰まりによる圧力損失を減らす | 基本的な保守 |
霧を噴くだけで空気が冷える——気化熱を奪うからです。簡単な設備で数 % を取り戻せることになります。
湿度が高い日は効果が下がります——水が蒸発しにくいからです。梅雨時などは思うように効かないことになります。
(2) 負荷追従性が高い理由
| 観点 | コンバインド | 汽力 |
| ★出力変化の速さ | ★速い(ガスタービンの応答が速い) | ★遅い(蒸気の量が変わるまで時間がかかる) |
| ★台数制御 | ★複数系列の運転台数を変えられる | ★1台を絞るしかない |
| 部分負荷での効率 | ★落ちにくい | 大きく落ちる |
ガスタービンは燃料を絞ればすぐ出力が下がります——蒸気を作る必要がないからです。
汽力ではボイラの燃焼を変えても、蒸気が届くまで時間がかかる——大きな熱容量が応答を鈍らせるのです。
再生可能エネルギーの変動を埋めるには、速い応答が要る——コンバインドの価値が高まっている理由でもあります。
5年度にわたる出題履歴
| 年度 | 誤りにされた項目 | 答え |
| 平成19年度 A3 | 冷却水量が「多い」 | (3) |
| 平成22年度 A3 | 起動停止時間が「長い」 | (2) |
| 令和4年度下期 A3 | 所内率が「大きい」 | (5) |
| 令和5年度上期 A2 | 冷却水量が「多い」 | (3) |
| 令和6年度上期 A3 | 外気温度の影響が「小さい」 | (4) |
誤りにされる項目が毎回変わります——1つずつ覚えるのではなく、表を丸ごと押さえるのが確実です。
| 項目 | コンバインドは汽力より | 理由 |
| ★熱効率 | ★高い | ★1,600 ℃ の高温から始められる |
| ★起動停止時間 | ★短い | ★水を沸かす必要がなく軽い |
| ★負荷追従性 | ★高い | ★台数制御と速い応答 |
| ★排ガス量 | ★多い | ★冷却用に余分な空気を通す |
| ★冷却水量・温排水量 | ★少ない | ★蒸気タービンの分担が小さい |
| ★所内率 | ★小さい | ★大形補機が少ない |
| ★外気温度の影響 | ★受けやすい | ★空気を吸い込むので密度が効く |
⚠️ よくある間違い
(4)を「外気温度は関係ない」と考えてしまう——汽力ならそのとおりですが、ガスタービンは空気を吸い込むのです。
(5)の温排水量を疑ってしまう——「少ない」で正しい。冷却水量が少ないのですから、温排水も少なくなります。
(2)の負荷追従性も正しい——「高い」です。起動停止が速いことと同じ理由になります。
5つのうち4つがコンバインドの利点——1つだけ「小さい」と弱点を打ち消す記述があれば、そこが怪しいと読めます。
⏱️ 本番での進め方
①★外気温度の影響は「大きい」。空気を吸い込むから。
②ρ=p/(RT)。暖かい空気は薄く、吸い込める質量が減る。
③夏に出力が落ちる。吸気噴霧冷却で数 % 回復。
④(2) 負荷追従性が高い。台数制御と速い応答による。
💡 覚え方
「暖かい空気は薄い」——だから夏は吸い込める量が減って出力が落ちます。汽力は必要な分だけ送り込むので影響を受けない——そこが決定的な違いです。
同じ比較問題が令和5年度上期 A問題2(火力:コンバインドの冷却水量)、令和4年度下期 A問題3(火力:コンバインドの所内率)にあります。
ISO 標準状態という基準
ガスタービンの出力は、決められた条件で表示されます。
| 項目 | ISO 標準状態 |
| ★吸気温度 | ★15 ℃ |
| ★大気圧 | ★101.3 kPa |
| 相対湿度 | 60 % |
カタログの出力は、この条件での値——実際の運転では、その日の気温で変わります。
標高が高い場所でも出力は落ちます——大気圧が低く、空気が薄いからです。
気温も気圧も、結局は「空気の密度」に効いてくる——吸い込める質量が減れば出力も減るという同じ理屈です。
汽力発電が影響を受けにくい理由
| ガスタービン | 汽力発電 | |
| 空気の取り込み方 | ★圧縮機が体積で吸い込む | ★通風機が必要な量だけ送る |
| 温度が上がると | ★吸い込める質量が減る | ★送風量を増やせば済む |
| 出力への影響 | ★大きい | ★小さい |
汽力では、燃焼に必要な空気を通風機が送り込みます——足りなければ回転を上げればよいのです。
ガスタービンでは、圧縮機の回転速度が系統周波数で固定されています——吸い込む体積を増やせないことになります。
この1問で押さえること
ガスタービンは空気を吸い込むので、外気温度の影響を大きく受けます——「小さい」は誤りです。
ρ=p/(RT) より、暖かい空気は薄い——圧縮機は体積で吸い込むので、質量が減って出力が落ちるのです。
0 ℃ で110 %、35 ℃ で90 % 前後——2割の差があります。
残る4つの記述
| 記述 | 内容 | 根拠 |
| (1) | 始動・停止時間が短い | ★水を沸かす必要がなく軽い |
| (2) | 負荷追従性が高い | ★台数制御と速い応答 |
| (3) | 熱効率が高い | ★1,600 ℃ から始められる |
| (5) | 温排水量が少ない | ★蒸気タービンの分担が小さい |
4つとも利点を述べています——1つだけ「小さい」と弱点を打ち消す記述があれば、そこが怪しい。
外気温度の影響は、コンバインドの数少ない弱点——それを「小さい」と書けば誤りになるのです。
負荷追従性が求められる背景
(2)の「負荷変化に対する追従性が高い」——近年ますます重要になっています。
| 変動の要因 | 従来 | 近年 |
| 需要側 | 予測しやすい | 変わらず |
| ★太陽光 | — | ★雲で数分のうちに大きく変動 |
| ★風力 | — | ★風しだいで増減する |
太陽光は日が陰れば数分で出力が落ちます——その穴を埋める電源が要るのです。
応答が速く、部分負荷でも効率が落ちにくいコンバインドは、この役目に向いています——調整電源としての価値が高まっていることになります。
まとめ
| (1)始動・停止時間 | コンバインドサイクルの方が短い→正しい |
| (2)負荷追従性 | コンバインドサイクルの方が高い→正しい |
| (3)熱効率 | コンバインドサイクルの方が高い(50〜60%台)→正しい |
| (4)外気温の影響 | 空気密度が変わるので影響は「大きい」→誤り |
| (5)温排水量 | 蒸気タービン側が小さく少ない→正しい。答えは(4) |
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