今回は令和1年度 電力科目 A問題6、ガス絶縁開閉装置(GIS)について誤っているものを選ぶ問題です。GISは変電1(令和7年度上期)・変電5(令和6年度上期)でも問われた変電の超頻出テーマ。
ねらいはSF₆ガスの封入圧力。GISは絶縁耐力の高いSF₆ガスを大気圧より高い圧力(数気圧=0.3〜0.5MPa程度)に加圧して封入します。「大気圧以下のSF₆ガス」は、圧力が低く絶縁耐力が不足する誤った記述です。
令和1年度 電力科目 A問題6:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和1年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題6
電験3種 電力科目 【変電】 令和1年度 A問題6
ガス絶縁開閉装置に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ガス絶縁開閉装置の充電部を支持するスペーサにはエポキシ等の樹脂が用いられる。
ガス絶縁開閉装置の絶縁ガスは、大気圧以下のSF₆ガスである。
ガス絶縁開閉装置の金属容器内部に、金属異物が混入すると、絶縁性能が低下することがあるため、製造時や据え付け時には、金属異物が混入しないよう、細心の注意が払われる。
我が国では、ガス絶縁開閉装置の保守や廃棄の際、絶縁ガスの大部分は回収されている。
絶縁性能の高いガスを用いることで装置を小形化でき、気中絶縁の装置を用いた変電所と比較して、変電所の体積と面積を大幅に縮小できる。

誤りは(2):加圧して使う
「大気圧以下のSF6ガス」——実際には4〜6気圧に加圧します。
| 圧力 | 絶縁耐力の目安 | 実用 |
| ★大気圧(0.1 MPa) | ★空気の約3倍 | ★不足する |
| ★0.4 MPa | ★空気の10倍以上 | ★絶縁部で採用 |
| ★0.5〜0.6 MPa | ★さらに高い | ★遮断部で採用 |
圧力を上げれば、同じ距離でも高い電圧に耐えられます——分子が密で電子が加速できないからです。
裏返せば、加圧するから距離を詰められる——それが(5)の小形化につながります。
大気圧以下では、むしろ絶縁が弱くなる——(5)と両立しません。
令和7年度上期とまったく同じ問題
5つの記述が、順序を入れ替えただけで同一です。
| 記述の内容 | ★令和元年度 | ★令和7年度上期 |
| スペーサはエポキシ樹脂 | ★(1) | ★(5) |
| ★大気圧以下のSF6ガス | ★(2)=誤り | ★(3)=誤り |
| 金属異物の混入 | ★(3) | ★(4) |
| ガスの回収 | ★(4) | ★(2) |
| 小形化できる | ★(5) | ★(1) |
誤っている記述も同じ——番号だけが変わっています。
6年を隔てて、そのまま再出題された例——過去問を解く価値がよく分かります。
| 年度 | 誤りの記述 | 答え |
| ★平成19年度 A6 | ★据付工期が長くなる | ★(5) |
| ★平成24年度 A6 | ★(空欄補充)SF6・接地・小形化・塩害 | ★(3) |
| ★令和元年度 A6 | ★大気圧以下のSF6ガス | ★(2) |
| ★令和6年度上期 A6 | ★(空欄補充)信頼性と復旧時間 | ★(2) |
| ★令和7年度上期 A6 | ★大気圧以下のSF6ガス | ★(3) |
GISは5つの年度で問われています——変電の中でも最頻出のテーマです。
「大気圧以下」という誤りは2回使われました——加圧することを覚えておけば2問取れることになります。
(1)(3)(4)(5) 残る4つの記述
| 記述 | 内容 | 要点 |
| (1) | スペーサはエポキシ樹脂 | ★気密性と成形の自由度から |
| (3) | 金属異物で絶縁性能が低下 | ★電界集中で放電が始まる |
| (4) | 絶縁ガスの大部分は回収 | ★回収率97 % 以上 |
| (5) | 体積と面積を大幅に縮小 | ★気中絶縁の10〜30 % |
いずれもGISの標準的な知識——疑う必要はありません。
(5)が「絶縁性能の高いガスを用いることで」と書いている——(2)の「大気圧以下」と矛盾します。
選択肢どうしの整合を見るだけで判断できる——知識があいまいでも解けるのです。
⚠️ よくある間違い
(2)の「SF6ガス」の部分だけ見て正しいと判断する——ガスの種類は正しいのです。誤りは「大気圧以下」。
(1)のエポキシ樹脂を疑ってしまう——スペーサの標準的な材料です。
(3)の金属異物を疑ってしまう——GIS特有の重大な課題。
(4)の「大部分は回収」を疑ってしまう——日本では97 % 以上が回収されています。
(5)の小形化を疑ってしまう——GISの最大の利点です。
圧力や数値が書かれた記述を疑う——本問では(2)だけになります。
⏱️ 本番での進め方
①★SF6は0.4〜0.6 MPa に加圧する。大気圧以下ではない。
②★加圧するから距離を詰められ、小形化できる。
③★(5)の「絶縁性能の高いガス」と矛盾する。
④★令和7年度上期とまったく同じ問題。
💡 覚え方
「加圧するから小さくできる」——この因果を押さえれば2つの年度で得点できます。大気圧以下では絶縁が足りず、小形化もできません。
まったく同じ問題が令和7年度上期 A問題6(変電:ガス絶縁開閉装置)にあります。据付工期は平成19年度 A問題6(変電:ガス絶縁開閉装置)へ。
SF6が絶縁に優れる理由
(2)の「絶縁性能」を、分子の性質から見ましょう。
| 性質 | SF6分子 | 効果 |
| ★電気陰性度 | ★ふっ素が最も大きい | ★電子を強く引きつける |
| ★電子付着 | ★自由電子を捕らえる | ★放電の連鎖が止まる |
| ★分子量 | ★146(空気の約5倍) | ★重いので拡散しにくい |
放電は、電子が加速して次々に電離を起こすことで進みます——その電子を捕らえてしまえば止まるのです。
加圧すれば分子の数が増え、捕らえる機会も増えます——だから絶縁耐力が圧力に比例することになります。
SF6が消弧にも優れる理由
アークが消えたあと、絶縁を回復させる速さが問われます。
SF6は高温で分解しても、冷えるとすぐ元に戻ります——再結合が速いのです。
空気は分解生成物が残り、絶縁の回復が遅れます——その差が約100倍の消弧能力になります。
だから絶縁と消弧の両方に使える——代替ガスが難しい理由でもあります。
要点をもう一度
誤りは(2)の「大気圧以下」だけです。
| 記述 | 内容 | 正誤 |
| (1) | スペーサはエポキシ樹脂 | 正 |
| ★(2) | ★大気圧以下のSF6ガス | ★誤(0.4〜0.6 MPa) |
| (3) | 金属異物の影響 | 正 |
| (4) | ガスの回収 | 正 |
| (5) | 体積と面積を大幅に縮小 | 正 |
(5)の「絶縁性能の高いガスを用いることで」と矛盾します——大気圧以下では絶縁が足りないから。
令和7年度上期とまったく同じ問題——選択肢の順序が違うだけです。
なぜ同じ問題が繰り返されるのか
GISは変電設備の中心的な機器——基本を確実に押さえてほしいからです。
「大気圧以下」という誤りは、加圧を知らないと見抜けません——実務では当たり前の知識になります。
だから2度にわたって同じ誤りが使われました——次も出る可能性があるでしょう。
GISの母線構成
(5)の縮小化は、母線の配置にも影響します。
| 方式 | 母線の数 | 特徴 |
| ★単母線 | ★1本 | ★簡単・安価だが母線事故で全停 |
| ★二重母線 | ★2本 | ★片方を点検しながら運用できる |
| ★1.5遮断器方式 | ★2本+遮断器3台/2回線 | ★信頼度が最も高い |
気中絶縁では、母線を増やすほど用地が要ります——だから簡素な構成にせざるを得ないのです。
GISならコンパクトなので、二重母線でも収まります——信頼度を上げやすいことになります。
重要な変電所では二重母線が標準——片方が使えなくても供給を続けられるから。
小形化が、そのまま信頼度の向上にもつながっている——(5)の記述の先にある効果です。
スペーサの形状
(1)のスペーサには、いくつかの形があります。
| 形式 | 形 | 働き |
| ★円すい形 | ★皿を伏せたような形 | ★ガス区画を仕切る |
| ★円板形 | ★平らな板 | ★区画を仕切る |
| ★ポスト形 | ★柱状で3方向から支える | ★支持のみ(ガスは通る) |
区画を仕切るタイプは、片側のガスが抜けても持ちこたえます——差圧に耐える設計です。
円すい形は、その差圧を分散できる形状——力学的に有利になります。
ポスト形は支えるだけなので、ガスは自由に通ります——長い母線の途中に使われます。
どれもエポキシ樹脂の一体成形——金属の埋込金具とすき間なく接合できるからです。
まとめ
| (1)スペーサ | エポキシ等の樹脂→正しい |
| (2)封入圧力 | 大気圧以下のSF₆=誤り(加圧して封入)→答え |
| (3)金属異物 | 混入で絶縁低下→防止に細心の注意(正しい) |
| (4)ガス回収 | 保守・廃棄時に大部分を回収(正しい) |
| (5)小形化 | 気中絶縁より体積・面積を大幅縮小(正しい) |
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