火力28【電験3種 電力】非常調速装置が働くのは「速度上昇」のとき!ターニング装置・調速装置も整理 平成30年度 A問題3 完全解説

電験3種 電力科目 火力 平成30年度 A問題3 回転が上がりすぎたら止める!非常調速装置

今回は平成30年度 電力科目 A問題3を解説します。汽力発電所の蒸気タービン設備について、衝動タービン・調速装置・ターニング装置・反動タービン・非常調速装置の5つの記述から誤っているものを選ぶ問題です。

ねらいは非常調速装置が働く向き。これは負荷が急に外れて回転速度が上がりすぎたときに飛散事故を防ぐための装置で、速度上昇で作動します。速度が下がるのは危険ではないので、止める必要がありません。

目次

平成30年度 電力科目 A問題3:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 火力 平成30年度 A問題3 問題文
平成30年度 電力科目 A問題3 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成30年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題3

電験3種 電力科目 【火力】 平成30年度 A問題3

 汽力発電所の蒸気タービン設備に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

衝動タービンは、蒸気が回転羽根(動翼)に衝突するときに生じる力によって回転させるタービンである。
調速装置は、蒸気加減弁駆動装置に信号を送り、蒸気流量を調整することで、タービンの回転速度制御を行う装置である。
ターニング装置は、タービン停止中に高温のロータが曲がることを防止するため、ロータを低速で回転させる装置である。
反動タービンは、固定羽根(静翼)で蒸気を膨張させ、回転羽根(動翼)に衝突する力と回転羽根(動翼)から排気するときの力を利用して回転させるタービンである。
非常調速装置は、タービンの回転速度が運転中に定格回転速度以下となり、一定値以下まで下降すると作動して、タービンを停止させる装置である。

答え誤っている記述は (5)——「以下となり、一定値以下まで下降」を「以上となり、一定値以上まで上昇」に直せば正しくなります

誤りは(5):非常調速装置は速度上昇で働く

「定格回転速度以下となり、一定値以下まで下降すると作動」——向きが逆です。

装置働く条件動作
調速機(ガバナ)常時(定格付近)蒸気加減弁で出力を調整
★非常調速装置★定格の111 % 程度まで上昇したとき★蒸気止弁を閉じて緊急停止

回転速度が下がっても、機械が壊れることはありません——止まるだけです。

危険なのは速度が上がりすぎること——遠心力は回転速度の2乗に比例するからです。

\( \left(\dfrac{3330}{3000}\right)^2=1.23 \)
111 % まで上がると
★遠心力は1.23倍
\( \left(\dfrac{6000}{3000}\right)^2=4 \)
無拘束速度(2倍)なら
★遠心力は4倍

翼が飛び散る事故につながります——だから上昇したときにこそ止める必要があるのです。

(3) ターニング装置とは

停止中のタービンを、ゆっくり回し続ける装置です。

回さないと起きること
★ロータの上下で温度差ができる★熱は上へ逃げるので、上側が熱く下側が冷える
★上側が伸びる★ロータが弓なりに曲がる(熱曲がり)
★そのまま起動すると★激しい振動が生じ、軸受を傷める

数トンの鋼のロータでも、わずかな温度差で曲がります——0.1 mm の曲がりでも、3,000 min-1 では大きな振動になります。

だから停止後も、冷えきるまで数十時間、低速で回し続ける——ターニング(turning)=回すことです。

起動前にも回します——暖機のとき、均一に温めるためでもあります。

(1)(4) 衝動タービンと反動タービン

★衝動タービン★反動タービン
固定羽根(静翼)★圧力を速度に変える★膨張させる
回転羽根(動翼)★圧力は変わらない★さらに膨張させる
回す力★衝動力のみ★衝動力+反動力

(1)も(4)も正しい記述——それぞれの定義をそのまま述べています

反動タービンは「衝突する力と排気するときの力」の両方を使う——問題文がそう書いているとおりです。

⚠️ よくある間違い
(5)を「速度が下がったら止めるのは当然」と考えてしまう——止まるだけなら危険はありません
非常調速装置が守るのは、遠心力による破壊——速度が上がったときにこそ必要です。
(2)の調速装置を疑ってしまう——「蒸気加減弁駆動装置に信号を送り、蒸気流量を調整」で正しい通常運転中の制御です。
(3)のターニング装置も正しい——「高温のロータが曲がることを防止」そのままです。
「非常」と「調速」という言葉から、速度に関する装置だと分かる——どちらの向きで働くかを押さえておきましょう

⏱️ 本番での進め方
①★非常調速装置は速度「上昇」で働く。定格の111 % 程度。
②理由:遠心力は回転速度の2乗に比例する。
③(3) ターニング装置は停止中のロータの熱曲がりを防ぐ。
④(1)(4) 衝動と反動の定義はそのまま正しい。

💡 覚え方
「速く回りすぎると壊れる、遅くても壊れない」——だから非常調速装置は上昇で働きますターニングは「回し続けて曲がりを防ぐ」——止めておくほうが危ないのです。

保護装置の全体像は平成24年度 A問題3火力:汽力発電所の保護装置)、衝動と反動は令和6年度下期 A問題3火力:衝動タービンと反動タービン)にあります。

正誤判定の進め方

5つのうち、動作の向きに触れているのは(5)だけ——そこに目を付けます

記述装置判定
(1)衝動タービン正しい
(2)調速装置正しい
(3)ターニング装置正しい
(4)反動タービン正しい
★(5)★非常調速装置★誤り(上昇で働く)

(1)(4)は定義、(2)(3)は役割の説明——いずれも素直な記述です。

(5)だけが「以下」「下降」という向きを含んでいる——向きが書かれていれば、そこを疑うのが定石になります。

2つの調速装置を並べる

★調速装置(ガバナ)★非常調速装置
働く場面★常時★異常時のみ
操作する弁★蒸気加減弁★蒸気止弁
動作★連続的に開度を変える★一気に全閉する
ねらい★出力と周波数の調整★過速度による破壊の防止

名前は似ていますが、役割はまったく違います——片方は調整、片方は保護です。

本問の(2)が調速装置、(5)が非常調速装置——2つを並べて出題していることになります。

蒸気タービンを守る装置の全体像

本問の装置を、目的別に並べ直しましょう

目的装置働くとき
★出力の調整★調速装置★常時
★過速度の防止★非常調速装置★定格の111 % 程度
★軸受の保護★軸受油圧低下トリップ★油圧が下がったとき
★熱曲がりの防止★ターニング装置★停止中

運転中を守るものと、停止中を守るものがあります——ターニング装置は後者です。

止まっているときこそ危ない——熱が偏ってロータが曲がるからです。

無拘束速度という言葉

負荷が完全に切れたとき、機械が到達する最高の回転速度——無拘束速度と呼ばれます。

機種無拘束速度の目安
★蒸気タービン★定格の1.1〜1.2倍
★水車(ペルトン)★定格の1.8倍前後
水車(カプラン)定格の2倍以上

水車のほうが大きく跳ね上がります——水を止めるのに時間がかかるからです。

蒸気タービンは弁を閉じればすぐ止まる——それでも1.1倍を超えれば危険なので、非常調速装置がその手前で働くことになります。

この1問で押さえること

非常調速装置は、回転速度が「上昇」したときに働きます——定格の111 % 程度で蒸気止弁を閉じるのです。

遠心力は回転速度の2乗に比例する——速すぎれば翼が飛ぶので、上昇こそが危険なのです。

ターニング装置は停止中に働きます——ロータの熱曲がりを防ぐため、低速で回し続けるのです。

向きが書かれた記述を疑う

「以上/以下」「上昇/下降」「増加/減少」——こうした語が入っている記述は、正誤を作りやすい場所です。

本問では(5)だけが向きを含んでいました——そこに目を留められれば、知識を思い出す前に候補が絞れます

装置の目的を思い出す——「何から守る装置か」が分かれば、向きも決まるのです。

まとめ

(1)衝動タービン蒸気が動翼に衝突する力で回す→正しい
(2)調速装置蒸気加減弁で流量を調整し速度制御→正しい
(3)ターニング装置停止中にロータを低速回転させ熱曲がりを防止→正しい
(4)反動タービン静翼で膨張+動翼の衝突力と排気の反動力→正しい
(5)非常調速装置定格を超えて「上昇」したとき作動→誤り。答えは(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・汽力発電所の保護装置(火力1):【電力】令和7年度下期 A問題3

・この年度の問題を通しで解く:電験3種 平成30年度 問題一覧(全4科目)

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