今回は平成30年度 電力科目 A問題1を解説します。タービン発電機の水素冷却方式について、冷却効率が高い理由・風損が小さい理由・絶縁物への影響・爆発防止のための濃度管理・軸受のシール方法を問う空欄補充問題です。
水素の性質を2つ押さえるだけ。比熱が大きい→よく冷える、比重が小さい→風損が小さい。この2つは大小が逆向きなので、選択肢の(ア)(イ)が入れ替わっている引っかけを見抜けます。
平成30年度 電力科目 A問題1:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成30年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題1
電験3種 電力科目 【火力】 平成30年度 A問題1
次の文章は、タービン発電機の水素冷却方式の特徴に関する記述である。水素ガスは、空気に比べ(ア)が大きいため冷却効率が高く、また、空気に比べ(イ)が小さいため風損が小さい。
水素ガスは、(ウ)であるため、絶縁物への劣化影響が少ない。水素ガス圧力を高めると大気圧の空気よりコロナ放電が生じ難くなる。
水素ガスと空気を混合した場合は、水素ガス濃度が一定範囲内になると爆発の危険性があるので、これを防ぐため自動的に水素ガス濃度を(エ)以上に維持している。
通常運転中は、発電機内の水素ガスが軸に沿って機外に漏れないように軸受の内側に(オ)によるシール機能を備えており、機内からの水素ガスの漏れを防いでいる。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 比熱 比重 活性 90 % 窒素ガス (2) 比熱 比重 活性 60 % 窒素ガス (3) 比熱 比重 不活性 90 % 油膜 (4) 比重 比熱 活性 60 % 油膜 (5) 比重 比熱 不活性 90 % 窒素ガス

(ア)(イ) 比熱は大きく、比重は小さい
水素の2つの性質が、それぞれ別の利点を生みます。
| 性質 | 空気を1とすると | 生まれる利点 | 本問 |
| ★比熱 | ★約14倍(大きい) | ★冷却効率が高い | ★(ア) |
| ★比重 | ★約1/14(小さい) | ★風損が小さい | ★(イ) |
問題文が理由と結果をセットで書いているので、対応が分かりやすい——「冷却効率が高い」なら熱を運ぶ性質=比熱です。
「風損が小さい」なら軽さ=比重——回転する部品が押しのける気体が軽いほど、抵抗が小さいのです。
(4)(5)は(ア)を比重、(イ)を比熱としています——逆です。
(ウ) 不活性であることの意味
水素は他の物質と反応しにくい——絶縁物を傷めません。
| 空気中 | ★水素中 | |
| 含まれる気体 | ★酸素・窒素・水分 | ★水素だけ |
| コロナ放電で生じるもの | ★オゾン・硝酸 | ★生じない |
| 絶縁物への影響 | ★酸化して劣化する | ★劣化しにくい |
空気中でコロナ放電が起きると、酸素からオゾンができます——強い酸化力で絶縁物を傷めるのです。
窒素と水分からは硝酸ができる——金属を腐食させます。
水素中には酸素も窒素もないので、どちらも生じない——だから絶縁物が長持ちすることになります。
「活性」とする選択肢(1)(2)(4)は誤り——活性なら、かえって劣化を早めてしまいます。
圧力を高めるとコロナが生じにくい
問題文の「水素ガス圧力を高めると大気圧の空気よりコロナ放電が生じ難くなる」——これには理由があります。
気体の絶縁耐力は、圧力が高いほど大きくなります——分子が密集して、電子が加速される距離が短くなるからです。
電子が十分に加速されなければ、分子を電離できません——だから放電が起きにくくなるのです。
水素冷却では0.1〜0.4 MPa 程度に加圧します——冷却能力が上がるうえ、絶縁も強くなる——一石二鳥だと言えます。
(エ)(オ) 安全のための2つの仕組み
濃度90 % 以上を保つ
| 水素濃度 | 状態 |
| ★4〜75 % | ★爆発範囲(危険) |
| ★90 % 以上 | ★爆発範囲を大きく外れる(安全) |
爆発範囲の上限は75 %——それより高い濃度なら、酸素が足りなくて燃えません。
90 % 以上に保てば、上限から十分な余裕がある——だから自動的に濃度を監視して維持するのです。
「60 %」とする選択肢(2)(4)は爆発範囲の中——あり得ません。
(オ) 軸受の内側を油膜で封じる
回転する軸とケーシングの間には、必ず隙間があります——そこを油で塞ぐのです。
油の圧力を水素より高く保つ——そうすれば水素は外へ出られません。
「窒素ガス」とする選択肢(1)(2)(5)は誤り——気体では隙間を塞げません。液体だからこそ膜になるのです。
⚠️ よくある間違い
(ア)(イ)を逆にしてしまう——選択肢(4)(5)がそれです。
「冷却効率が高い」の理由は比熱、「風損が小さい」の理由は比重——問題文が結果を書いてくれているので対応させれば決まります。
(エ)を60 % としてしまう——爆発範囲の中に入ってしまいます。4〜75 % が危険だと覚えていれば避けられます。
(オ)を窒素ガスとしてしまう——窒素は置換に使いますが、シールには使いません。「シール機能」と書かれているので油膜です。
(ア)と(ウ)の2欄で確定できます。
⏱️ 本番での進め方
①(ア)(イ)★比熱は大きく(冷却)、比重は小さい(風損)。
②(ウ)★不活性。空気中と違いオゾンや硝酸が生じない。
③(エ)★90 % 以上。爆発範囲4〜75 % を外れる。
④(オ)★油膜でシールする。窒素ガスは置換用。
💡 覚え方
「比熱は大きく、比重は小さい」——水素冷却の2大理由です。そして不活性・90 % 以上・油膜シール——この5点で本問は解けます。
水素冷却の正誤問題が平成21年度 A問題2(火力:水素冷却方式)にあります。そちらは「比熱が小さい」が誤り——本問と同じ性質を問うています。
空欄の絞り込み手順
5つの空欄がありますが、2つで確定します。
| 確定させる欄 | 正しい語 | 残る選択肢 |
| (ア) | 比熱 | ★(1)(2)(3) |
| (ウ) | 不活性 | ★(3)に確定 |
(ア)は「冷却効率が高い」の理由——熱を運ぶ性質は比熱です。これで2つ落ちます。
(ウ)は「絶縁物への劣化影響が少ない」の理由——不活性。活性なら、かえって劣化させます。2手で確定します。
(エ)(オ)で裏を取る
| 欄 | 正しい語 | 根拠 |
| (エ) | 90 % | ★爆発範囲の上限75 % より十分高い |
| (オ) | 油膜 | ★「シール機能」なので液体 |
2欄で確定した後も、残りで確認する——すべてが(3)と一致すれば安心できます。
問題文が理由と結果をセットで書いてくれているので、対応させれば迷いません——親切な作りだと言えます。
水素冷却発電機の付帯設備
水素を安全に使うために、いくつもの装置が組み合わされています。
| 設備 | 役割 |
| ★密封油装置 | ★軸のまわりを油膜で封じ、水素の漏れを防ぐ |
| ★水素純度計 | ★濃度を常時監視し、90 % 以上を維持する |
| ★水素冷却器 | ★機内を循環する水素を水で冷やす |
| ★ガス置換装置 | ★炭酸ガスを介して空気と水素を入れ替える |
| 油処理装置 | 密封油に溶け込んだ水素を分離する |
水素は機内を循環しながら熱を運びます——その水素自体も冷やさなければなりません。
だから機内に水素冷却器(熱交換器)が組み込まれている——最終的には水に熱を渡していることになります。
密封油に水素が溶ける
油膜で封じているとはいえ、油の中に水素が少しずつ溶け込みます。
そのまま油タンクへ戻すと、タンク内に水素が溜まる——危険な状態になります。
だから真空脱気装置で水素を分離してから戻す——細かいところまで安全が設計されているのです。
この1問で押さえること
水素は比熱が大きく(冷却効率が高い)、比重が小さい(風損が小さい)——2つの性質が別々の利点を生みます。
不活性なので絶縁物を傷めず、圧力を高めればコロナ放電も起きにくい——気体の絶縁耐力は圧力に比例して上がるからです。
爆発範囲4〜75 % を避けるため濃度90 % 以上を維持し、軸のまわりは油膜でシールする——安全のための2つの仕組みです。
(ア)と(ウ)の2欄で選択肢は(3)に確定します——残る(イ)(エ)(オ)は確認に使いましょう。
まとめ
| (ア) | 比熱が大きい→冷却効率が高い |
| (イ) | 比重が小さい→風損が小さい(空気の約1/14) |
| (ウ) | 不活性→絶縁物への劣化影響が少ない |
| (エ) | 爆発防止のため水素ガス濃度を90%以上に維持 |
| (オ) | 軸受の内側は油膜でシール→(3) |
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