今回は平成26年度 電力科目 A問題6、25MV·Aの三相変圧器を3バンクもつ配電用変電所で、1バンクが故障しても停電なしに供給できる故障発生前の最大総負荷を求める計算問題です。令和3年度 A問題9(変電17)とほぼ同型——過負荷率・力率・負荷切換率の3つを使い分けます。
ポイントは皮相[MV·A]→有効[MW]の換算と切換で残す割合。故障時、他の変電所へ10%を切り換えるので、残り2バンクが賄うのは総負荷の90%。この90%が「2バンク×定格×125%(過負荷)×0.95(力率)」以下になればよい、と立式します。
平成26年度 電力科目 A問題6:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題6
電験3種 電力科目 【変電】 平成26年度 A問題6
1バンクの定格容量25MV·Aの三相変圧器を3バンク有する配電用変電所がある。変圧器1バンクが故障した時に長時間の停電なしに故障発生前と同じ電力を供給したい。この検討に当たっては、変圧器故障時には、他の変電所に故障発生前の負荷の10%を直ちに切り換えることができるとともに、残りの健全な変圧器は、定格容量の125%まで過負荷することができるものとする。力率は常に95%(遅れ)で変化しないものとしたとき、故障発生前の変電所の最大総負荷の値[MW]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)32.9 (2)53.4 (3)65.9 (4)80.1 (5)98.9 MW

供給できる量から逆にたどる
残った2バンクで送れる量が、負荷の90 % にあたります。
★供給できる量
10 % は他の変電所へ切り換えるので、自変電所は90 % を担います。
★答え
最後に力率を掛けて MW に直します——問われているのが「総負荷[MW]」だからです。
令和3年度A9とちょうど逆の問題
| ★令和3年度 A9 | ★平成26年度 A6(本問) | |
| ★与えられる | ★総負荷55 MW | ★切換割合10 % |
| ★求める | ★切換割合(17.1 %) | ★総負荷(65.9 MW) |
| ★台数・容量 | ★3台×20 MV·A | ★3バンク×25 MV·A |
| ★過負荷率 | ★120 % | ★125 % |
| ★力率 | ★95 % | ★95 % |
同じ設定で、与えるものと求めるものが入れ替わっています——片方が解ければ、もう片方も解けるのです。
順方向なら力率で割り、逆方向なら力率を掛ける——そこだけ注意しましょう。
なぜ125 % まで許されるのか
変圧器は熱容量が大きく、温度がゆっくり上がります。
| 過負荷率 | 許容時間の目安 |
| ★110 % | ★数時間 |
| ★125 % | ★30分〜1時間程度 |
| ★150 % | ★数分 |
短時間なら耐えられますが、長く続けば絶縁が劣化します——だから「長時間の停電なしに」と条件がつくのです。
その間に他の変電所へ切り換えを済ませます——過負荷は時間を稼ぐ手段になります。
⚠️ よくある間違い
3バンクぶんで計算してしまう——3×25×1.25=93.75 から98.9 MWとなり、選択肢(5)に落ちます。
1バンクだけで計算してしまう——25×1.25÷0.9×0.95=32.9 で選択肢(1)。
125 % を掛け忘れる——2×25÷0.9×0.95=52.8 となり、選択肢(2)53.4 に近づきます。
0.9 で割らずに掛けてしまう——62.5×0.9×0.95=53.4 でやはり選択肢(2)。供給できる量が90 % に「あたる」ので割ります。
力率で割ってしまう——69.4÷0.95=73.1。MV·A から MW へは掛けるのです。
⏱️ 本番での進め方
①★残るのは2バンク。125 % で62.5 MV·A。
②★それが総負荷の90 % なので0.9で割る。
③★最後に力率0.95を掛けて MW に直す。
④令和3年度A9とは与える値と求める値が逆。
💡 覚え方
「送れる量÷0.9×力率」——3手で終わります。10 % を切り換えるので、残りの90 % が自分の担当——そこを「割る」と押さえましょう。
逆方向の問題が令和3年度 A問題9(変電:変圧器の過負荷運転)にあります。
バンクという単位
問題文の「バンク」は、変圧器1組を数える言葉です。
| 言葉 | 意味 |
| ★1バンク | ★三相変圧器1台、または単相3台の1組 |
| ★バンク容量 | ★その1組が受け持てる容量 |
| ★3バンク構成 | ★1組故障しても2組で継続できる |
単相変圧器3台で三相を作る場合も、まとめて1バンク——系統から見れば1つの変圧設備だからです。
本問は25 MV·A が3バンクなので、合計75 MV·A——1バンク失うと50 MV·Aになります。
125 % 運転で62.5 MV·A まで引き上げる——それでも69.4 MV·A には届きません。
だから10 % を他へ回す前提が要る——問題文の条件がそこにつながります。
配電用変電所の規模
| 項目 | 目安 |
| ★バンク容量 | ★20〜30 MV·A |
| ★バンク数 | ★2〜4 |
| ★配電線の回線数 | ★1バンクあたり4〜6回線 |
本問の25 MV·A×3バンクは、標準的な配電用変電所——数万世帯を支える規模です。
要点をもう一度
供給できる量から、必要な負荷を逆算します。
| 順 | やること | 値 |
| ★① | ★残る2バンク×125 % | ★62.5 MV·A |
| ★② | ★それが総負荷の90 % なので÷0.9 | ★69.4 MV·A |
| ★③ | ★力率0.95 を掛けて MW へ | ★65.9 MW |
3手で終わります——÷0.9 と ×0.95 の向きだけ注意。
10 % を切り換えるので、自変電所は90 % を担う——だから割り算です。
MV·A と MW の行き来
| 変換 | 操作 | 理由 |
| ★MW → MV·A | ★力率で割る | ★皮相電力のほうが大きい |
| ★MV·A → MW | ★力率を掛ける | ★有効電力のほうが小さい |
皮相電力は必ず有効電力以上——力率が1以下だからです。
どちらへ変換しているかを意識すれば、迷いません——大きくなるか小さくなるかで判断できるのです。
他変電所への切換はどう行うか
問題文の「10 % を直ちに切り換える」を具体的に見ましょう。
| 要素 | 内容 |
| ★常時開路点 | ★隣の変電所とつながる開閉器を、ふだんは開いておく |
| ★切換操作 | ★その開閉器を閉じ、こちら側を開く |
| ★所要時間 | ★遠隔操作なら数分以内 |
配電系統は、隣の変電所と結べる形にあらかじめ作られています——だから「直ちに」切り換えられるのです。
ふだん開いているのは、系統をループにしないため——事故の切り分けが難しくなるからです。
切り換える側にも余力が必要——受け入れられる範囲が10 % という前提になります。
変圧器の過負荷は、この切換が終わるまでの時間稼ぎ——だから125 % でも許されるのです。
変圧器の過負荷が許される仕組み
125 % という条件の根拠を見ましょう。
| 要素 | 内容 |
| ★熱時定数 | ★油入変圧器で2〜5時間 |
| ★温度上昇 | ★負荷を上げてもすぐには上がらない |
| ★絶縁の限界 | ★巻線105 ℃・上層油温95 ℃ 前後 |
| ★寿命への影響 | ★温度が6 ℃ 上がると寿命が半分 |
変圧器は油と鉄の塊なので、熱がたまるのに時間がかかります——だから短時間なら定格を超えても平気です。
けれども長く続ければ、絶縁紙が確実に劣化します——寿命を前借りしていることになります。
だから問題文が「長時間の停電なしに」と限定している——切換までのつなぎだからです。
実際の運用でも、過負荷は許容時間とセットで管理されます——何時間まで、と決まっているのです。
まとめ
| 残2バンク容量 | 2×25MV·A×1.25=62.5MV·A |
| 有効電力に換算 | 62.5×0.95=59.375MW |
| 切換で残す割合 | 10%切換→90%を賄う |
| 最大総負荷 | 59.375/0.9≒65.97MW |
| 答え | 65.9MW→(3) |
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