今回は平成25年度 電力科目 A問題9、架線の水平張力を支線と追支線で受けるときの追支線張力を式で求める問題です。水平方向の力の平衡を各支持物で立てます。
ポイントは架線の水平張力Tが支線を通じて支線柱に伝わり、追支線で受けること。各支持物で水平方向の力が平衡するので、追支線の水平成分=T となる関係から T2 を求めます。
答えは(1):T₂=T√(h₂²+ℓ₂²)/ℓ₂
水平方向の力が、そのまま伝わっていくのが要点です。
| 場所 | 力の平衡 | 分かること |
| ★支持物(C点) | ★★架線の水平張力 T = 支線の水平成分 | ★★支線の張力 T₁ が決まる |
| ★支線柱(D点) | ★★支線が引く水平力 T = 追支線の水平成分 | ★★追支線の張力 T₂ が決まる |
★平衡の式
★答え
追支線は D点から地上の E点へ斜めに張られています——水平距離ℓ₂・高さh₂です。
その斜辺は √(h₂²+ℓ₂²) になります——三平方の定理です。
水平成分は、張力に「水平距離÷斜辺」を掛けたもの——それが T に等しいのです。
平成25年度 電力科目 A問題9:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成25年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題9
電験3種 電力科目 【配電の計算】 平成25年度 A問題9
図のように、架線の水平張力T[N]を支線と追支線で、支持物と支線柱を介して受けている。支持物の固定点Cの高さをh₁[m]、支線柱の固定点Dの高さをh₂[m]とする。また、支持物と支線柱間の距離ABをℓ₁[m]、支線柱と追支線地上固定点Eとの根開きBEをℓ₂[m]とする。支持物及び支線柱が受ける水平方向の力は、それぞれ平衡しているという条件で、追支線にかかる張力T₂[N]を表した式として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、支線、追支線の自重及び提示していない条件は無視する。
(1) T√(h₂²+ℓ₂²)/ℓ₂ (2) Tℓ₂/√(h₂²+ℓ₂²) (3) T√(h₂²+ℓ₂²)/√((h₁−h₂)²+ℓ₁²) (4) T√((h₁−h₂)²+ℓ₁²)/√(h₂²+ℓ₂²) (5) Th₂√((h₁−h₂)²+ℓ₁²)/((h₁−h₂)√(h₂²+ℓ₂²))



支線の張力 T₁ も同じ形で出る
★
★
支線は C点から D点へ張られています——水平距離ℓ₁・高低差(h₁−h₂)です。
形はまったく同じで、記号が違うだけ——斜辺÷水平距離を掛けるのです。
本問が問うているのは T₂ なので、h₁ とℓ₁ は使いません——そこが選択肢(3)(4)(5)との違いです。
問われている量に必要な記号だけが答えに残ります——それが選択肢を絞る手がかりになります。
張力は必ず水平張力より大きくなる
| 斜辺と水平距離の関係 | √(h₂²+ℓ₂²)/ℓ₂ | T₂ |
| ★h₂=0(水平に張る) | ★★1 | ★★T と同じ |
| ★h₂=ℓ₂(45度) | ★★√2≒1.41 | ★★T の1.41倍 |
| ★h₂>ℓ₂(急な角度) | ★★大きくなる | ★★さらに大きい |
斜辺は水平距離より必ず長いので、係数は1以上です——だから T₂ > Tになります。
角度が急なほど、張力が大きくなります——水平成分を出すのに苦労するのです。
だから支線は、根開きを十分にとって張ります——ℓ₂ を大きくするのです。
答えが T より小さくなる選択肢は、その時点で誤りと分かります——(2)がそれです。
⚠️ よくある間違い
(2)の T ℓ₂/√(h₂²+ℓ₂²) を選ぶ——分母と分子が逆で T より小さくなります。
h₁ やℓ₁ を含む式を選ぶ——追支線には無関係です。
水平成分の取り方を間違える——水平距離÷斜辺を掛けます。
鉛直成分と混同する——釣り合うのは水平方向です。
支線と追支線を取り違える——追支線は h₂・ℓ₂ 側です。
⏱️ 本番での進め方
①★水平張力 T は支線・支線柱を経て追支線へ伝わる。
②★水平成分=張力×(水平距離/斜辺)。
③★T₂=T×(斜辺/水平距離)=T√(h₂²+ℓ₂²)/ℓ₂。
④★答えは必ず T より大きくなる。
💡 覚え方
「斜辺わる水平距離を掛ける」——だから T より大きくなります。追支線に h₁・ℓ₁ は出てこない——それだけで選択肢が絞れるのです。
支線の張力計算は架空送電の単元(電力:架空送電)でも扱っています。
支線が必要な理由
| 場所 | なぜ支線が要るか |
| ★引留柱 | ★★片側にしか電線がなく、張力が偏る |
| ★曲がり角 | ★★2方向の張力の合力が働く |
| ★分岐点 | ★★分岐した方向へ引っ張られる |
直線の途中なら、両側の張力が釣り合います——だから支線が要らないのです。
釣り合わない場所では、支線で受け止めます——電柱が倒れないように。
本問はその力の伝わり方を式にしたものです。
追支線を使う場面
| ふつうの支線 | 支線柱+追支線 | |
| ★構成 | ★★電柱から地面へ直接張る | ★★別の柱を立てて中継する |
| ★必要な用地 | ★★根開きの分だけ | ★★さらに離れた場所に取れる |
| ★使う場面 | ★★十分な土地があるとき | ★★道路や建物で支線を張れないとき |
電柱のすぐそばに支線を張れないことがあります——道路や敷地の都合です。
そこで支線柱を立てて、力を中継します——それが本問の構成です。
水平力はそのまま伝わるので、計算は素直です。
力を成分に分けるという基本
| 成分 | 張力Tに掛ける係数 | 意味 |
| ★水平成分 | ★★水平距離÷斜辺 | ★★cosに相当 |
| ★鉛直成分 | ★★高さ÷斜辺 | ★★sinに相当 |
角度が与えられていないので、辺の比で表します——三角比と同じことです。
釣り合うのは水平方向なので、水平成分だけを使います——鉛直成分は電柱が受けるのです。
だから答えに h₂ と ℓ₂ の両方が出てきます。
選択肢を式の形から絞る
| 選択肢 | 含む記号 | 判断 |
| ★★(1) | ★★h₂・ℓ₂ のみ | ★★追支線だけの量で正しい |
| ★(2) | ★★h₂・ℓ₂ のみ | ★★形は近いが T より小さくなる |
| ★(3)(4)(5) | ★★h₁・ℓ₁ を含む | ★★追支線には無関係 |
まず h₁・ℓ₁ を含む選択肢を消せます——3つが一度に消えるのです。
残る2つは、分母と分子が逆になっているだけ——大小関係で決まります。
張力は T より大きいはずなので、(1)が正解——計算しなくても選べるのです。
水平力がそのまま伝わるという性質
| 場所 | 水平方向に働く力 |
| ★架線 | ★★T |
| ★支持物の固定点C | ★★T(支線の水平成分が受ける) |
| ★支線柱の固定点D | ★★T(追支線の水平成分が受ける) |
どこを見ても、水平方向に働く力は T のままです——力が増えたり減ったりしないのです。
変わるのは、その力を受ける部材の角度だけ——角度によって張力が変わるのです。
だから T₂ は T に「斜辺÷水平距離」を掛けた形になります。
支線に求められる強さ
| 項目 | 内容 |
| ★安全率 | ★★引張強さに対して2.5以上(電技解釈) |
| ★素線 | ★★直径2mm以上の金属線を3条以上より合わせる |
| ★引張荷重 | ★★10.7kN以上 |
| ★地際 | ★★腐食しにくい材料か亜鉛めっき |
計算で求めた張力に、さらに安全率を掛けて選定します——切れたら電柱が倒れるから。
本問で求めた T₂ が、その出発点になります——設計の第一歩です。
法令にも具体的な数値が定められています。
根開きを大きくとる理由
| 根開き ℓ₂ | 斜辺÷水平距離 | 必要な張力 T₂ |
| ★h₂ の0.5倍 | ★★2.24 | ★★T の2.24倍 |
| ★h₂ と同じ | ★★1.41 | ★★T の1.41倍 |
| ★h₂ の2倍 | ★★1.12 | ★★T の1.12倍 |
根開きを大きくとるほど、必要な張力が小さくなります——角度が寝るからです。
だから支線はできるだけ離れた場所に固定します——細い支線で済むのです。
けれども用地の都合で、そうできないこともあります——そのときに支線柱と追支線を使うのです。
本問の構成は、その工夫を表しています。
まとめ
| 支持物 | 架線T=支線の水平成分 |
| 支線柱 | 伝わる水平力=T |
| 追支線水平成分 | T₂×ℓ₂/√(h₂²+ℓ₂²)=T |
| T₂ | T√(h₂²+ℓ₂²)/ℓ₂ |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・支線の張力(送電の計算14):【電力】令和元年度 A問題13
・たるみと張力(送電の計算1):【電力】令和7年度上期 A問題12

コメント