今回は平成25年度 電力科目 A問題6、変圧器のY-Y-Δ結線について誤っているものを選ぶ問題です。Y-Y-Δは高電圧大容量変電所の主変圧器の定番結線。中性点接地・位相差なし・第三調波対策・三次Δ巻線の役割が一問に詰まっています。
決め手は中性点接地。Y-Y-Δ結線は一次・二次ともY(星形)結線なので中性点を接地できる——これこそがY-Y結線を使う最大の理由(絶縁低減・地絡保護)です。「接地できない」という記述は利点を真逆にした誤りです。
平成25年度 電力科目 A問題6:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成25年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題6
電験3種 電力科目 【変電】 平成25年度 A問題6
変圧器の結線方式として用いられるY-Y-Δ結線に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
高電圧大容量変電所の主変圧器の結線として広く用いられている。
一次若しくは二次の巻線の中性点を接地することができない。
一次−二次間の位相変位がないため、一次−二次間を同位相とする必要がある場合に用いる。
Δ結線がないと、誘導起電力は励磁電流による第三調波成分を含むひずみ波形となる。
Δ結線は、三次回路として用いられ、調相設備の接続用、又は、所内電源用として使用することができる。

誤りは(2):中性点接地はできる
「一次若しくは二次の巻線の中性点を接地することができない」——Y結線が2つあるのだから接地できます。
| 巻線 | 結線 | 中性点 | 接地 |
| ★一次 | ★Y | ★ある | ★できる |
| ★二次 | ★Y | ★ある | ★できる |
| ★三次 | ★Δ | ★ない | ★できない |
中性点があるのは星形だけ——三角形には中心がありません。
Y-Y-Δは一次も二次もYなので、両方とも接地できます——それが高電圧系統で使われる理由です。
接地できれば異常電圧を抑え、絶縁レベルを下げられる——500 kV では絶縁費用が支配的だからです。
問題文の(1)が「高電圧大容量変電所の主変圧器」と書いている——接地できるからこそ使われるのです。
(4)(5) 三次Δ巻線の2つの役目
Δ巻線を1つ加えるだけで、2つの問題が解決します。
| 役目 | 内容 | 別名 |
| ★第3調波の環流 | ★零相分をΔ内で循環させ外へ出さない | ★安定巻線 |
| ★調相設備の接続 | ★電力用コンデンサや分路リアクトルをつなぐ | ★三次巻線 |
| ★所内電源 | ★変電所内の機器へ電力を供給する | ★— |
Y-Yだけでは、励磁電流の第3調波に逃げ場がありません——相電圧がひずみ波になります。
Δ巻線があれば、その電流は輪の中を回るだけ——外へ出ないので波形が整います。
三次電圧は10〜30 kV 程度——調相設備をつなぐのに扱いやすいのです。
だから1つの巻線が3つの役目を果たす——大容量変圧器では標準的に備えられます。
(3) 一次と二次が同位相になる
結線が同じ種類なら、位相差は生じません。
| 結線 | 角変位 | 同位相か |
| ★Y-Y | ★0 | ★同位相 |
| ★Δ-Δ | ★0 | ★同位相 |
| ★Δ-Y | ★30度(π/6) | ★ずれる |
| ★Y-Δ | ★30度(π/6) | ★ずれる |
Y-Y-Δの一次・二次はどちらもY——だから位相差がありません。
並行運転する変圧器は、角変位が同じでなければなりません——違えば循環電流が流れるからです。
既設がY-Yなら、増設もY-Y系にする必要がある——問題文(3)の「同位相とする必要がある場合」です。
⚠️ よくある間違い
(2)を「Δがあるから接地できない」と考えてしまう——接地するのはY側です。Δは三次だけ。
(1)の「高電圧大容量変電所」を疑ってしまう——まさにその用途で使われます。
(3)の「位相変位がない」を疑ってしまう——一次も二次もYなので0です。
(4)の「Δ結線がないとひずみ波形」を疑ってしまう——Y-Yの弱点そのもの。
(5)の三次巻線の用途を疑ってしまう——調相設備の接続も所内電源も実際の用途です。
4つが利点で1つだけが否定形——「できない」を疑うのが解き方になります。
⏱️ 本番での進め方
①★Y-Y-Δは一次も二次もYなので中性点接地できる。
②★中性点があるのは星形だけ。三角形にはない。
③★三次Δは安定巻線・調相設備接続・所内電源の3役。
④★Y-Yの角変位は0。並行運転では角変位をそろえる。
💡 覚え方
「YがあるかΔがあるか」で決まる——Yがあれば接地でき、Δがあれば第3調波が環流します。Y-Y-Δは両方を備えた形——だから高電圧大容量に使われるのです。
Y-Y結線の欠点は平成29年度 A問題7(変電:変圧器のY-Y結線方式)、4パターンの整理は令和4年度下期 A問題7(変電:変圧器の結線方式)にあります。
三巻線変圧器という呼び名
Y-Y-Δは、巻線が3組ある変圧器です。
| 巻線 | 電圧の例 | 容量の例 | 役目 |
| ★一次 | ★275 kV | ★100 % | ★受電 |
| ★二次 | ★66 kV | ★100 % | ★送出 |
| ★三次 | ★22 kV | ★30 % 前後 | ★安定巻線・調相設備 |
三次巻線の容量は、一次・二次より小さくて構いません——電力を通すのが主目的ではないからです。
第3調波を環流させるだけなら、わずかな容量で足ります——だから30 % 程度になります。
そこへ調相設備をつなげば、無効電力の調整もできる——一石二鳥の設計です。
なぜ三次に調相設備をつなぐのか
一次や二次の高電圧側につなぐと、機器が高価になります。
22 kV 程度なら、コンデンサもリアクトルも作りやすい——絶縁の負担が小さいからです。
しかも変圧器を介して系統全体に効きます——低い電圧で高い電圧の系統を調整できるのです。
要点をもう一度
4つが利点で、(2)だけが否定形です。
| 記述 | 内容 | 正誤 |
| (1) | 高電圧大容量変電所で広く使われる | 正 |
| ★(2) | ★中性点を接地できない | ★誤(できる) |
| (3) | 一次−二次が同位相 | 正 |
| (4) | Δがないとひずみ波形になる | 正 |
| (5) | 三次Δは調相設備・所内電源に使える | 正 |
「できない」という否定形を疑うのが解き方——Yが2つあるのだから接地できます。
Y-Y-Δがなぜ標準になったか
| 求められること | Y-Y-Δの答え |
| ★中性点接地したい | ★一次・二次ともYなので可能 |
| ★第3調波を出したくない | ★三次Δで環流させる |
| ★調相設備をつなぎたい | ★三次に接続できる |
| ★既設と並行運転したい | ★角変位0で他のY-Y系と合う |
4つの要求をすべて満たします——だから高電圧大容量の主変圧器に選ばれるのです。
中性点接地方式の選び分け
(2)で問われた接地を、電圧階級ごとに見ましょう。
| 電圧 | 接地方式 | 理由 |
| ★187 kV 以上 | ★直接接地 | ★絶縁費用が支配的なので段絶縁の効果が大きい |
| ★22〜154 kV | ★抵抗接地 | ★地絡電流を抑えつつ検出もできる |
| ★6.6 kV | ★非接地 | ★1線地絡でも運転を続けられる |
高電圧ほど直接接地にします——絶縁を弱くできる利益が大きいからです。
Y-Y-Δが高電圧大容量で使われるのは、この接地ができるから——問題文(1)とつながります。
直接接地では地絡電流が大きくなります——通信線への誘導障害が課題になります。
だから遮断時間を短くして、影響を抑える——0.1秒以内に切るのです。
並行運転の観点から見る
(3)の「同位相とする必要がある場合」を具体的に見ましょう。
| 場面 | 求められること |
| ★既設の変圧器と並行運転する | ★角変位が一致していること |
| ★2つの系統をループでつなぐ | ★両端の位相が合っていること |
| ★母線を二重化する | ★切り換えても位相が変わらないこと |
位相がずれた系統をつなぐと、循環電流が流れます——負荷がなくても巻線が発熱するのです。
Y-Y-Δは角変位が0なので、Y-Y系と自由に組めます——増設や切換の自由度が高いことになります。
Δ-YやY-Δは30度ずれるので、混ぜられません——系統全体で統一する必要があるのです。
基幹系統がY-Y-Δで統一されているのは、この理由もあります——問題文(3)が挙げる利点です。
まとめ
| (1)用途 | 高電圧大容量変電所の主変圧器→正しい |
| (2)中性点接地 | 一次・二次ともYで接地できる(できないは誤り)→答え |
| (3)位相変位 | 一次二次で位相差なし→正しい |
| (4)第三調波 | Δがないと第三調波でひずむ→正しい |
| (5)三次Δ | 調相設備接続・所内電源用→正しい |
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