今回は平成23年度 電力科目 A問題13、配電線路の電圧調整の誤り選択問題です。昇圧器・電力用コンデンサ・LRA/LRT・太線化・柱上変圧器と、電圧調整の手段が総登場します。
決め手は柱上変圧器の設置地点変更。柱上変圧器を負荷の中心に近づけて設置すると、低圧配電線の電圧降下を小さくでき、電圧調整に効果があります。「設置地点を変更することは効果がない」は誤りです。
平成23年度 電力科目 A問題13:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題13
電験3種 電力科目 【配電】 平成23年度 A問題13
配電線路の電圧調整に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 配電線のこう長が長くて負荷の端子電圧が低くなる場合、配電線路に昇圧器を設置することは電圧調整に効果がある。
(2) 電力用コンデンサを配電線路に設置して、力率を改善することは電圧調整に効果がある。
(3) 変電所では、負荷時電圧調整器・負荷時タップ切換変圧器等を設置することにより電圧を調整している。
(4) 配電線の電圧降下が大きい場合は、電線を太い電線に張り替えたり、隣接する配電線との開閉器操作により、配電系統を変更することは電圧調整に効果がある。
(5) 低圧配電線における電圧調整に関して、柱上変圧器のタップ位置を変更することは効果があるが、柱上変圧器の設置地点を変更することは効果がない。

答えは(5):設置地点の変更も効果がある
「効果がない」という言い切りが誤りです。
| 選択肢 | 正誤 | 手段 |
| ★(1) 昇圧器の設置 | ★正しい | ★電圧そのものを持ち上げる |
| ★(2) 電力用コンデンサ | ★正しい | ★力率改善で降下を減らす |
| ★(3) 変電所のLRA・LRT | ★正しい | ★送出電圧を調整する |
| ★(4) 太線化・系統変更 | ★正しい | ★抵抗を減らす・負荷を分ける |
| ★★(5) 設置地点の変更は効果がない | ★★誤り | ★★負荷の中心に近づければ効果がある |
柱上変圧器を負荷の中心に置く効果
| 置き方 | 最も遠い負荷までの距離 | 電圧降下 |
| ★負荷の端に置く | ★★区間の全長 | ★★大きい |
| ★★負荷の中心に置く | ★★区間の半分 | ★★半分ほどに減る |
低圧配電線の電圧降下は、距離に比例します——抵抗が距離に比例するから。
変圧器を真ん中に置けば、両側へ半分ずつ配ればよい——いちばん遠い家までが近くなるのです。
だから設置地点の変更は、確かに効果があります——(5)の後半は誤りです。
タップ変更が効果があるのは正しい——前半は正しく、後半だけが誤りという作りです。
開閉器操作で系統を変える
| 段階 | 行うこと | 効果 |
| ★① | ★★電圧が下がっている区間を見つける | ★— |
| ★② | ★★連系開閉器を閉じ、区分開閉器を開く | ★★その区間を隣の配電線へ移す |
| ★③ | ★★負荷が2本の配電線に分かれる | ★★電流が減り電圧降下も減る |
1本の配電線に負荷が集まると、電圧が下がります——電流が大きいからです。
そこで隣の配電線に一部を担わせます——開閉器の操作だけでできるのです。
設備を増やさずに済むので、費用がかかりません——だから真っ先に検討されるのです。
それが(4)の「配電系統を変更する」の意味です——正しい記述になります。
⚠️ よくある間違い
(5)を正しいと考える——設置地点の変更にも効果があります。
(2)を誤りと考える——力率改善はQXの分を減らします。
(4)の系統変更を誤りと考える——負荷を分ければ電流が減るのです。
(1)の昇圧器を知らずに選ぶ——SVRなどの昇圧装置です。
「効果がない」という否定を見落とす——否定表現は誤りのしるしです。
⏱️ 本番での進め方
①★柱上変圧器はタップも設置地点も効果がある。
②★「効果がない」という否定の言い切りを疑う。
③★電圧調整=昇圧器・コンデンサ・LRT・太線化・系統変更。
④★低圧の電圧降下は変圧器からの距離で決まる。
💡 覚え方
「変圧器を負荷の真ん中へ」——距離が半分になれば降下も半分です。「効果がない」は疑う——誤り選択問題の定石です。
電圧調整の手段は令和4年度下期 A問題12(配電:配電線路の電圧調整)でも問われています。
昇圧器とは何か
(1)に出てくる装置です。
| 項目 | 内容 |
| ★どんな装置か | ★★配電線の途中に入れて電圧を持ち上げる変圧器 |
| ★代表例 | ★★SVR(線路用電圧調整器) |
| ★構造 | ★★単巻変圧器にタップ切換装置を付けたもの |
| ★置く場所 | ★★電圧が下限に近づく手前 |
こう長が長いと、末端の電圧が下限を割ります——だから途中で持ち上げるのです。
昇圧器を通ると、そこから先の電圧が段差状に上がります——末端まで届くのです。
変電所の送出電圧を上げる方法もありますが、手前の需要家が高くなりすぎます——だから途中に置くのです。
だから(1)は正しい記述です。
力率改善が電圧降下を減らす理屈
(2)が正しいことを、式で確かめます。
力率を改善するとは、cosθ を1に近づけることです——すると sinθ が小さくなるのです。
| 力率 | cosθ | sinθ | Xの効き方 |
| ★0.6 | ★0.6 | ★★0.8 | ★★大きい |
| ★0.8 | ★0.8 | ★0.6 | ★中くらい |
| ★★1.0 | ★★1.0 | ★★0 | ★★効かない |
力率1なら、リアクタンス分がまったく効きません——sinθ=0だから。
同時に、同じ電力なら電流も小さくなります——二重に効くのです。
だから電力用コンデンサは電圧調整に有効——(2)は正しい記述です。
太線化と系統変更のどちらを選ぶか
(4)には2つの手段が並んでいます。
| 太線化 | 開閉器操作による系統変更 | |
| ★何を変えるか | ★★電線の抵抗 | ★★流れる電流 |
| ★費用 | ★★大きい(張替え工事) | ★★ほぼゼロ(操作だけ) |
| ★効果の持続 | ★★恒久的 | ★★隣の線路に余裕があるかぎり |
| ★検討の順序 | ★★後(最後の手段) | ★★先(まず試す) |
まず費用のかからない方法から試します——開閉器の操作だけで済むなら安いのです。
隣の配電線に余裕がなければ、それはできません——そのときは太線化になります。
どちらも電圧降下 √3I(Rcosθ+Xsinθ) を小さくする手です——片方はR、片方はIを減らすのです。
だから(4)は両方とも正しい記述です。
LRAとLRTという2つの略号
(3)に並んでいる装置です。
| 略号 | 正式名称 | 構造 |
| ★★LRT | ★★負荷時タップ切換変圧器 | ★★主変圧器にタップ切換装置を組み込む |
| ★★LRA | ★★負荷時電圧調整器 | ★★変圧器とは別に置く単巻変圧器 |
どちらも変電所で送出電圧を調整する装置です——目的は同じ。
違いは、主変圧器と一体かどうかです——LRTは一体、LRAは別置き。
すでにある変圧器に後から足すならLRAになります——使い分けがあるのです。
だから(3)は正しい記述——どちらも変電所の電圧調整装置です。
低圧配電線の電圧降下を式で見る
(5)の判断を、数字で確かめます。
| 変圧器の位置 | 最も遠い負荷までの距離 | 電圧降下の目安 |
| ★区間の端 | ★★100 m | ★★4 V |
| ★★区間の中央 | ★★50 m | ★★2 V |
低圧線の抵抗は、距離に比例します——だから降下も距離に比例するのです。
中央に置けば、いちばん遠い家までが半分になります——降下も半分です。
100 V の系統で2 V の差は小さくありません——許容幅が±6 V しかないのです。
だから設置地点の変更には確かに効果があります——(5)が誤りである根拠です。
電圧調整の手段を費用の順に並べる
実務では、安い方法から検討します。
| 順 | 手段 | 費用 |
| ★① | ★★開閉器操作による系統変更 | ★★ほぼゼロ |
| ★② | ★★柱上変圧器のタップ変更 | ★★小さい |
| ★③ | ★★柱上変圧器の設置地点の変更 | ★★中くらい |
| ★④ | ★★昇圧器やコンデンサの設置 | ★★大きい |
| ★⑤ | ★★太線化(張替え) | ★★最も大きい |
まず操作だけで済むかを確かめます——お金がかからないから。
それで足りなければ、変圧器まわりを見直します——タップ、そして設置地点。
最後が設備の増設や張替えです——工事が大きくなるのです。
本問の5つの選択肢は、この順番をなぞっています——どれも有効な手段なのです。
まとめ
| 誤り | (5) 設置地点変更も効果あり |
| 昇圧器 | こう長長・端子電圧低に有効(1) |
| 電力用コンデンサ | 力率改善で電圧降下減(2) |
| LRA/LRT | 変電所でのタップ調整(3) |
| 太線化・系統変更 | 抵抗低減・負荷分割(4) |
| 答え | (5) |
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