今回は平成18年度 電力科目 B問題12を解説します。水が充満して流れる水管で、内径2.5m・流速4.0m/s・圧力25kPaの点Aに対し、30m低い位置にある内径2.0mの点Bでの流速vと圧力pを求める問題です。
使う道具は2つだけ。流速は連続の定理 v∝1/d²、圧力はベルヌーイの定理 h+p/(ρg)+v²/(2g)=一定。落差30mぶんの位置水頭がそのまま圧力水頭に化ける、というイメージがつかめれば完答できます。
平成18年度 電力科目 B問題12:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 B問題12
電験3種 電力科目 【水力】 平成18年度 B問題12
図の水管内を水が充満して流れている。点Aでは管の内径2.5[m]で、これより30[m]低い位置にある点Bでは内径2.0[m]である。点Aでは流速4.0[m/s]で圧力は25[kPa]と計測されている。このときの点Bにおける流速v[m/s]と圧力p[kPa]に最も近い値を組み合わせたのは次のうちどれか。なお、圧力は水面との圧力差とし、水の密度は1.0×10³[kg/m³]とする。
流速v[m/s] 圧力p[kPa] (1) 4.0 296 (2) 5.0 296 (3) 5.0 307 (4) 6.3 307 (5) 6.3 319

流速は直径の2乗比で決まる
★円周率は約分で消える
★約6.3 m/s
直径が2割小さくなると、流速は約1.6倍——2乗で効くからです。
この時点で選択肢は(4)(5)に絞られます——4.0や5.0を選ばせる選択肢は、連続の定理を使わなかった人向けです。
速度水頭の項が効いてくる
本問では、速度が上がったぶんの圧力低下が無視できません——ここが正解を分けるのです。
| 項 | 計算 | 値 |
| 元の圧力 | pA | 25,000 Pa |
| ★落差ぶん | 1000×9.8×30 | ★+294,000 Pa |
| ★速度ぶん | 1000×(4.02−6.252)/2 | ★−11,531 Pa |
| 合計 | pB | ★307,469 Pa ≒ 307 kPa |
速度水頭の項が−11.5 kPa——これを落とすと319 kPa になり、選択肢(5)に引っかかります。
25+294=319——選択肢(5)はまさにその値。速度水頭を忘れた人を待ち構えているのです。
速いところは圧力が低い
ベルヌーイの定理が教えるのは、この関係——速度水頭が増えれば圧力水頭が減るのです。
| 点A(太い) | 点B(細い) | |
| 流速 | 4.0 m/s | ★6.25 m/s(速い) |
| 速度水頭 | 0.816 m | ★1.993 m(大きい) |
| その分の圧力 | — | ★1.18 m ぶん低くなる |
管を絞れば流速が上がり、圧力が下がる——ベンチュリ管の原理です。流量計はこの圧力差を測って流量を求めます。
絞りすぎて圧力が下がりすぎると、水が沸騰してしまう——キャビテーションにつながります。水車の設計で問題になるのも、同じ現象です。
⚠️ よくある間違い
速度水頭の項を落として319 kPa とする——選択肢(5)に一致するので最も危険です。
令和3年度の類題では速度水頭が−2 kPa しかなかった——本問は−11.5 kPa と大きいのです。「小さいから省略できる」とは限りません。
速度水頭の符号を逆にする——330 kPa 前後になります。細いほうが速い=速度水頭が大きい=圧力は低いという向きを確認しましょう。
連続の定理を使わず4.0のままにする——選択肢(1)。管の太さが変わっているのですから、流速も変わります。
⏱️ 本番での進め方
①流速は★面積比=直径の2乗比で決まる。
②★水10 m ≒ 98 kPa。30 m なら294 kPa。
③★速度水頭の項を落とすと319 kPa で選択肢(5)に誘導される。
④速いところは圧力が低い(ベンチュリの原理)。
💡 覚え方
「太さで速さ、高さで圧力、速さでもう一度圧力」——3段階で考えます。速度水頭の項は小さいとは限らない——本問のように大きく効くこともあるのです。
同じ型の問題が令和3年度 A問題2(水力:連続の定理とベルヌーイの定理)にあります。そちらは速度水頭が小さい場合——2問セットで確認しておきましょう。
水頭で解く別解
圧力[Pa]のままだと桁が大きい——水頭[m]に直すと見通しがよくなります。
| 量 | 点A | 点B |
| 位置水頭 z | ★30 m | ★0 m(基準) |
| 速度水頭 v2/(2g) | 4.02/19.6=0.816 m | 6.252/19.6=1.993 m |
| 圧力水頭 p/(ρg) | 25000/9800=2.551 m | ★求めるもの |
★約307 kPa
31.4 m の水柱ぶん——元の2.55 m に落差30 m が加わり、速度が上がったぶん1.18 m 減ったと読み取れます。
この1.18 m が、圧力にして11.5 kPa——選択肢(5)との差そのものです。
水頭で見ると「どの項がどれだけ効いたか」が一目で分かる——桁の誤りも起きにくいでしょう。
選択肢から逆に絞る
2つの値の組合せですから、片方だけでも絞れます。
| 段階 | 求める値 | 残る選択肢 |
| ① | 流速6.3 m/s | ★(4)(5) |
| ② | 圧力307 kPa | ★(4)に確定 |
流速は連続の定理だけで出ます——直径の2乗比を掛けるだけ。ここまでで3つ落ちます。
残る(4)307 と(5)319 の差は12 kPa——これが速度水頭の項そのものです。省略したかどうかで答えが分かれるように作られています。
圧力と水頭の換算を覚える
| 水柱 | 圧力 | 覚え方 |
| ★1 m | ★9.8 kPa | ρg そのもの |
| ★10 m | ★98 kPa | ★約1気圧 |
| 30 m | 294 kPa | 本問の落差ぶん |
| 100 m | 980 kPa | 約1 MPa |
「水10 m でほぼ1気圧」——この目安があれば、答えの桁を確かめられます。
水管はなぜ下流で細くなるのか
本問の設定は、実際の水圧管でも見られます。
| 位置 | 圧力 | 管壁の応力 |
| 上流(浅い) | 低い | 小さい |
| ★下流(深い) | ★高い | ★大きい |
管壁に生じる引張応力は、圧力と直径に比例します——圧力が上がる下流では、直径を小さくすれば応力を抑えられるのです。
板厚を厚くする代わりに、径を細くするという選択——鋼材の節約になります。
その代わり流速が上がり、摩擦損失も増える——どこで折り合いをつけるかが設計の腕だと言えます。
まとめ
| 連続の定理 | v∝1/d²→v_B=4.0×(2.5/2.0)²=6.25≒6.3m/s |
| 点Aの位置水頭 | Bを基準面として30m |
| 点Aの圧力・速度水頭 | 25×10³/9800=2.551m、4.0²/19.6=0.816m |
| 点Bの速度水頭 | 6.25²/19.6=1.993m |
| 点Bの圧力 | (33.367−1.993)×9800≒307kPa→(4) |
▼あわせて解きたい関連問題
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