今回は平成22年度 電力科目 A問題1を解説します。衝動水車が位置水頭を何に変えて作用させるのか、そしてランナ部で何を用いないためにどんな構造が可能になるのかを問う空欄補充問題です。
衝動水車はノズルで位置水頭を速度水頭に変換し、噴流をバケットにぶつけて回します。ランナ部で圧力水頭を使わないので、ペルトン水車のように水流が空気中を通過する構造にできるのです。
平成22年度 電力科目 A問題1:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題1
電験3種 電力科目 【水力】 平成22年度 A問題1
次の文章は、水車に関する記述である。衝動水車は、位置水頭を(ア)に変えて、水車に作用させるものである。この衝動水車は、ランナ部で(イ)を用いないので、(ウ)水車のように、水流が(エ)を通過するような構造が可能となる。上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)及び(エ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 圧力水頭 速度水頭 フランシス 空気中 (2) 圧力水頭 速度水頭 フランシス 吸出管中 (3) 速度水頭 圧力水頭 フランシス 吸出管中 (4) 速度水頭 圧力水頭 ペルトン 吸出管中 (5) 速度水頭 圧力水頭 ペルトン 空気中

3つの水頭を区別する
本問は「水頭」という言葉で問われています——3種類あり、それぞれ別のエネルギーを表します。
| 水頭 | 式 | 意味 | 衝動水車での扱い |
| 位置水頭 | z | 高さそのもの | ★もとのエネルギー源 |
| ★速度水頭 | v2/(2g) | 流れの速さ | ★これに変換して使う |
| ★圧力水頭 | p/(ρg) | 水の圧力 | ★使わない |
単位はすべて[m]——エネルギーを「水の高さ」に換算した表現だからです。3つの合計が一定に保たれるのがベルヌーイの定理になります。
衝動水車は、位置水頭をノズルで速度水頭に変える——だから(ア)は速度水頭。(イ)の「用いない」ものは圧力水頭 です。
(エ) なぜ空気中を通ってよいのか
圧力水頭を使わない——この一点が、構造をまるごと決めています。
| ★衝動水車(ペルトン) | 反動水車(フランシス等) | |
| ランナ周りの状態 | ★大気圧・空気中 | ★水で満たされている |
| 吸出管 | ★不要 | ★必要 |
| ランナの設置位置 | 放水面より上でよい | 放水面に近づける |
| 流量調整 | ニードル弁 | ガイドベーン |
反動水車はランナ内で圧力が変化します——水が満たされていないと圧力が伝わらないのです。だからランナは水没させる必要があります。
衝動水車は噴流が当たるだけ——周りが空気でも一向にかまいません。むしろ水没させると、バケットが水をかき回して損失になるのです。
吸出管の役割
反動水車の出口に付ける、広がった管——2つの働きがあります。
| 働き | 内容 |
| ★落差の回収 | ランナから放水面までの高さを有効落差に取り込む |
| ★速度エネルギーの回収 | 断面を広げて流速を落とし、圧力に変える |
吸出管がなければ、ランナ出口の水はまだ速度を持ったまま捨てられます——それではもったいない。広げてゆっくりにすることで、そのエネルギーを回収しているのです。
衝動水車には吸出管がありません——だから放水面のすぐ上にランナを置く必要があります。その分の落差は使えないことになります。
⚠️ よくある間違い
(ア)と(イ)を逆にする——選択肢(1)(2)がそれです。
「〜に変えて、水車に作用させる」のが(ア)——つまり使うほう。「用いないので」が(イ)——使わないほうです。問題文の動詞で判断できます。
(ウ)を「フランシス」とする選択肢(1)(2)(3)——フランシスは反動水車なので、圧力水頭を使わないという文脈に合いません。
(エ)の「吸出管中」は反動水車の話——衝動水車に吸出管はないので誤りです。
⏱️ 本番での進め方
①(ア) 使うのは速度水頭。(イ) 使わないのは圧力水頭。
②動詞(変えて使う/用いない)で(ア)(イ)を見分ける。
③(ウ) 衝動水車の代表はペルトン。フランシスは反動。
④(エ)★吸出管は反動水車の部品。衝動なら空気中。
💡 覚え方
「圧力を使わないから、水没させなくてよい」——空気中を噴流が飛ぶ構造の理由です。吸出管は反動水車の部品——ペルトンには付いていません。
速度水頭の正体は令和7年度下期 A問題2(水力:単位体積当たりの運動エネルギー)、比速度は令和4年度下期 A問題2(衝動水車の原理と特徴)にあります。
有効落差と総落差
水車の計算で使うのは「有効落差」——総落差との違いを確認しておきましょう。
| 用語 | 意味 |
| 総落差 Hg | 取水口の水面と放水面の高さの差 |
| 損失水頭 hl | ★水路・水圧管の摩擦などで失われる分 |
| ★有効落差 H | ★実際に水車が使える落差 |
管を長くすれば摩擦損失が増えます——だから水圧管はできるだけ短く、太くするのが設計の基本です。
衝動水車では、ランナから放水面までの高さも損失になります——吸出管がないので、その分は回収できないからです。ランナを放水面のすぐ上に置くのは、そのためになります。
反動水車なら回収できる
吸出管があれば、ランナから放水面までの高さも有効落差に含められます——それが吸出管の最大の価値です。
低落差の発電所ほど、この回収分の割合が大きい——10 m の落差で2 m を捨てれば2割の損になります。だから低落差では反動水車が使われる——構造の違いが、そのまま適用落差を決めているのです。
空欄の絞り込み手順
4つの空欄がありますが、1つ決まれば大半が絞れます。
| 確定させる欄 | 正しい値 | 残る選択肢 |
| (ウ) | ペルトン | ★(4)(5) |
| (エ) | 空気中 | ★(5)に確定 |
衝動水車の代表はペルトン——フランシスは反動水車なので、(ウ)だけで3つ落ちます。
残る(4)と(5)の違いは(エ)——吸出管は反動水車の部品ですから、衝動水車の説明に出てくるのはおかしいと分かります。
ペルトンが高落差専用である理由
低落差でペルトンを使うと、噴流の速度が足りません——v=√(2gH) ですから、H が小さいと v も小さい。
遅い噴流でバケットを回そうとすると、ランナを非常に大きくするか、極端に遅く回すしかありません——どちらも不経済です。だから低落差では、圧力も使える反動水車が選ばれることになります。
水頭という言葉に慣れる
エネルギーを「水の高さ」で表すのが水頭——なぜわざわざ高さにするのかを考えておきましょう。
水力発電では、落差[m]が最も直感的な量だからです——「100 m の落差」と言えば規模がすぐ分かる。ジュールで言われてもぴんときません。
| 水頭 | 単位 | 直感的な意味 |
| 位置水頭 z | m | ★そのままの高さ |
| 速度水頭 v2/(2g) | m | ★その速さを得るのに必要な落差 |
| 圧力水頭 p/(ρg) | m | ★その圧力を生む水柱の高さ |
速度水頭は「何m 落とせばこの速さになるか」——44 m/s なら v2/(2g)=100 m。落差100 m と一致します。
3つとも[m]なので、そのまま足し引きできる——これが水頭で扱う最大の利点です。「位置水頭を速度水頭に変える」という本問の表現も、同じ単位だからこそ自然に読めることになります。
水頭をパスカルに直してみる
水の密度×重力加速度
水頭1 m = 約9.8 kPa
大気圧のおよそ10倍になる
水頭〔m〕は、圧力を長さで言い換えたものです——1 m ごとに約9.8 kPaずつ増えていきます。
落差100 m の水圧管の底には、約1 MPa がかかります——大気圧のおよそ10倍です。
この換算を知っておくと、水頭という言葉が急に具体的になります。
まとめ
| (ア) | 位置水頭→速度水頭に変換 |
| (イ) | ランナ部で圧力水頭を用いない |
| (ウ) | 代表例はペルトン水車 |
| (エ) | 水流が空気中を通過する構造が可能 |
| 答え | (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
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