今回は平成23年度 電力科目 A問題1を解説します。水路式水力発電所の有効電力出力が突然低下し、出力低下後に安定した状態の各観測値から、原因が発生した箇所を推定する問題です。
計算ではなく状態からの原因切り分けを問う良問です。カギは上部水槽の水位が上昇したこと。入ってくる水は変わらないのに水が減らずに溜まったのだから、詰まっているのは上部水槽より下流です。
平成23年度 電力科目 A問題1:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題1
電験3種 電力科目 【水力】 平成23年度 A問題1
図のような水路式水力発電所において、有効電力出力が定格状態から突然低下した。出力低下の原因箇所を見定めるために、出力低下後に安定した当該発電所の状態を確認すると、出力低下前と比較して、以下のような状態となっていた。
・水車上流側の上部水槽で水位が上昇した。
・水車流量が低下した。
・水車発電機の回転数は定格回転数である。
・発電機無効電力は零(0)のまま変化していない。
・発電機電圧はほとんど変化していない。
・励磁電圧が低下した。
・保護リレーは動作していない。出力低下の原因が発生した箇所の想定として、次の(1)〜(5)のうちから最も適切なものを一つ選べ。
水位観測地点(上部水槽)より上流側水路
水車を含む水位観測地点(上部水槽)より下流側水路
電圧調整装置
励磁装置
発電機



症状から場所を絞る
7つの症状が並んでいます——1つずつ「何が正常で何が異常か」を判定します。
| 症状 | 読み取れること |
| ★上部水槽の水位が上昇 | ★水は来ている。使う量が減った |
| ★水車流量が低下 | ★水車へ流れる水が減った |
| 回転数は定格 | 系統に並列しているので当然 |
| 無効電力は零のまま | ★励磁系は正常に働いている |
| 発電機電圧はほぼ変化なし | ★電圧調整は正常 |
| 励磁電圧が低下 | ★有効電力が減ったことへの正常な応答 |
| 保護リレー不動作 | 電気側に事故はない |
電気側はすべて正常——電圧も無効電力も保たれています。だから発電機・励磁装置・電圧調整装置は原因ではありません。
上部水槽の水位上昇が決め手
水位が上がったということは、入ってくる水より出ていく水が少ない——ここが判断の分かれ目です。
| 原因の場所 | 上部水槽の水位 | 判定 |
| 上流側水路 | ★下がる(水が来なくなる) | ★症状と合わない |
| ★下流側(水圧管・水車) | ★上がる(水がはけない) | ★症状と一致 |
上流で詰まれば、水槽へ入る水が減って水位は下がる——本問は逆に上がっているのですから、上流ではありません。
下流で詰まれば、水槽から出る水が減って水位は上がる——これが観測された状況です。
洗面台の排水口が詰まると水が溜まる——それと同じ理屈だと考えれば分かりやすいでしょう。
励磁電圧の低下は結果であって原因ではない
「励磁電圧が低下した」という症状を、原因と取り違えないこと——ここが本問の仕掛けです。
| 起きたこと | |
| ① | 水が減って有効電力が下がった |
| ★② | ★電機子電流が減り、電機子反作用が弱まる |
| ★③ | ★AVR が電圧を保つため励磁を絞る |
有効電力が減れば、必要な励磁も減ります——AVR が自動的に調整した結果です。
もし励磁装置が故障していたら、電圧か無効電力が変化するはず——どちらも変わっていないのですから、正常に働いています。
⚠️ よくある間違い
「励磁電圧が低下」を見て(4)励磁装置を選ぶ——最も引っかかりやすい誤答です。
励磁装置が原因なら、発電機電圧が変動するはず——「ほとんど変化していない」と明記されています。症状どうしを突き合わせれば否定できます。
(1)上流側を選ぶ——水位が「上昇」したことを見落としています。上流が原因なら水位は下がるのです。
(3)電圧調整装置や(5)発電機を選ぶ——いずれも電気側。水車流量が低下している時点で、水の側に原因があると読めます。
⏱️ 本番での進め方
①★水位が上昇=下流が詰まった。上流なら下がる。
②電圧・無効電力が正常なら電気側は無実。
③★励磁電圧の低下は出力低下の結果(AVR の応答)。
④症状どうしを突き合わせて矛盾を探す。
💡 覚え方
「詰まった手前に水が溜まる」——水位が上がったなら、原因はその下流です。励磁電圧の低下は原因ではなく結果——ここを取り違えないこと。
AVR と調速機の役割分担は令和4年度上期 A問題1(水力:吸出し管は反動水車用)にあります。
水車流量が低下する原因
下流側で何が起きると流量が減るのか——考えられる事象を挙げてみましょう。
| 場所 | 起こりうること |
| ★水圧管 | ★異物の詰まり・弁の異常 |
| ★ガイドベーン | ★開度が制限された・固着した |
| ★ランナ | ★流木や土砂の噛み込み |
| 吸出し管 | 閉塞して水がはけない |
いずれも「水の通り道が狭くなった」という点で共通——結果として上部水槽に水が溜まります。
問題が「水車を含む」下流側と書いているのは、水車そのものの異常も含めて絞り込ませたいからでしょう。
上流が原因だったらどうなるか
| 症状 | 上流が原因 | 下流が原因(本問) |
| ★上部水槽の水位 | ★低下 | ★上昇 |
| 水車流量 | 低下 | 低下 |
| 有効電力 | 低下 | 低下 |
流量も出力も、上流下流どちらでも下がります——区別できるのは水位だけ。だからこの1つが決め手になるのです。
有効電力と無効電力の担当
本問の症状を読むには、この分担が分かっている必要があります。
| 量 | 決めるもの | 制御装置 |
| ★有効電力 P | ★水車への流量(原動機の入力) | ★調速機 |
| ★無効電力 Q | ★界磁電流(励磁) | ★AVR |
水が減れば有効電力が減る——無効電力とは無関係です。本問で無効電力が零のまま変わらないのは、この分担どおり。
もし励磁系に異常があれば、無効電力か電圧が動くはず——どちらも動いていないのですから、励磁系は正常だと判断できます。
なぜ励磁電圧は下がったのか
| 段階 | 起きたこと |
| ① | 有効電力が減り、電機子電流が減る |
| ★② | ★電機子反作用が弱まり、端子電圧が上がろうとする |
| ★③ | ★AVR が励磁を絞って電圧を元に戻す |
電機子電流が流れると、その磁束が主磁束に影響します——これが電機子反作用です。
電流が減れば反作用も減る——同じ励磁なら電圧が上がってしまうので、AVR が励磁を下げて調整することになります。
つまり励磁電圧の低下は、AVR が正しく働いた証拠——故障の兆候ではありません。
この問題の型を知っておく
複数の症状から原因箇所を切り分ける——電験3種では珍しい出題形式です。
| 解き方の段階 | やること |
| ① | ★「正常」を示す症状を先に消す |
| ② | ★「異常」を示す症状だけを残す |
| ③ | ★異常の向き(上昇か低下か)で場所を絞る |
本問なら、回転数・無効電力・電圧・保護リレーの4つが「正常」——電気側を丸ごと除外できます。
残るのは水位上昇と流量低下——この2つだけで、上流か下流かを決めます。
症状が多くても、判断に使えるのは1つか2つ——残りは「除外するための情報」だと考えると整理しやすいでしょう。
実務でも同じ考え方をする
発電所で異常が起きたとき、まず切り分けるのは電気側か機械側か——本問はその手順をそのまま問題にしたものです。
電圧・電流・無効電力が正常なら電気側は無実——水や蒸気の側を疑う。実際の運転員が日々やっている判断だと言えます。
そして水位計や流量計が、どこで詰まったかを教えてくれる——計器の値の「向き」に意味があるのです。
上がったのか下がったのか——本問はその一点で答えが決まります。
まとめ
| 上部水槽の水位上昇 | 入る量>出る量→下流側で流れが妨げられた |
| 水車流量の低下 | 下流側閉塞の裏付け(上流原因なら水位は低下) |
| 回転数・電圧・無効電力 | いずれも正常→電気設備に異常なし |
| 励磁電圧の低下 | 有効電力低下に伴うAVRの結果(原因ではない) |
| 答え | (2)水車を含む上部水槽より下流側水路 |
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