電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「励磁方式による機器分類」は4機器の構造の本質を突く良問テーマです。本記事では、平成22年度 A問題6を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
分類軸は「交流励磁(巻線兼用)=変圧器・誘導機」と「直流励磁(電機子と界磁を分離)=直流機・同期機」。仕上げは記述cの「磁極表面のかご形導体(制動巻線)で自己始動」——同期機の始動法の知識で(イ)(エ)が確定します。
平成22年度 機械科目 A問題6:問題文と選択肢
「磁束を交流で作るか直流で作るか」の一軸で4機器を二分します。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題6
電験3種 機械科目 【誘導機】 平成22年度 A問題6(要約)
a. 交流で励磁する(ア)と(イ)は、負荷電流を流す巻線が磁束を発生する巻線を兼用するなどの共通点があるので、基本的に同じ形の等価回路を用いて特性計算を行う。b. 直流で励磁する(ウ)と(エ)は、負荷電流を流す電機子巻線と、磁束を発生する界磁巻線を分けて設ける。c.(エ)を自己始動電動機として用いる場合、その磁極表面にかご形導体を設け、(イ)と同様の始動トルクを発生させる。
(1) 誘導機・変圧器・直流機・同期機 (2) 変圧器・誘導機・同期機・直流機 (3) 誘導機・変圧器・同期機・直流機 (4) 変圧器・誘導機・直流機・同期機 (5) 変圧器・同期機・直流機・誘導機
出題のポイント:励磁を交流で作るか、直流で作るか
4つの回転機・静止機を2組に分ける軸が、この問題のテーマです。「磁束をどうやって作るか」——これだけで4機器がきれいに二分されます。
| 交流励磁の組 | 直流励磁の組 | |
| 機器 | 変圧器・誘導機 | 直流機・同期機 |
| 磁束を作る巻線 | 負荷電流の流れる巻線が兼ねる | 専用の界磁巻線 |
| 励磁電流 | 負荷電流と同じ巻線を流れる | 別回路(独立に調整できる) |
| 等価回路 | 同じ形(T形) | 界磁と電機子を分けて描く |
「兼用か分離か」——この一語で覚えられます。交流組は1つの巻線が2役をこなし、直流組は役割ごとに巻線が分かれているのです。

記述cが順序を確定させる
記述aとbは「どちらとどちらが同じ組か」までしか決めません。(ア)と(イ)、(ウ)と(エ)の順序を決めるのは記述cです。
「(エ)を自己始動電動機として用いる場合、その磁極表面にかご形導体を設け、(イ)と同様の始動トルクを発生させる」——「磁極表面」という言葉が出た時点で、(エ)は界磁磁極を持つ機械です。そして「かご形導体で始動トルク」なら、比較対象の(イ)は誘導機。
| 空欄 | 根拠 | 答え |
| (エ) | 磁極表面にかご形導体=制動巻線を持つ/自己始動が必要 | 同期機 |
| (イ) | かご形導体による始動トルクの本家 | 誘導機 |
| (ア) | 交流組の残り | 変圧器 |
| (ウ) | 直流組の残り | 直流機 |


同期機はなぜ自力で始動できないのか
記述cの前提「自己始動電動機として用いる場合」——裏を返せば、そのままでは始動できないということです。その理由を押さえておきましょう。
同期電動機は、回転磁界と界磁磁極が同じ速さで回って初めてトルクが出ます。停止した状態でスイッチを入れると、回転磁界だけが猛烈な速さで回り、界磁磁極は慣性で止まったまま——磁界が通り過ぎるたびに引きつけたり押しのけたりが交互に起きて、平均するとトルクはゼロになります。
| 誘導機 | 同期機 | |
| 停止時のトルク | 出る(滑り1で二次電流が流れる) | 平均するとゼロ |
| 理由 | 相対速度があれば必ず誘導が起きる | 磁極が交互に引かれ・押されて打ち消し合う |
| 対策 | 不要(そのまま始動できる) | 制動巻線で誘導機として始動し、同期速度近くで界磁を入れる |
だから同期機の磁極表面にかご形導体を埋め込むのです。始動の間は誘導電動機として回り、同期速度に近づいたところで界磁に直流を流して同期に引き入れる(引入れトルク)——これが自己始動法です。
制動巻線には2つの役目がある
「制動巻線」という名前は、本来の役目のほうから付いています。始動は、いわば副業です。
| 役目 | いつ働くか | 何をするか |
| ① 乱調(ハンチング)の抑制 | 同期運転中 | 負荷変動で回転子が振動すると、相対速度が生じて制動トルクが働き、振動を止める |
| ② 自己始動 | 始動時 | かご形回転子として働き、誘導電動機の原理でトルクを出す |
どちらも「同期速度からずれたときに働く」という点で共通しています。同期速度で回っているときは相対速度がゼロなので、制動巻線には何も起きません——ずれたときだけ出てくる、いわば保険のような巻線です。
「乱調」は同期機に固有の現象です。回転子が磁界に「ばね」でつながれているようなもので、負荷が急変すると、新しい釣り合い位置のまわりで振動します。制動巻線がその振動にブレーキをかける——だから「制動」巻線なのです。
⏱️ 本番での進め方
① 分類軸は「兼用か分離か」:交流励磁=巻線兼用(変圧器・誘導機)、直流励磁=分離(直流機・同期機)。
② 順序を決めるのは記述c。組合せ問題では「一意に決まる記述」を先に探す。
③ 「磁極表面にかご形導体」=制動巻線=同期機。
④ 制動巻線の二役:乱調抑制(本業)と自己始動(副業)。
なぜ変圧器と誘導機の等価回路は同じ形なのか
記述aの「基本的に同じ形の等価回路を用いて特性計算を行う」——なぜそう言えるのかを確認しておきましょう。
| 変圧器 | 誘導機 | 対応 | |
| 一次側 | 電源につながる巻線 | 固定子巻線 | 同じ役割 |
| 励磁回路 | 主磁束を作る(g0・b0) | 回転磁界を作る(g0・b0) | 同じ役割 |
| 二次側 | 負荷につながる巻線 | 回転子巻線 | 同じ役割 |
| 二次の負荷 | 外部の負荷抵抗(固定) | r2′/s(滑りで変わる) | ここだけが違う |
どちらも「交流励磁で、負荷電流の流れる巻線が磁束づくりを兼ねている」——だから電流が励磁分と負荷分に分かれるという構図が共通します。違うのは二次側の負荷が固定か可変かだけです。
誘導機の「可変」の部分が機械出力になる——変圧器では電気のまま外へ出ていくものが、誘導機では軸の回転として出ていくのです。「誘導機は二次側が回る変圧器」という言い方は、この一点を指しています。
直流機と同期機は、どこが同じでどこが違うのか
記述bで同じ組に分類された直流機と同期機ですが、構造は大きく違います。共通するのは「界磁巻線に直流を流して磁束を作る」という一点だけです。
| 直流機 | 同期機 | |
| 界磁の位置 | 固定子(静止側) | 回転子(回転側)が一般的 |
| 電機子の位置 | 回転子(回転側) | 固定子(静止側) |
| 電機子を流れる電流 | 交流(整流子で直流に変換) | 交流のまま |
| ブラシが扱う電流 | 電機子電流(大きい) | 励磁電流だけ(小さい) |
| 保守の負担 | 大きい(整流子とブラシの摩耗) | 小さい |
「回るものが逆」なのです。直流機は磁石が止まって巻線が回る、同期機は巻線が止まって磁石が回る——だから同期機のブラシは励磁電流という小さな電流しか扱わず、保守の負担が軽いのです。
大容量になるほどこの違いが効きます。数万kW の直流機は整流子が持たないので作れませんが、同期機なら発電所の主機として何十万kW でも作れます——同じ「直流励磁の組」でも、実用上の限界がまったく違うわけです。
💡 覚え方
「交流励磁=兼用(変・誘)、直流励磁=分離(直・同)、同期機の始動はかご形(制動巻線)」。同期機が自力で始動できないのは、停止時に磁極が交互に引かれ・押されて平均トルクがゼロになるから。制動巻線は同期速度からずれたときだけ働く——だから乱調抑制と自己始動の両方に効く。
⚠️ よくある間違い
(ウ)(エ)の順序を記述cで確認せずに決めてしまうのが典型です。記述bだけでは「直流機と同期機のどちらか」までしか分かりません。もう一つは制動巻線を直流機の部品と混同すること——直流機には磁極表面のかご形導体はありません(補償巻線とは別物です)。

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