電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「各種電動機の性質の正誤判定」は誘導機・同期機・直流機の横断的な理解を試す総合問題です。本記事では、令和4年度上期 A問題7を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
4つの記述はそれぞれ「比例推移」「V曲線」「N=E/KΦ」「Φ∝V/f」という1本の公式で判定できます。公式に増減の向きを当てはめるだけ——計算不要の得点源です。
令和4年度上期 機械科目 A問題7:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題7
電験3種 機械科目 【誘導機】 令和4年度上期 A問題7(要約)
電源電圧一定・トルク一定の負荷で回転している各種電動機について:(ア) 巻線形誘導電動機の二次抵抗を大きくすると滑りは増加する。(イ) 力率1.0で運転している同期電動機の界磁電流を小さくすると電機子電流の位相は進みとなる。(ウ) 他励直流電動機の界磁電流を大きくすると回転速度は上昇する。(エ) かご形誘導電動機の電源周波数を高くすると励磁電流は増加する。正誤の組合せとして正しいものを選べ。
(1) 誤・誤・正・正 (2) 正・正・誤・誤 (3) 誤・正・正・正 (4) 正・誤・誤・正 (5) 正・誤・誤・誤
出題のポイント:4つの記述に1本ずつ公式を当てる
4つの記述は、それぞれ違う機種の違う性質を聞いています。ばらばらに見えますが、判定に使う公式は各1本ずつ——公式に増減の向きを当てはめるだけで、計算なしに正誤が出ます。
| 記述 | 機種 | 使う公式 | 判定 |
| (ア) | 巻線形誘導機 | 比例推移 r2/s=一定 | 正しい |
| (イ) | 同期電動機 | V曲線(位相特性曲線) | 誤り |
| (ウ) | 他励直流電動機 | N=E/(KΦ) | 誤り |
| (エ) | かご形誘導機 | Φ∝V/f | 誤り |
「正・誤・誤・誤」——正しいのは(ア)だけです。(ア)が正しいと判定できた時点で(1)(3)が消え、(イ)が誤りで(2)も消えます。

4つの記述を判定する
(ア):二次抵抗を大きくすると滑りは増える ✓
トルク一定という条件が付いているので、比例推移がそのまま使えます。r2/s が一定に保たれるのですから、r2 を大きくすれば s も比例して増える——記述どおりで正しいです。
(イ):界磁電流を小さくすると進み? ✗
逆です。界磁電流を減らすと不足励磁になり、電機子電流は遅れ位相になります。進みになるのは界磁を増やした(過励磁)ときです。
(ウ):界磁電流を大きくすると回転速度は上昇? ✗
これも逆です。回転速度は磁束に反比例しますから、界磁を強めれば速度は下がります。
「界磁を弱くすると速くなる」というのは直感に反しますが、逆起電力とのバランスで考えると納得できます。磁束が減れば同じ速度では逆起電力が下がるので、電源電圧と釣り合うまで回転が上がるのです。
(エ):周波数を高くすると励磁電流は増える? ✗
電源電圧が一定という条件ですから、周波数を上げると V/f 比が下がります。磁束は Φ∝V/f ですから減少——磁束を作る励磁電流も減ります。
回路の側から見ても同じ結論です。励磁リアクタンスは 2πfL ですから、周波数が上がれば大きくなる——同じ電圧なら流れる電流は減ります。2つの見方が同じ答えを指しているので、確信を持って誤りと判定できます。


V曲線をもう少し詳しく
(イ)で使ったV曲線は、同期機の理解に欠かせない図です。なぜV字型になるのかを押さえておくと、記憶に残ります。
| 界磁電流 | 状態 | 電機子電流の位相 | 電機子電流の大きさ | 系統から見ると |
| 小さい | 不足励磁 | 遅れ | 大きい | リアクトルのように見える |
| ちょうど | 適正励磁 | 力率1.0(同相) | 最小 | 純抵抗のように見える |
| 大きい | 過励磁 | 進み | 大きい | コンデンサのように見える |
同じ出力を出しているのに、界磁電流によって電機子電流の大きさが変わる——これがV曲線の意味です。力率1.0 のときに電流が最小になるのは、無効分がゼロだからにほかなりません。
この性質は実用されています。同期電動機を過励磁で運転すれば、進み電流を系統に供給できる——工場の遅れ力率を打ち消す、いわば回転するコンデンサとして働きます。この用途に特化した機器が同期調相機です。
誘導電動機には、この芸当ができません。励磁電流を系統からもらう一方で、常に遅れ力率だからです。「同期機だけが力率を調整できる」という違いは、こうした場面で効いてきます。
4つの判定公式を手元に置く
本問で使った4本は、機種別の正誤問題における最重要の道具です。この4本があれば、大半の記述は判定できます。
| 公式 | 機種 | 何が言えるか |
| r2/s=一定(比例推移) | 巻線形誘導機 | 二次抵抗と滑りは同じ向きに動く |
| V曲線 | 同期機 | 不足励磁=遅れ、過励磁=進み |
| N=E/(KΦ) | 直流機 | 磁束を弱めると速くなる |
| Φ∝V/f | 誘導機・変圧器 | 電圧と周波数の比が磁束を決める |
記述を読む → どの公式の話か見極める → 増減の向きを当てはめる——この3手順を機械的に繰り返せば、正誤問題は作業になります。
自信のない記述が1つあっても、他が確実なら正解にたどり着けます。本問なら(ア)(イ)の2つで3肢が消え、残る(4)(5)は(エ)だけの違い——確実な記述から順に使うのが、正誤問題の基本戦術です。
⏱️ 本番での進め方
① 記述ごとに公式を1本当てる。計算は要らない。
② V曲線は「不足=遅れ、過剰=進み」。リアクトルとコンデンサで覚える。
③ 直流機は磁束が分母——界磁を強めると遅くなる。
④ Φ∝V/f——電圧一定で周波数を上げれば磁束は減る。
(ア)の「トルク一定」という条件がなかったら
問題文の冒頭に「電源電圧一定・トルク一定の負荷で回転している」とあります。この条件が(ア)の判定を支えています。
比例推移が「r2/s=一定」と言えるのは、トルクが同じ運転点どうしを比べているからです。もしトルクが変わってよいなら、二次抵抗を増やしたときに滑りがどう動くかは一意に決まりません。
| 条件 | 二次抵抗を増やすと | 根拠 |
| トルク一定(本問) | 滑りは比例して増える | r2/s=一定 |
| 滑り一定 | トルクが変わる | r2/s が変わる |
| 条件なし | 決まらない | 負荷特性によって運転点が動く |
実際の機械では、負荷特性との交点で運転点が決まります。定トルク負荷なら本問のとおりですが、二乗低減トルク負荷(ファン・ポンプ)なら話が変わる——減速するとトルクも減るので、滑りの増え方は小さくなります。
問題文が「トルク一定の負荷」と明示しているのは、この曖昧さを消すためです。条件文は「どの物理を使ってよいか」を指定している——読み飛ばすと、正しい公式を選べなくなります。
正誤の組合せ問題は「確実な順」に使う
4つの記述すべてに自信を持てるとは限りません。その場合でも、確実な記述から順に使えば正解に届く——選択肢の構成がそうなっているからです。
| 段階 | 判定する記述 | 消える選択肢 | 残る |
| ① | (ア)=正 | (1)(3) | (2)(4)(5) |
| ② | (イ)=誤 | (2) | (4)(5) |
| ③ | (エ)=誤 | (4) | (5)に確定 |
(ウ)を判定しなくても正解にたどり着けることが分かります。4つのうち3つが分かれば十分——「全部分からないと解けない」わけではないのです。
逆に、どの記述から手を付けるかで効率が変わります。いちばん自信のあるものから判定して、選択肢を絞っていく——絞れた段階で残りの記述を見れば、判定すべき箇所が1つか2つに減っています。
本問なら(ア)の比例推移が最も確実でしょう。誘導機の中心的な論点であり、繰り返し出題されているからです。そこを起点にすれば、迷いの少ない道筋が引けます。
💡 覚え方
「比例推移・V曲線・N=E/KΦ・Φ∝V/f」の4点セット。記述→公式→増減の向きの3手順で機械的に判定できる。同期機だけが過励磁で進み電流を出せる(同期調相機)——誘導機は常に遅れ。
⚠️ よくある間違い
V曲線の左右を逆に覚えているのが最も多い誤りです。界磁を減らす=不足励磁=遅れ——「足りないほうがリアクトル」と結びつけてください。もう一つは直流機で「界磁を強くすると速くなる」と直感で答えること——磁束は分母にいます。

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