電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「誘導機の回転速度」は全分野の土台となる最重要テーマです。本記事では、令和6年度上期 A問題4「V/f一定制御インバータ駆動の誘導電動機の回転速度」を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
「インバータ」「V/f一定」と専門用語が並びますが、実は使う式は \( N_s = 120f/p \) と \( N = N_s(1-s) \) の2本だけ。V/f比=4 は使わないダミー情報です。情報の選別が第一関門になります。
令和6年度上期 機械科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題4
電験3種 機械科目 【誘導機】 令和6年度上期 A問題4
V/f 一定制御インバータで駆動されている 6 極の誘導電動機がある。この電動機は、端子電圧を V [V]、周波数を f [Hz] として、V/f 比=4 一定制御インバータによって 66 Hz で駆動されている。このときの滑りは 5 % であった。この誘導電動機の回転速度 [min⁻¹] の値として、正しいのは次のうちどれか。
(1) 1 140 (2) 1 200 (3) 1 254 (4) 1 320 (5) 1 710
出題のポイント:使わない情報を見抜く
「V/f 比=4 一定制御インバータ」——専門用語が並んで身構えますが、この情報は答えに使いません。回転速度を決めるのは極数・周波数・滑りの3つだけです。
| 与えられた情報 | 速度計算に使うか | 役割 |
| 極数 6 | 使う | 同期速度の分母 |
| 周波数 66 Hz | 使う | 同期速度の分子 |
| 滑り 5 % | 使う | 同期速度からの遅れ |
| V/f 比=4 | 使わない | 磁束を一定に保つための制御条件 |
「与えられた情報は全部使うはず」という思い込みが、この問題の罠です。V/f 比は磁束を決める条件であって、速度とは無関係——情報の選別ができるかを試していると読めます。

2ステップで解く
66 Hz をそのまま入れる。商用周波数ではない点に注意。
暗算なら「1 320 の5 %=66 を引く」。


選択肢は途中結果でできている
| 選択肢 | その値の正体 | 判定 |
| (1) 1 140 | 120×57/6 など | 周波数の読み違い |
| (2) 1 200 | 120×60/6 | 60 Hz と思い込んだ場合の同期速度 |
| (3) 1 254 | 1 320×0.95 | 正解 |
| (4) 1 320 | 同期速度そのもの | 滑りを引き忘れた |
| (5) 1 710 | 1 800×0.95 | 4極と誤った場合 |
(4)は「途中で止まった」誤りです。同期速度を出したところで満足してしまうと、そのまま選択肢に用意されている——計算問題では「聞かれているのは何か」を最後に確認する癖が要ります。
(2)は「インバータなのに商用周波数を使ってしまった」誤りです。インバータは周波数を自由に作れる電源ですから、66 Hz という半端な値もあり得ます——「50 か60 のはず」という思い込みが命取りになります。
方向で絞ることもできます。電動機の回転速度は必ず同期速度より少し遅いのですから、答えは1 320 より少し小さい値のはず。(1)(2)は小さすぎ、(4)は同期速度そのもの、(5)は大きすぎ——この一点だけで(3)に決まります。
66 Hz という周波数が意味すること
商用電源は50 Hz か60 Hz のどちらかです。66 Hz という値は、インバータでなければ作れません——問題文が「インバータで駆動されている」と書いているのは、この数値を成立させるためでもあります。
定格が60 Hz の電動機を66 Hz で回すということは、定格より1割速く回しているということです。同期速度は1 200 から1 320 へ——インバータなら定格を超える速度も出せます。
| 周波数 | 同期速度(6極) | V/f 一定を保てるか | トルク |
| 30 Hz | 600 min−1 | 保てる(電圧を下げる) | 定格を出せる |
| 60 Hz(定格) | 1 200 min−1 | 保てる | 定格 |
| 66 Hz | 1 320 min−1 | 保てない(電圧の上限) | 下がる(定出力領域) |
定格周波数を超えると、電圧をこれ以上上げられません(電源電圧の上限があるからです)。すると V/f 比が下がって磁束が減る——弱め界磁と同じ状態になります。
磁束が減るのでトルクは下がりますが、速度が上がるので出力は保たれます。これが定出力領域——直流機の弱め界磁制御とまったく同じ構図です。本問の66 Hz は、ちょうどその入り口にあたる運転点だと言えます。
もっとも、本問はそこまで問うていません。V/f 比=4 という条件は「磁束が一定に保たれている」ことを示すだけのダミー——速度計算には最後まで登場しないのです。
★同型問題:平成19年度 A問題4(17年ぶりの完全再出題)
この問題は平成19年度 A問題4とまったく同じ問題です。数値も選択肢も一字一句そのまま——17年の間隔を置いた完全な再出題になります。
| 項目 | 平成19年度 A問題4 | 令和6年度上期 A問題4(本問) |
| 極数 | 6極 | 6極(同じ) |
| 周波数 | 66 Hz | 66 Hz(同じ) |
| 滑り | 5 % | 5 %(同じ) |
| ダミー条件 | V/f 比=4 | V/f 比=4(同じ) |
| 答え | 1 254 min−1 | 1 254 min−1(同じ) |
「66 Hz」という珍しい数値も、「V/f 比=4」というダミーも、そのまま引き継がれています。17年前の問題がそっくり出る——過去問演習の価値を、これ以上ないほど分かりやすく示す実例です。
基本的な計算問題ほど、長い間隔を置いて再登場します。Ns=120f/p と N=Ns(1−s) は誘導機のすべての土台ですから、出題者としても外せない論点なのでしょう。
⏱️ 本番での進め方
① 速度計算に使うのは p・f・s の3つだけ。V や V/f 比は使わない。
② インバータなら周波数は自由——50/60 Hz と思い込まない。
③ 答えは同期速度より少し小さい。方向だけで(3)に絞れる。
④ (4)は同期速度そのもの——途中で止まると用意された誤答に着地する。
1 254 min−1 という数字をどう読むか
答えの1 254 min−1 は、いかにも半端な数字です。しかし誘導電動機の回転速度は、たいていこういう値になります。
| きりのよい数字 | 実際の回転速度 | 差の正体 | |
| 商用60 Hz・6極 | 1 200 min−1(同期速度) | 1 140〜1 170 min−1 | 滑り2.5〜5 % |
| 本問(66 Hz・6極) | 1 320 min−1(同期速度) | 1 254 min−1 | 滑り5 % |
きりのよい数字は同期速度のほうで、実際の回転速度は必ずそこから滑りの分だけ引かれます。だから半端になる——逆に言えば、半端な数字を見たら「これは実回転速度だ」と分かるということです。
この読み方は検算に使えます。本問の1 254 を1 320 と比べれば、差は66。66/1 320=0.05 で、与えられた滑り5 % と一致します。計算のあとに逆算して条件と合うか確かめる——数十秒でできる確実な検算です。
ちなみに、インバータ駆動では回転速度が連続的に変わります。周波数を細かく変えられるので、1 254 でも1 300 でも自由——銘板に書かれた定格回転速度は、あくまで商用周波数で回したときの値にすぎません。「銘板の速度=その機械の速度」ではないというのが、インバータ時代の感覚です。
💡 覚え方
「イチニーマル・エフ・ワル・ピー」Ns=120f/p、N=Ns(1−s)。速度問題で V/f 比が出てきたらダミーを疑う。インバータ駆動なら66 Hz のような半端な周波数もあり得る。定格周波数を超えると電圧が上げられず、磁束が減って定出力領域に入る。
⚠️ よくある間違い
同期速度1 320 をそのまま答える(選択肢(4))のが最頻の誤りです。問われているのは回転速度——滑りの分を引く一手が残っています。もう一つは周波数に50 や60 を使ってしまうこと。インバータ駆動なのですから、与えられた66 Hz をそのまま入れます。

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