今回は平成21年度 機械科目 A問題11を解説します。ハロゲン電球の原理である「ハロゲンサイクル」と、赤外反射膜による高効率化に関する空所補充問題です。
石英ガラス管内のハロゲンガスが、蒸発したタングステンと化合してハロゲン化物となり、フィラメント近傍の高温部で解離してタングステンを析出させる循環(ハロゲンサイクル)により、管壁の黒化を防止します。赤外反射膜は赤外放射を反射してフィラメントに戻し、発光効率を高めます。
平成21年度 機械科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題11
電験3種 機械科目 【照明】 平成21年度 A問題11
ハロゲン電球では,(ア)バルブ内に不活性ガスとともに微量のハロゲンガスを封入してある.点灯中に高温のフィラメントから蒸発したタングステンは,対流によって管壁付近に移動するが,管壁付近の低温部でハロゲン元素と化合してハロゲン化物となる.管壁温度をある値以上に保っておくと,このハロゲン化物は管壁に付着することなく,対流などによってフィラメント近傍の高温部に戻り,そこでハロゲンと解離してタングステンはフィラメント表面に析出する.このように,蒸発したタングステンを低温部の管壁付近に析出することなく高温部のフィラメントへ移す循環反応を,(イ)サイクルと呼んでいる.このような化学反応を利用して管壁の(ウ)を防止し,電球の寿命や光束維持率を改善している.
また,バルブ外表面に可視放射を透過し,(エ)を(オ)するような膜(多層干渉膜)を設け,これによって電球から放出される(エ)を低減し,小形化,高効率化を図ったハロゲン電球は,店舗や博物館などのスポット照明用や自動車前照灯用などに広く利用されている.
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる語句として,正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか.
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 石英ガラス タングステン 白濁 紫外放射 反射 (2) 鉛ガラス ハロゲン 黒化 紫外放射 吸収 (3) 石英ガラス ハロゲン 黒化 赤外放射 反射 (4) 鉛ガラス タングステン 黒化 赤外放射 吸収 (5) 石英ガラス ハロゲン 白濁 赤外放射 反射
ハロゲンサイクルの仕組み
白熱電球の弱点は、フィラメントのタングステンが蒸発すること——それを解決したのがハロゲン電球です。
| 段階 | 場所 | 起きること |
| ①蒸発 | フィラメント(約3,000 K) | タングステンが蒸発 |
| ②化合 | ★管壁付近(低温部) | ★ハロゲンと結び付いてハロゲン化物に |
| ③移動 | 管内 | 対流で高温部へ戻る |
| ④解離 | ★フィラメント近傍(高温部) | ★分解してタングステンが再析出 |
ふつうの白熱電球では、蒸発したタングステンが管壁に付着します——ガラスが黒くなり、光が遮られる。これが(ウ)の黒化です。
ハロゲンガスがあると、タングステンは管壁に付く前に捕まえられます——そして高温部へ運ばれて元に戻る。だから黒化しないのです。
この循環が成り立つには、管壁の温度を高く保つ必要があります——だから管を小さくして温度を上げる。ハロゲン電球が小形なのは、この理由です。
(ア) なぜ石英ガラスなのか
| 材質 | 耐熱温度の目安 | 用途 |
| 鉛ガラス | 低い | 装飾用など |
| ソーダガラス | 中程度 | ふつうの電球 |
| ★石英ガラス | ★1,000 ℃以上 | ★ハロゲン電球 |
管壁を高温に保つのですから、耐熱性の高い石英ガラスでなければ持ちません。(ア)が鉛ガラスでは成り立たないのです。



(エ)(オ) 赤外反射膜
白熱電球のエネルギーの大半は赤外線——その赤外線を捨てずに再利用するのが赤外反射膜です。
| 波長 | 膜の働き | 結果 |
| 可視光 | 透過させる | 照明として使える |
| ★赤外放射 | ★反射する | ★フィラメントへ戻して加熱に使う |
赤外線をフィラメントへ戻せば、その分だけ電力を減らせます——同じ温度を保つのに必要な電力が減るということ。だから効率が上がるのです。
「多層干渉膜」は、薄い膜を何層も重ねて、特定の波長だけを反射させるもの——シャボン玉が色づくのと同じ光の干渉を利用しています。
紫外放射ではありません——紫外線を反射しても効率は上がらないからです。量が多いのは赤外線のほう——そこを減らすのが目的です。


⚠️ よくある間違い
(ウ)を「白濁」としてしまう——タングステンが付着すると黒くなるので黒化です。
金属が付くのですから白くはなりません——物質から考えれば迷いません。
(エ)を「紫外放射」としてしまうのも典型的な誤り——白熱電球が多く出しているのは赤外線です。「小形化、高効率化を図った」という問題文が手がかり——熱を戻すから効率が上がるのです。
(イ)を「タングステン」としない——循環させるのはタングステンですが、名前はハロゲンサイクル。問題文が「ハロゲンと解離して」と書いているので、ハロゲンが主役だと分かります。
⏱️ 本番での進め方
①(ア) 高温に耐える石英ガラス。鉛ガラスでは不可。
②(イ)(ウ) ハロゲンサイクルで黒化を防ぐ。
③(エ)(オ) 赤外放射を反射してフィラメントへ戻す。
④★白濁ではなく黒化、紫外ではなく赤外。
💡 覚え方
「金属が付くから黒くなる」——白濁ではありません。「白熱電球の無駄は赤外線」——だから赤外を戻して効率を上げるのです。
LED の発光原理は平成25年度 A問題11(照明:LEDの発光原理と疑似白色光)、光源の性能評価は平成23年度 A問題11(ランプ効率・演色性・色温度)にあります。


白熱電球系の光源を整理する
ハロゲン電球は白熱電球の一種——両者の違いを整理しておきましょう。
| 一般白熱電球 | ハロゲン電球 | |
| バルブ | ソーダガラス | ★石英ガラス(小形) |
| 封入ガス | 不活性ガス | ★不活性ガス+ハロゲン |
| フィラメント温度 | 約2,800 K | ★約3,000 K(高い) |
| 効率 | 10〜15 lm/W | 15〜25 lm/W |
| 寿命 | 約1,000 時間 | ★2,000〜4,000 時間 |
| 光束維持率 | 低下する | ★ほぼ一定 |
ハロゲンサイクルのおかげで、フィラメント温度を上げられます——蒸発しても戻ってくるからです。温度が高いほど効率が上がるので、白熱電球より高効率になります。
光束維持率がほぼ一定なのも大きな利点——黒化しないので、最後まで明るさが落ちません。寿命の定義(切れるまでと暗くなるまでの短いほう)でも有利です。
それでもLED に置き換わった
効率15〜25 lm/W に対し、LED は100〜200 lm/W——1桁違います。温度放射である以上、赤外線の無駄は避けられないのです。
ただし演色性はRa=100——色の見え方は今も最高水準です。美術館や店舗の一部では、なお使われているのはそのためでしょう。
光源の歴史をたどる
本問のハロゲン電球は、白熱電球からLED へ向かう途中の技術——流れの中で位置づけると覚えやすくなります。
| 時期 | 主役 | 効率の目安 |
| 1880年代〜 | 白熱電球 | 10〜15 lm/W |
| 1940年代〜 | 蛍光ランプ | 60〜100 lm/W |
| 1960年代〜 | ★ハロゲン電球 | 15〜25 lm/W |
| 1990年代〜 | 高輝度放電ランプ(HID) | 80〜150 lm/W |
| 2000年代〜 | ★LED | 100〜200 lm/W |
ハロゲン電球は蛍光ランプより後に登場したのに効率は低い——それでも使われたのは、演色性と小形化のためです。
点光源に近い形で強い光が出せる——スポット照明や自動車前照灯に向いていたのです。蛍光ランプでは、この用途は務まりません。
「効率がすべてではない」——本問が店舗や博物館、自動車前照灯を例に挙げているのは、用途に応じた選択があることを示すためでしょう。
まとめ
| (ア) | 石英ガラス |
| (イ) | ハロゲン |
| (ウ) | 黒化 |
| (エ) | 赤外放射 |
| (オ) | 反射 |
| 答え | (3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・LEDの発光原理と疑似白色光:【機械】平成25年度A問題11
・照明用光源の性能評価の正誤判定:【機械】平成23年度A問題11

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