電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「誘導機のエネルギー収支」はパワーフローを一つの方程式に落とし込む力を試す頻出テーマです。本記事では、令和6年度下期 A問題4「二次銅損を求める」問題を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
未知数が鉄損・一次銅損・二次銅損・出力と4つもあるように見えますが、条件を使えばすべて二次銅損 \( P_{c2} \) の倍数で表せます。「入力=損失+出力」のエネルギー保存則に代入すれば、方程式は1本で済みます。
令和6年度下期 機械科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題4
電験3種 機械科目 【誘導機】 令和6年度下期 A問題4
電源に接続された三相誘導電動機が駆動されている。電源の線間電圧 Vn は 400 V、電源から供給される線電流 Il は 25.8 A、力率は 0.8 である。この場合の滑り s が 4 %であり、鉄損 Pi 及び一次銅損 Pc1 の値は、共に、二次銅損 Pc2 の値の 1/2 である。この場合の二次銅損 Pc2 の値 [W] として最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、その他の損失は無視できるものとする。
(1) 318 (2) 344 (3) 550 (4) 571 (5) 596
出題のポイント:未知数を1つに寄せる
鉄損・一次銅損・二次銅損・機械出力と、未知数が4つあるように見えます。しかし条件を使えば、すべてを二次銅損 Pc2 の倍数で書ける——そうすれば方程式は1本で済みます。
| 量 | Pc2 で表すと | 根拠 |
| 鉄損 Pi | 0.5 Pc2 | 問題文の条件 |
| 一次銅損 Pc1 | 0.5 Pc2 | 問題文の条件 |
| 二次銅損 Pc2 | 1 Pc2 | — |
| 機械出力 Po | 24 Pc2 | 黄金比 (1−s)/s=0.96/0.04 |
| 一次入力 P1 | 26 Pc2 | すべての合計 |
一次入力は電圧・電流・力率から計算できるので、26 Pc2=14 300 W という1本の方程式が立ちます。あとは割るだけです。

4ステップで解く
三相電力の式。√3 を忘れない。
3つとも Pc2 で表せる。
黄金比。滑り4 % なら24倍。
入力=損失+出力。


「〜は…の1/2」という条件は変数統一の合図
問題文の「鉄損及び一次銅損の値は、共に、二次銅損の値の1/2である」——この不自然な条件には目的があります。未知数を1つに減らすためです。
実機では、鉄損と一次銅損が二次銅損のちょうど半分になる保証はありません。それでもこう指定するのは、「すべてを1つの変数で表しなさい」という出題者からの指示だからです。
| 問題文の表現 | 読み替え | 解法への影響 |
| 「〜は…の1/2である」 | 変数を1つに統一せよ | 方程式が1本で済む |
| 「その他の損失は無視できる」 | 機械損・漂遊負荷損を0 とせよ | 足し合わせる項が確定する |
| 「滑り s が4 %」 | 黄金比の倍率が24 に決まる | 出力が Pc2 で書ける |
3つの条件が、それぞれ違う役目を果たしています。どれか一つでも欠けると解けない——「条件文を全部使ったか」を確認するのが、この型の検算になります。
逆に言えば、条件文を読んだ段階で「何をさせたいのか」が読めるようになると、解法を探す時間が短くなります。「1/2」と書いてあれば変数統一、「無視できる」と書いてあれば項を消す——問題文は解法の設計図でもあるのです。
この電動機の効率を確かめる
答えが出たら、効率を計算して妥当性を確かめましょう。誘導電動機としてあり得ない値になっていないかを見るのが、いちばん確実な検算です。
約92 %——13 kW クラスとして妥当。
| 損失 | 値 | 入力に占める割合 |
| 鉄損 | 275 W | 1.9 % |
| 一次銅損 | 275 W | 1.9 % |
| 二次銅損 | 550 W | 3.8 % |
| 合計 | 1 100 W | 7.7 % |
二次銅損が入力の3.8 %——滑り4 % とほぼ一致しています。これは偶然ではありません。二次銅損は二次入力の s 倍であり、二次入力は一次入力から一次側損失を引いたもの(本問では14 300−550=13 750 W)ですから、550/13 750=0.04 でぴったり滑りに一致します。
「二次銅損 ÷ 二次入力 = 滑り」という関係は、検算に非常に便利です。答えが出たら、この比が滑りと一致するかを確かめる——一致しなければどこかで間違えています。
⏱️ 本番での進め方
① 未知数が多く見えたら、条件式で1つに寄せる。
② 黄金比は (1−s)/s=24(s=0.04)。滑りが小さいほど倍率は大きい。
③ 三相電力は P=√3 VI cosθ。√3 を忘れない。
④ 検算は「二次銅損÷二次入力=滑り」で確かめる。
与えられた数値から機械の規模を読む
400 V・25.8 A・力率0.8——この3つから、どんな機械なのかが見えてきます。答えの妥当性を確かめる手がかりにもなります。
定格11 kW か15 kW クラスの機械と考えられる。
13.2 kW の出力ですから、定格15 kW の機械を9割ほどの負荷で回しているあたりでしょう。工場の中型ポンプや送風機に使われる、ごく標準的なサイズです。
力率0.8 という値も、誘導電動機として妥当です。空隙があるために励磁電流が大きく、遅れ力率になる——この容量帯なら0.8〜0.87 が普通で、力率改善コンデンサの対象になる典型的な機械だと言えます。
効率92 % も、この容量として自然です。もし計算結果が効率70 % や105 % になったら、どこかで間違えている——「答えが出たら機械の姿を思い浮かべる」のが、最も実用的な検算になります。
滑り4 % が黄金比の倍率をどう決めるか
本問で黄金比の倍率が24 になったのは、滑りが4 % だったからです。滑りが変われば倍率も大きく変わるので、感覚を持っておきましょう。
| 滑り s | (1−s)/s | P1=? × Pc2(本問の条件で) | 二次効率 |
| 2 % | 49 | 51 Pc2 | 98 % |
| 3 % | 32.3 | 34.3 Pc2 | 97 % |
| 4 %(本問) | 24 | 26 Pc2 | 96 % |
| 5 % | 19 | 21 Pc2 | 95 % |
滑りが1 ポイント変わるだけで、倍率は大きく動きます。2 % と4 % では倍率が倍以上違う——滑りの読み取りを間違えると、答えが桁違いになるということです。
(1−s)/s は 1/s−1 で計算すると速く、しかも間違えにくくなります。s=0.04 なら 25−1=24——割り算を1回で済ませられるからです。
逆に、二次銅損が分かっていて滑りを求めたい場合は s=Pc2/P2。本問なら550/13 750=0.04 で、与えられた滑りと一致することを確認できます——この往復ができれば、黄金比は自分のものになったと言ってよいでしょう。
💡 覚え方
「未知数が多く見えたら、求めたい変数に寄せる」——「〜は…の1/2」は変数統一の合図。P1=損失+出力=2Pc2+24Pc2=26Pc2。黄金比が使えるのは二次側だけで、鉄損・一次銅損は足し算。
⚠️ よくある間違い
鉄損と一次銅損を黄金比に混ぜてしまうのが典型です。黄金比は二次入力・機械出力・二次銅損の3兄弟だけの関係——一次側の損失は単純に足すものです。もう一つは三相電力の√3 を忘れること。その場合8 256 W となり、答えが318 W(選択肢(1))に着地します。

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