直流機49【電験3種 機械】交流整流子モータ(ユニバーサルモータ)とは?令和2年 A問題6 完全解説

電験3種 機械科目 直流機 令和2年度 A問題6 交流でも直流でも回る!ユニバーサルモータ

今回は令和2年度 機械科目 A問題6を解説します。テーマは交流整流子モータ(ユニバーサルモータ)。電気ドリルや掃除機のモータとしておなじみの機種です。

「直巻構造だから交流でも回る」――この一点を理解すれば、残りの空欄は用途からの連想で埋まります。

目次

問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和2年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題6

 次の文章は,交流整流子モータの特徴に関する記述である。

 交流整流子モータは,直流直巻電動機に類似した構造となっている。直流直巻電動機では,加える直流電圧の極性を逆にしても,磁束と電機子電流の向きが共に(ア)ので,トルクの向きは変わらない。交流整流子モータは,この原理に基づき回転力を得ている。

 交流整流子モータは,一般に始動トルクが(イ),回転速度が(ウ)なので,電気ドリル,電気掃除機,小型ミキサなどのモータとして用いられている。なお,小容量のものでは,交流と直流の両方に使用できるものもあり,(エ)と呼ばれる。

 上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)逆になる大きく低速ユニバーサルモータ
(2)変わらない小さく低速ユニバーサルモータ
(3)変わらない大きく高速ブラシレスDCモータ
(4)逆になる小さく低速ブラシレスDCモータ
(5)逆になる大きく高速ユニバーサルモータ

出題のポイント:マイナスが2回でプラスに戻る

交流整流子モータ(ユニバーサルモータ)の原理は、掛け算の符号の話に尽きます。トルクは T=kTφIa という磁束と電流の積ですから、両方が同時に反転すれば積の符号は変わりません

そして直巻構造では界磁と電機子に同じ電流が流れるので、電源の極性が変わるとφ と Ia は必ず一緒に反転します。片方だけが反転することはあり得ません。だから交流をそのままつないでも、トルクの向きは一定に保たれるのです。

交流整流子モータで電流と磁束が同時に反転しトルクが同方向になる出題のポイント
極性反転時の電流・磁束・トルクの符号を確認します。

式で確かめる:符号を追ってみる

トルクの符号

\( T=k_T\,\phi\,I_a \)

極性反転後:\( T=k_T\,(-\phi)\,(-I_a)=k_T\,\phi\,I_a \)

直巻構造なので φ も Ia も同じ電流が作ります。負×負=正で、トルクは同じ向きのまま。

(ア)は「逆になる」です。問題文は「磁束と電機子電流の向きが共に(ア)ので、トルクの向きは変わらない」と書いています。「変わらないので変わらない」では説明になっていません——両方が逆になるからこそ、積は変わらないという論理を読み取ってください。

電源の半サイクル電機子電流 Ia界磁磁束 φトルク T=kφIa
正の半サイクル+(正転)
負の半サイクル+(正転のまま)

もし分巻や他励だったらこうはいきません。界磁と電機子が別の回路だと、インダクタンスの違いから電流の位相がずれ、φ と Ia が同時に反転しなくなります。ずれた時間帯では積が負になり、逆向きのトルクが出て平均トルクが落ちてしまうのです。交流で使えるのは直巻構造だけ——これが原理の核心です。

交流の正負両半周期で電流と磁束が同時に反転し正方向トルクが生じる原理
電流と磁束が同時に反転するため、両半周期でトルクは同じ向きです。

(イ)(ウ):直巻の特性がそのまま出る

交流整流子モータは直巻電動機とほぼ同じ構造なので、特性も直巻そのものです。T∝I2 なので始動トルクが大きく((イ)=大きく)、軽負荷では磁束が減って高速になります((ウ)=高速)。

この2つの性質が、電気ドリル・電気掃除機・小型ミキサという用途にそのまま結びついています。ドリルは食い込んだときに大きなトルクが要り、掃除機やミキサはとにかく高速で回したい——直巻特性の得意分野です。

用途求められる性質直巻特性のどこが効くか
電気ドリル食い込み時の大トルクT∝I2:負荷が重いほど急激にトルクが増す
電気掃除機毎分1〜3万回転の高速軽負荷で高速:磁束が小さくなるほど速く回る
小型ミキサ小型軽量で高出力高速=小型でも大出力(出力∝トルク×速度)

同じ出力なら、速く回るほどモータは小さくできます(P=ωT なので、ω が大きければ T は小さくてよい)。交流整流子モータが手持ち工具や家電に使われ続けてきたのは、小型・軽量・大出力を同時に満たせるからです。

(エ):ユニバーサルモータという呼び名

交流でも直流でも使えることから、ユニバーサル(universal=万能)モータと呼ばれます。(エ)の選択肢にあるブラシレスDCモータとは別物です——名前のとおりブラシがないモータで、位置センサとインバータで電子的に整流します。

ユニバーサルモータブラシレスDCモータ
整流の方法整流子とブラシ(機械的)半導体スイッチ(電子的)
電源交流・直流どちらでも直流+インバータ回路が必要
寿命・保守ブラシが摩耗する摩耗部品がなく長寿命
用途例電気ドリル・掃除機・ミキサPCの冷却ファン・ドローン・EV補機
答え(ア)逆になる/(イ)大きく/(ウ)高速/(エ)ユニバーサルモータ ⇒ (5)
逆になる、大きく、高速、ユニバーサルモータの組合せから正解5を導く問題解説
空欄は逆になる・大きく・高速・ユニバーサルモータとなり、正解は(5)です。

選択肢を絞り込む手順

段階根拠消える選択肢
(ア)=逆になる「共に(ア)ので、トルクの向きは変わらない」=両方逆だから積は不変(2)(3)が消える
(イ)=大きく直巻は T∝I2 で始動トルクが大きい(2)(4)が消える
(ウ)=高速掃除機のモータは毎分1〜3万回転。直巻は軽負荷で高速(1)(2)(4)が消える
(エ)=ユニバーサルモータ交直両用だから「万能」。ブラシレスDCは直流+インバータ専用(3)(4)が消える

(ウ)の「高速」だけで(5)に確定します。掃除機のモータの甲高い音を思い出せば、低速でないことは体感で分かるはずです。知識問題では、身の回りの製品を思い浮かべるのが最も速い検算になります。

交流で使うとき何が問題になるか

原理的には交流で回りますが、直流のときほど性能は出ません。理由は3つあります。

①鉄損が発生する:直流機の界磁鉄心は磁束が一定なので鉄損がありませんが、交流では磁束が毎サイクル反転するためヒステリシス損と渦電流損が出ます。そこで交流整流子モータは界磁鉄心も成層(けい素鋼板を積層)にしてあります。

②リアクタンス降下が出る:巻線のインダクタンスにより電圧が食われ、力率が悪化します。同じ電圧でも直流ほど電流が流せません。

③整流が悪化する:整流子で短絡されるコイルに変圧器起電力が誘導され、火花(ブラシスパーク)が出やすくなります。ブラシの摩耗が早いのはこのためで、掃除機のモータの寿命が意外と短い実感の裏付けでもあります。

⏱️ 本番での進め方
「共に(ア)ので変わらない」という文型を見たら、「両方逆になるから積は不変」と読む。
② 交流整流子モータの特性は直巻とまったく同じ:大始動トルク・高速・無負荷は危険。
用途から逆算する:掃除機=高速、ドリル=大トルク。身近な製品が最速の検算。
ユニバーサル=交直両用ブラシレスDC=ブラシがない別物。名前で区別する。

💡 覚え方
直巻構造だから交流で回る——φ と Ia が同時に反転して負×負=正。特性は直巻そのもので始動トルク大・高速交直両用だからユニバーサルモータ。交流で使うと鉄損・力率低下・整流悪化という代償があるので、界磁鉄心も成層にしてある。

⚠️ よくある間違い
(ア)を「変わらない」としてしまうのが最頻(→(2)(3))。「トルクが変わらない」という結論に引きずられますが、変わらない理由は「両方が変わるから」です。もう一つは(エ)をブラシレスDCモータとする誤り。整流子モータと名前に書いてある=ブラシがあるので、ブラシレスとは正反対です。

まとめ

原理極性反転で \(\phi\) と \(I_a\) が同時反転 → トルク同方向
特性始動トルク大・高速(直巻特性)
用途電気ドリル・掃除機・小型ミキサ
交直両用ユニバーサルモータと呼ばれる
答え(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・直巻電動機の無負荷(暴走):【機械】平成19年度A問題1
・直巻のトルク特性:【機械】令和3年度A問題1

📚 次に解くべき関連問題
【機械】平成27年度A問題6(直流機50)
【機械】平成19年度A問題1(直流機48)
【機械】令和2年度A問題7(直流機47)
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