電験3種の機械科目で問われるいろいろな直流機の総合論説。本記事では、平成30年度 A問題2を解説します。分巻・直巻発電機、分巻・直巻電動機、ブラシレスDCモータまで幅広く問われる総合問題です。
カギは直巻発電機の電圧安定性:未飽和では \( E\propto I \) で不安定、飽和すれば E≒一定で安定です。
平成30年度 機械科目 A問題2:問題文と選択肢
「飽和は悪いこと」という思い込みを外すところから始めます。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成30年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題2
電験3種 機械科目 【直流機】 平成30年度 A問題2
いろいろな直流機に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 電機子と界磁巻線が並列に接続された分巻発電機は、回転を始めた電機子巻線と磁極の残留磁束によって、まず低い電圧で発電が開始される。その結果、界磁巻線に電流が流れ始め、磁極の磁束が強まれば、発電する電圧が上昇し、必要な励磁が確立する。
(2) 電機子と界磁巻線が直列に接続された直巻発電機は、出力電流が大きく界磁磁極が磁気飽和する場合よりも、出力電流が小さく界磁磁極が磁気飽和しない場合のほうが、出力電圧が安定する。
(3) 電源電圧一定の条件下で運転される分巻電動機は、負荷が変動した場合でも、ほぼ一定の回転速度を保つので、定速度電動機とよばれる。
(4) 直巻電動機は、始動時の大きな電機子電流が大きな界磁電流となる。直流電動機のトルクは界磁磁束と電機子電流から発生するので、大きな始動トルクが必要な用途に利用されてきた。
(5) ブラシと整流子の機械的接触による整流の働きを半導体スイッチで電子的に行うブラシレスDCモータでは、同期機と同様に電機子の作る回転磁界に同期して永久磁石の界磁が回転する。制御によって、外部から見た電圧-電流特性を他励直流電動機とほぼ同様にすることができる。
出題のポイント:「飽和=悪」という思い込みを突く問題
この問題の誤りは(2)の直巻発電機で、「飽和しないほうが電圧が安定する」という記述が逆になっています。飽和は一般に避けたい現象なので、「飽和しないほうが良い」と言われると納得してしまう——そこを突いた問題です。
直巻発電機では、界磁電流=出力電流です。負荷電流が変われば磁束も変わってしまうので、そのままでは電圧が非常に不安定になります。
| 出力電流 | 磁束 φ | 起電力 E | 電圧の安定性 |
| 小さい(未飽和) | 電流に比例して変わる | 電流に比例して変わる | 不安定 |
| 大きい(飽和) | ほぼ一定 | ほぼ一定 | 安定 |
「飽和=磁束が増えなくなる=電流が変わっても電圧が変わらない」——電圧を一定に保ちたい発電機にとっては、むしろ好都合なのです。飽和が悪いのは「もっと磁束が欲しいのに増やせない」場面であって、「変わってほしくない」場面では味方になります。

残る4つの記述を確認する
(1) 分巻発電機は残留磁束から電圧を確立する → 正しい
自励発電機の電圧確立の説明そのものです。残留磁束 → 小さな起電力 → 界磁電流 → 磁束が増える → 起電力が増えるという正のフィードバックで電圧が育ちます。
この仕組みが働くには、界磁の起磁力が残留磁束を強める向きでなければなりません。逆向きにつなぐと電圧が立たず、接続を逆にするか残留磁気を付け直す(フラッシング)必要があります。
(3) 分巻電動機は定速度電動機 → 正しい
N=(V−IaRa)/(Kφ) で φ が一定、Ra が小さいので、負荷が変わっても速度はわずかしか変わりません。
(4) 直巻電動機は始動時の大電流が大きな界磁電流になり、大きな始動トルクを生む → 正しい
T=KφI で φ∝I なので T∝I2。始動時は逆起電力がゼロで電流が最大なので、トルクも最大になります。電車・クレーンに使われてきた理由です。
(5) ブラシレスDCモータは同期機と同様に回転磁界に同期して磁石が回り、他励直流電動機と同様の特性にできる → 正しい
やや込み入った記述ですが、2つとも正しいです。
| 記述の主張 | なぜ正しいか |
| 「同期機と同様に回転磁界に同期して永久磁石の界磁が回転する」 | 構造は永久磁石同期電動機(PMSM)とまったく同じ。磁石が回転磁界に引きずられて同期回転する |
| 「外部から見た電圧−電流特性を他励直流電動機とほぼ同様にできる」 | 位置に応じて通電を切り替える=電子的な整流。外から見れば「直流を入れると回る」ので直流機と同じ振る舞いになる |
ブラシレスDCモータが「DC」と呼ばれる理由がここにあります。中身は同期電動機なのに、外から見ると直流電動機のように使える——だから直流機の単元で扱われるのです。




直流機ファミリーを1枚に整理する
この問題は直流機の全体像を横断する総合問題です。5つの記述に登場した機種を、まとめて整理しておきましょう。
| 機種 | 界磁の接続 | 決定的な性質 | 実用上の位置づけ |
| 他励発電機 | 別電源 | 界磁を自由に制御できる | 実験・精密制御 |
| 分巻発電機 | 電機子と並列 | 残留磁気から自励で電圧確立 | 一般用 |
| 直巻発電機 | 電機子と直列 | 無負荷では電圧が立たない/飽和域で安定 | 特殊用途 |
| 複巻発電機 | 並列+直列 | 平複巻なら電圧変動率0 % | 電圧を一定に保つ |
| 分巻電動機 | 電機子と並列 | 定速度電動機 | 工作機械・送風機 |
| 直巻電動機 | 電機子と直列 | T∝I2/無負荷で暴走 | 電車・クレーン |
| ブラシレスDC | 永久磁石(回転子) | 電子整流/中身は同期機 | 省エネ家電・EV |
「界磁の接続」の列だけが本質で、他の列はすべてそこから導かれます。並列なら磁束一定、直列なら磁束が電流次第——この1点から全部の性質が出てくることを確認してください。
⏱️ 本番での進め方
① 「飽和=悪」という思い込みを外す。変わってほしくない場面では飽和が味方になる。
② 直巻は「界磁電流=負荷電流」——これが発電機でも電動機でも全部の性質の根っこ。
③ 総合問題では機種ごとに1行の要約を思い出す。表が頭にあれば判定は速い。
④ (5)のような長い記述は分解して判定。2つの主張が両方正しければ正しい。
💡 覚え方
直巻発電機は「飽和してこそ安定」(未飽和では E∝I でふらつく)。直巻は界磁電流=負荷電流が全性質の根っこ——発電機なら無負荷で電圧が立たない、電動機なら無負荷で暴走。ブラシレスDCは中身が同期機で、外から見ると他励直流機のように使える。
⚠️ よくある間違い
「飽和しないほうが良い」という一般的なイメージに引きずられて(2)を正しいと思ってしまうのが、この問題の狙いです。直巻発電機は磁束が電流で変わってしまうのが問題——飽和して磁束が動かなくなれば、むしろ電圧が安定します。

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