電験3種の機械科目で頻出の電機子反作用の論説問題。本記事では、令和5年度下期 A問題1を解説します。この問題は【機械】令和元年度A問題2と同一内容の再出題です。
繰り返し出る=確実に得点すべき定番論点。「反作用磁束は主磁束と直角、全体としては減磁」を軸に整理しましょう。
ほぼ同じ問題が 【機械】令和元年度A問題2 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
令和5年度下期 機械科目 A問題1:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題1
電験3種 機械科目 【直流機】 令和5年度下期 A問題1
直流機の電機子反作用に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 直流発電機や直流電動機では、電機子巻線に電流を流すと、電機子電流によって電機子周辺に磁束が生じ、電機子電圧を誘導する磁束すなわち界磁磁束が、電機子電流の影響で変化する。これを電機子反作用という。
(2) 界磁電流による磁束のベクトルに対し、電機子電流による電機子反作用磁束のベクトルは、同じ向きとなるため、電動機として運転した場合に増磁作用、発電機として運転した場合に減磁作用となる。
(3) 直流機の界磁磁極片に補償巻線を設け、そこに電機子電流を流すことにより、電機子反作用を緩和できる。
(4) 直流機の界磁磁極のN極とS極の間に補極を設け、そこに設けたコイルに電機子電流を流すことにより、電機子反作用を緩和できる。
(5) ブラシの位置を適切に移動させることで、電機子反作用を緩和できる。
出題のポイント:反作用磁束は主磁束と「直角」
電機子反作用の論説問題で毎回狙われるのが「反作用磁束の向き」です。結論から言うと電機子電流が作る磁束は、界磁の主磁束と直角の向き——同じ向きでも逆向きでもありません。
電機子巻線はブラシを境に電流の向きが分かれているので、その電流が作る磁束はブラシを結ぶ線の方向、つまり主磁極の軸と90°ずれた向きになります。この配置を交差磁化作用と呼びます。
| 界磁の起磁力 Ff | 電機子の起磁力 Fa | 合成の結果 | |
| 向き | 主磁極の軸方向(N→S) | ブラシを結ぶ方向(主磁極と直角) | 斜めにずれる |
| 磁極の片側では | — | 主磁束を強める | 磁気飽和で頭打ち |
| 磁極の反対側では | — | 主磁束を弱める | 素直に減る |
| 全体としては | — | — | 差し引きで減磁 |
ここが本問の核心です。反作用磁束は「強める側」と「弱める側」を同時に作りますが、強める側は鉄心が飽和して増えきれない——だから合計では必ず減るのです。
そして減磁になるのは発電機でも電動機でも同じです。電動機では電機子電流の向きが逆になるのでずれる方向は逆(回転方向と逆側へ)になりますが、「強める側が飽和する」という仕組みは変わらないので、やはり減磁です。

5つの選択肢を1つずつ検証する
(1) 電機子反作用の定義 → 正しい
「電機子電流によって生じた磁束が、界磁磁束を変化させる」——電機子反作用の定義そのものです。主語(電機子)と目的語(界磁)の向きも正しいので、誤りはありません。
(2) 反作用磁束は界磁磁束と同じ向きで、電動機なら増磁・発電機なら減磁 → 誤り
2か所が誤っています。
| 記述 | 正しくは |
| 「同じ向きとなる」 | 直角の向き(交差磁化作用)。同じ向きなら分布のゆがみも中性軸の移動も起きない |
| 「電動機なら増磁、発電機なら減磁」 | どちらも減磁。磁気飽和により、強められる側の増加より弱められる側の減少が大きい |
もし本当に「同じ向き」なら、磁束は単純に増えるだけで、電気的中性軸のずれも整流不良も起きません。ところが実際には中性軸がずれて火花が出るのですから、向きが直角でなければ辻褄が合わない——記述の内部矛盾からも誤りだと分かります。
☝️ ひっかけの作り方:「発電機と電動機で逆になる」という形の記述はもっともらしく見えます。実際、中性軸のずれる向きは発電機と電動機で逆なので、部分的には正しい話が混じっています。しかし増磁か減磁かはどちらも同じ(減磁)——何が逆で何が同じかを切り分けられるかが問われています。
(3) 補償巻線を磁極片に設け、電機子電流を流す → 正しい
補償巻線は主磁極の磁極片に切ったスロットに埋め込み、電機子巻線と直列に接続します。電機子電流と逆向きに流すことで、主磁極下の反作用磁束を直接打ち消します。
(4) 補極をN極とS極の間に設け、電機子電流を流す → 正しい
補極は主磁極の間(幾何学的中性軸の位置)に置き、やはり電機子巻線と直列にします。整流中のコイルがいる場所に、ちょうど必要な起電力を与えるのが役割です。
(5) ブラシの位置を移動させて緩和できる → 正しい
電気的中性軸がずれた先へブラシを移動すれば、整流中のコイルは再び磁束密度ゼロの位置に来ます。ただし負荷が変わるとずれ量も変わるので、そのつど移動させねばならず実用的ではありません。「緩和できる」という記述自体は正しく、誤りではありません。


★同一問題:令和元年度 A問題2
この問題は令和元年度 A問題2とほぼ同一の再出題です。5つの選択肢の内容も、誤りが(2)である点も同じで、(1)の「励磁磁束/界磁磁束」という言い回しがわずかに違うだけです。
4年の間隔で、しかも表現をほんの少し変えただけで再出題されている——電機子反作用は直流機の最重要論点だという何よりの証拠です。「反作用磁束は直角・全体としては減磁・対策は補償巻線/補極/ブラシ移動」の3点を押さえておけば、どう問われても対応できます。
発電機と電動機で「何が逆で何が同じか」
この論点は混乱しやすいので、表で整理しておきます。
| 項目 | 発電機 | 電動機 | 同じ/逆 |
| 電機子電流の向き | 基準 | 逆 | 逆 |
| 反作用磁束の向き | 基準 | 逆 | 逆 |
| 電気的中性軸のずれる方向 | 回転方向へ | 回転方向と逆へ | 逆 |
| 主磁束の増減 | 減磁 | 減磁 | 同じ |
| 補償巻線・補極の接続 | 電機子と直列 | 電機子と直列 | 同じでよい |
「向き」に関するものはすべて逆、「増減」と「対策の接続」は同じ——この切り分けが本問の(2)を見抜く鍵です。電流が逆なら反作用磁束も逆になり、必要な打ち消し磁束も逆になるので、電機子と直列につないでおけば自動的に正しい向きになります。
⏱️ 本番での進め方
① 「同じ向き」「常に」と言い切る記述を疑う。反作用磁束は直角。
② 増磁か減磁かは発電機も電動機も同じ(減磁)。逆になるのは「向き」だけ。
③ 対策3つ(補償巻線=磁極片/補極=主磁極の間/ブラシ移動)を言えるようにする。
④ 記述の内部矛盾を探す:「同じ向き」なら中性軸はずれないはず——なのに問題は火花の話をしている。
💡 覚え方
反作用磁束は主磁束と直角(交差磁化作用)。強める側は磁気飽和で増えきれず、弱める側は素直に減る ⇒ 全体では減磁。発電機も電動機も減磁は同じで、逆になるのは中性軸のずれる向きだけ。対策は補償巻線(磁極片)・補極(主磁極の間)・ブラシ移動で、前2つは電機子と直列。
⚠️ よくある間違い
(2)の「電動機なら増磁、発電機なら減磁」をもっともらしく感じてしまうのがこの問題の狙いです。発電機と電動機で逆になるのは「向き」であって「増減」ではありません。もう一つ、(5)のブラシ移動を「実用的でないから誤り」と考えてしまうケースもありますが、「緩和できる」という記述自体は正しいので誤りではありません。

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