直流機31【電験3種 機械】ブラシレスDCモータとは?令和3年度 A問題8 完全解説

電験3種 機械科目 直流機 令和3年度 A問題8 ブラシがないのになぜ回る?BLDCの仕組み

電験3種の機械科目で出題が増えているブラシレスDCモータ。本記事では、令和3年度 A問題8の論説問題を解説します。

カギは「回転子=永久磁石、固定子=電機子巻線」「整流をブラシではなく半導体スイッチで行う」という構造の理解です。

目次

令和3年度 機械科目 A問題8:問題文と選択肢

ブラシをなくして何が良くなり、何が犠牲になったかを整理します。

直流機31【電験3種 機械】ブラシレスDCモータとは?令和3年度 A問題8 完全解説 問題文
令和3年度 機械科目 A問題8 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和3年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題8

電験3種 機械科目 【直流機】 令和3年度 A問題8

ブラシレスDCモータに関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) ブラシレスDCモータは、固定子巻線に流れる電流と、回転子に取り付けられた永久磁石によってトルクを発生させる構造となっている。

(2) ブラシレスDCモータは、回転子の位置により通電する巻線を切り換える必要があるため、ホール素子などのセンサによって回転子の位置を検出している。

(3) ブラシ付きの直流モータに比べ、ブラシと整流子による機械的接触部分がないため、火花による電気雑音は低減し、モータの寿命は長くなる。

(4) ブラシ付きの直流モータに比べ、位置センサの信号処理や、駆動用の制御回路が必要となり、モータの駆動に必要な周辺回路が複雑になる。

(5) ブラシレスDCモータは効率がよくないため、エアコンや冷蔵庫のような省エネ性能が求められる大型の家電製品には利用されていない。

出題のポイント:長所と短所を対にして押さえる

ブラシレスDCモータの論説問題は、「ブラシをなくして何が良くなり、何が犠牲になったか」という対の構造で作られています。長所ばかり、あるいは短所ばかりを並べた記述は疑ってかかるのが基本姿勢です。

ブラシをなくすと良くなること犠牲になること
機械的接触がなくなる火花が出ない・電気雑音が減る・寿命が長い・保守が不要
整流を電子回路が担うブラシ損がなく高効率/速度制御が自在位置センサと駆動回路が必要 ⇒ 周辺回路が複雑・高価
磁石が回転子になる界磁損がゼロ・小型化しやすい高温で減磁の恐れ・磁石のコスト

「モータ本体は単純になったが、システム全体では複雑になった」——これがブラシレス化の本質です。選択肢(4)が「周辺回路が複雑になる」と正しく指摘しているのは、この対の関係を理解しているかを確認するためです。

ブラシレスDCモータの構造、位置検出、電子整流、長所と周辺回路を整理する出題のポイント
位置検出、通電相の切換え、回転磁界、トルクの順に動作を整理します。

5つの選択肢を検証する

(1) 固定子巻線の電流と回転子の永久磁石でトルクを発生 → 正しい

ブラシ付き直流モータとは回るものが逆です。ブラシレスは「磁石が回り、巻線が固定」——巻線が回らないから給電にブラシが要らないのです。

(2) ホール素子などのセンサで回転子の位置を検出 → 正しい

どの巻線に電流を流すかは、磁石がいまどこを向いているかで決まります。だから検出すべきは位置——ホール素子が磁石の磁束の向きを直接読み取ります

ホール素子を使わない「センサレス方式」もありますが、その場合も通電していない巻線に現れる誘起電圧から位置を推定しています。位置情報が要ることには変わりありません

(3) 火花による電気雑音が低減し、寿命が長くなる → 正しい

ブラシ付きモータの寿命はブラシの摩耗で決まります。火花(アーク)は整流子を荒らすだけでなく、広い周波数帯の電磁ノイズを撒き散らします。機械的接触をなくせば両方まとめて解決します。

(4) 位置センサの信号処理や駆動用の制御回路が必要で、周辺回路が複雑になる → 正しい

これがブラシレス化の代償です。ブラシ付きなら電池を直結するだけで回りますが、ブラシレスは必ずインバータ回路が要ります「ブラシがない=単純」ではない——モータ単体は単純でも、システムは複雑になります。

☝️ ひっかけの作り方:「〜が不要になり、構造が単純になる」という形で書き換えると誤りの選択肢が作れます。ブラシがなくなったぶんの仕事は、必ずどこかが引き受けている——「なくなったものの代わりに何が要るか」を考える癖をつけてください。

(5) 効率がよくないため、エアコンや冷蔵庫のような大型家電には利用されていない → 誤り

事実と正反対です。ブラシレスDCモータは高効率で、まさにエアコン・冷蔵庫・洗濯機といった省エネ性能が求められる家電に広く使われています

高効率になる理由内容
ブラシの摩擦損がない機械損が減る
ブラシの接触電圧降下がないブラシ付きでは1〜2 V 失われる。低電圧機では致命的
界磁損がゼロ永久磁石なので励磁電流が不要
インバータで最適に制御できる負荷に応じて回転数を変え、無駄な運転をしない

最後の項目が省エネ家電では特に効きます。エアコンのインバータ制御とは、まさにブラシレスDCモータ(またはPMSM)を可変速で回すこと必要な能力だけを出して連続運転することで、オンオフを繰り返す定速機より大幅に省エネになります。

答え誤っているのは (5) / ブラシレスDCモータは高効率で、省エネ家電に広く使われている
ブラシ付きDCモータとブラシレスDCモータの構造と整流方式の比較
ブラシレスDCモータは回転子が永久磁石、固定子が電機子巻線で、半導体スイッチが電子整流を行います。
ブラシレスDCモータは高効率で省エネ家電に利用され正解は5と示す問題解説
効率がよくないため省エネ家電に使われないという(5)が誤りです。

誤りの見抜き方:身の回りの製品で検算する

(5)は知識がなくても否定できます。「エアコンや冷蔵庫に使われていない」と断言していますが、「DCモータ搭載」「インバータ搭載」とうたう家電は身の回りにいくらでもあります

身の回りの製品使われているモータなぜそれが選ばれるか
エアコンの圧縮機・ファンブラシレスDC/PMSM可変速で省エネ・長寿命(分解できない場所にある)
冷蔵庫の圧縮機ブラシレスDC24時間運転なので効率が効く
PCの冷却ファンブラシレスDC無保守・低騒音
ドローン・電動アシスト自転車ブラシレスDC効率=航続時間
電動ドリル(安価なもの)交流整流子モータ駆動回路が要らず安い(短時間使用なら効率より価格)

論説問題で「使われていない」「できない」と言い切る記述は、たいてい誤りです。実際の製品を1つでも思い出せれば、それが反例になります——知識問題では身の回りの製品が最速の検算手段になります。

逆に、交流整流子モータのように「効率より価格・軽さ」で選ばれる場面もあることも押さえておきましょう。どのモータが優れているかではなく、用途に合っているか——これが機械科目の一貫した考え方です。

⏱️ 本番での進め方
長所と短所を対で押さえる:火花なし・長寿命・高効率/駆動回路が必要で複雑。
「〜できない」「使われていない」は疑う。身の回りの製品が反例になる。
検出するのは位置(速度ではない)。通電する巻線を選ぶため。
「ブラシがない=単純」ではない。なくなった仕事は必ず別のものが引き受けている。

💡 覚え方
ブラシレスDC=磁石が回り巻線は固定(ブラシ付きの逆)。位置をホール素子で検出し、半導体スイッチで通電を切り替える長所=火花なし・長寿命・低雑音・高効率短所=駆動回路が必要で周辺が複雑・高価エアコン・冷蔵庫の「インバータ」はこれのこと

⚠️ よくある間違い
(4)を誤りだと思ってしまうケースがあります。「ブラシがないのだから単純になるはず」と考えるためですが、モータ単体は単純でもシステムは複雑になります。(4)は正しい記述です。

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