電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目で頻出の直流他励電動機の速度制御。本記事では、平成21年度 A問題2で問われた、入力電圧を変えたときの回転速度を求める計算問題を解説します。
カギは電機子回路の式 \( V=E+I_aR_a \) と、界磁・電機子電流が一定なら逆起電力 E は回転速度 n に比例(\( E\propto n \))すること。E を求めて比例計算するだけです。
ほぼ同じ問題が 【機械】令和6年度上期A問題2 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
平成21年度 機械科目 A問題2:問題文と選択肢
抵抗降下が両方の状態で同じであることを確かめながら進めます。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題2
電験3種 機械科目 【直流機】 平成21年度 A問題2
電機子回路の抵抗が 0.20 [Ω] の直流他励電動機がある。励磁電流、電機子電流とも一定になるように制御されており、電機子電流は 50 [A] である。回転速度が 1200 [min⁻¹] のとき、電機子回路への入力電圧は 110 [V] であった。励磁電流、電機子電流を一定に保ったまま電動機の負荷を変化させたところ、入力電圧が 80 [V] となった。このときの回転速度 [min⁻¹] の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、電機子反作用はなく、ブラシの抵抗は無視できるものとする。(1) 764 (2) 840 (3) 873 (4) 900 (5) 960
出題のポイント:抵抗降下は両方の状態で同じ10 V
この問題は「電機子電流が一定に制御されている」という条件が主役です。電流が変わらないということは、抵抗降下 IaRa=50×0.20=10 V も変わらない——つまりどちらの状態でも端子電圧から10 V を引けば逆起電力になります。
あとは励磁電流も一定なので磁束 φ も一定。E=kEφn より n ∝ E で比を取るだけです。
| 入力電圧110 V のとき | 入力電圧80 V のとき | |
| 電機子電流 | 50 A | 50 A(一定に制御) |
| 抵抗降下 IaRa | 10 V | 10 V(同じ) |
| 逆起電力 E=V−IaRa | 100 V | 70 V |
| 磁束 φ | 一定 | 一定 |
| 回転速度 n ∝ E | 1200 min-1 | ? |

端子電圧の比では答えが合わない
端子電圧の比は 80/110=0.727 ですが、逆起電力の比は 70/100=0.700。この違いが答えを分けます。
なぜ比が食い違うのか——抵抗降下の10 V は「速度を作る仕事をしない、捨てられる電圧」で、しかも両方から同じだけ引かれるからです。もとの値が小さいほうが、同じ量を引かれたときに割合として大きく減ります(110から10を引くと9 % 減、80から10を引くと12.5 % 減)。だから逆起電力の比のほうが小さくなるのです。
電流が一定なので、この10 V は最後まで変わらない。
このとき n1=1200 min-1。
端子電圧が30 V 下がれば、逆起電力も同じ30 V 下がる。
比は 0.70。約分して 7/10。
1200×0.7=840。


選択肢は「引く/引かない」の全パターン
この問題の選択肢は、分子と分母それぞれで抵抗降下を引いたか引かなかったかの4通りがそのまま並んでいます。
| 選択肢 | 計算 | 分子 | 分母 |
| (1) 764 | 1200×70/110 | 引いた(E2) | 引かなかった(V1) |
| (2) 840 | 1200×70/100 | 引いた | 引いた |
| (3) 873 | 1200×80/110 | 引かなかった | 引かなかった |
| (4) 900 | 自然な計算では出ない | — | — |
| (5) 960 | 1200×80/100 | 引かなかった(V2) | 引いた(E1) |
「両方引く」以外の3通りが全部選択肢に置いてあるという、狙いのはっきりした構成です。E1 と E2 を先に書き出してしまえば、分子分母を取り違えることはありません。途中式に端子電圧が残っていたら間違い——そう決めておくと確実です。
なぜ他励電動機は「電流一定」に制御できるのか
問題文の「励磁電流、電機子電流とも一定になるように制御されており」という設定は、他励電動機だからこそ成り立ちます。界磁回路と電機子回路が別電源なので、片方をいじってももう片方に影響しないからです。
分巻ではこうはいきません。界磁が端子に並列なので、端子電圧を110 V から80 V へ下げると界磁電流も一緒に下がり、磁束が減ってしまいます。磁束が減れば n=E/(kEφ) の分母まで動くので、「E の比=速度の比」という単純な計算が使えなくなります。
| 他励(本問) | 分巻で同じことをすると | |
| 端子電圧を下げる | 電機子だけに効く | 電機子と界磁の両方に効く |
| 磁束 φ | 一定に保てる | 端子電圧に比例して減る |
| 速度 n=E/(kEφ) | E の比だけで決まる | 分子も分母も動いて複雑 |
| トルク T=kTφIa | 一定に保てる | 磁束が減るぶん低下する |
電機子電流を一定にするほうは、電流を測ってフィードバックする電流制御で実現します。実機ではサイリスタ整流器やチョッパの点弧角・デューティを調整して、電機子電圧を電流が一定になるように動かす——これが本問で「入力電圧が80 V となった」という記述の中身です。
この運転は電気車の「定トルク制御」そのもの
トルクを一定に保ったまま速度だけを変える運転は、電気車や巻上機の基本的な運転パターンです。本問の2つの状態を比べると、その特徴がはっきり見えます。
| 1200 min-1 のとき | 840 min-1 のとき | |
| 電機子電流 | 50 A | 50 A(同じ) |
| トルク T ∝ φIa | 一定 | 一定(同じ) |
| 機械出力 P=EIa | 100×50=5.0 kW | 70×50=3.5 kW |
| 電気入力 P=VIa | 110×50=5.5 kW | 80×50=4.0 kW |
| 銅損 Ia2Ra | 0.5 kW | 0.5 kW(同じ) |
| 効率 E/V | 90.9 % | 87.5 % |
銅損だけが変わらないのがポイントです。電流が同じなので発熱量も同じ——ところが出力は3.5 kW まで落ちているので、相対的に損失の割合が増えて効率が下がります。抵抗制御で低速運転すると効率が悪いと言われるのは、まさにこの構造によるものです。
だからこそ実機では、抵抗で電圧を落とすのではなく、チョッパやインバータで電圧そのものを作る方式へ移りました。抵抗制御なら捨てた電圧がそのまま熱になりますが、電圧を作る方式なら「使わない電力はそもそも取り込まない」ので、低速でも効率が落ちません。
★同一問題:令和6年度上期 A問題2として15年ぶりに再出題
この問題は令和6年度上期 A問題2としてそのまま再出題されています。数値も選択肢の並びも、正解の番号まで完全に一致という、珍しいほど完全な再出題です。
| 平成21年度 A問題2(本問) | 令和6年度上期 A問題2 | |
| 電機子回路の抵抗 | 0.20 Ω | 0.20 Ω(同じ) |
| 電機子電流 | 50 A | 50 A(同じ) |
| 条件1 | 1200 min-1・110 V | 同じ |
| 条件2 | 80 V | 同じ |
| 選択肢 | 764/840/873/900/960 | まったく同じ並び |
| 正解 | (2) 840 | (2) 840(番号も同じ) |
15年の間隔を置いて一字一句そのまま出題されたということは、「逆起電力で比を取る」という1点が、出題側にとってそれだけ本質的だということです。
選択肢が「引く/引かない」の全4通り(764=70/110、840=70/100、873=80/110、960=80/100)になっているのも同じで、出題者は「E で計算したかどうか」だけを見ています。逆に言えば、ここさえ外さなければ確実に1点になる問題です。
「古い年度だから」と過去問を切り捨てるのが危険だという、決定的な実例でもあります。平成一桁〜20年代前半の問題がそのまま令和に出ることは珍しくないので、年度で選別せずに論点で網羅するのが確実な学習法です。
負荷が変わったのに電流が一定?
問題文には「電機子電流を一定に保ったまま電動機の負荷を変化させた」とあります。一見すると矛盾しているようですが、これは電流制御をかけているという意味です。
T=kTφIa で φ も Ia も一定なら、電動機が出すトルクも一定です。したがって「負荷を変化させた」というのは、負荷が要求するトルクではなく、負荷の回転速度特性を変えたと読むべきです。実際、電動機は同じトルクのまま、速度だけが1200→840 min-1 に落ちています。
| 変更前 | 変更後 | |
| トルク T ∝ φIa | 一定 | 一定(同じ) |
| 回転速度 n | 1200 min-1 | 840 min-1 |
| 機械出力 P=EIa | 100×50=5.0 kW | 70×50=3.5 kW |
| 電気入力 P=VIa | 110×50=5.5 kW | 80×50=4.0 kW |
| 銅損 Ia2Ra | 0.5 kW | 0.5 kW(同じ) |
| 効率 E/V | 90.9 % | 87.5 % |
トルク一定・速度低下 ⇒ 出力低下という、定トルク領域の速度制御そのものです。銅損は電流が同じなので変わらないので、出力が減るほど効率は悪くなります。低速で運転すると効率が落ちるのは、この構造から来ています。
⏱️ 本番での進め方
① IaRa を最初に1回だけ計算(50×0.20=10 V)。両方の状態で使い回せる。
② E1=100、E2=70 と書き出す。途中式に110や80が残っていたら間違い。
③ 比を約分(70/100=7/10)してから1200を掛ける。
④ 検算は逆向き:840/1200=0.7、100×0.7=70 ✓。
💡 覚え方
電機子電流が一定=抵抗降下も一定。両方の端子電圧から同じ量を引いて逆起電力にしてから比を取る。速度に比例するのは E であって V ではない——捨てられる電圧を先に取り除くのが直流機の速度計算の鉄則です。
⚠️ よくある間違い
端子電圧の比 80/110 をそのまま使うと873 min-1(→(3))、片方だけ引くと764(→(1))か960(→(5))になります。選択肢が「引く/引かない」の全組合せで用意されているので、E1 と E2 を紙に書いてから比を作ることを徹底してください。

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