直流機11【電験3種 機械】他励電動機の回転速度とは?平成21年度 A問題2 完全解説

電験3種 機械科目 直流機 平成21年度 A問題2 他励電動機の回転速度!電圧を変えるとどうなる?

電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目で頻出の直流他励電動機の速度制御。本記事では、平成21年度 A問題2で問われた、入力電圧を変えたときの回転速度を求める計算問題を解説します。

カギは電機子回路の式 \( V=E+I_aR_a \) と、界磁・電機子電流が一定なら逆起電力 E は回転速度 n に比例(\( E\propto n \))すること。E を求めて比例計算するだけです。

🔁 この問題は繰り返し出題されています
ほぼ同じ問題が 【機械】令和6年度上期A問題2 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
目次

平成21年度 機械科目 A問題2:問題文と選択肢

抵抗降下が両方の状態で同じであることを確かめながら進めます。

直流機11【電験3種 機械】他励電動機の回転速度とは?平成21年度 A問題2 完全解説 問題文
平成21年度 機械科目 A問題2 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題2

電験3種 機械科目 【直流機】 平成21年度 A問題2

電機子回路の抵抗が 0.20 [Ω] の直流他励電動機がある。励磁電流、電機子電流とも一定になるように制御されており、電機子電流は 50 [A] である。回転速度が 1200 [min⁻¹] のとき、電機子回路への入力電圧は 110 [V] であった。励磁電流、電機子電流を一定に保ったまま電動機の負荷を変化させたところ、入力電圧が 80 [V] となった。このときの回転速度 [min⁻¹] の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、電機子反作用はなく、ブラシの抵抗は無視できるものとする。

(1) 764  (2) 840  (3) 873  (4) 900  (5) 960

出題のポイント:抵抗降下は両方の状態で同じ10 V

この問題は「電機子電流が一定に制御されている」という条件が主役です。電流が変わらないということは、抵抗降下 IaRa=50×0.20=10 V も変わらない——つまりどちらの状態でも端子電圧から10 V を引けば逆起電力になります。

あとは励磁電流も一定なので磁束 φ も一定。E=kEφn より n ∝ E で比を取るだけです。

入力電圧110 V のとき入力電圧80 V のとき
電機子電流50 A50 A(一定に制御)
抵抗降下 IaRa10 V10 V(同じ)
逆起電力 E=V−IaRa100 V70 V
磁束 φ一定一定
回転速度 n ∝ E1200 min-1?
他励直流電動機で端子電圧から電機子抵抗降下を引き逆起電力比で速度を求める出題ポイント
速度は端子電圧ではなく、磁束一定なら逆起電力Eに比例します。

端子電圧の比では答えが合わない

端子電圧の比は 80/110=0.727 ですが、逆起電力の比は 70/100=0.700。この違いが答えを分けます。

なぜ比が食い違うのか——抵抗降下の10 V は「速度を作る仕事をしない、捨てられる電圧」で、しかも両方から同じだけ引かれるからです。もとの値が小さいほうが、同じ量を引かれたときに割合として大きく減ります(110から10を引くと9 % 減、80から10を引くと12.5 % 減)。だから逆起電力の比のほうが小さくなるのです。

\( I_aR_a=50\times0.20=10\ \mathrm{V} \)
❶ 抵抗降下(共通)
電流が一定なので、この10 V は最後まで変わらない。
\( E_1=110-10=100\ \mathrm{V} \)
❷ 変更前の逆起電力
このとき n1=1200 min-1
\( E_2=80-10=70\ \mathrm{V} \)
❸ 変更後の逆起電力
端子電圧が30 V 下がれば、逆起電力も同じ30 V 下がる。
\( n_2=n_1\dfrac{E_2}{E_1}=1200\times\dfrac{70}{100} \)
❹ φ 一定なので n ∝ E
比は 0.70。約分して 7/10。
\( n_2=840\ \mathrm{min^{-1}} \)
❺ 答え
1200×0.7=840。
答え回転速度 840 min-1(2) / 検算:E2=100×(840/1200)=70 V ✓
端子電圧110ボルトと80ボルトから抵抗降下10ボルトを引き逆起電力100ボルトと70ボルトを比較する解説
E₁=100 V、E₂=70 Vなので速度比は0.70です。
逆起電力比70対100から他励電動機の回転速度840毎分を求める問題解説
n₂=1200×70/100=840 min⁻¹で、正解は(2)です。

選択肢は「引く/引かない」の全パターン

この問題の選択肢は、分子と分母それぞれで抵抗降下を引いたか引かなかったかの4通りがそのまま並んでいます。

選択肢計算分子分母
(1) 7641200×70/110引いた(E2引かなかった(V1
(2) 8401200×70/100引いた引いた
(3) 8731200×80/110引かなかった引かなかった
(4) 900自然な計算では出ない
(5) 9601200×80/100引かなかった(V2引いた(E1

「両方引く」以外の3通りが全部選択肢に置いてあるという、狙いのはっきりした構成です。E1 と E2 を先に書き出してしまえば、分子分母を取り違えることはありません。途中式に端子電圧が残っていたら間違い——そう決めておくと確実です。

なぜ他励電動機は「電流一定」に制御できるのか

問題文の「励磁電流、電機子電流とも一定になるように制御されており」という設定は、他励電動機だからこそ成り立ちます。界磁回路と電機子回路が別電源なので、片方をいじってももう片方に影響しないからです。

分巻ではこうはいきません。界磁が端子に並列なので、端子電圧を110 V から80 V へ下げると界磁電流も一緒に下がり、磁束が減ってしまいます。磁束が減れば n=E/(kEφ) の分母まで動くので、「E の比=速度の比」という単純な計算が使えなくなります

他励(本問)分巻で同じことをすると
端子電圧を下げる電機子だけに効く電機子と界磁の両方に効く
磁束 φ一定に保てる端子電圧に比例して減る
速度 n=E/(kEφ)E の比だけで決まる分子も分母も動いて複雑
トルク T=kTφIa一定に保てる磁束が減るぶん低下する

電機子電流を一定にするほうは、電流を測ってフィードバックする電流制御で実現します。実機ではサイリスタ整流器やチョッパの点弧角・デューティを調整して、電機子電圧を電流が一定になるように動かす——これが本問で「入力電圧が80 V となった」という記述の中身です。

この運転は電気車の「定トルク制御」そのもの

トルクを一定に保ったまま速度だけを変える運転は、電気車や巻上機の基本的な運転パターンです。本問の2つの状態を比べると、その特徴がはっきり見えます。

1200 min-1 のとき840 min-1 のとき
電機子電流50 A50 A(同じ)
トルク T ∝ φIa一定一定(同じ)
機械出力 P=EIa100×50=5.0 kW70×50=3.5 kW
電気入力 P=VIa110×50=5.5 kW80×50=4.0 kW
銅損 Ia2Ra0.5 kW0.5 kW(同じ)
効率 E/V90.9 %87.5 %

銅損だけが変わらないのがポイントです。電流が同じなので発熱量も同じ——ところが出力は3.5 kW まで落ちているので、相対的に損失の割合が増えて効率が下がります抵抗制御で低速運転すると効率が悪いと言われるのは、まさにこの構造によるものです。

だからこそ実機では、抵抗で電圧を落とすのではなく、チョッパやインバータで電圧そのものを作る方式へ移りました。抵抗制御なら捨てた電圧がそのまま熱になりますが、電圧を作る方式なら「使わない電力はそもそも取り込まない」ので、低速でも効率が落ちません。

★同一問題:令和6年度上期 A問題2として15年ぶりに再出題

この問題は令和6年度上期 A問題2としてそのまま再出題されています。数値も選択肢の並びも、正解の番号まで完全に一致という、珍しいほど完全な再出題です。

平成21年度 A問題2(本問)令和6年度上期 A問題2
電機子回路の抵抗0.20 Ω0.20 Ω(同じ)
電機子電流50 A50 A(同じ)
条件11200 min-1・110 V同じ
条件280 V同じ
選択肢764/840/873/900/960まったく同じ並び
正解(2) 840(2) 840(番号も同じ)

15年の間隔を置いて一字一句そのまま出題されたということは、「逆起電力で比を取る」という1点が、出題側にとってそれだけ本質的だということです。

選択肢が「引く/引かない」の全4通り(764=70/110、840=70/100、873=80/110、960=80/100)になっているのも同じで、出題者は「E で計算したかどうか」だけを見ています。逆に言えば、ここさえ外さなければ確実に1点になる問題です。

「古い年度だから」と過去問を切り捨てるのが危険だという、決定的な実例でもあります。平成一桁〜20年代前半の問題がそのまま令和に出ることは珍しくないので、年度で選別せずに論点で網羅するのが確実な学習法です。

負荷が変わったのに電流が一定?

問題文には「電機子電流を一定に保ったまま電動機の負荷を変化させた」とあります。一見すると矛盾しているようですが、これは電流制御をかけているという意味です。

T=kTφIa で φ も Ia も一定なら、電動機が出すトルクも一定です。したがって「負荷を変化させた」というのは、負荷が要求するトルクではなく、負荷の回転速度特性を変えたと読むべきです。実際、電動機は同じトルクのまま、速度だけが1200→840 min-1 に落ちています。

変更前変更後
トルク T ∝ φIa一定一定(同じ)
回転速度 n1200 min-1840 min-1
機械出力 P=EIa100×50=5.0 kW70×50=3.5 kW
電気入力 P=VIa110×50=5.5 kW80×50=4.0 kW
銅損 Ia2Ra0.5 kW0.5 kW(同じ)
効率 E/V90.9 %87.5 %

トルク一定・速度低下 ⇒ 出力低下という、定トルク領域の速度制御そのものです。銅損は電流が同じなので変わらないので、出力が減るほど効率は悪くなります。低速で運転すると効率が落ちるのは、この構造から来ています。

⏱️ 本番での進め方
IaRa を最初に1回だけ計算(50×0.20=10 V)。両方の状態で使い回せる。
E1=100、E2=70 と書き出す。途中式に110や80が残っていたら間違い
③ 比を約分(70/100=7/10)してから1200を掛ける。
④ 検算は逆向き:840/1200=0.7、100×0.7=70 ✓。

💡 覚え方
電機子電流が一定=抵抗降下も一定両方の端子電圧から同じ量を引いて逆起電力にしてから比を取る速度に比例するのは E であって V ではない——捨てられる電圧を先に取り除くのが直流機の速度計算の鉄則です。

⚠️ よくある間違い
端子電圧の比 80/110 をそのまま使うと873 min-1(→(3))、片方だけ引くと764(→(1))か960(→(5))になります。選択肢が「引く/引かない」の全組合せで用意されているので、E1 と E2 を紙に書いてから比を作ることを徹底してください。

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