電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目で繰り返し出題される定番が、永久磁石界磁の小形直流電動機の効率です。本記事では、平成29年度 A問題1で問われた効率の計算問題を解説します。
本問(平成29年度)と同じ問題が、その後の令和5年度上期・令和7年度上期にも再出題されている定番中の定番です。効率は \( \eta=E/V \) で一発です。
ほぼ同じ問題が 【機械】令和7年度上期A問題2/【機械】令和5年度上期A問題2 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
平成29年度 機械科目 A問題1:問題文と選択肢
抵抗が書かれていないのにどうやって解くのかを確かめます。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成29年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題1
電験3種 機械科目 【直流機】 平成29年度 A問題1
界磁に永久磁石を用いた小形直流電動機があり、電源電圧は定格の12 [V]、回転を始める前の静止状態における始動電流は4 [A]、定格回転数における定格電流は1 [A] である。定格運転時の効率の値 [%] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、ブラシの接触による電圧降下及び電機子反作用は無視できるものとし、損失は電機子巻線による銅損しか存在しないものとする。(1) 60 (2) 65 (3) 70 (4) 75 (5) 80
出題のポイント:始動時は「E がゼロ」という無料の情報
この問題には抵抗の値がどこにも書かれていません。それでも解けるのは、「静止状態における始動電流」という情報が抵抗を測ったのと同じ意味を持つからです。
回転していなければ逆起電力 E=kEφn=0。すると電機子回路には電源電圧がまるごと抵抗にかかるので、オームの法則がそのまま使えます。

問題の解説:3ステップで効率まで
静止 ⇒ E=0 ⇒ 12 V が全部3 Ω にかかって4 A。
定格電流1 A なので降下は3 V。
損失が銅損だけなら電流が約分されて電圧の比になる。


なぜ η=E/V になるのか、条件つきであることに注意
η=E/V はとても便利な式ですが、成り立つのは「損失が電機子銅損だけ」という条件のときだけです。導出を追えば、その理由がはっきりします。
端子から入ってくる電力。
IaRa=V−E を使って書き換えた。
入力から銅損を引いた残り。鉄損も機械損もゼロという前提。
Ia が約分される。
実機では鉄損と機械損があるので、この式は使えません。その場合の効率は η=(EIa−鉄損−機械損)/(VIa) となり、E/V より低くなります。問題文の「損失は電機子巻線による銅損しか存在しない」という一文は、この式を使わせるための許可証だと理解してください。
| 条件 | 効率の式 | 本問での値 |
| 損失が銅損だけ(本問) | η=E/V | 9/12=75 % |
| 鉄損・機械損もある(実機) | η=(EIa−Pi−Pm)/(VIa) | 75 % より低い |
この問題は3回出題されている
同じ設定の問題が平成29年度・令和5年度上期・令和7年度上期と3回出題されています。「始動電流から抵抗を出し、定格時の逆起電力から効率を出す」という筋道が、直流機の基本として重視されているということです。
| 年度 | 問題番号 | 設定 | 問われるもの |
| 平成29年度 | A問題1 | 12 V・始動4 A・定格1 A | 効率(本問) |
| 令和5年度上期 | A問題2 | 同系統の設定 | 効率 |
| 令和7年度上期 | A問題2 | 同系統の設定 | 効率 |
数値がそのままか、少し変えてあるかの違いはありますが、解法は完全に同じです。「始動=E がゼロ」という読み替えができるかどうか——ここだけが問われています。
始動電流が定格の4倍で済んでいる理由
本問の機械は定格電流1 A に対して始動電流4 A——定格の4倍です。大形機だと10倍以上になることもあるのに、なぜこの機械は4倍で収まっているのでしょうか。
答えは電機子抵抗が3 Ω と大きいからです。始動電流は V/Ra で決まるので、抵抗が大きいほど始動電流は小さくなります。
| 機械の規模 | 電機子抵抗のめやす | 定格電流に対する始動電流 | 始動抵抗 |
| 小形(本問) | 数 Ω | 3〜5倍 | 不要なことが多い |
| 中形 | 0.1〜1 Ω | 5〜10倍 | あったほうがよい |
| 大形 | 0.01〜0.1 Ω | 10〜20倍 | 必須 |
小形機は巻線が細く長いので抵抗が大きく、それが「天然の始動抵抗」として働きます。模型のモータやドライバドリルに始動抵抗器が付いていないのは、このためです。
ただし、その大きな抵抗は運転中も損失を出し続けます。本問では入力12 W のうち3 W(25 %)が銅損——効率75 %という値がまさにそれです。大形機なら効率90 % を超えるのが普通で、「始動が楽な代わりに効率が低い」というトレードオフになっています。
効率=E/V という式が、そのまま「抵抗降下の割合」を表していることにも注目してください。η=E/V=1−IaRa/V なので、抵抗降下が端子電圧の何 % かを引いたものが効率です。本問は3 V/12 V=25 % が降下なので効率75 %。この見方ができると、計算せずに答えの見当がつきます。
永久磁石界磁だからこそ成り立つこと
問題文の「界磁に永久磁石を用いた」という設定も、実は効いています。
分巻電動機だったら、始動時にも界磁電流が流れています。すると電源から流れる電流は電機子電流と界磁電流の和になり、「始動電流4 A」がどちらを指すのか曖昧になってしまいます。
永久磁石なら界磁電流という概念自体がないので、流れる電流はすべて電機子電流。4 A をそのまま Ia0 として使えます。また界磁銅損もゼロなので、「損失は電機子銅損だけ」という条件とも整合します。
小形の直流電動機で永久磁石が主流なのは、界磁損がゼロになることと構造が簡単なことによります。本問の12 V・1 A・9 W という規模は、模型やドライバドリル、家電の駆動部に入っているクラス——身近な機械がそのまま題材になっています。
⏱️ 本番での進め方
① 「静止状態の始動電流」=抵抗を測ったのと同じ。Ra=V/Ia0。
② 定格時は E=V−IaRa。同じ式を2回使うだけ。
③ 損失が銅損だけなら η=E/V。条件つきの式であることを意識する。
④ 検算は電力収支:入力12 W=出力9 W+銅損3 W ✓。10秒で済む。
★同一問題:3年度にわたって3回出題されている
この問題は令和5年度上期 A問題2・令和7年度上期 A問題2としてまったく同じ数値で再出題されています。12 V・始動電流4 A・定格電流1 A・答え75 %——すべて同じです。
| 年度 | 選択肢の並び | 正解の番号 |
| 平成29年度 A問題1(本問) | 60/65/70/75/80 | (4) |
| 令和5年度上期 A問題2 | 60/65/70/75/80 | (4) |
| 令和7年度上期 A問題2 | 80/75/70/65/60(逆順) | (2) |
令和7年度上期だけは選択肢が逆順に並べ替えられていて、正解が(2)になっています。「答えは(4)」と番号で覚えていた人は、令和7年度で(4)=65 % を選んで外します——これほど分かりやすい「番号暗記の罠」はありません。
3回も出るということは、「始動電流から抵抗を出し、定格時の逆起電力から効率を出す」という筋道が直流機の基本として重視されているということです。Ra=V/Ia0 と η=E/V の2本——この2本を、番号ではなく式で覚えてください。
💡 覚え方
始動時は E=0 なので Ra=V/Ia0——抵抗が書かれていなくても始動電流があれば求まる。損失が銅損だけなら η=E/V(電流が約分される)。永久磁石界磁なら界磁電流がなく、流れる電流はすべて電機子電流。この3点で解ける定番問題です。
⚠️ よくある間違い
η=E/V を無条件に使うのが危険です。鉄損・機械損があると成り立ちません。もう一つは始動電流と定格電流を取り違えること——抵抗を出すのは始動電流(E=0 のとき)で、定格電流は逆起電力を出すのに使います。

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