今回は令和7年度下期 機械科目 A問題7を解説します。ステッピングモータ(パルスモータ)の原理と種類を問う空欄補充問題です。
迷いどころは(ア)(イ)の組合せと(ウ)。パルスを「何個」送ったかが回転「角度」を決め、パルスを「毎秒何個」送るか(=周波数)が回転「速度」を決める——この対応さえ押さえれば、5つの選択肢は一気に2つまで絞れます。
出題のポイント

令和7年度下期 機械科目 A問題7:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題7
電験3種 機械科目 【電動機応用】 令和7年度下期 A問題7
次の文章は,ステッピングモータに関する記述である.
ステッピングモータはパルスモータとも呼ばれ,駆動回路に与えられた(ア)に比例する(イ)だけ回転するものである.したがって,このモータはパルスを周期的に与えたとき,そのパルスの(ウ)に比例する回転速度で回転し,入力パルスを停止すれば回転子も停止する.
ステッピングモータはパルスが送られるたびに定められた角度θ[°]を1ステップとして回転する.この1パルス当たりの回転角度を(エ)という.
ステッピングモータには,永久磁石形,可変リラクタンス形,ハイブリッド形などがあり,永久磁石形ステッピングモータでは,無通電状態でも回転子位置を(オ)が働く特徴がある.
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ.
次の文章は、ステッピングモータに関する記述である。
ステッピングモータはパルスモータとも呼ばれ、駆動回路に与えられた(ア)に比例する(イ)だけ回転するものである。したがって、このモータはパルスを周期的に与えたとき、そのパルスの(ウ)に比例する回転速度で回転し、入力パルスを停止すれば回転子も停止する。
ステッピングモータはパルスが送られるたびに定められた角度θ[°]を1ステップとして回転する。この1パルス当たりの回転角度を(エ)という。
ステッピングモータには、永久磁石形、可変リラクタンス形、ハイブリッド形などがあり、永久磁石形ステッピングモータでは、無通電状態でも回転子位置を(オ)が働く特徴がある。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) パルス数 回転速度 周波数 移動角 保持する力 (2) パルス数 回転角度 幅 ステップ角 追従する力 (3) パルス数 回転角度 周波数 ステップ角 保持する力 (4) 周波数 回転角度 幅 ステップ角 追従する力 (5) 周波数 回転速度 幅 移動角 追従する力
ポイント解説:パルス「数」は角度、パルス「周波数」は速度
ステッピングモータは、パルスを1個送るごとに決まった角度だけカクッと回るモータです。位置決めが得意で、プリンタやカメラのレンズ駆動、工作機械の送り軸などに使われます。
ここから2つの対応が自動的に決まります。①パルスを n 個送れば、その n に比例した「回転角度」だけ回る——だから(ア)はパルス数、(イ)は回転角度。②1秒あたり何個送るか(=パルスの周波数)が、1秒あたり何度回るか(=回転速度)を決める——だから(ウ)は周波数です。
「パルス数 → 回転角度」「パルス周波数 → 回転速度」。数が角度、周波数が速度と、時間で割ったもの同士が対応すると覚えると混同しません。(ウ)を「幅」としてしまう誤りが多いのですが、パルス幅を変えても1パルスで進む角度は変わらないので、速度には結びつきません。
(エ)の1パルス当たりの回転角度=ステップ角は、この分野の最重要用語です。ステップ角 θ[°] のモータに n パルス送れば回転角は nθ[°]、1秒間に f パルス送れば回転速度は fθ[°/s]。360°をステップ角で割れば1回転に必要なパルス数が出ます。
(オ)は種類の話です。永久磁石形(PM形)は回転子が永久磁石なので、電源を切っても磁石と固定子の鉄心が引き合い、回転子をその位置に留めようとする力が残ります。これをディテントトルク(保持トルク)と呼びます。可変リラクタンス形(VR形)は回転子が鉄心だけなので、無通電では保持力がありません。よって(オ)は保持する力です。
問題の解説
STEP1 (ア)(イ)を決める
パルスを送った個数に応じて角度が積み上がる。
⇒ (ア)=パルス数、(イ)=回転角度。これで(4)(5)が消える。
STEP2 (ウ)を決める
回転速度は単位時間あたりに進む角度 ⇒ 単位時間あたりのパルス数=周波数に比例。
⇒ (ウ)=周波数。これで(2)も消える。
「幅」は誤り——パルス幅を変えても1パルス分の角度は変わらない。
STEP3 (エ)を決める
1パルス当たりの回転角度の正式名称はステップ角。
「移動角」という用語は使わない ⇒ (1)が消え、残るのは(3)だけ。
STEP4 (オ)を確認する
永久磁石形は回転子自身が磁石 ⇒ 無通電でも固定子鉄心と引き合う。
このディテントトルク(保持トルク)により位置を保持する力が働く。
可変リラクタンス形は回転子が鉄心のみ ⇒ 無通電では保持力なし。
STEP5 答えを確定する
(ア)パルス数/(イ)回転角度/(ウ)周波数/(エ)ステップ角/(オ)保持する力。
⇒ (3)。
答え:(3)
💡 覚え方
ステッピングモータ=パルス1個でステップ角θだけ回るモータ。パルス数 n → 回転角度 nθ、パルス周波数 f → 回転速度 fθ。1回転に必要なパルス数=360/θ。種類は3つで、PM形(永久磁石形)=無通電でも保持トルクあり、VR形(可変リラクタンス形)=回転子は鉄心のみで無通電の保持力なし・高速向き、ハイブリッド形=両者のいいとこ取りで小さいステップ角。オープンループで位置決めできるのが最大の長所です。
⚠️ よくある間違い
①(ウ)を「幅」にしてしまうのが最も多い誤りで、(2)(4)(5)がこれに当たります。パルス幅(1個のパルスの長さ)を変えても、1パルスで進む角度=ステップ角は変わりません。速度を決めるのは1秒間に何個パルスを送るか=周波数です。
②(ア)(イ)を入れ替えるのも定番です。(1)は「パルス数に比例する回転速度」、(5)は「周波数に比例する回転速度」としています。パルスを送るのを途中でやめれば回転も止まるのですから、パルス数と結びつくのは角度です。
③(エ)を「移動角」とする:(1)(5)がこれです。1パルス当たりの回転角度の正式名称は「ステップ角」で、「移動角」という用語はありません。
④(オ)を「追従する力」とする:(2)(4)(5)がこれです。「追従」はパルス指令に付いていく能力の話で、無通電状態の話ではありません。無通電で位置を保つのは永久磁石によるディテントトルク=保持する力です。
⑤永久磁石形と可変リラクタンス形を取り違えると(オ)を落とします。「永久磁石=電気を切っても磁力が残る=保持できる」——素直に考えれば迷いません。
ステップ角から回転を計算する
(エ)のステップ角が分かれば、回転角も回転速度も計算できます。実際に手を動かしておきましょう。
| ステップ角 θ | 1回転に必要なパルス数 | f=1000 Hz のときの回転速度 |
| 1.8° | 200 | 300 min-1 |
| 0.9° | 400 | 150 min-1 |
| 7.5° | 48 | 1250 min-1 |
1.8°/ステップが最も一般的です。360÷1.8=200 パルスで1回転——この200という数字はよく出てきます。
分解能を上げたければステップ角を小さくする——ただし同じ速度を出すのに倍のパルス周波数が必要になります。精度と速度はトレードオフの関係にあるのです。
脱調——ステッピングモータの弱点
ステッピングモータは、位置センサなしで位置決めできるのが最大の利点です。パルス数を数えていれば、今どこにいるか分かる——安価に高精度な位置決めができます。
ところが負荷が重すぎたり加速が急すぎたりすると、指令に追従できなくなります——脱調(ステップアウト)。一度ずれると、センサがないので気づけないのが怖いところです。
| ステッピングモータ | サーボモータ | |
| 位置検出 | 不要(開ループ) | 必要(閉ループ) |
| 脱調 | ★起こりうる | 起こらない(補正する) |
| 価格 | 安い | 高い |
| 高速性 | 苦手 | 得意 |
だから余裕をもった設計が必要です。急激な加減速を避け、台形加減速(徐々に周波数を上げる)で運転する——プリンタや工作機械の送り軸で実際に行われている制御です。
まとめ
| ステッピングモータとは | パルス1個ごとにステップ角θだけ回転するモータ(パルスモータ) |
| (ア)(イ) | パルス数 に比例する 回転角度 だけ回転する |
| (ウ) | パルスの 周波数 に比例する回転速度(幅ではない) |
| (エ) | 1パルス当たりの回転角度=ステップ角 |
| (オ) | 永久磁石形は無通電でも位置を 保持する力(ディテントトルク) |
| 種類 | PM形/VR形(無通電の保持力なし)/ハイブリッド形 |
| 長所 | オープンループで正確な位置決めができる |
| 答え | (3) |
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