今回は令和7年度下期 機械科目 A問題9を解説します。単相変圧器の短絡試験の測定値から漏れリアクタンスを求める計算問題です。
短絡試験では電流計・電圧計・電力計の3つの読みが与えられます。電圧計と電流計からZ、電力計と電流計からRが出て、残りのXは三平方の定理——この3手で終わります。Z−R=X という引き算をしてはいけないのが最大の注意点です。
令和7年度下期 機械科目 A問題9:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題9
電験3種 機械科目 【変圧器】 令和7年度下期 A問題9
単相変圧器の一次側に電流計,電圧計及び電力計を接続して,短絡試験を行う.二次側を短絡し,一次側に定格周波数の電圧を供給し,電流計が30Aを示すように一次側の電圧を調整したところ,電圧計は150V,電力計は1350Wを示した.この変圧器の一次側からみた漏れリアクタンスの値[Ω]として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ.
ただし,変圧器の励磁回路のインピーダンスは無視し,電流計,電圧計及び電力計は理想的な計器であるものとする.
単相変圧器の一次側に電流計、電圧計及び電力計を接続して、短絡試験を行う。二次側を短絡し、一次側に定格周波数の電圧を供給し、電流計が30Aを示すように一次側の電圧を調整したところ、電圧計は150V、電力計は1350Wを示した。この変圧器の一次側からみた漏れリアクタンスの値[Ω]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、変圧器の励磁回路のインピーダンスは無視し、電流計、電圧計及び電力計は理想的な計器であるものとする。
(1)1.50 (2)3.50 (3)4.77 (4)5.00 (5)5.22 Ω

出題のポイント:3つの計器から直角三角形を作る
電流計・電圧計・電力計の3つがあれば、インピーダンスを抵抗分とリアクタンス分に分解できます。電圧と電流からインピーダンスの大きさ、電力から抵抗分——残りは三平方で求まります。
短絡試験は、まさにこの3計器法を変圧器に適用したものです。二次側を短絡しているので、測っているのは巻線抵抗と漏れリアクタンスの直列回路——問題文が「励磁回路のインピーダンスは無視」と断っているのは、並列側を考えなくてよいという意味です。
順に計算する
電圧計÷電流計
電力計÷電流の2乗
三平方の残りの辺
選択肢の4.77に一致
選択肢の作られ方を読む
| 選択肢 | この値の正体 | 誤りの種類 |
| (1) 1.50 | 抵抗分 R | 問われているのはリアクタンス |
| (2) 3.50 | Z−R=5.00−1.50 | ベクトルを単純に引き算した |
| (3) 4.77 ← 正解 | √(Z2−R2) | なし |
| (4) 5.00 | インピーダンス Z | 分解せずに答えた |
| (5) 5.22 | √(Z2+R2) | 引くべきところを足した |
5つの選択肢が、途中で出てくる値と、その組合せ方の誤りで作られています。(1)と(4)は「分解せずに途中の値を答えた」——計算はできているのに、何を聞かれているかを見失ったケースです。
⚠️ よくある間違い
(2) 3.50 は「Z から R を引いた」値です。Z、R、X は直角三角形の3辺ですから、単純な引き算では求まりません。直流回路の感覚を交流に持ち込むと、この誤りが起きます。
(5) 5.22 は足してしまった値——斜辺は Z のほうであって X ではないので、X は Z より小さくなるはずです。この向きの確認だけで(5)は排除できます。
この結果から %Z も求まる
短絡試験の値からは、%インピーダンス降下も計算できます。本問では定格容量や定格電圧が与えられていないので求められませんが、与えられていれば1回の試験で多くのことが分かります。
| 求まるもの | 式 | 本問の値 |
| インピーダンス | V/I | 5.00 Ω |
| 抵抗分 | P/I2 | 1.50 Ω |
| リアクタンス分 | √(Z2−R2) | 4.77 Ω |
| 短絡時の力率 | R/Z | 0.30 |
| 全負荷銅損 | 電力計の指示(定格電流なら) | 1 350 W |
短絡時の力率が0.30 と低いのは、リアクタンス分が支配的だからです。変圧器の短絡インピーダンスはほとんどがリアクタンス——だから短絡故障のときの電流は、ほぼ純粋な遅れ電流になります。
もし電流計の30 A が定格電流なら、電力計の1 350 W がそのまま全負荷銅損です。短絡試験は、銅損の測定と等価回路定数の決定を同時にこなす試験——1回で何役もこなす、効率のよい試験法だと言えます。
⏱️ 本番での進め方
① Z=V/I=150/30=5.00 Ω。
② R=P/I2=1 350/900=1.50 Ω。
③ X=√(25−2.25)=√22.75≒4.77 Ω。
④ X は Z より必ず小さい。5.00 以上の肢は排除できる。
💡 覚え方
「電力は抵抗だけが消費する」——だから電力計から R が出る。そして「Z が斜辺、R と X が直角二辺」——この2文で3計器法は完結します。
短絡試験は、なぜ高圧側から行うのか
短絡試験では、低圧側を短絡して高圧側に電圧を加えるのが普通です。逆にしてもよさそうに思えますが、実務上の理由があります。
| 高圧側に電圧を加える(標準) | 低圧側に電圧を加える | |
| 加える電圧 | 高圧側定格の数%(扱いやすい大きさ) | 低圧側定格の数%(非常に小さく測りにくい) |
| 流す電流 | 高圧側定格電流(小さい) | 低圧側定格電流(大きい) |
| 電源設備 | 小さくて済む | 大電流用の電源が要る |
高圧側は電圧が高く電流が小さいので、その数%の電圧を加えて定格電流を流すほうが、設備も測定も楽です。低圧側から行うと、たとえば100 V 機なら数ボルトの電圧を精密に測ることになり、誤差が大きくなります。
逆に無負荷試験は低圧側から行うのが普通です。こちらは定格電圧をまるごと加える必要があるので、電圧の低い側から行うほうが安全で電源も用意しやすい——2つの試験で反対側から行うのは、そういう理由です。
巻線抵抗には温度補正が要る
本問で求めた抵抗分1.50 Ω は、試験時の巻線温度における値です。銅の抵抗は温度で変わるので、規格では基準温度(75 ℃など)に換算した値で評価します。
20 ℃で測った1.50 Ω を75 ℃に換算すると、(235+75)/(235+20)=1.216 倍で約1.82 Ω。銅損も同じ比率で増えるので、効率の計算にも影響します。
電験3種では温度補正まで問われることは少ないものの、「測定値は温度で変わる」という感覚は持っておきたいところです。実際の効率保証は、運転温度における値で行われます。
まとめ
| 短絡試験とは | 二次側を短絡し、定格電流が流れるまで一次電圧を上げる試験 |
| 測れるもの | 銅損(インピーダンスワット)と一次換算インピーダンス |
| インピーダンス | Z=V/I=150/30=5.00 Ω |
| 抵抗 | R=P/I²=1350/900=1.50 Ω |
| 漏れリアクタンス | X=√(Z²−R²)=√22.75=4.77 Ω |
| 別解(力率) | cosθ=1350/4500=0.30 ⇒ X=Z sinθ=5×0.954 |
| 答え | (3) |
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