電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「Y−Δ切り替えと始動電流」は三相回路の基礎力を試す頻出テーマです。本記事では、令和4年度上期 A問題2「Δ拘束試験の結果からY始動電流を求める」問題を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
鍵は「結線を変えてもインピーダンス Z は変わらない」こと。Δ試験から1相分の Z を求め、Y結線に当てはめるだけ。さらに「Y始動はΔの1/3」の法則を知っていれば検算も一瞬です。
令和4年度上期 機械科目 A問題2:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題2
電験3種 機械科目 【誘導機】 令和4年度上期 A問題2
Δ結線された三相誘導電動機がある。この電動機に対し、Δ結線の状態で拘束試験を実施したところ、一次電圧(線間電圧)43.0 V、一次電流(線電流)9.00 A の結果が得られた。この電動機を Y 結線に切り替え、220 V の三相交流電源に接続して始動するときの始動電流の値 [A] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、磁気飽和による漏れリアクタンスの低下は無視できるものとする。
(1) 15.3 (2) 26.6 (3) 46.0 (4) 79.8 (5) 138
出題のポイント:結線を変えてもインピーダンスは変わらない
この問題の骨組みはこれだけです。Δでの試験結果から1相分のインピーダンス Z を取り出し、そのまま Y結線の回路に当てはめる——巻線そのものは何も変わっていないのですから当然です。
| Δ結線 | Y結線 | |
| 相電圧 | =線間電圧 | =線間電圧 ÷ √3 |
| 相電流 | =線電流 ÷ √3 | =線電流 |
| 1相のインピーダンス | 相電圧 ÷ 相電流 | 相電圧 ÷ 相電流(同じ Z) |
「Δは電圧がそのまま・電流が1/√3」「Yは電圧が1/√3・電流がそのまま」——この対称性が三相回路のすべてです。どちらの結線でも「相電圧÷相電流=Z」は変わりません。

2段階で解く
Δでは相電圧=線間電圧、相電流=線電流/√3。
この値は結線を変えても不変。
Yでは線間電圧の1/√3。
Yでは線電流=相電流なので、これがそのまま答え。


1/3法則を使えば暗算に近い
「Y始動の線電流はΔ直入れの1/3」を知っていれば、もっと速く解けます。
電圧に比例(拘束状態なので Z は一定)。
√3 の計算が一度も要らない。
この経路なら√3 を扱わずに済みます。そして途中で出てくる46.0 A が選択肢(3)として用意されている——「Δのままの値で止まってしまう」誤りを狙った配置です。
| 選択肢 | その値の正体 | 判定 |
| (1) 15.3 | 46.0 ÷ 3 | 正解 |
| (2) 26.6 | 46.0 ÷ √3 | 1/3 とすべきところを1/√3 にした |
| (3) 46.0 | 9.00 × 220/43.0 | Δのままの始動電流(途中で止まった) |
| (4) 79.8 | 46.0 × √3 | √3 を掛ける向きを誤った |
| (5) 138 | 46.0 × 3 | 3倍する向きを誤った |
5つの選択肢が「÷3・÷√3・そのまま・×√3・×3」を並べています。Y結線にすれば電流は必ず減るのですから、46.0 より大きい(4)(5)は物理的にあり得ません——その時点で3択です。
なぜ拘束試験は43 V という低電圧なのか
問題文の「43.0 V」という中途半端な数字には、ちゃんと意味があります。
拘束試験は回転子を固定して行う——つまり始動と同じ状態です。ここに定格電圧(220 V)を加えたら、始動電流がそのまま流れて巻線が焼けます。
試験時の5倍以上の電流が流れる。
だから「一次電流が定格程度になるまで電圧を下げて」測るのです。43 V という値は、その調整の結果として決まった値——この電動機の定格電流が9 A 前後だということも読み取れます。
そして「磁気飽和による漏れリアクタンスの低下は無視できる」という但し書き——これは「低電圧で測った Z を、そのまま定格電圧の状態に当てはめてよい」という許可です。実際には大電流が流れると鉄心が飽和してリアクタンスが下がるのですが、本問ではそれを考えなくてよいということになります。
条件文が「どこまで理想化してよいか」を指定している——誘導機の計算問題を読むときは、この種の一文を必ず拾ってください。
⏱️ 本番での進め方
① 「相電圧÷相電流=Z」は結線によらない。まず1相分に直す。
② Δ:電圧そのまま・電流1/√3/Y:電圧1/√3・電流そのまま。
③ 最速ルートは「Δのまま電圧比例で出してから ÷3」。√3 が要らない。
④ Y結線なら電流は必ず減る——46.0 より大きい選択肢は消せる。
拘束試験では、本当は3つの量を測る
本問は電圧と電流しか与えていませんが、実際の拘束試験では電力も測ります。3つそろって初めて等価回路の定数が分離できるからです。
本問の電動機で、仮に三相電力が300 W だったとしましょう。
r1+r2′ の合計。
x1+x2′ の合計。
0.3〜0.5 が相場。始動時の力率が悪い理由がこれ。
力率0.45——始動時の力率は非常に悪いのです。リアクタンス分が抵抗分の2倍もあるので、電流は大きく流れるのにトルクにはあまり寄与しません。「始動電流が定格の5〜7倍なのに始動トルクは1〜2倍しか出ない」理由が、この数字に現れています。
ちなみに一次抵抗 r1 は直流での抵抗測定から別に求まるので、R から引けば二次抵抗 r2′ が得られます。3つの試験(抵抗測定・無負荷試験・拘束試験)を組み合わせて、等価回路のすべての定数が埋まる——この分担が誘導機の測定の全体像です。
💡 覚え方
「Y始動は電流1/3・トルク1/3」。計算では「Δのまま電圧比例で電流を出してから ÷3」が最速。拘束試験は始動状態を低電圧で再現したもので、電圧を下げるのは定格電圧では始動電流が流れて焼けるから。「磁気飽和を無視」=低電圧で測ったZを高電圧でも使ってよいという許可。
⚠️ よくある間違い
Δのままの46.0 A(選択肢(3))で止まるのが最頻の誤りです。問われているのはY結線での始動電流——もう一段 ÷3 が要ります。もう一つは1/√3 だけ掛けて26.6 A とすること(選択肢(2))——電流もトルクも1/3です。

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