今回は平成23年度 法規科目 A問題8、特殊施設に電気を供給する変圧器等(電気設備技術基準の解釈第187・189・190条)に関する問題です。アーク溶接装置・プール用水中照明灯・遊戯用電車のa〜cについて、適切・不適切の組合せを選びます。
ポイントは「プール用水中照明灯の絶縁変圧器の二次側電路は『非接地』」。水中で使うため接地すると水を介して電流が流れ危険なので、2次側は接地しません。アーク溶接・遊戯用電車の絶縁変圧器規定は正しい記述です。
平成23年度 法規科目 A問題8:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題8
電験3種 法規科目 【電気設備技術基準の解釈】 平成23年度 A問題8
次のaからcの文章は、特殊施設に電気を供給する変圧器等に関する記述である。「電気設備技術基準の解釈」に基づき、適切なものと不適切なものの組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
a.可搬型の溶接電極を使用するアーク溶接装置を施設するとき、溶接変圧器は、絶縁変圧器であること。また、被溶接材又はこれと電気的に接続される持具、定盤等の金属体には、D種接地工事を施すこと。
b.プール用水中照明灯に電気を供給するためには、一次側電路の使用電圧及び二次側電路の使用電圧がそれぞれ300V以下及び150V以下の絶縁変圧器を使用し、絶縁変圧器の二次側配線は金属管工事により施設し、かつ、その絶縁変圧器の二次側電路を接地すること。
c.遊戯用電車(遊園地、遊戯場等の構内において遊戯用のために施設するものをいう。)に電気を供給する電路の使用電圧に電気を変成するために使用する変圧器は、絶縁変圧器であること。
a b c (1) 不適切 適切 適切 (2) 適切 不適切 適切 (3) 不適切 適切 不適切 (4) 不適切 不適切 適切 (5) 適切 不適切 不適切

答えは(2):a適切・b不適切・c適切
bだけが「2次側電路を接地する」となっており、条文と正反対です。
★アーク溶接装置はなぜ規制されるのか
アーク溶接は、電極と母材の間にアークを飛ばして金属を溶かします——意図的にアークを起こす装置です。
作業者は溶接棒を手で持ち、母材にも触れます——充電部に触れながら作業するのです。
汗をかいた手で狭い場所で作業することも多い——感電リスクが極めて高いのです。
★アーク溶接装置の施設要件(解釈190条)
| 要件 | 内容 |
| ★溶接変圧器 | ★★絶縁変圧器であること |
| ★1次側電路の対地電圧 | ★★300V以下 |
| ★1次側電路 | ★★溶接変圧器に近い箇所に開閉器を施設 |
| ★被溶接材等の金属体 | ★★D種接地工事 |
被溶接材にD種接地をするのは、母材が充電されるのを防ぐためです。
持具や定盤も母材と電気的につながるので、同じ扱い——条文が丁寧に列挙している理由です。
★遊戯用電車の規定(解釈189条)
| 項目 | 基準 |
| ★変圧器 | ★★絶縁変圧器(1次側の使用電圧300V以下) |
| ★接触電線の使用電圧 | ★★直流60V以下・交流40V以下 |
| ★接触電線 | ★★人が容易に立ち入らない場所に施設する |
| ★漏えい電流 | ★★軌条の電圧側から大地へ、規定値以下 |
遊園地の豆汽車やゴーカートのような乗り物です——子どもが乗ることが前提。
だから電圧そのものが直流60V・交流40V以下と極めて低い——触れても危険が小さい範囲です。
★水中照明灯の2次側が非接地である理由
接地すれば、大地を通る電流の道ができます——水中の人がその道の一部になりかねません。
非接地なら、1線が漏電しても回路が閉じません——触れても電流が流れにくいのです。
令和4年度上期 A問題7が水中照明灯を正面から扱っています。bはその条文と正反対なので不適切です。
3つの特殊施設に共通するもの
| 施設 | 変圧器 | 特徴的な条件 |
| ★水中照明灯 | ★★絶縁変圧器(1次300V・2次150V以下) | ★★2次側は非接地・金属管工事 |
| ★遊戯用電車 | ★★絶縁変圧器(1次300V以下) | ★★直流60V・交流40V以下 |
| ★アーク溶接装置 | ★★絶縁変圧器 | ★★被溶接材にD種接地 |
すべてに絶縁変圧器が要求されます——1次側と2次側を電気的に切り離すためです。
そのうえで、施設ごとに固有の条件が加わる——この構造を掴めば覚えやすいのです。
なぜ絶縁変圧器なのか
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 絶縁変圧器 | ★★絶縁変圧器 | ★単巻変圧器 | ★★1次2次が分かれている/巻線を共用する |
| 2次側の電位が独立 | ★★2次側の電位が独立 | ★1次側の電位を引きずる | ★★非接地にできるかどうかが変わる |
単巻変圧器では、1次側の接地が2次側にも及びます——非接地にできません。
絶縁変圧器なら、2次側を独立した電路にできます——特殊施設の条文が必ず絶縁変圧器を求める理由です。
特殊施設が並ぶ第7章
| 条 | 対象 |
| ★第187条 | ★★水中照明灯 |
| ★第188条 | ★★交通信号灯 |
| ★第189条 | ★★遊戯用電車 |
| ★第190条 | ★★アーク溶接装置 |
| ★第192条 | ★★電気さく |
| ★第198条 | ★★電気浴器 |
解釈の後半には、こうした特殊施設の条文が並びます——ひととおり眺めておくと出題に強くなります。
いずれも「普通の配線とは違う危険」がある設備です。
「適切・不適切の組合せ」の解き方
3つのうち1つでも確実に判定できれば、選択肢が絞れます——本問ならbの「接地」が明らかに条文と逆。
水中で接地することの危険を知っていれば、即断できます——理由を理解しておく価値です。
すべてを判定しようとせず、確実な1つから攻めるのが定石です。
D種接地が使われる場面
| 対象 | 接地 |
| ★300V以下の低圧機器の外箱 | ★★D種 |
| ★被溶接材・持具・定盤 | ★★D種 |
| ★高圧計器用変成器の2次側 | ★★D種 |
| ★ライティングダクト | ★★D種(省略条件あり) |
D種は低圧側で最もよく使われる接地です——100Ω以下(0.5秒以内遮断なら500Ω以下)。
「低圧の金属体はD種」と押さえておけば大きく外しません。
交通信号灯の施設(解釈188条)
| 項目 | 基準 |
| ★使用電圧 | ★★300V以下 |
| ★配線 | ★★屋外配線は600Vビニル絶縁電線等 |
| ★電線の高さ | ★★道路横断は路面上6m以上等 |
| ★過電流遮断器 | ★★電技63条2項により省略できない |
交通信号灯は、電技63条2項で「公共の安全に関わるもの」に挙げられていました。
特殊施設としての規定と、保護装置の規定の両方がかかる——条文どうしのつながりを意識します。
アーク溶接の作業安全
| 危険 | 対策 |
| ★感電 | ★★自動電撃防止装置(無負荷時に電圧を下げる) |
| ★アーク光 | ★★遮光面・保護めがね(紫外線による電気性眼炎) |
| ★ヒューム | ★★局所排気装置・呼吸用保護具 |
| ★火災 | ★★可燃物の除去・消火器の配置 |
自動電撃防止装置は、溶接していないときの無負荷電圧を25V以下に下げる装置です。
解釈190条の規定に加え、労働安全衛生法の規制もかかります——電気だけでは守りきれない作業だからです。
⏱️ 本番での進め方
① 水中照明灯の2次側は非接地——「接地する」は誤り。
② アーク溶接は絶縁変圧器+被溶接材にD種接地。
③ 遊戯用電車も絶縁変圧器。
④ 3つとも絶縁変圧器が共通のキーワード。
💡 覚え方
解釈187条=水中照明灯は絶縁変圧器(1次300V・2次150V以下)、2次側は非接地式電路、配線は金属管工事。189条=遊戯用電車は絶縁変圧器、接触電線の使用電圧は直流60V・交流40V以下。190条=可搬型アーク溶接装置は溶接変圧器が絶縁変圧器、被溶接材・持具・定盤等の金属体にD種接地工事。
⚠️ よくある間違い
水中照明灯の2次側を「接地する」は誤り——非接地式電路が正しい。アーク溶接の被溶接材はD種接地(A種ではない)。
まとめ
| a アーク溶接 | 絶縁変圧器+被溶接材D種→適切 |
| b 水中照明灯 | 2次側接地→非接地が正で不適切 |
| 水中照明の要点 | 1次300V/2次150V・金属管・非接地 |
| c 遊戯用電車 | 絶縁変圧器→適切 |
| 答え | (2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・水中照明の施設(電気設備技術基準の解釈32):【法規】令和4年度上期 A問題7
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