今回は平成25年度 法規科目 A問題9、電気設備の技術基準への国際規格(IEC 60364)の取り入れ(電気設備技術基準の解釈第218条)に関する空欄補充問題です。需要場所の低圧設備をIEC規格で施設する際の条件が問われます。
ポイントは「一般電気事業者の設備と直接接続する場合は、その事業者の低圧供給設備の『接地工事の施設』と整合がとれていること」。IEC規格の接地方式(TT・TN・IT)と系統側の接地を合わせる必要があるためです。
平成25年度 法規科目 A問題9:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成25年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題9
電験3種 法規科目 【電気設備技術基準の解釈】 平成25年度 A問題9
次の文章は、我が国の電気設備の技術基準への国際規格の取り入れに関する記述である。上記の記述中の空白箇所に当てはまる最も適切なものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
次の文章は、我が国の電気設備の技術基準への国際規格の取り入れに関する記述である。「電気設備技術基準の解釈」において、需要場所に施設する低圧で使用する電気設備は、国際電気標準会議が建築電気設備に関して定めたIEC 60364規格に対応した規定により施設することができる。その際、守らなければならないことの一つは、その電気設備を一般電気事業者の電気設備と直接に接続する場合は、その事業者の低圧の電気の供給に係る設備の【空欄】と整合がとれていなければならないことである。
(1)電路の絶縁性能
(2)接地工事の施設
(3)変圧器の施設
(4)避雷器の施設
(5)離隔距離

答えは(2):接地工事の施設
令和7年度下期 A問題7は同じ218条で、混用禁止と2Ωの条件を扱っています。
この記事は、IEC規格の接地方式そのものを掘り下げます。
★IEC 60364の接地方式(TT・TN・IT)
| 方式 | 電源側 | 機器側 |
| ★TT方式 | ★★直接接地(T=Terra) | ★★独立に接地(T) |
| ★TN方式 | ★★直接接地(T) | ★★保護導体で電源の接地点に接続(N=Neutral) |
| ★IT方式 | ★★非接地又は高インピーダンス接地(I=Isolated) | ★★独立に接地(T) |
1文字目が電源側、2文字目が機器側の接地です——記号の意味を知れば覚えられます。
日本の低圧配電は、TT方式に近い形です——B種接地とD種接地が独立しているからです。
★TN方式とTT方式で保護の考え方が違う
B種とD種の接地抵抗の和で決まるので、数A程度と小さい
保護導体を通るので短絡に近い大電流が流れる
TT方式では地絡電流が小さいので、漏電遮断器で切ります——電流の差を検出するのです。
TN方式では大電流が流れるので、過電流遮断器で切れます——短絡と同じ扱いです。
設計思想が根本から違う——だから接地の整合が必須なのです。
★整合がとれないと何が起きるか
| 不整合 | 起きること |
| ★系統側がTT、需要家側がTN | ★★想定した地絡電流が流れず、保護装置が動作しない |
| ★接地系統が分かれている | ★★接地極間に電位差が生じ、感電の原因になる |
| ★保護導体の扱いが違う | ★★作業者がどちらの方式か判断できない |
保護が成立しなければ、感電も火災も防げません——だから接続の条件になるのです。
「電路の絶縁性能」「変圧器の施設」「避雷器の施設」「離隔距離」は整合条件ではありません。
★なぜ国際規格を取り入れたのか
日本の技術基準は、性能規定化(何を守るかだけを定める)の方向に進んできました。
手段を限定しなければ、国際規格による設計も認められます——218条はその受け皿です。
外資系の工場や輸出向け設備で必要になる場面があります——グローバル化への対応です。
混用が原則禁止される理由
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 同一の電気使用場所で混用しない | ★★同一の電気使用場所で混用しない | ★混用してもよい | ★★2つの保護思想が混在すると危険 |
| 接地抵抗2Ω以下なら例外 | ★★接地抵抗2Ω以下なら例外 | ★無条件で認める | ★★電位差が生じないことが条件 |
同じ建物に2つの方式が混在すると、作業者が判断できません——異なる接地系統の間に電位差も生じます。
だから原則禁止、例外は接地抵抗2Ω以下等の厳しい条件付き——r7shimoki-q7で扱った内容です。
日本の低圧配電の接地
| 接地 | 対象 | 役割 |
| ★B種接地 | ★★柱上変圧器の低圧側中性点 | ★★混触時の電位上昇を抑える |
| ★D種接地 | ★★需要家の機器の外箱 | ★★漏電時に触れた人を守る |
2つの接地は独立しています——これがTT方式的な構成です。
だから地絡電流が小さく、漏電遮断器が必要——日本の分電盤に漏電遮断器が付く理由です。
218条以降の構成
| 条 | 内容 |
| ★第218条 | ★★IEC 60364規格の適用 |
| ★第219条 | ★★IEC 61936-1規格の適用(高圧・特別高圧) |
| ★第220条以降 | ★★分散型電源の系統連系設備 |
解釈の第3条〜第217条が従来方式、218条以降が国際規格——という構造になっています。
比較的新しい分野なので、出題されやすいのです。
条文の呼称の変化
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 一般送配電事業者(現行) | ★★一般送配電事業者(現行) | ★一般電気事業者(旧) | ★★2016年の電力自由化で変わった |
本問(平成25年度)は「一般電気事業者」——当時の呼称です。
現行は「一般送配電事業者」——意味は同じですが、語が変わっています。
古い過去問を解くときは、呼称の違いに注意します。
感電を防ぐ3つの発想
| 発想 | 手段 |
| ★充電部に触れさせない | ★★絶縁・接触防護措置・さく、へい等 |
| ★触れても電流が流れないようにする | ★★非接地・絶縁変圧器・二重絶縁・等電位ボンディング |
| ★流れても短時間で切る | ★★漏電遮断器・接地+過電流遮断器 |
TT方式は3番目、TN方式も3番目ですが手段が違います——漏電遮断器か、過電流遮断器か。
どの発想で守っているかが方式によって変わる——だから混ぜてはいけないのです。
等電位ボンディング
建物内の金属部分どうしを接続し、電位差をなくす手法です——IEC 60364で重視されています。
電位差がなければ、触れても電流が流れません——接地とは別の発想の安全対策です。
浴室やプールなど、感電リスクの高い場所で使われます——日本でも取り入れが進んでいます。
保護導体(PE)という考え方
| 記号 | 意味 |
| ★PE | ★★保護導体(Protective Earthing) |
| ★N | ★★中性線(Neutral) |
| ★PEN | ★★保護導体と中性線を兼ねる導体 |
TN方式では、機器の外箱を保護導体で電源の接地点まで戻します——これが大きな地絡電流を生む仕組みです。
日本の従来方式には、この保護導体という考え方がありません——接地極を各所で独立にとるからです。
⏱️ 本番での進め方
① 整合させるのは接地工事の施設。
② IEC 60364の接地方式はTT・TN・ITの3系統。
③ 日本の低圧配電はTT方式に近い——だから漏電遮断器が要る。
④ 同一の電気使用場所での混用は原則禁止。
💡 覚え方
解釈218条=需要場所の低圧電気設備はIEC 60364規格に対応した規定で施設できる。一般送配電事業者等の電気設備と直接に接続する場合は、その事業者の低圧の電気の供給に係る設備の接地工事の施設と整合がとれていること。同一の電気使用場所ではIEC関連規定と従来方式を混用しない(接地抵抗2Ω以下等の場合を除く)。
⚠️ よくある間違い
整合の対象は「電路の絶縁性能」「変圧器の施設」「避雷器の施設」「離隔距離」ではなく接地工事の施設——接地方式が食い違うと保護が成立しないから。
まとめ
| 適用規格 | IEC 60364(建築電気設備) |
| 適用対象 | 需要場所に施設する低圧電気設備 |
| 直接接続の条件 | 事業者の低圧供給設備と整合 |
| 整合対象 | 接地工事の施設(接地方式) |
| 趣旨 | 地絡保護のため接地方式を合わせる |
| 答え | (2) |
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