架空送電35【電験3種 電力】3度出題の鉄板問題!ダンパは振動吸収・着雪防止ではない 平成20年度 A問題9 完全解説

電験3種 電力科目 架空送電 平成20年度 A問題9 3度出た鉄板問題!ダンパの役割を取り違えるな

今回は平成20年度 電力科目 A問題9、架空送電線路の構成要素の誤り選択問題です。実はこの問題が大元で、令和4年度下期A問題8(架空送電12)・令和5年度下期A問題8(架空送電9)とほぼ同一文面・同じ答え(2)で3度出題されています。

誤りは毎回トーショナルダンパ:本来の役割は微風振動のエネルギー吸収(電線に取り付けるおもり)なのに、「着雪防止が目的」という難着雪リングの説明にすり替えられています。

目次

平成20年度 電力科目 A問題9:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 架空送電 平成20年度 A問題9 問題文
平成20年度 電力科目 A問題9 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題9

電験3種 電力科目 【架空送電】 平成20年度 A問題9

 架空送電線路の構成要素に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。

(1) アークホーン:がいしの両端に設けられた金属電極をいい、雷サージによるフラッシオーバの際生じるアークを電極間に生じさせ、がいし破損を防止するものである。

(2) トーショナルダンパ:着雪防止が目的で電線に取り付ける。風による振動エネルギーで着雪を防止し、ギャロッピングによる電線間の短絡事故などを防止するものである。

(3) アーマロッド:電線の振動疲労防止やアークスポットによる電線溶断防止のため、クランプ付近の電線に同一材質の金属を巻き付けるものである。

(4) 相間スペーサ:強風による電線相互の接近及び衝突を防止するため、電線相互の間隔を保持する器具として取り付けるものである。

(5) 埋設地線:塔脚の地下に放射状に埋設された接地線、あるいは、いくつかの鉄塔を地下で連結する接地線をいい、鉄塔の塔脚接地抵抗を小さくし、逆フラッシオーバを抑止する目的等のため取り付けるものである。

答え誤っている記述は (2)です。

誤りは(2):トーショナルダンパは振動対策

「着雪防止が目的で電線に取り付ける」——目的が違います

部品正しい目的働き
★トーショナルダンパ★★微風振動の防止★ねじり方向の動きで振動を吸収する
★難着雪リング★★着雪防止★雪が筒状に成長するのを妨げる
★スパイラルロッド★★着雪防止・風騒音低減★螺旋状に巻いて気流を乱す

「ダンパ」という名前が付く部品は、振動を抑えるものです——着雪防止用ではありません

トーショナルとは「ねじりの」という意味——ねじり方向の動きでエネルギーを吸収します

着雪防止に使うのは難着雪リングやスパイラルロッド——雪が付きにくい形にする部品です。

問題文の後半「ギャロッピングによる短絡事故を防止」も食い違います——ギャロッピング対策は相間スペーサだからです。

(1) アークホーンの役割

がいしを守るために、あえて放電させる金具です

段階起きること
★雷サージが襲来する
★②★がいしより先にアークホーン間で放電する
★③★アークが金属電極の間で燃える
★④★がいし本体は熱を受けずに済む

がいしの表面でアークが燃えると、磁器が割れます——熱衝撃に弱いからです。

だから金属どうしの間で放電させて、がいしから遠ざける——身代わりになる部品です。

アークホーンは焼損しても交換が容易——がいしを替えるより安いのです。

絶縁協調と同じ発想——壊れてよいものを先に壊すことになります。

(3)(4)(5) 残る3つの部品

部品目的取り付ける場所
★アーマロッド★振動疲労とアークによる溶断の防止★クランプ付近
★相間スペーサ★電線相互の接近・衝突の防止★相と相の間
★埋設地線★塔脚接地抵抗の低減★鉄塔の地下

アーマロッドは「同一材質の金属を巻き付ける」——異種金属だと電食が起きるからです。

アークスポットとは、放電が電線に当たって溶ける現象——巻いてあれば本体は守られます

相間スペーサはギャロッピング対策の定番——相どうしの距離を保ちます

埋設地線は逆フラッシオーバを防ぎます——V=RI の R を下げるのです。

⚠️ よくある間違い
(2)の「ギャロッピングによる短絡事故を防止」だけを見て正しいと判断する——ギャロッピング対策は相間スペーサです。
「ダンパ」は振動を抑える部品——名前から判断できます
(1)のアークホーンを疑ってしまう——がいしを守るための身代わりで正しい。
(3)の「同一材質の金属」を疑ってしまう——異種金属では電食が起きます
(5)の埋設地線を疑ってしまう——塔脚接地抵抗を下げる標準的な対策です。
部品の名前と目的が食い違うものを探す——それが本問の解き方になります。

⏱️ 本番での進め方
①★「ダンパ」と付く部品は振動対策。着雪防止ではない。
②★着雪防止は難着雪リング・スパイラルロッド。
③★アークホーンはがいしの身代わりに放電する。
④★アーマロッドは同一材質でなければ電食が起きる。

💡 覚え方
「ダンパは揺れ、リングは雪」——名前が目的を表していますアークホーンは身代わり——壊れてよいものを先に壊すという発想です。

振動と対策の一覧は平成27年度 A問題8架空送電:架空送電線の振動)にあります。

がいし装置に付く金具

(1)のアークホーン以外にも、金具があります

金具役割
★アークホーン★★アークをがいしから遠ざける
★シールドリング★電界を均一にしてコロナを防ぐ
★クランプ★電線をがいし装置に固定する
★ヨーク★複数のがいし連をまとめる

シールドリングは、金具の先端に電界が集中するのを防ぎます——丸い輪で電界をなだらかにするのです。

アークホーンと似た形ですが、目的が違います——片方は放電させ、片方は放電を防ぐ

超高圧では両方が取り付けられます——役割が分かれているからです。

クランプ付近が弱点になる理由

(3)のアーマロッドは、クランプ付近を守ります

クランプは電線を強く握るので、そこで動きが止まります——振動の節になるのです。

節では曲げが集中し、繰り返されると金属疲労が進みます——だから素線が切れることになります。

アーマロッドを巻けば、曲げが分散されます——断面が実質的に太くなるからです。

要点をもう一度

5つの部品の名前と目的を照合する問題です。

部品目的正誤
(1) アークホーンがいしの破損防止
★(2) トーショナルダンパ★着雪防止と書かれている★誤(微風振動対策)
(3) アーマロッド振動疲労・溶断の防止
(4) 相間スペーサ電線相互の接近防止
(5) 埋設地線塔脚接地抵抗の低減

「ダンパ」は制振部品——名前から目的が分かります

着雪防止なら「難着雪リング」や「スパイラルロッド」——別の部品です。

名前から役割を推測する

名前の要素意味
★ダンパ★振動を減衰させる★ストックブリッジダンパ・トーショナルダンパ
★ロッド★棒状に巻く★アーマロッド・スパイラルロッド
★スペーサ★間隔を保つ★相間スペーサ・多導体スペーサ
★ホーン★角状の電極★アークホーン

名前が機能を表しているものが多い——そこから目的を推測できます

本問はその対応が崩れているものを探す問題——「ダンパなのに着雪防止」が不自然です。

着雪を防ぐ工夫

(2)で問われた着雪防止の部品を見ましょう

部品しくみ
★難着雪リング★★電線に輪を付け、雪が筒状に成長するのを妨げる
★スパイラルロッド★★螺旋状に巻いて表面を凹凸にする
★カウンターウェイト★おもりで電線がねじれるのを防ぐ

雪は電線の周りを回りながら筒状に成長します——電線がねじれるからです。

難着雪リングは、その成長を途中で断ち切ります——輪のところで雪が分かれて落ちるのです。

スパイラルロッドは表面を凹凸にして、雪が付きにくくします——風騒音の低減にも効きます

いずれも「ダンパ」ではありません——振動を抑える部品とは別系統です。

着雪を防げば、ギャロッピングもスリートジャンプも減ります——原因を絶つ対策になります。

埋設地線の敷き方

(5)の埋設地線を、もう少し詳しく見ましょう

方式敷き方効果
★放射状★鉄塔から四方へ電線を伸ばす★接地面積を稼ぐ
★連続埋設地線★★鉄塔どうしを地下でつなぐ★★並列になり抵抗が下がる

問題文が「いくつかの鉄塔を地下で連結する」と書いています——それが連続埋設地線です。

複数の鉄塔の接地が並列になるので、抵抗が大きく下がります——1基あたりの負担が減るのです。

山岳地では岩盤で接地抵抗が高くなりがち——だから連続埋設が有効になります。

目標は10 Ω 以下、できれば数 Ω——V=RI で電位上昇を抑えるためです。

これが逆フラッシオーバを防ぐ最も基本的な対策——問題文の(5)が正しい記述である理由になります。

まとめ

誤り(2) ダンパの目的は微風振動吸収(着雪防止ではない)
アークホーンアーク誘導→がいし破損防止(1)
アーマロッド同一材質巻付け→疲労・溶断防止(3)
埋設地線接地抵抗低減→逆FO抑止(5)
再出題H20→R04下→R05下の3度・答えはすべて(2)
答え(2)

▼あわせて解きたい関連問題
・同一問題・R05下版(架空送電9):【電力】令和5年度下期 A問題8
・同一問題・R04下版(架空送電12):【電力】令和4年度下期 A問題8

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