今回は平成30年度 電力科目 A問題6、保護リレー(保護継電器)と再閉路に関する空欄補充問題です。事故検出→遮断→再閉路という送電線保護の一連の流れと、主保護・後備保護の二段構えが問われます。
流れで覚えましょう:保護リレーが異常を検出→遮断器を動作させて事故区間を切り離す。架空送電線の事故は大部分が落雷による気中フラッシオーバ=一過性なので、遮断してアークが消えれば絶縁は回復する。だから一定時間後に再閉路して送電を再開できる——塩害(架空送電6)との対比が効くポイントです。
平成30年度 電力科目 A問題6:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成30年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題6
電験3種 電力科目 【架空送電】 平成30年度 A問題6
次の文章は、保護リレーに関する記述である。
電力系統において、短絡事故や地絡事故が発生した場合、事故区間は速やかに系統から切り離される。このとき、保護リレーで異常を検出し、(ア)を動作させる。架空送電線は特に距離が長く、事故発生件数も多い。架空送電線の事故の多くは(イ)による気中フラッシオーバに起因するため、事故区間を高速に遮断し、フラッシオーバを消滅させれば、絶縁は回復し、架空送電線は通電可能な状態となる。このため、事故区間の遮断の後、一定時間(長くて1分程度)を経て、(ウ)が行われる。一般に、主保護の異常に備え、(エ)保護が用意されており、動作の確実性を期している。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 遮断器 落雷 保守 常備 (2) 断路器 落雪 再閉路 常備 (3) 変圧器 落雷 点検 後備 (4) 断路器 落雪 点検 後備 (5) 遮断器 落雷 再閉路 後備

(ア) 切るのは遮断器
保護リレーは判定するだけで、電流は切りません。
| 機器 | 役割 | 電流を切れるか |
| ★保護リレー | ★異常を検出して指令を出す | ★切らない |
| ★遮断器 | ★指令を受けて回路を切る | ★★切れる |
| ★断路器 | ★点検時に確実に切り離す | ★切れない(無電流のみ) |
「リレーで検出し、遮断器を動作させる」——役割が分かれています。
断路器には消弧装置がないので、事故電流を切れません——だから(ア)は遮断器です。
「変圧器」は電圧を変える機器——保護の役割はありません。
(イ)(ウ) 再閉路という仕組み
架空送電線の事故は、その多くが一時的なものです。
| 原因 | 割合の目安 | 性質 |
| ★落雷 | ★6〜7割 | ★★一時的(切れば回復する) |
| 鳥獣・樹木 | 1割程度 | 一時的なことが多い |
| 断線・設備故障 | わずか | 永久事故 |
落雷でがいしがフラッシオーバしても、アークを消せば元に戻ります——がいし自体は壊れていないからです。
だから一度切って、しばらく待ってからつなぎ直す——それが再閉路です。
| 方式 | 再投入までの時間 | 用途 |
| ★高速度再閉路 | ★1秒以内 | ★安定度を保つため |
| ★中速度再閉路 | ★1〜15秒 | ★— |
| ★低速度再閉路 | ★1分程度 | ★確実に消弧させる |
問題文の「長くて1分程度」は低速度再閉路——アークが完全に消えるのを待ちます。
再閉路に失敗すれば、永久事故と判断して切り離す——1回だけ試すのが普通です。
(エ) 主保護と後備保護
保護は二重に用意します。
| ★主保護 | ★後備保護 | |
| ★動作 | ★最初に動く | ★主保護が失敗したとき動く |
| ★動作時間 | ★速い | ★遅らせてある |
| ★遮断範囲 | ★事故区間だけ | ★広くなることもある |
後備保護は、主保護の失敗に備える予備——「バックアップ」の訳語です。
「常備」という用語はありません——もっともらしい造語になります。
後備保護は動作時間を遅らせてあります——主保護が先に動く機会を与えるためです。
それでも動かなければ、少し広い範囲を切る——停電しても事故を止めるほうが優先だからです。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「断路器」としてしまう——選択肢(2)(4)がそれです。断路器は事故電流を切れません。
(イ)を「落雪」としてしまう——選択肢(2)(4)。架空送電線の事故の多くは落雷です。
(ウ)を「保守」「点検」としてしまう——選択肢(1)(3)(4)。一定時間後に自動でつなぎ直すのが再閉路。
(エ)を「常備」としてしまう——選択肢(1)(2)。存在しない用語です。
(ウ)だけで(2)(5)に絞れます——あとは(ア)で確定するでしょう。
⏱️ 本番での進め方
①★検出はリレー、遮断は遮断器。
②★架空送電線の事故の多くは落雷。
③★一時的な事故なので再閉路で復旧できる。
④★主保護の予備が後備保護。「常備」は存在しない。
💡 覚え方
「切って、待って、つなぎ直す」——それが再閉路です。落雷は一時的なので、絶縁が回復すれば元に戻る——架空送電線ならではの復旧法になります。
避雷器と絶縁協調は平成23年度 A問題10(変電:発変電所用避雷器)にあります。
保護リレーの種類
(ア)の保護リレーには、検出方式がいくつかあります。
| 方式 | 検出するもの | 用途 |
| ★過電流リレー | ★電流の大きさ | ★配電線・小規模系統 |
| ★距離リレー | ★電圧と電流の比(インピーダンス) | ★★送電線の主保護 |
| ★差動リレー | ★入る電流と出る電流の差 | ★変圧器・母線 |
| ★方向リレー | ★電力の向き | ★ループ系統 |
送電線では距離リレーが主保護になります——事故点までの距離が分かるからです。
インピーダンスは距離に比例します——だから自分の担当区間かどうか判定できるのです。
問題文の「主保護」がこれにあたります——その予備が後備保護になります。
なぜ架空送電線は事故が多いのか
| ★架空送電線 | 地中送電線 | |
| ★外部環境 | ★★雷・風雪・鳥獣にさらされる | ★地中で保護されている |
| ★事故の頻度 | ★★高い | ★低い |
| ★復旧 | ★★再閉路で自動復旧できる | ★掘削が必要で長期化 |
事故は多いが、復旧は速い——それが架空送電線の性格です。
地中は事故が少ないが、起きると復旧に時間がかかる——正反対の関係になります。
要点をもう一度
4つの空欄が、保護から復旧までの流れを表しています。
| 空欄 | 答え | 流れの中の位置 |
| (ア) | ★遮断器 | ★リレーの指令で切る |
| (イ) | ★落雷 | ★事故の主因 |
| (ウ) | ★再閉路 | ★一定時間後に自動復旧 |
| (エ) | ★後備 | ★主保護の予備 |
検出→遮断→待機→再投入という一連の流れ——すべて自動で行われます。
「常備保護」という用語はありません——もっともらしい造語です。
再閉路の成功率
| 事故の性質 | 割合 | 再閉路 |
| ★一時的(落雷など) | ★8〜9割 | ★★成功する |
| ★永久(断線など) | ★1〜2割 | ★失敗する |
大半は再閉路で復旧します——だから試す価値があるのです。
失敗すれば永久事故と判断して切り離す——何度も試すと事故が拡大します。
停電時間が数十秒で済むか、数時間になるか——大きな違いです。
距離リレーの段階保護
主保護と後備保護は、動作範囲でも分けられます。
| 段 | 保護範囲 | 動作時間 | 位置づけ |
| ★1段 | ★自区間の80〜90 % | ★瞬時 | ★★主保護 |
| ★2段 | ★自区間+次区間の一部 | ★0.4秒程度 | ★後備保護 |
| ★3段 | ★さらに広い範囲 | ★1秒程度 | ★後備保護 |
1段は自区間の全部をカバーしません——測定誤差で隣の区間まで切ってしまう恐れがあるから。
残り10〜20 % は、対向側のリレーが受け持ちます——両端から挟み込むのです。
2段・3段は、隣の区間の保護が失敗したときに動きます——それが後備保護の役割になります。
時間を遅らせてあるので、正常なら動きません——先に主保護が切るからです。
再閉路の実際の動き
(ウ)の再閉路を、時間の流れで追いましょう。
| 時刻 | 起きること |
| ★0秒 | ★落雷でフラッシオーバ |
| ★0.1秒 | ★リレーが検出し遮断器が動作 |
| ★★消弧の時間 | ★アークが消え絶縁が回復する |
| ★1分後 | ★★遮断器を自動で再投入 |
| ★成功なら | ★そのまま送電を継続 |
| ★失敗なら | ★永久事故として切り離す |
切ってから待つ時間が重要です——短すぎるとアークが残っていて再び事故になるから。
高速度再閉路は1秒以内に戻します——系統の安定度を保つためです。
発電機は切り離されている間に位相がずれていきます——長引くと同期が外れるのです。
だから重要な基幹系統では高速度再閉路を使う——本問の1分程度は、配電に近い系統の設定になります。
まとめ
| (ア) | 遮断器(リレーは検出・指令のみ) |
| (イ) | 落雷(気中フラッシオーバ・一過性) |
| (ウ) | 再閉路(絶縁回復後に自動再投入) |
| (エ) | 後備保護(主保護のバックアップ) |
| 答え | (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
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