今回は令和6年度下期 電力科目 A問題6、調相設備に関する空欄補充問題です。電力用コンデンサ・分路リアクトル・同期調相機・静止形無効電力補償装置(SVC)——受電端電圧を一定に保つための無効電力調整デバイス4兄弟を総ざらいします。
鍵は「調相設備は負荷と並列」「コンデンサ=力率を進める/リアクトル=力率を遅らせる」「同期調相機=界磁電流で連続調整」「SVC=半導体スイッチで高速制御」の4点。どれも変電ユニットの超頻出知識です。
出題のポイント:調相設備と無効電力

並列接続を起点に、コンデンサとリアクトルが力率を動かす向き、同期調相機とSVCの制御方法を区別します。
令和6年度下期 電力科目 A問題6:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題6
電験3種 電力科目 【変電】 令和6年度下期 A問題6
次の文章は、調相設備に関する記述である。
一般に電力系統では、受電端電圧を一定に保つため、調相設備を負荷と(ア)に接続して無効電力の調整を行っている。
電力用コンデンサは力率を(イ)ために用いられ、分路リアクトルは力率を(ウ)ために用いられる。
同期調相機は、その(エ)を加減することによって、進み又は遅れの無効電力を連続的に調整することができる。
静止形無効電力補償装置は、(オ)でリアクトルに流れる電流を調整することにより、無効電力を高速に制御することができる。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 並列 進める 遅らせる 界磁電流 半導体スイッチ (2) 直列 遅らせる 進める 電機子電流 半導体整流装置 (3) 並列 遅らせる 進める 電機子電流 半導体スイッチ (4) 直列 進める 遅らせる 電機子電流 半導体整流装置 (5) 並列 遅らせる 進める 界磁電流 半導体スイッチ
4種類の調相設備

本問は「力率を進める/遅らせる」という表現で問うています。
| 設備 | 流す電流 | 力率を | 使う場面 |
| ★電力用コンデンサ | ★進み電流 | ★★進める | ★遅れ負荷の力率改善 |
| ★分路リアクトル | ★遅れ電流 | ★★遅らせる | ★進み気味の系統を戻す |
コンデンサは電流が電圧より進みます——だから系統全体の力率を進める方向へ動かすのです。
ふつうの負荷は遅れ力率——それを1.0 へ近づけるのがコンデンサの役目です。
軽負荷時は線路の静電容量で進み気味になります——そこでリアクトルが遅らせることになります。
「力率を進める」と「電圧を上げる」は同じこと——表現が違うだけです。
5つの空欄と選択肢照合

同期調相機は、界磁電流で無効電力を変えます。
| 界磁電流 | 状態 | 電機子電流 | 働き |
| ★弱め | ★不足励磁 | ★遅れ | ★リアクトルとして働く |
| ★ちょうど | ★— | ★最小 | ★力率1 |
| ★強め | ★過励磁 | ★進み | ★コンデンサとして働く |
加減するのは界磁電流であって、電機子電流ではありません——電機子電流は結果として変わるのです。
界磁電流を横軸、電機子電流を縦軸に取るとV字になります——V曲線と呼ばれます。
1台で進みにも遅れにもなれる——しかも連続的に調整できます。
けれども回転機なので損失が大きく、近年は新設されません。
(オ) 半導体スイッチで制御する
静止形無効電力補償装置は、サイリスタで電流を絞ります。
| ★半導体スイッチ | ★半導体整流装置 | |
| ★働き | ★交流のまま位相制御で電流を加減する | ★交流を直流に変える |
| ★用途 | ★★無効電力の制御(SVC) | ★直流電源・励磁装置など |
リアクトルに流れる電流を位相制御で絞れば、見かけの容量が変わります。
そこへ固定コンデンサを併設すれば、差し引きで進みにも遅れにもなる——これが連続調整のからくりです。
整流するわけではありません——交流のまま制御するので「スイッチ」です。
応答は1サイクル以内——同期調相機の数秒とは桁違いになります。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「直列」としてしまう——選択肢(2)(4)がそれです。無効電力の出し入れは並列。
(イ)(ウ)を入れ替えてしまう——選択肢(3)(5)。コンデンサが進める、リアクトルが遅らせるです。
(エ)を「電機子電流」としてしまう——選択肢(2)(3)(4)。加減するのは界磁電流。電機子電流は結果です。
(オ)を「半導体整流装置」としてしまう——選択肢(2)(4)。整流はしません。交流のまま位相制御します。
(ア)と(エ)の2欄で(1)に確定できます。
⏱️ 本番での進め方
①★調相設備は負荷と並列。
②★コンデンサは力率を進め、リアクトルは遅らせる。
③★同期調相機は界磁電流を加減する。
④★SVCは半導体スイッチで位相制御。整流ではない。
💡 覚え方
「界磁で加減、スイッチで絞る」——同期調相機とSVCの違いはそこです。回るか回らないか、界磁か半導体か——対にして覚えましょう。
調相設備の種類は平成24年度 A問題8(変電:調相設備)、重負荷/軽負荷の使い分けは平成18年度 A問題5(変電:調相設備)にあります。
調相設備は4年度で問われている
| 年度 | 形式 | 問われた中心 |
| ★平成18年度 A5 | ★空欄補充 | ★重負荷/軽負荷の使い分け |
| ★平成21年度 A6 | ★誤りを選ぶ | ★対応を逆にした記述 |
| ★平成24年度 A8 | ★空欄補充 | ★設備の種類(5空欄) |
| ★令和6年度下期 A6 | ★空欄補充 | ★力率をどちらへ動かすか |
4年度とも、問われる知識の根っこは同じ——コンデンサが進み、リアクトルが遅れです。
表現が「電圧を上げる/下げる」だったり「力率を進める/遅らせる」だったりする——どちらも同じことを言っています。
表現の対応を押さえる
| 設備 | 無効電力 | 力率 | 電圧 |
| ★コンデンサ | ★進みを供給 | ★進める | ★上げる |
| ★リアクトル | ★遅れを吸収 | ★遅らせる | ★下げる |
3つの表現が、1つの動作を指しています——どの言い方で問われても答えられるようにしましょう。
要点をもう一度
5つの空欄が、調相設備の全体像を並べています。
| 空欄 | 答え | 誤答の型 |
| (ア) | ★並列 | ★直列 |
| (イ) | ★進める | ★遅らせる |
| (ウ) | ★遅らせる | ★進める |
| (エ) | ★界磁電流 | ★電機子電流 |
| (オ) | ★半導体スイッチ | ★半導体整流装置 |
(ア)と(エ)の2欄で(1)に確定できます。
(エ)は「加減する」対象を問うています——操作するのは界磁電流、変わるのが電機子電流。
SVCが「整流」しない理由
無効電力を制御するのに、直流にする必要はありません。
サイリスタで導通のタイミングを遅らせれば、実効的な電流が減ります——位相制御です。
交流のまま、流れる量だけを加減している——だから「スイッチ」と呼ばれます。
整流装置は直流を作る装置——励磁装置などに使われますが、SVCとは別です。
受電端電圧を一定に保つ意味
問題文の冒頭が、調相設備の目的を述べています。
| 電圧が変動すると | 影響 |
| ★高すぎる | ★絶縁の劣化・照明の短寿命化 |
| ★低すぎる | ★電動機のトルク不足・始動困難 |
| ★変動が大きい | ★照明のちらつき・電子機器の誤動作 |
電動機のトルクは電圧の2乗に比例します——1割下がるとトルクは約2割減るのです。
低圧では101±6 V、202±20 V に保つ義務があります——電気事業法で定められています。
その義務を果たすために、変電所で調整する——調相設備はそのための設備です。
負荷は刻々と変わるので、追従して調整し続ける——だから「連続的に調整できる」ことに価値があるのです。
調相設備を選ぶ基準
4種類のうち、どれを使うかは条件で決まります。
| 設備 | 調整 | 応答 | 費用 | 向く場面 |
| ★電力用コンデンサ | ★進みのみ・段階的 | ★遅い | ★★安い | ★遅れ負荷の力率改善 |
| ★分路リアクトル | ★遅れのみ・段階的 | ★遅い | ★安い | ★軽負荷時の電圧抑制 |
| ★同期調相機 | ★両方向・連続 | ★数秒 | ★高い | ★近年は新設されない |
| ★SVC | ★両方向・連続 | ★★1サイクル以内 | ★高い | ★★変動の速い負荷 |
ふつうの系統ではコンデンサとリアクトルで足ります——安く、投入・開放するだけだからです。
アーク炉のように激しく変動する負荷にはSVC——1サイクル以内で追従できるから。
同期調相機は、回転機ゆえの損失と保守が負担——SVCに置き換わりました。
本問が4種類すべてを挙げているのは、その比較を問うため——それぞれの持ち味を押さえましょう。
まとめ
| (ア)並列 | 調相設備は負荷と並列に接続して無効電力を調整 |
| (イ)進める | 電力用コンデンサ=進み無効電力を供給し力率改善 |
| (ウ)遅らせる | 分路リアクトル=軽負荷時の進み力率対策(フェランチ) |
| (エ)界磁電流 | 同期調相機は界磁電流の加減で進み⇔遅れを連続調整 |
| (オ)半導体スイッチ | SVC=サイリスタでリアクトル電流を高速制御→答えは(1) |
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