火力56【電験3種 電力】ランキンサイクルの効率 η=(h₁−h₂)/(h₁−h₃)!3つのエンタルピーの役どころ 平成19年度 A問題2 完全解説

電験3種 電力科目 火力 平成19年度 A問題2 3つのエンタルピーで効率が出る!式の意味は?

今回は平成19年度 電力科目 A問題2を解説します。汽力発電所の各部の汽水のエンタルピー(タービン入口3487kJ/kg・タービン出口2270kJ/kg・復水器出口138kJ/kg)から、ランキンサイクルの効率を求める問題です。

式はη=(h₁−h₂)/(h₁−h₃)の1本。分子はタービンで取り出した仕事、分母はボイラで加えた熱。「どの差が仕事で、どの差が受熱か」を体で覚えるのがこの問題の価値です。

目次

平成19年度 電力科目 A問題2:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 火力 平成19年度 A問題2 問題文
平成19年度 電力科目 A問題2 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題2

電験3種 電力科目 【火力】 平成19年度 A問題2

 ある汽力発電所において、各部の汽水の温度及び単位質量当たりのエンタルピー[kJ/kg]が下表の値であるとき、このランキンサイクルの効率[%]の値として、最も近いのは次のうちどれか。

 タービン入口の過熱蒸気のエンタルピー h₁=3487[kJ/kg]、タービン出口の湿り蒸気のエンタルピー h₂=2270[kJ/kg]、復水器出口の飽和水のエンタルピー h₃=138[kJ/kg]

箇所エンタルピー[kJ/kg]
タービン入口の過熱蒸気(h₁)3 487
タービン出口の湿り蒸気(h₂)2 270
復水器出口の飽和水(h₃)138

(1)34.9 (2)36.3 (3)39.1 (4)43.3 (5)53.6 %

式に当てはめるだけ

ランキンサイクルの熱効率
\( \eta=\dfrac{h_1-h_2}{h_1-h_3} \)

取り出した仕事÷加えた熱

\( \eta=\dfrac{3487-2270}{3487-138} \)
数値を入れる
\( =\dfrac{1217}{3349}=0.3634 \)
計算する
★36.3 %

分子はタービンで取り出した仕事、分母はボイラで加えた熱——効率の定義そのものです。

答え正解は (2)——36.3 % です。

3つのエンタルピーが表す状態

記号場所状態本問の値
★h₁★タービン入口★過熱蒸気★3,487 kJ/kg
★h₂★タービン出口★湿り蒸気★2,270 kJ/kg
★h₃★復水器出口★飽和水★138 kJ/kg

エンタルピーは「その状態の水(蒸気)1 kg が持つエネルギー」——基準は0 ℃ の水です。

h₃=138 kJ/kg は約33 ℃ の水——水の比熱4.19 で割ると33 ℃ になります。復水器が33 ℃ まで冷やしたということです。

熱の行き先を確かめる

\( h_1-h_3=3487-138=3349 \)
ボイラで加えた熱
★100 %
\( h_1-h_2=3487-2270=1217 \)
タービンが取り出した仕事
★36.3 %
\( h_2-h_3=2270-138=2132 \)
復水器が捨てた熱
★63.7 %

1217+2132=3349——加えた熱がぴったり分かれています

捨てた熱が63.7 %——復水器の損失が最大だという事実が、数字で確かめられます

実際の発電所では、これに再熱・再生を加えて効率を上げます——本問は基本形の値だと考えてください。

⚠️ よくある間違い
分母を h₁ だけにしてしまう——1217/3487=34.9 % となり選択肢(1)に一致します。
加えた熱は h₁−h₃——復水器を出た水(h₃)を h₁ まで持ち上げた分です。h₁ そのものではありません
分子を h₁−h₃ としてしまう——それは加えた熱取り出した仕事は h₁−h₂ です。
h₂ と h₃ を取り違える——(3487−138)/(3487−2270)=275 % となってあり得ない値になります。効率が100 % を超えたら、必ずどこかが誤りです。
選択肢(5)の53.6 % は 1−h₂/h₁ など——もっともらしい誤りが用意されています

⏱️ 本番での進め方
①★分子=h₁−h₂(仕事)、分母=h₁−h₃(加えた熱)。
②h₁ だけを分母にすると(1)に誘導される。
③★(h₁−h₂)+(h₂−h₃)=(h₁−h₃) で検算できる。
④効率が100 % を超えたら計算違い。

💡 覚え方
「仕事わる加えた熱」——効率の定義に立ち返れば式は作れます加えた熱は h₃ から h₁ まで——ゼロからではありません

ランキンサイクルの4過程は平成20年度 A問題3火力:ランキンサイクルの4過程)にあります。

エンタルピーとは何か

「その状態の物質1 kg が持っているエネルギー」——内部エネルギーに圧力の仕事を足したものです。

比エンタルピー
\( h=u+pv\ [\mathrm{kJ/kg}] \)

u:内部エネルギー pv:押しのけ仕事

蒸気は流れながら仕事をします——そのとき、後ろから押される分のエネルギーも含めて考えるのです。

だから流れのある系では、内部エネルギーではなくエンタルピーを使う——タービンの計算に便利な量だと言えます。

水と蒸気のエンタルピーの目安

状態比エンタルピー覚え方
0 ℃ の水★0 kJ/kg★基準点
100 ℃ の水約419 kJ/kg4.19×100
★100 ℃ の蒸気★約2,676 kJ/kg★蒸発熱2,257 が加わる
★600 ℃ の過熱蒸気★約3,500 kJ/kg★本問の h₁ に近い

水を蒸気にするだけで2,257 kJ/kg も要ります——温度を上げる分よりずっと大きいのです。

逆に復水器では、この蒸発熱を丸ごと捨てることになります——損失が大きい理由がここにあります

ポンプの仕事を無視してよい理由

厳密には、給水ポンプも仕事をしています——それでも式に現れません

ポンプの仕事
\( w_p=v\,\Delta p \)

v:水の比体積(約0.001 m³/kg)

\( w_p=0.001\times 24\times 10^6=24\,000\ [\mathrm{J/kg}] \)
24 MPa まで加圧すると
★24 kJ/kg
\( \dfrac{24}{1217}=0.020 \)
タービンの仕事と比べると
★わずか2 %

タービンが1,217 kJ/kg を取り出すのに対し、ポンプは24 kJ/kg——2 % 程度です。

水はほとんど縮まないので、加圧に要る仕事が小さい——これがランキンサイクルの大きな利点になります。

もし気体を圧縮するなら、圧縮機の仕事は膨大——ガスタービンでは、タービン出力の半分以上が圧縮機に食われます

水を使うことで、その無駄を避けている——だから汽力発電はランキンサイクルなのです

実際の発電所の効率と比べる

本問の36.3 % は、基本のランキンサイクルの値——実機はもう少し高くなります

条件熱効率差の理由
★本問(基本形)★36.3 %★再熱も再生もない
再熱再生あり41〜43 %★抽気で給水を温め、途中で再熱する
USC+再熱再生43 % 超蒸気条件も上げる

5〜7 ポイントの差——再熱と再生がどれだけ効いているかが分かります

なお本問の値は発電端——所内で使う電力を引いた送電端では、さらに数 % 下がることになります。

試験問題では、どちらを問われているかを条件文で確かめてください

エンタルピー差で考える利点

温度や圧力ではなく、エンタルピーで与えられているのが本問の特徴です。

温度と圧力から状態を求めるには、蒸気表が要ります——試験では持ち込めません

だからエンタルピーの値を直接与えて、引き算と割り算だけで解けるようにしている——出題者の配慮だと言えます。

逆に言えば、式さえ覚えていれば確実に得点できる問題——落としたくないところです。

覚えるべきは η=(h₁−h₂)/(h₁−h₃) の1本だけ——3つの値がどの場所のものかを問題文で確かめ、当てはめるそれで答えが出ます

この1問で押さえること

ランキンサイクルの効率は、3つのエンタルピーから求まります——分子は h₁−h₂、分母は h₁−h₃

分母を h₁ だけにすると34.9 % となり、選択肢(1)に誘導されます——加えた熱は h₃ から測ると覚えておきましょう。

検算は (h₁−h₂)+(h₂−h₃)=(h₁−h₃)——仕事と捨てた熱の合計が、加えた熱に一致します

まとめ

h₁−h₂タービンで取り出した仕事=1217kJ/kg
h₁−h₃ボイラで受け取った熱=3349kJ/kg
h₂−h₃復水器で捨てる熱=2132kJ/kg
効率η=1217/3349≒36.3%→(2)
前提給水ポンプの仕事は無視

▼あわせて解きたい関連問題
・タービン効率の計算(火力18・同じエンタルピー差の発想):【電力】令和4年度上期 A問題3

・この年度の問題を通しで解く:電験3種 平成19年度 問題一覧(全4科目)

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