今回は平成20年度 電力科目 B問題15を解説します。定格容量5000kV·Aの発電機が時間帯ごとに皮相電力と力率を変えて運転し、重油14tを消費したとき、(a)発電端の発電電力量と(b)送電端熱効率を求める問題です。
運転表がkV·Aと力率で与えられるのが本問の新しい顔。電力量に効くのは有効電力P=皮相電力S×力率cosθだけで、遅れ・進みの区別は関係ありません。あとは火力21・火力44と同じ流れ作業です。
平成20年度 電力科目 B問題15:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 B問題15
電験3種 電力科目 【火力】 平成20年度 B問題15
汽力発電所において、定格容量5000[kV·A]の発電機が9時から22時の間に下表に示すような運転を行ったとき、発熱量44000[kJ/kg]の重油を14[t]消費した。この9時から22時の間の運転について、次の(a)及び(b)に答えよ。ただし、所内率は5[%]とする。
【運転表】9時〜13時:4500kV·A・力率遅れ85%/13時〜18時:5000kV·A・力率遅れ90%/18時〜22時:4000kV·A・力率進み95%
時刻 皮相電力[kV·A] 力率[%] 9時〜13時 4 500 遅れ85 13時〜18時 5 000 遅れ90 18時〜22時 4 000 進み95 (a) 発電端の発電電力量[MW·h]として、正しいのは次のうちどれか。
(1)12 (2)23 (3)38 (4)53 (5)59 MW·h
(b) 送電端熱効率[%]の値として最も近いのは次のうちどれか。
(1)28.8 (2)29.4 (3)31.0 (4)31.6 (5)32.2 %

(a) 皮相電力に力率を掛ける
表に並ぶのは皮相電力——発電電力量を出すには有効電力に直します。
| 時間帯 | 皮相電力 | 力率 | 有効電力 | 時間 | 電力量 |
| 9〜13時 | 4,500 kV·A | 0.85 | 3,825 kW | 4 h | 15,300 kW·h |
| 13〜18時 | 5,000 kV·A | 0.90 | 4,500 kW | 5 h | 22,500 kW·h |
| 18〜22時 | 4,000 kV·A | 0.95 | 3,800 kW | 4 h | 15,200 kW·h |
| ★合計 | — | — | — | 13 h | ★53,000 kW·h |
力率が「遅れ」でも「進み」でも、掛け方は同じ——有効電力の大きさは変わりません。
遅れ・進みは無効電力の向きを表すだけ——有効電力の計算には関係ないのです。
(b) 送電端熱効率を求める
発電端から所内分を差し引いてから、燃料の熱と比べます。
★送電端電力量
★kW·h×3600
★29.4 %
送電端熱効率29.4 %——発電端なら31.0 % になります。
所内率5 % のぶんだけ、送電端のほうが低い——その差1.6 ポイントです。
選択肢(3)の31.0が発電端熱効率——所内率を引き忘れた人向けに用意されています。
kV·A と kW を混同しない
本問で最も気をつけるところ——単位が違えば意味も違います。
| 量 | 単位 | 意味 |
| ★皮相電力 S | ★kV·A | ★電圧×電流。設備の容量 |
| ★有効電力 P | ★kW | ★実際に仕事をする電力 |
| 無効電力 Q | kvar | 仕事をせず往復するだけ |
発電機の定格は kV·A で表されます——電流の大きさで巻線の発熱が決まるからです。
けれども電力量として売れるのは kW·h——だから力率を掛ける必要があるのです。
力率が低いと、同じ設備でも取り出せる電力が減る——それが力率改善が求められる理由でもあります。
⚠️ よくある間違い
(a)で力率を掛け忘れる——4500×4+5000×5+4000×4=59,000 となり選択肢(5)の59に一致します。最も多い誤りでしょう。
「kV·A」と書かれていたら、必ず力率を掛ける——そのまま kW として扱わないことです。
(a)で進み力率を引いてしまう——遅れも進みも、有効電力は同じように求めます。
(b)で所内率を引き忘れる——31.0 % となって選択肢(3)に一致します。「送電端」と問われていることを確認しましょう。
(b)で所内率を割ってしまう——32.6 % となり選択肢(5)の32.2 に近づいて危険です。
⏱️ 本番での進め方
①(a)★kV·A には必ず力率を掛ける。忘れると(5)。
②(a) 遅れも進みも、有効電力の求め方は同じ。
③(b)★送電端=発電端×(1−所内率)。引き忘れると(3)。
④1 kW·h=3600 kJ で熱量に直す。
💡 覚え方
「kV·A に力率を掛けて kW」——単位が違えば計算も違います。そして送電端は発電端より小さい——(1−所内率)を掛けます。
運転表から効率を求める問題は平成24年度 B問題15(火力:30日連続運転と運転表)にもあります。
力率の遅れと進み
本問の表には「遅れ」と「進み」が混ざっています——意味を確認しておきましょう。
| ★遅れ力率 | ★進み力率 | |
| 電流の位相 | ★電圧より遅れる | ★電圧より進む |
| 負荷の性質 | ★誘導性(電動機など) | ★容量性(コンデンサ、長い送電線) |
| 発電機から見ると | ★無効電力を送り出す | ★無効電力を受け取る |
| 有効電力の求め方 | ★S×cosθ | ★S×cosθ(同じ) |
遅れでも進みでも、有効電力は皮相電力×力率——求め方は変わりません。
違うのは無効電力の向き——本問では問われていないので気にしなくてよいのです。
夜間に進み力率になるのは、負荷が減って送電線の静電容量が目立つから——18時以降が進みになっているのは、そうした事情でしょう。
発電機の定格が kV·A である理由
巻線の発熱は電流で決まります——力率とは無関係です。
だから「電圧×電流」=皮相電力で定格を決める——力率が低くても、電流が定格なら限界になります。
本問の13〜18時は5,000 kV·A=定格いっぱい——力率0.90 なので有効電力は4,500 kW です。
(a)と(b)のつながり
(a)で求めた53 MW·h を、(b)でそのまま使います。
| 順 | やること | 値 |
| ① | 皮相電力×力率×時間を足す | ★53 MW·h(発電端) |
| ② | ×(1−所内率) | ★50.35 MW·h(送電端) |
| ③ | ×10³×3600 で kJ に | 1.813×10⁸ kJ |
| ④ | 重油の発熱量で割る | ★29.4 % |
(a)を間違えると(b)も外れます——力率の掛け忘れが最も痛いことになります。
選択肢は12〜59 MW·h と幅があります——桁が合っているかを確かめるのに使えるでしょう。
13時間という運転時間
9時から22時まで、13時間の運転——1日中ではありません。
4+5+4=13——表の時間を足して確かめるのが検算になります。
夜間は停止しているという設定——ピーク対応の運転だと読めます。
この1問で押さえること
表の値は皮相電力[kV·A]——力率を掛けて有効電力[kW]に直します。忘れると59 MW·h で選択肢(5)に誘導されます。
遅れでも進みでも、有効電力は S×cosθ——求め方は同じです。
(b)は送電端なので(1−所内率)を掛ける——引き忘れると31.0 % で選択肢(3)になります。
kV·A・kW・kvar の関係
| 量 | 記号 | 関係 |
| 皮相電力 | S [kV·A] | ★S=√(P²+Q²) |
| 有効電力 | P [kW] | ★P=S cosθ |
| 無効電力 | Q [kvar] | ★Q=S sinθ |
3つは直角三角形の関係——皮相電力が斜辺になります。
発電機の定格が S で表されるのは、電流で発熱が決まるから——力率が低くても電流が定格なら限界です。
まとめ
| (a)有効電力 | 4500×0.85=3825/5000×0.90=4500/4000×0.95=3800kW |
| (a)発電電力量 | 3825×4+4500×5+3800×4=53000kW·h=53MW·h→(4) |
| (b)送電端電力量 | 53000×0.95=50350kW·h |
| (b)入熱 | 14×10³×44000=6.16×10⁸kJ |
| (b)送電端熱効率 | 50350×3600/6.16×10⁸≒29.4%→(2) |
▼あわせて解きたい関連問題
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