今回は平成20年度 電力科目 A問題3を解説します。汽力発電所の基本的な熱サイクルのP-V線図について、サイクルの名称と4つの過程(給水ポンプ・ボイラ・タービン・復水器)の熱力学的な呼び名を埋める空欄補充問題です。
汽力発電の基本サイクルはランキンサイクル。装置と過程の対応は「ポンプ=断熱圧縮/ボイラ=等圧受熱/タービン=断熱膨張/復水器=等圧放熱」の4点セットで、平成26年度(T-s線図版・火力36)とまったく同じ知識で解けます。
平成20年度 電力科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題3
電験3種 電力科目 【火力】 平成20年度 A問題3
図は、汽力発電所の基本的な熱サイクルの過程を、体積Vと圧力Pの関係で示したPV線図である。図の汽力発電の基本的な熱サイクルを(ア)という。A→Bは、給水が給水ポンプで加圧されボイラに送り込まれる(イ)の過程である。B→Cは、この給水がボイラで加熱され、飽和水から乾き飽和蒸気となり、さらに加熱され過熱蒸気となる(ウ)の過程である。C→Dは、過熱蒸気がタービンで仕事をする(エ)の過程である。D→Aは、復水器で蒸気が水に戻る(オ)の過程である。上記の記述中の空白箇所に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) ランキンサイクル 断熱圧縮 等圧受熱 断熱膨張 等圧放熱 (2) ブレイトンサイクル 断熱膨張 等圧放熱 断熱圧縮 等圧放熱 (3) ランキンサイクル 等圧受熱 断熱膨張 等圧放熱 断熱圧縮 (4) ランキンサイクル 断熱圧縮 等圧放熱 断熱膨張 等圧受熱 (5) ブレイトンサイクル 断熱圧縮 等圧受熱 断熱膨張 等圧放熱

ランキンサイクルの4つの過程
水が蒸気になり、仕事をして、また水に戻る——その1周が4つに分かれます。
| 区間 | 機器 | 過程 | 何が起きるか |
| ★A→B | ★給水ポンプ | ★断熱圧縮 | ★水を高圧にする(体積はほぼ変わらない) |
| ★B→C | ★ボイラ・過熱器 | ★等圧受熱 | ★圧力を保ったまま加熱し、蒸気にする |
| ★C→D | ★タービン | ★断熱膨張 | ★膨張しながら仕事をする |
| ★D→A | ★復水器 | ★等圧放熱 | ★熱を捨てて水に戻す |
「断熱」は熱の出入りがないという意味——ポンプとタービンは、熱をやりとりせずに仕事だけをするのです。
「等圧」は圧力が一定という意味——ボイラと復水器は、圧力を保ったまま熱を出し入れします。
仕事をする2つが断熱、熱を扱う2つが等圧——きれいに対応していると覚えましょう。
PV線図の読み方
横軸が体積、縦軸が圧力——囲まれた面積が1周で取り出せる仕事になります。
| 区間 | 体積の変化 | 圧力の変化 |
| A→B(ポンプ) | ★ほとんど変わらない(水は縮まない) | ★大きく上がる |
| B→C(ボイラ) | ★大きく増える(水→蒸気) | 一定 |
| C→D(タービン) | ★さらに増える | ★大きく下がる |
| D→A(復水器) | ★大きく減る(蒸気→水) | 一定 |
水が蒸気になると体積は約1,700倍——B→C で右へ大きく動くのはそのためです。
逆に A→B のポンプでは、水はほとんど縮みません——ほぼ真上へ動くことになります。だからポンプの仕事は小さい——タービンの仕事の数 % 程度です。
ブレイトンサイクルとの違い
| ★ランキンサイクル | ★ブレイトンサイクル | |
| 作動流体 | ★水と蒸気 | ★空気と燃焼ガス |
| 使う設備 | ★汽力発電(蒸気タービン) | ★ガスタービン |
| 相の変化 | ★ある(水⇔蒸気) | ★ない(気体のまま) |
4つの過程の並びは似ています——圧縮→受熱→膨張→放熱。違うのは、水を使うか気体だけで回すかです。
コンバインドサイクルは、この2つを組み合わせたもの——ブレイトンの排熱でランキンを回すのです。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「ブレイトンサイクル」としてしまう——選択肢(2)(5)がそれです。
問題文に「復水器で蒸気が水に戻る」とあります——水を使うのはランキン。ブレイトンは気体のままです。
(ウ)と(オ)を逆にしてしまう——選択肢(4)。ボイラは熱を受け、復水器は熱を捨てる——「受熱」「放熱」の向きを確認しましょう。
順番をずらしてしまう——選択肢(3)は1つずつ後ろにずれている形です。A→B が「給水ポンプで加圧」と明記されているので断熱圧縮から始まります。
⏱️ 本番での進め方
①(ア)★復水器があればランキン。ガスタービンならブレイトン。
②★仕事をする2つ(ポンプ・タービン)が断熱。
③★熱を扱う2つ(ボイラ・復水器)が等圧。
④ボイラは受熱、復水器は放熱。向きを確認。
💡 覚え方
「断熱圧縮→等圧受熱→断熱膨張→等圧放熱」——この順で唱えて覚えます。ポンプ・ボイラ・タービン・復水器が順に対応しています。
コンバインドサイクルは平成26年度 A問題3(火力:コンバインドサイクルの高効率化)にあります。
熱効率を式で表す
4つの過程が分かれば、効率も書き下せます。
| 項 | 意味 | 対応する過程 |
| ★h₁−h₂ | ★タービンが取り出した仕事 | ★C→D(断熱膨張) |
| ★h₁−h₃ | ★ボイラで加えた熱 | ★B→C(等圧受熱) |
「取り出した仕事÷加えた熱」——効率の定義そのものです。
ポンプの仕事は小さいので、ふつう無視します——だから分母に h₃ が現れることになります。
効率を上げる3つの工夫
| 工夫 | やること | 効果 |
| ★再熱サイクル | ★高圧タービンを出た蒸気を温め直す | ★湿り度を下げ、熱落差を増やす |
| ★再生サイクル | ★抽気で給水を温める | ★ボイラで加える熱を減らす |
| 再熱再生 | 両方を組み合わせる | 現在の大型機の標準 |
基本のランキンサイクルは、あくまで出発点——実際の発電所は、ここに再熱と再生を足しています。
それでも4つの過程という骨格は変わりません——まず基本形を押さえることが大切です。
空欄の絞り込み手順
5つの空欄がありますが、2つで確定します。
| 確定させる欄 | 正しい語 | 残る選択肢 |
| (ア) | ランキンサイクル | ★(1)(3)(4) |
| (イ) | 断熱圧縮 | ★(1)(4) |
| (ウ) | 等圧受熱 | ★(1)に確定 |
(ア)は問題文に「復水器で蒸気が水に戻る」とある——水を使うのはランキンです。これで2つ落ちます。
(イ)は「給水ポンプで加圧」——圧縮。膨張や受熱ではありません。
最後に(ウ)——ボイラで加熱するのですから受熱。(4)は「等圧放熱」としているので落ちます。
蒸気の状態が変わっていく
| 点 | 状態 | 説明 |
| A | ★飽和水(復水) | 復水器を出たところ |
| B | ★圧縮水 | ポンプで高圧にされた水 |
| C | ★過熱蒸気 | ボイラ・過熱器を出たところ |
| D | ★湿り蒸気 | タービンで仕事をして温度が下がった |
問題文が「飽和水から乾き飽和蒸気となり、さらに加熱され過熱蒸気」と段階を追っているのは、B→C の途中経過を説明しているのです。
タービン出口では湿り蒸気になります——水滴が翼を叩いて傷める(エロージョン)ため、再熱サイクルで湿り度を下げる工夫がなされます。
PV線図と TS線図
熱サイクルを描く図には2種類あります——見えるものが違います。
| 図 | 軸 | 囲む面積の意味 |
| ★PV線図 | ★体積 V と圧力 P | ★1周で取り出せる仕事 |
| ★TS線図 | ★エントロピー S と絶対温度 T | ★出入りした熱量 |
本問は PV線図——体積の変化が大きいので、水と蒸気の違いがよく見えます。
TS線図では、断熱変化が垂直な線になります——熱の出入りがないのでエントロピーが変わらないからです。
だからランキンサイクルの TS線図は、縦の直線2本と曲線2本で囲まれた形になります——どの過程が断熱かが一目で分かるのが利点です。
hs線図(モリエ線図)も使われる
実務では、比エンタルピー h とエントロピー s の図がよく使われます——タービンの仕事が縦方向の長さで読めるからです。
熱落差 h₁−h₂ をそのまま測れる——計算に直結するので便利なのです。
まとめ
| (ア) | 汽力発電の基本サイクル=ランキンサイクル |
| (イ) | A→B 給水ポンプ=断熱圧縮 |
| (ウ) | B→C ボイラ=等圧受熱 |
| (エ) | C→D タービン=断熱膨張 |
| (オ) | D→A 復水器=等圧放熱→(1) |
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