火力54【電験3種 電力】ランキンサイクルの4過程!断熱圧縮→等圧受熱→断熱膨張→等圧放熱 平成20年度 A問題3 完全解説

電験3種 電力科目 火力 平成20年度 A問題3 断熱圧縮から等圧放熱まで!4つの過程を追う

今回は平成20年度 電力科目 A問題3を解説します。汽力発電所の基本的な熱サイクルのP-V線図について、サイクルの名称と4つの過程(給水ポンプ・ボイラ・タービン・復水器)の熱力学的な呼び名を埋める空欄補充問題です。

汽力発電の基本サイクルはランキンサイクル。装置と過程の対応は「ポンプ=断熱圧縮/ボイラ=等圧受熱/タービン=断熱膨張/復水器=等圧放熱」の4点セットで、平成26年度(T-s線図版・火力36)とまったく同じ知識で解けます。

目次

平成20年度 電力科目 A問題3:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 火力 平成20年度 A問題3 問題文
平成20年度 電力科目 A問題3 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題3

電験3種 電力科目 【火力】 平成20年度 A問題3

 図は、汽力発電所の基本的な熱サイクルの過程を、体積Vと圧力Pの関係で示したPV線図である。図の汽力発電の基本的な熱サイクルを(ア)という。A→Bは、給水が給水ポンプで加圧されボイラに送り込まれる(イ)の過程である。B→Cは、この給水がボイラで加熱され、飽和水から乾き飽和蒸気となり、さらに加熱され過熱蒸気となる(ウ)の過程である。C→Dは、過熱蒸気がタービンで仕事をする(エ)の過程である。D→Aは、復水器で蒸気が水に戻る(オ)の過程である。上記の記述中の空白箇所に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)
(1)ランキンサイクル断熱圧縮等圧受熱断熱膨張等圧放熱
(2)ブレイトンサイクル断熱膨張等圧放熱断熱圧縮等圧放熱
(3)ランキンサイクル等圧受熱断熱膨張等圧放熱断熱圧縮
(4)ランキンサイクル断熱圧縮等圧放熱断熱膨張等圧受熱
(5)ブレイトンサイクル断熱圧縮等圧受熱断熱膨張等圧放熱
答え正解は (1)——(ア)ランキンサイクル (イ)断熱圧縮 (ウ)等圧受熱 (エ)断熱膨張 (オ)等圧放熱 です。

ランキンサイクルの4つの過程

水が蒸気になり、仕事をして、また水に戻る——その1周が4つに分かれます

区間機器過程何が起きるか
★A→B★給水ポンプ★断熱圧縮★水を高圧にする(体積はほぼ変わらない)
★B→C★ボイラ・過熱器★等圧受熱★圧力を保ったまま加熱し、蒸気にする
★C→D★タービン★断熱膨張★膨張しながら仕事をする
★D→A★復水器★等圧放熱★熱を捨てて水に戻す

「断熱」は熱の出入りがないという意味——ポンプとタービンは、熱をやりとりせずに仕事だけをするのです。

「等圧」は圧力が一定という意味——ボイラと復水器は、圧力を保ったまま熱を出し入れします

仕事をする2つが断熱、熱を扱う2つが等圧——きれいに対応していると覚えましょう。

PV線図の読み方

横軸が体積、縦軸が圧力——囲まれた面積が1周で取り出せる仕事になります。

区間体積の変化圧力の変化
A→B(ポンプ)★ほとんど変わらない(水は縮まない)★大きく上がる
B→C(ボイラ)★大きく増える(水→蒸気)一定
C→D(タービン)★さらに増える★大きく下がる
D→A(復水器)★大きく減る(蒸気→水)一定

水が蒸気になると体積は約1,700倍——B→C で右へ大きく動くのはそのためです。

逆に A→B のポンプでは、水はほとんど縮みません——ほぼ真上へ動くことになります。だからポンプの仕事は小さい——タービンの仕事の数 % 程度です。

ブレイトンサイクルとの違い

★ランキンサイクル★ブレイトンサイクル
作動流体★水と蒸気★空気と燃焼ガス
使う設備★汽力発電(蒸気タービン)★ガスタービン
相の変化★ある(水⇔蒸気)★ない(気体のまま)

4つの過程の並びは似ています——圧縮→受熱→膨張→放熱違うのは、水を使うか気体だけで回すかです。

コンバインドサイクルは、この2つを組み合わせたもの——ブレイトンの排熱でランキンを回すのです。

⚠️ よくある間違い
(ア)を「ブレイトンサイクル」としてしまう——選択肢(2)(5)がそれです。
問題文に「復水器で蒸気が水に戻る」とあります——水を使うのはランキンブレイトンは気体のままです。
(ウ)と(オ)を逆にしてしまう——選択肢(4)ボイラは熱を受け、復水器は熱を捨てる——「受熱」「放熱」の向きを確認しましょう。
順番をずらしてしまう——選択肢(3)1つずつ後ろにずれている形です。A→B が「給水ポンプで加圧」と明記されているので断熱圧縮から始まります

⏱️ 本番での進め方
①(ア)★復水器があればランキン。ガスタービンならブレイトン。
②★仕事をする2つ(ポンプ・タービン)が断熱。
③★熱を扱う2つ(ボイラ・復水器)が等圧。
④ボイラは受熱、復水器は放熱。向きを確認。

💡 覚え方
「断熱圧縮→等圧受熱→断熱膨張→等圧放熱」——この順で唱えて覚えますポンプ・ボイラ・タービン・復水器順に対応しています。

コンバインドサイクルは平成26年度 A問題3火力:コンバインドサイクルの高効率化)にあります。

熱効率を式で表す

4つの過程が分かれば、効率も書き下せます

ランキンサイクルの熱効率
\( \eta=\dfrac{h_1-h_2}{h_1-h_3} \)

h₁:タービン入口 h₂:タービン出口 h₃:復水器出口

意味対応する過程
★h₁−h₂★タービンが取り出した仕事★C→D(断熱膨張)
★h₁−h₃★ボイラで加えた熱★B→C(等圧受熱)

「取り出した仕事÷加えた熱」——効率の定義そのものです。

ポンプの仕事は小さいので、ふつう無視します——だから分母に h₃ が現れることになります。

効率を上げる3つの工夫

工夫やること効果
★再熱サイクル★高圧タービンを出た蒸気を温め直す★湿り度を下げ、熱落差を増やす
★再生サイクル★抽気で給水を温める★ボイラで加える熱を減らす
再熱再生両方を組み合わせる現在の大型機の標準

基本のランキンサイクルは、あくまで出発点——実際の発電所は、ここに再熱と再生を足しています

それでも4つの過程という骨格は変わりません——まず基本形を押さえることが大切です。

空欄の絞り込み手順

5つの空欄がありますが、2つで確定します。

確定させる欄正しい語残る選択肢
(ア)ランキンサイクル★(1)(3)(4)
(イ)断熱圧縮★(1)(4)
(ウ)等圧受熱★(1)に確定

(ア)は問題文に「復水器で蒸気が水に戻る」とある——水を使うのはランキンです。これで2つ落ちます

(イ)は「給水ポンプで加圧」——圧縮膨張や受熱ではありません

最後に(ウ)——ボイラで加熱するのですから受熱(4)は「等圧放熱」としているので落ちます

蒸気の状態が変わっていく

状態説明
A★飽和水(復水)復水器を出たところ
B★圧縮水ポンプで高圧にされた水
C★過熱蒸気ボイラ・過熱器を出たところ
D★湿り蒸気タービンで仕事をして温度が下がった

問題文が「飽和水から乾き飽和蒸気となり、さらに加熱され過熱蒸気」と段階を追っているのは、B→C の途中経過を説明しているのです。

タービン出口では湿り蒸気になります——水滴が翼を叩いて傷める(エロージョン)ため、再熱サイクルで湿り度を下げる工夫がなされます。

PV線図と TS線図

熱サイクルを描く図には2種類あります——見えるものが違います

囲む面積の意味
★PV線図★体積 V と圧力 P★1周で取り出せる仕事
★TS線図★エントロピー S と絶対温度 T★出入りした熱量

本問は PV線図——体積の変化が大きいので、水と蒸気の違いがよく見えます

TS線図では、断熱変化が垂直な線になります——熱の出入りがないのでエントロピーが変わらないからです。

だからランキンサイクルの TS線図は、縦の直線2本と曲線2本で囲まれた形になります——どの過程が断熱かが一目で分かるのが利点です。

hs線図(モリエ線図)も使われる

実務では、比エンタルピー h とエントロピー s の図がよく使われます——タービンの仕事が縦方向の長さで読めるからです。

熱落差 h₁−h₂ をそのまま測れる——計算に直結するので便利なのです。

まとめ

(ア)汽力発電の基本サイクル=ランキンサイクル
(イ)A→B 給水ポンプ=断熱圧縮
(ウ)B→C ボイラ=等圧受熱
(エ)C→D タービン=断熱膨張
(オ)D→A 復水器=等圧放熱→(1)

▼あわせて解きたい関連問題
・T-s線図で追うランキンサイクル(火力36・同じ4過程):【電力】平成26年度 A問題2

・この年度の問題を通しで解く:電験3種 平成20年度 問題一覧(全4科目)

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