今回は平成23年度 電力科目 A問題3を解説します。汽力発電所の復水器に関する一般的説明として誤っているものを選ぶ問題です。
火力10・火力22で固めた知識の総まとめ回。真空度が高い=背圧が低い=熱落差が大きい=効率が上がる——この因果を1本覚えていれば、(4)の「低下」が逆だと一目で分かります。
平成23年度 電力科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題3
電験3種 電力科目 【火力】 平成23年度 A問題3
汽力発電所の復水器に関する一般的説明として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
汽力発電所で最も大きな損失は、復水器の冷却水に持ち去られる熱量である。
復水器の冷却水の温度が低くなるほど、復水器の真空度は高くなる。
汽力発電所では一般的に表面復水器が多く用いられている。
復水器の真空度を高くすると、発電所の熱効率が低下する。
復水器の補機として、復水器内の空気を排出する装置がある。

誤りは(4):真空度を高くすると熱効率は向上する
逆に書かれています——真空度を高くする目的が、まさに熱効率の向上だからです。
| 真空度 | 復水器の圧力 | 凝縮温度 | 熱効率 |
| ★高い | ★低い | ★低い | ★向上する |
| 低い | 高い | 高い | 低下する |
真空度が高い=圧力が低い——言葉の向きが逆になるので混乱しやすいところです。
「真空度」は真空の度合い——完全真空に近いほど高いことになります。
(3) 表面復水器の構造
復水器には2つの方式があります——汽力発電所ではほぼ表面復水器です。
| 方式 | 仕組み | 復水の質 |
| ★表面復水器 | ★管の中に冷却水、外側に蒸気。直接触れない | ★きれい(そのままボイラへ戻せる) |
| 混合復水器 | 冷却水を蒸気に直接吹きかける | ★冷却水と混じる |
ボイラ給水には極めて高い純度が求められます——不純物があると管の内側にスケールが付くからです。
海水と混ざってしまっては使えません——だから管で仕切る表面復水器が使われます。
逆に言えば、管に穴が開くと海水が混入する——これが復水器細管漏えいという重大なトラブルです。
(5) 空気を抜く装置が要る理由
真空にしても、空気は入ってきます——放っておくと真空度が保てません。
| 空気の侵入経路 | 内容 |
| ★軸封部・フランジ | ★大気圧との差で吸い込まれる |
| 給水に溶けていた空気 | 加熱されて分離してくる |
空気が溜まると、蒸気が管に触れるのを邪魔します——熱が伝わりにくくなるのです。
さらに空気の分圧だけ全体の圧力が上がる——真空度が落ちて効率が下がることになります。
だから空気抽出器(エゼクタや真空ポンプ)で絶えず抜き続ける——これが補機の役割です。
溶けた酸素は、鉄を腐食させる原因にもなります——脱気という意味でも重要な装置になります。
⚠️ よくある間違い
(2)を疑ってしまう——「冷却水の温度が低くなるほど真空度は高くなる」は正しい記述です。
冷たい水なら、より低い温度まで蒸気を冷やせます——低い温度の飽和圧力は低い=真空度が高い。だから冬のほうが効率がよいのです。
(1)を疑ってしまう——「最も大きな損失は冷却水に持ち去られる熱量」も正しい。入れた熱の45〜50 %にあたります。
(4)の「真空度」と「圧力」を混同する——真空度が高い=圧力が低い。「高い」「低い」がどちらを指すか、必ず確認しましょう。
⏱️ 本番での進め方
①★真空度を高くすると熱効率は向上する。(4)は逆。
②★真空度が高い=圧力が低い=凝縮温度が低い。
③(3) 汽力発電所は表面復水器。復水の純度を守るため。
④(5) 空気抽出器で漏れ込んだ空気を抜き続ける。
💡 覚え方
「真空度は高く、圧力は低く」——言葉が逆向きになるのが要注意点です。復水器の目的はすべて「捨てる温度を下げる」——そこから記述の正誤が判断できます。
復水器の空欄補充は平成18年度 A問題1(火力:復水器の空欄補充)、令和5年度下期 A問題3(火力:復水器はなぜ真空にするのか)にあります。
正誤判定の進め方
5つとも復水器の基本的な性質——1つずつ確かめます。
| 記述 | 内容 | 判定 |
| (1) | 最大の損失は冷却水が持ち去る熱 | 正しい |
| (2) | 冷却水が冷たいほど真空度が高い | 正しい |
| (3) | 表面復水器が多く用いられる | 正しい |
| ★(4) | ★真空度を高くすると熱効率が低下 | ★誤り(向上する) |
| (5) | 空気を排出する装置がある | 正しい |
(2)と(4)は矛盾しています——冷却水が冷たいほど真空度が高いのに、真空度が高いと効率が下がるのなら、わざわざ冷たい水を使う理由がありません。
選択肢どうしの突き合わせで矛盾が見つかる——知識があやふやでも絞り込めるのです。
復水器の真空度はどれくらいか
| 指標 | 典型的な値 |
| ★絶対圧力 | ★5 kPa 程度 |
| ★大気圧との比 | ★約5 %(95 % の真空) |
| ★凝縮温度 | ★33 ℃ 程度 |
| 冷却水の温度 | 入口20 ℃ 前後、出口は7 ℃ ほど上昇 |
冷却水の出口温度+数 ℃ が凝縮温度——それより下げることはできません。
だから真空度の限界は、海水の温度で決まる——設計ではなく立地が決めるとも言えます。
復水器を分解して見る
(3)の表面復水器を、もう少し詳しく見ておきましょう。
| 部位 | 役割 |
| ★冷却管(細管) | ★中を冷却水が通る。数万本が束ねられる |
| ★管板 | ★細管の両端を支え、水室と蒸気室を仕切る |
| 水室 | 冷却水の入口・出口 |
| ★ホットウェル | ★凝縮した水が溜まる底部 |
| ★空気抽出口 | ★漏れ込んだ空気を抜く |
細管はチタンや銅合金——海水に触れるので、腐食に強い材料が要ります。
近年はチタン管が主流——薄くできて熱が伝わりやすく、海水にも侵されないからです。
海水が漏れ込むと大ごとになる
細管に穴が開くと、海水が復水に混じります——それがボイラへ送られると重大な事態です。
塩分がボイラ内で濃縮し、管の内側に付着する——熱が伝わらなくなって管が焼損します。
だから復水の電気伝導率を常時監視している——塩分が入れば伝導率が上がるので、すぐ分かるのです。
復水脱塩装置を設けて、万一の混入に備えるのも一般的になっています。
混合復水器が使われる場面
汽力発電所では表面復水器——では混合復水器はどこで使うのでしょうか。
| 用途 | 理由 |
| ★地熱発電 | ★もともと地下の蒸気なので、水質にこだわらない |
| 小規模な設備 | 構造が簡単で安価 |
地熱発電の蒸気は、そのまま捨てても問題がありません——ボイラへ戻す必要がないからです。
汽力発電所は閉じた循環——同じ水を何度も使い回すので、純度を保たなければなりません。だから表面復水器しか選べないことになります。
正誤問題で「逆」を見抜く
本問の(4)は、正しい記述の結論だけをひっくり返した形——頻出のパターンです。
| よくある「逆」の作り方 | 例 |
| ★向上/低下を入れ替える | ★本問の(4) |
| 高い/低いを入れ替える | 真空度・圧力・温度 |
| 大きい/小さいを入れ替える | 損失・比速度・短絡比 |
用語や設備名はすべて正しい——だから読み流すと気づけません。
「その装置は何のためにあるのか」を思い出す——目的と逆のことが書いてあれば、そこが誤りです。復水器の真空度は熱効率を上げるためのものですから、(4)は目的そのものを否定していることになります。
もう一つの手がかりが、選択肢どうしの整合——(2)が「冷却水が冷たいほど真空度は高い」と言っているのに、(4)が「真空度が高いと効率が下がる」のでは、冷たい水を求める理由がなくなります。
5つの記述は、同じ装置についての説明——互いに矛盾していれば、どちらかが誤りです。知識に自信がなくても、この突き合わせで絞り込めるのは正誤問題の大きな武器になります。
まとめ
| (1)最大の損失 | 復水器の冷却水に持ち去られる熱量→正しい |
| (2)冷却水温 | 低いほど真空度は高くなる→正しい |
| (3)形式 | 表面復水器が一般的→正しい |
| (4)真空度と効率 | 真空度↑で熱効率は向上(低下ではない)→誤り |
| (5)補機 | 空気抽出器で復水器内の空気を排出→正しい。答えは(4) |
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