火力59【電験3種 電力】復水器の空欄補充!同内容でも令和2年度とは答えの番号が違う 平成18年度 A問題1 完全解説

電験3種 電力科目 火力 平成18年度 A問題1 復水器の空欄補充!同じ内容が形を変えて出る

今回は平成18年度 電力科目 A問題1を解説します。汽力発電所の復水器について、冷却する蒸気・損失の大きさ・真空度の保ち方・低下させる量・向上する量を埋める空欄補充問題です。

この問題は令和2年度 A問題2(火力22)の出題元。埋まる知識はまったく同じですが、選択肢の並びが違うため答えは本問(5)・令和2年度(3)と番号が異なります。水力・火力で繰り返し確認してきた「番号を覚えるな」の典型例です。

目次

平成18年度 電力科目 A問題1:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 火力 平成18年度 A問題1 問題文
平成18年度 電力科目 A問題1 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題1

電験3種 電力科目 【火力】 平成18年度 A問題1

 汽力発電所の復水器はタービンの(ア)蒸気を冷却水で冷却凝結し、真空を作るとともに復水にして回収する装置である。復水器によるエネルギー損失は熱サイクルの中で最も(イ)、復水器内部の真空度を(ウ)保持してタービンの(エ)を低下させることにより、(オ)の向上を図ることができる。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)
(1)抽気大きく低く抽気圧力熱効率
(2)排気小さく低く抽気圧力利用率
(3)排気大きく低く排気温度利用率
(4)抽気小さく高く排気圧力熱効率
(5)排気大きく高く排気圧力熱効率
答え正解は (5)——(ア)排気 (イ)大きく (ウ)高く (エ)排気圧力 (オ)熱効率 です。

復水器の損失が最も大きい

本問の(イ)が問うているのは、汽力発電の宿命——入れた熱の半分近くを海に捨てているのです。

行き先割合の目安
★復水器の冷却水へ★45〜50 %
発電(電気になる)40〜45 %
煙突からの排ガス数 %
機械損・放熱など数 %

最大の損失が復水器——「もったいない」と思えますが、避けられません

熱機関は、高温から熱をもらい、低温へ熱を捨てて初めて仕事をする——捨てる先がなければ動かないのです。

カルノー効率(理論上の上限)
\( \eta_c=1-\dfrac{T_2}{T_1} \)

T₁:高温側 T₂:低温側(絶対温度)

\( \eta_c=1-\dfrac{303}{873}=0.653 \)
蒸気600 ℃、復水器30 ℃ なら
★理論上でも65 %

理論上の上限が65 %——実際には摩擦や熱の逃げがあるので40数 %にとどまります。復水器の損失は、この式の「捨てる分」そのものです。

捨てる温度を下げれば効率が上がる

カルノーの式で T₂ を下げれば効率が上がる——それが真空度を高く保つ理由です。

復水器の圧力飽和温度カルノー効率(600 ℃ から)
大気圧(101 kPa)100 ℃57.3 %
★10 kPa★46 ℃★63.5 %
★5 kPa★33 ℃★64.9 %

圧力を下げると、水の沸点も下がります——5 kPa なら33 ℃ で沸騰するのです。

つまり33 ℃ の海水でも蒸気を水に戻せる——捨てる温度をそこまで下げられることになります。

大気圧のままなら100 ℃ でしか凝縮しません——効率が6 % 以上落ちる計算です。

⚠️ よくある間違い
(ア)を「抽気」としてしまう——選択肢(1)(4)がそれです。
抽気はタービンの途中から取り出す蒸気——給水加熱器へ送るもので、復水器へは行きません。復水器に入るのはタービンを出た排気です。
(イ)を「小さく」としてしまう——選択肢(2)(4)熱サイクル中で最大の損失です。
(ウ)を「低く」としてしまう——選択肢(1)(2)(3)真空度は高く保つのです。「真空度が高い=圧力が低い」という言い換えに注意。
(オ)を「利用率」としてしまう——利用率は設備をどれだけ使ったかの指標復水器の真空度とは関係ありません

⏱️ 本番での進め方
①(ア)★復水器に入るのは「排気」。抽気は給水加熱器へ。
②(イ)★復水器の損失が最大(45〜50 %)。
③(ウ)(エ)★真空度は高く、排気圧力は低く。
④(オ)熱効率。カルノーの式で T₂ が下がるから。

💡 覚え方
「捨てる温度を下げれば効率が上がる」——カルノー効率 1−T₂/T₁ がその根拠です。真空度が高い=圧力が低い=沸点が低い——3つは同じことを言っています

同じテーマが令和5年度下期 A問題3火力:復水器はなぜ真空にするのか)、平成23年度 A問題3火力:復水器の一般的説明)にもあります。

空欄の絞り込み手順

5つの空欄がありますが、2つで確定します。

確定させる欄正しい語残る選択肢
(ア)排気★(2)(3)(5)
(ウ)高く★(5)に確定

(ア)は復水器に入ってくる蒸気——タービンを出た排気です。抽気は途中から取り出して給水加熱器へ送るものこれで2つ落ちます

(ウ)は真空度をどう保つか——高く2手で確定します。

抽気と排気を区別する

★抽気★排気
取り出す場所★タービンの途中段★タービンの最終段の出口
行き先★給水加熱器・脱気器★復水器
目的★給水を温めて効率を上げる(再生サイクル)★水に戻して回収する

抽気を使うのが再生サイクル——まだ仕事ができる蒸気をあえて取り出し、給水を温めるのです。

タービンで取れる仕事は減りますが、ボイラで加える熱も減る——差し引きで効率が上がることになります。

復水器が果たす4つの働き

「真空を作る」だけの装置ではありません——役割を整理しておきましょう

働き内容効果
★真空の形成★蒸気を凝縮させて体積を約1/1000にする★タービン出口の圧力が下がる
★復水の回収★純度の高い水を取り戻すボイラへ戻せる
脱気溶存酸素を抜く配管の腐食を防ぐ
熱の排出サイクルの低温側として熱を捨てる★熱機関として不可欠

蒸気が水になると体積が約1,000分の1になります——これが真空を生む仕組みです。

ポンプで吸い出しているのではありません——蒸気が消えることで、自然に圧力が下がるのです。

だから冷却が止まれば真空も失われる——復水器の性能は、冷却水の量と温度で決まることになります。

復水器が捨てる熱を数字で見る

「最も大きい損失」がどれくらいの量なのか、計算してみましょう

冷却水が受け取る熱量
\( Q=c\,m\,\Delta T \)

c:水の比熱4.19 kJ/(kg·K)

\( P_{in}=\dfrac{1000}{0.42}=2381\ [\mathrm{MW}] \)
出力1,000 MW・熱効率42 % なら
入れた熱
\( Q=2381\times 0.47\ \fallingdotseq\ 1120\ [\mathrm{MW}] \)
そのうち47 % を復水器が捨てる
★1,120 MW ぶんの熱
\( m=\dfrac{1120\times 10^3}{4.19\times 7}=38\,200\ [\mathrm{kg/s}] \)
温度上昇7 K で運ぶには
★毎秒38 トン

毎秒38 トン=毎分2,300 トンの海水——25 m プール1杯ぶんが十数秒で流れる量です。

これだけの水を送るために、循環水ポンプも巨大になります——所内電力の中でも大きな割合を占めることになります。

発電所が必ず海沿いにあるのは、この冷却水を確保するため——復水器の損失の大きさが、立地まで決めているのです。

熱勘定の全体像

入れた熱を100 とすると行き先
★47★復水器の冷却水へ(最大の損失)
★42★発電機の端子から電気として
5煙突からの排ガス
6タービン・発電機の損失、放熱、所内動力

復水器が捨てる分が、電気になる分より多い——この事実が「最も大きい損失」の意味です。

減らせないのかと言えば、原理的に減らせません——熱機関は低温側へ熱を捨てて初めて仕事をするからです。できるのは、捨てる温度をできるだけ下げることだけになります。

まとめ

(ア)タービンの排気蒸気を冷却凝結
(イ)損失は熱サイクル中で最も大きい(入熱の約半分)
(ウ)真空度を高く保持
(エ)タービンの排気圧力(背圧)を低下
(オ)熱効率の向上→(5)(R02問2では(3))

▼あわせて解きたい関連問題
・復水器の機能(火力22・本問の再出題版・答えは(3)):【電力】令和2年度 A問題2

・この年度の問題を通しで解く:電験3種 平成18年度 問題一覧(全4科目)

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