今回は平成18年度 電力科目 A問題1を解説します。汽力発電所の復水器について、冷却する蒸気・損失の大きさ・真空度の保ち方・低下させる量・向上する量を埋める空欄補充問題です。
この問題は令和2年度 A問題2(火力22)の出題元。埋まる知識はまったく同じですが、選択肢の並びが違うため答えは本問(5)・令和2年度(3)と番号が異なります。水力・火力で繰り返し確認してきた「番号を覚えるな」の典型例です。
平成18年度 電力科目 A問題1:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題1
電験3種 電力科目 【火力】 平成18年度 A問題1
汽力発電所の復水器はタービンの(ア)蒸気を冷却水で冷却凝結し、真空を作るとともに復水にして回収する装置である。復水器によるエネルギー損失は熱サイクルの中で最も(イ)、復水器内部の真空度を(ウ)保持してタービンの(エ)を低下させることにより、(オ)の向上を図ることができる。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 抽気 大きく 低く 抽気圧力 熱効率 (2) 排気 小さく 低く 抽気圧力 利用率 (3) 排気 大きく 低く 排気温度 利用率 (4) 抽気 小さく 高く 排気圧力 熱効率 (5) 排気 大きく 高く 排気圧力 熱効率

復水器の損失が最も大きい
本問の(イ)が問うているのは、汽力発電の宿命——入れた熱の半分近くを海に捨てているのです。
| 行き先 | 割合の目安 |
| ★復水器の冷却水へ | ★45〜50 % |
| 発電(電気になる) | 40〜45 % |
| 煙突からの排ガス | 数 % |
| 機械損・放熱など | 数 % |
最大の損失が復水器——「もったいない」と思えますが、避けられません。
熱機関は、高温から熱をもらい、低温へ熱を捨てて初めて仕事をする——捨てる先がなければ動かないのです。
★理論上でも65 %
理論上の上限が65 %——実際には摩擦や熱の逃げがあるので40数 %にとどまります。復水器の損失は、この式の「捨てる分」そのものです。
捨てる温度を下げれば効率が上がる
カルノーの式で T₂ を下げれば効率が上がる——それが真空度を高く保つ理由です。
| 復水器の圧力 | 飽和温度 | カルノー効率(600 ℃ から) |
| 大気圧(101 kPa) | 100 ℃ | 57.3 % |
| ★10 kPa | ★46 ℃ | ★63.5 % |
| ★5 kPa | ★33 ℃ | ★64.9 % |
圧力を下げると、水の沸点も下がります——5 kPa なら33 ℃ で沸騰するのです。
つまり33 ℃ の海水でも蒸気を水に戻せる——捨てる温度をそこまで下げられることになります。
大気圧のままなら100 ℃ でしか凝縮しません——効率が6 % 以上落ちる計算です。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「抽気」としてしまう——選択肢(1)(4)がそれです。
抽気はタービンの途中から取り出す蒸気——給水加熱器へ送るもので、復水器へは行きません。復水器に入るのはタービンを出た排気です。
(イ)を「小さく」としてしまう——選択肢(2)(4)。熱サイクル中で最大の損失です。
(ウ)を「低く」としてしまう——選択肢(1)(2)(3)。真空度は高く保つのです。「真空度が高い=圧力が低い」という言い換えに注意。
(オ)を「利用率」としてしまう——利用率は設備をどれだけ使ったかの指標。復水器の真空度とは関係ありません。
⏱️ 本番での進め方
①(ア)★復水器に入るのは「排気」。抽気は給水加熱器へ。
②(イ)★復水器の損失が最大(45〜50 %)。
③(ウ)(エ)★真空度は高く、排気圧力は低く。
④(オ)熱効率。カルノーの式で T₂ が下がるから。
💡 覚え方
「捨てる温度を下げれば効率が上がる」——カルノー効率 1−T₂/T₁ がその根拠です。真空度が高い=圧力が低い=沸点が低い——3つは同じことを言っています。
同じテーマが令和5年度下期 A問題3(火力:復水器はなぜ真空にするのか)、平成23年度 A問題3(火力:復水器の一般的説明)にもあります。
空欄の絞り込み手順
5つの空欄がありますが、2つで確定します。
| 確定させる欄 | 正しい語 | 残る選択肢 |
| (ア) | 排気 | ★(2)(3)(5) |
| (ウ) | 高く | ★(5)に確定 |
(ア)は復水器に入ってくる蒸気——タービンを出た排気です。抽気は途中から取り出して給水加熱器へ送るもの。これで2つ落ちます。
(ウ)は真空度をどう保つか——高く。2手で確定します。
抽気と排気を区別する
| ★抽気 | ★排気 | |
| 取り出す場所 | ★タービンの途中段 | ★タービンの最終段の出口 |
| 行き先 | ★給水加熱器・脱気器 | ★復水器 |
| 目的 | ★給水を温めて効率を上げる(再生サイクル) | ★水に戻して回収する |
抽気を使うのが再生サイクル——まだ仕事ができる蒸気をあえて取り出し、給水を温めるのです。
タービンで取れる仕事は減りますが、ボイラで加える熱も減る——差し引きで効率が上がることになります。
復水器が果たす4つの働き
「真空を作る」だけの装置ではありません——役割を整理しておきましょう。
| 働き | 内容 | 効果 |
| ★真空の形成 | ★蒸気を凝縮させて体積を約1/1000にする | ★タービン出口の圧力が下がる |
| ★復水の回収 | ★純度の高い水を取り戻す | ボイラへ戻せる |
| 脱気 | 溶存酸素を抜く | 配管の腐食を防ぐ |
| 熱の排出 | サイクルの低温側として熱を捨てる | ★熱機関として不可欠 |
蒸気が水になると体積が約1,000分の1になります——これが真空を生む仕組みです。
ポンプで吸い出しているのではありません——蒸気が消えることで、自然に圧力が下がるのです。
だから冷却が止まれば真空も失われる——復水器の性能は、冷却水の量と温度で決まることになります。
復水器が捨てる熱を数字で見る
「最も大きい損失」がどれくらいの量なのか、計算してみましょう。
入れた熱
★1,120 MW ぶんの熱
★毎秒38 トン
毎秒38 トン=毎分2,300 トンの海水——25 m プール1杯ぶんが十数秒で流れる量です。
これだけの水を送るために、循環水ポンプも巨大になります——所内電力の中でも大きな割合を占めることになります。
発電所が必ず海沿いにあるのは、この冷却水を確保するため——復水器の損失の大きさが、立地まで決めているのです。
熱勘定の全体像
| 入れた熱を100 とすると | 行き先 |
| ★47 | ★復水器の冷却水へ(最大の損失) |
| ★42 | ★発電機の端子から電気として |
| 5 | 煙突からの排ガス |
| 6 | タービン・発電機の損失、放熱、所内動力 |
復水器が捨てる分が、電気になる分より多い——この事実が「最も大きい損失」の意味です。
減らせないのかと言えば、原理的に減らせません——熱機関は低温側へ熱を捨てて初めて仕事をするからです。できるのは、捨てる温度をできるだけ下げることだけになります。
まとめ
| (ア) | タービンの排気蒸気を冷却凝結 |
| (イ) | 損失は熱サイクル中で最も大きい(入熱の約半分) |
| (ウ) | 真空度を高く保持 |
| (エ) | タービンの排気圧力(背圧)を低下 |
| (オ) | 熱効率の向上→(5)(R02問2では(3)) |
▼あわせて解きたい関連問題
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