今回は令和2年度 電力科目 A問題2を解説します。汽力発電所の復水器について、冷却する蒸気の種類・真空度の保ち方・タービン排気圧力との関係、そして熱サイクルの中での損失の大きさを問う空欄補充問題です。
火力10(令和5年度下期)と同じ復水器のテーマですが、本問は最後に「復水器の損失は熱サイクルの中で最も大きい」という重要事実まで踏み込みます。汽力発電所は入れた熱の約半分を海水に捨てている——これが効率が40%台に留まる最大の理由です。
令和2年度 電力科目 A問題2:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和2年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題2
電験3種 電力科目 【火力】 令和2年度 A問題2
次の文章は、汽力発電所の復水器の機能に関する記述である。汽力発電所の復水器は蒸気タービン内で仕事を取り出した後の(ア)蒸気を冷却して凝縮させる装置である。復水器内部の真空度を(イ)保持してタービンの(ア)圧力を(ウ)させることにより、(エ)の向上を図ることができる。なお、復水器によるエネルギー損失は熱サイクルの中で最も(オ)。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 抽気 低く 上昇 熱効率 大きい (2) 排気 高く 上昇 利用率 小さい (3) 排気 高く 低下 熱効率 大きい (4) 抽気 高く 低下 熱効率 小さい (5) 排気 低く 停止 利用率 大きい

同じ(ア)が2か所に出る
本問の仕掛けはここ——(ア)は「(ア)蒸気」と「(ア)圧力」の2か所に登場します。
| 登場箇所 | 文脈 | 当てはまる語 |
| ★1か所目 | ★「仕事を取り出した後の(ア)蒸気」 | ★排気(タービンを出た蒸気) |
| ★2か所目 | ★「タービンの(ア)圧力を(ウ)させる」 | ★排気(出口の圧力) |
「抽気蒸気」なら言葉としては成り立ちます——ところが「抽気圧力を低下させて熱効率を上げる」では意味が通りません。
2か所とも自然に読めるのは「排気」だけ——この突き合わせで確定できます。
同じ記号が複数回出てくる問題では、必ず両方に当てはめてみる——片方だけで判断すると誤ります。
(イ)と(ウ)は同じことの言い換え
「真空度を高く」と「圧力を低下」——まったく同じ状態を、別の言葉で述べています。
| 表現 | 意味 | 本問 |
| ★真空度を高く保持 | ★完全真空に近づける | ★(イ) |
| ★排気圧力を低下 | ★絶対圧力を下げる | ★(ウ) |
| 凝縮温度を下げる | 飽和温度が下がる | — |
3つとも同じ状態を指しています——言い換えに惑わされないことです。
だから(イ)が「高く」なら(ウ)は必ず「低下」——2つはセットで動きます。片方が決まればもう片方も決まることになります。
選択肢(1)は「低く」+「上昇」——向きは揃っていますが、両方とも逆です。選択肢(2)は「高く」+「上昇」——組み合わせ自体が矛盾しています。
なぜ排気圧力を下げると熱効率が上がるのか
圧力を下げると、水の沸点(飽和温度)が下がります——それが T₂ の低下です。
| 復水器の圧力 | 飽和温度 | T₂[K] | カルノー効率(600 ℃ から) |
| 101 kPa | 100 ℃ | 373 | 57.3 % |
| ★10 kPa | ★46 ℃ | ★319 | ★63.5 % |
| ★5 kPa | ★33 ℃ | ★306 | ★64.9 % |
大気圧のままと5 kPa では、理論効率が7 ポイント以上違う——真空にする価値がここにあります。
タービン側から見れば、出口の圧力が低いほど蒸気が大きく膨張できる——取り出せる仕事が増えるということです。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「抽気」としてしまう——選択肢(1)(4)がそれです。
1か所目の「(ア)蒸気」だけを見ると、抽気蒸気でも成り立ちそう——2か所目で判定します。
(イ)(ウ)の組み合わせを誤る——「高く」と「低下」がセットです。選択肢(2)の「高く」+「上昇」は、それ自体が矛盾しています。
(エ)を「利用率」としてしまう——選択肢(2)(5)。利用率は設備をどれだけ使ったかの指標で、真空度とは関係ありません。
(オ)を「小さい」としてしまう——復水器の損失は熱サイクル中で最大(45〜50 %)です。
⏱️ 本番での進め方
①★同じ記号が2か所に出たら、両方に当てはめて確かめる。
②★「真空度を高く」と「圧力を低下」はセット。
③(エ)熱効率。利用率ではない。
④(オ)★復水器の損失が最大。
💡 覚え方
「真空度は高く、圧力は低く」——同じ状態の別の言い方です。そして復水器に入るのは排気——抽気は給水加熱器へ向かいます。
ほぼ同じ内容の問題が平成18年度 A問題1(火力:復水器の空欄補充)にあります。選択肢の並びが違うので答えの番号も異なります——令和5年度下期 A問題3(火力:復水器はなぜ真空にするのか)と合わせて3問セットで確認しておきましょう。
空欄の絞り込み手順
5つの空欄がありますが、2つで確定します。
| 確定させる欄 | 正しい語 | 残る選択肢 |
| (ア) | 排気 | ★(2)(3)(5) |
| (イ) | 高く | ★(2)(3) |
| (ウ) | 低下 | ★(3)に確定 |
(ア)は2か所に出るので、両方で確かめられます——これで2つ落ちます。
(イ)は真空度をどう保つか——高く。選択肢(5)の「低く」が落ちます。
最後に(ウ)——真空度が高いなら圧力は低下。選択肢(2)の「上昇」は(イ)と矛盾しています。
復水器の3問を並べて見る
| 年度 | 問われ方 | 答え |
| ★平成18年度 A1 | ★5つの空欄(排気・大きく・高く・排気圧力・熱効率) | ★(5) |
| ★令和2年度 A2(本問) | ★5つの空欄(排気・高く・低下・熱効率・大きい) | ★(3) |
| ★令和5年度下期 A3 | ★4つの空欄(排気蒸気・真空度・圧力差・効率) | ★(3) |
内容はほぼ同じでも、空欄の切り方と選択肢の並びが違う——答えの番号を覚えても意味がありません。
「排気」「真空度は高く」「圧力は低く」「損失は最大」——この4点を押さえれば、どの形で出ても解けます。
復水器の真空はどうやって作られるのか
ポンプで吸い出しているわけではありません——蒸気が消えることで自然に生まれます。
| 状態 | 1 kg あたりの体積 | 比 |
| ★5 kPa の蒸気 | ★約28 m3 | ★28,000 |
| ★33 ℃ の水 | ★約0.001 m3 | ★1 |
蒸気が水になると、体積が数万分の1に縮みます——そこに空間ができる=圧力が下がるのです。
だから冷却が続く限り、真空は保たれ続けます——冷却水が止まれば、すぐに真空も失われることになります。
空気抽出器が要るのは、凝縮しない気体(空気)を抜くため——蒸気は勝手に凝縮しますが、空気は残ってしまうのです。
復水器がなければどうなるか
もし復水器を取り払って、蒸気を大気へ捨てたらどうなるでしょうか。
| 復水器あり | ★復水器なし(大気放出) | |
| タービン出口の圧力 | ★5 kPa | ★101 kPa |
| 熱落差 | ★大きい | ★小さい |
| 水の回収 | ★できる | ★できない |
| 純水の補給 | わずか | ★大量に必要 |
効率が落ちるだけでなく、水が足りなくなります——毎時数百トンの純水を作り続けるのは現実的ではありません。
だから復水器は「損失が最大の装置」でありながら、なくてはならない——矛盾するようですが、両方が事実なのです。
本問の(オ)が「大きい」で正しいのは、その損失の大きさを述べているだけ——装置が無駄だという意味ではありません。
背圧タービンという例外
工場では、あえて復水器を持たない蒸気タービンも使われます——背圧タービンです。
排気を大気圧より少し高い圧力で出し、そのまま製造工程の加熱に使う——発電効率は低いものの、熱として使うので全体では無駄がないのです。
発電専用なら復水タービン、熱も使うなら背圧タービン——目的によって選び分けられます。
まとめ
| (ア) | 冷却するのはタービンの排気蒸気 |
| (イ) | 復水器内部の真空度を高く保持する |
| (ウ) | タービンの排気圧力(背圧)が低下する |
| (エ) | 熱落差が増えて熱効率が向上する |
| (オ) | 復水器の損失は熱サイクル中で最も大きい→(3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・復水器はなぜ真空にするのか(火力10):【電力】令和5年度下期 A問題3
・この年度の問題を通しで解く:電験3種 令和2年度 問題一覧(全4科目)

コメント