今回は令和5年度下期 電力科目 A問題2を解説します。定格1000MW・速度調定率5%のタービン発電機(80%出力)と、定格300MW・速度調定率3%の水車発電機(60%出力)がガバナフリー運転中、系統周波数が0.2Hz低下したときの両機の出力を求める問題です。
速度調定率の式R=(Δn/nn)/((P₁−P₂)/Pn)×100を、それぞれの発電機に1回ずつ使うだけ。周波数が下がったら出力は増える(負荷が増えたから周波数が下がった)という向きさえ間違えなければ確実に取れます。
出題のポイント:速度調定率と出力の増加

周波数が低下したときは需要が供給を上回っているため、ガバナフリー運転中の発電機は出力を増やします。周波数の相対変化を速度調定率で換算し、各発電機の出力増加量を求めます。
令和5年度下期 電力科目 A問題2:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題2
電験3種 電力科目 【火力】 令和5年度下期 A問題2
定格出力1000MW、速度調定率5%のタービン発電機と、定格出力300MW、速度調定率3%の水車発電機が電力系統に接続され、前者は80%出力、後者は60%出力にて定格周波数(50Hz)でガバナフリー運転を行っている。
負荷が急変して、系統周波数が0.2Hz低下したとき、タービン発電機と水車発電機の出力[MW]の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、このガバナフリー運転におけるガバナ特性は直線とし、次式で表される速度調定率に従うものとする。また、この系統内で周波数調整を行っている発電機はこの2台のみとする。
速度調定率=((n₂−n₁)/nn)/((P₁−P₂)/Pn)×100[%] (P₁:初期出力[MW]、P₂:変化後の出力[MW]、Pn:定格出力[MW]、n₁:出力P₁における回転速度[min-1]、n₂:変化後の出力P₂における回転速度[min-1]、nn:定格回転速度[min-1])
定格出力1000MW、速度調定率5%のタービン発電機と、定格出力300MW、速度調定率3%の水車発電機が電力系統に接続され、前者は80%出力、後者は60%出力にて定格周波数(50Hz)でガバナフリー運転を行っている。負荷が急変して、系統周波数が0.2Hz低下したとき、タービン発電機と水車発電機の出力[MW]の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、このガバナフリー運転におけるガバナ特性は直線とし、速度調定率=((n₂−n₁)/nn)/((P₁−P₂)/Pn)×100[%] に従うものとする。また、この系統内で周波数調整を行っている発電機はこの2台のみとする。
タービン発電機 水車発電機 (1) 720 MW 140 MW (2) 733 MW 147 MW (3) 867 MW 213 MW (4) 880 MW 220 MW (5) 933 MW 204 MW
周波数低下なら発電機出力を増やす

本問は周波数の変化が先に与えられています——そこから2台の出力を求めます。
★−0.4 %
周波数が下がったということは、負荷が増えたということ——両方の発電機が出力を上げることになります。
この−0.004 を、2台それぞれの調定率で割る——あとは同じ手順の繰り返しです。
2台の増加後出力を求める

① タービン発電機(定格1000 MW、R=5 %)
★80 MW 増える
★880 MW
② 水車発電機(定格300 MW、R=3 %)
★40 MW 増える
★220 MW
2台の分担を比べる
| タービン発電機 | 水車発電機 | |
| 定格 | 1000 MW | 300 MW |
| 調定率 | 5 % | ★3 % |
| 増加量 | ★80 MW | ★40 MW |
| ★定格比 | ★8 % | ★13.3 % |
合計120 MW の負荷増に応じたことになります。
定格に対する増加率は、調定率に反比例します——8 % と13.3 % の比は、3 % と5 % の逆比です。
★調定率の逆比
調定率が小さい発電機ほど、大きく出力を変える——周波数調整に積極的に参加しているということです。
だから複数の発電機で調定率をそろえておけば、定格に比例した分担になる——標準を3〜5 % にしている理由でもあります。
⚠️ よくある間違い
出力を減らす向きにする——720 MW と140 MW となり選択肢(1)に一致します。
周波数が下がった=負荷が増えた=出力を上げる——この因果を押さえましょう。
初期出力を定格そのものとする——「80 % 出力」「60 % 出力」ですから800 MW と180 MW です。
2台の調定率を取り違える——タービンが5 %、水車が3 %。逆にすると933 MW と204 MW となり選択肢(5)に一致してしまいます。
周波数の変化率を0.2そのものとする——0.2/50=0.004 と割るのを忘れないこと。
⏱️ 本番での進め方
①★周波数の変化率=Δf/f=−0.2/50=−0.004。
②★周波数が下がる=負荷が増える=出力を上げる。
③調定率で割って、定格を掛ければ変化量が出る。
④★増加率は調定率の逆比。8 % と13.3 %。
💡 覚え方
「周波数が下がったら出力を上げる」——足りないから下がったのです。調定率が小さいほど大きく応答する——3 % の水車のほうが敏感になります。
ほぼ同じ設定の問題が平成27年度 B問題15(火力:速度調定率で系統周波数と出力)にあります。そちらは60 Hz で、出力から周波数を求める順序——本問とは出発点が逆です。
垂下特性を図で考える
横軸に出力、縦軸に周波数を取ると、右下がりの直線になります。
★ゆるやか
★急
水車発電機のほうが傾きが急——同じ周波数変化でも、出力の変化は小さくなります。
ただし定格が300 MW と小さい——定格に対する割合では大きく動くことになります。
★80 MW
★40 MW
傾きから直接、増加量が求まります——調定率の式を使わない別解になります。
どちらで計算しても同じ答え——検算に使えます。
選択肢の作り方を読む
5つの選択肢は、それぞれ別の誤りに対応しています。
| 選択肢 | 値 | どんな誤りか |
| (1) | 720/140 | ★出力を減らす向きにした |
| (2) | 733/147 | 別の符号違い |
| (3) | 867/213 | 変化量の計算違い |
| ★(4) | ★880/220 | ★正解 |
| (5) | 933/204 | ★2台の調定率を取り違えた |
(1)と(4)は、初期値を挟んで対称——800±80、180±40 になっています。
符号を間違えると、きれいに(1)へ落ちる——だから向きの確認が最重要です。
「周波数が下がった=供給が足りない=出力を上げる」——この一言で符号が決まります。
周波数と需給の関係
| 状態 | 周波数 | 発電機の応答 |
| ★需要>供給 | ★下がる | ★出力を上げる |
| ★需要<供給 | ★上がる | ★出力を下げる |
回転機械が重くなれば遅くなる——それが周波数の低下です。
系統全体が1つの大きな回転体だと考えると分かりやすい——負荷が増えれば減速し、減れば加速するのです。
この1問で押さえること
周波数の変化率は Δf/f=−0.2/50=−0.004——まずここから出発します。
周波数が下がった=負荷が増えた=出力を上げる——符号を逆にすると選択肢(1)にきれいに落ちます。
調定率で割って定格を掛ければ変化量——タービン+80 MW、水車+40 MW になります。
初期出力の読み取り
| 機器 | 定格 | 初期 | 初期出力 |
| タービン発電機 | 1000 MW | ★80 % | ★800 MW |
| 水車発電機 | 300 MW | ★60 % | ★180 MW |
「80 % 出力」「60 % 出力」——定格そのものではありません。
ここを読み違えると、以降の計算がすべてずれます——最初に書き出しておくのが確実でしょう。
まとめ
| 周波数の変化率 | Δf/f_n=−0.2/50=−0.004(両機共通) |
| タービン発電機の初期出力 | 1000×0.80=800MW |
| タービン発電機の変化後 | (P₁−P₂)=−0.004/0.05×1000=−80→880MW |
| 水車発電機の初期出力 | 300×0.60=180MW |
| 水車発電機の変化後 | (P₁−P₂)=−0.004/0.03×300=−40→220MW→(4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・速度調定率と負荷急変時の周波数・出力(水力39):【電力】平成19年度 B問題15
・この年度の問題を通しで解く:電験3種 令和5年度下期 問題一覧(全4科目)

コメント