今回は令和7年度上期 電力科目 A問題3を解説します。汽力発電設備で、水・蒸気・燃焼ガスがボイラ及びタービンの主要設備を通過する一般的な順序について、誤っているものを選ぶ問題です。
3本の流れを別々に覚えるのがコツ。水は給水ポンプ→節炭器→蒸気ドラム、蒸気はドラム→過熱器→高圧タービン→再熱器→低圧タービン→復水器、燃焼ガスは火炉→過熱器→再熱器→節炭器→空気予熱器→電気集じん装置→脱硫装置→煙突です。
出題のポイント:水・蒸気・燃焼ガスの経路を分けて覚える

水、蒸気、燃焼ガスを別々の経路として整理します。燃焼ガスは節炭器の後に空気予熱器、次に電気集じん装置へ進むため、この2設備を逆にした記述が誤りです。
令和7年度上期 電力科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題3
電験3種 電力科目 【火力】 令和7年度上期 A問題3
汽力発電設備において、水、蒸気、燃焼ガスが、ボイラ及びタービンを構成する主要設備を通過する一般的な順序の記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
流体 順序 (1) 水 給水ポンプ → 節炭器 → 蒸気ドラム (2) 蒸気 蒸気ドラム → 過熱器 → 高圧タービン (3) 蒸気 再熱器 → 低圧タービン → 復水器 (4) 燃焼ガス 火炉 → 過熱器 → 節炭器 (5) 燃焼ガス 節炭器 → 電気集じん装置 → 空気予熱器
解法の原理:火力発電所を流れる3つの流体

燃焼ガスは「節炭器 → 空気予熱器 → 電気集じん装置」——問題文は集じん装置を先に置いています。
| 順 | 装置 | ガス温度 | そこでの働き |
| ① | 火炉 | 約1,500 ℃ | 燃焼 |
| ② | 過熱器・再熱器 | 高温 | 蒸気を加熱 |
| ③ | ★節炭器 | 中温 | ★給水を加熱 |
| ★④ | ★空気予熱器 | ★低温 | ★燃焼用空気を加熱 |
| ★⑤ | ★電気集じん装置 | ★150 ℃ 程度 | ★ばいじんを除去 |
| ⑥ | 脱硫装置・煙突 | さらに低温 | SOx を除去 |
熱を回収する装置を先に通す——温度が高いうちに拾わなければ意味がないからです。
集じん装置は熱を扱いません——むしろ温度が低いほうが都合がよいのです。
電極の材料の耐熱性からも、ガスを冷ましてから通したい——だから空気予熱器の後ろになります。
3つの流体の道すじ
本問は水・蒸気・燃焼ガスの3系統を問うています——それぞれ別々にたどりましょう。
① 水の流れ
| 順 | 設備 | 状態 |
| ① | 復水器 | 蒸気から水へ |
| ② | ★給水ポンプ | ★高圧に加圧 |
| ③ | ★節炭器 | ★排ガスで予熱 |
| ④ | ★蒸気ドラム | ★蒸発管へ送られる |
(1)の「給水ポンプ → 節炭器 → 蒸気ドラム」は正しい——加圧してから温めるという順です。
② 蒸気の流れ
| 順 | 設備 | 状態 |
| ① | 蒸気ドラム | 飽和蒸気 |
| ② | ★過熱器 | ★過熱蒸気になる |
| ③ | ★高圧タービン | ★仕事をする |
| ④ | ★再熱器 | ★温め直す |
| ⑤ | ★低圧タービン | ★もう一度仕事をする |
| ⑥ | 復水器 | 水に戻る |
(2)と(3)は、この流れをそれぞれ前半・後半で切り出したもの——どちらも正しい記述です。
再熱器で温め直した蒸気が戻るのは低圧タービン——高圧タービンではありません。ここも狙われやすいところです。
③ 燃焼ガスの流れ
(4)の「火炉 → 過熱器 → 節炭器」は正しい——温度の高い順に、高温を必要とする装置を並べます。
誤りは(5)だけ——空気予熱器と電気集じん装置の順が逆になっています。
⚠️ よくある間違い
(4)を疑ってしまう——「火炉 → 過熱器 → 節炭器」は正しいのです。
過熱器は蒸気を高温にするので、火炉に近い高温部——節炭器は水を温めるだけなので低温側で足ります。
(1)を「節炭器 → 給水ポンプ」と勘違いする——加圧が先です。低圧のまま加熱すると沸騰してしまいます。
(3)の「再熱器 → 低圧タービン」を疑ってしまう——正しいのです。高圧タービンを出た蒸気を温め直して、低圧タービンへ送るのが再熱サイクルです。
⏱️ 本番での進め方
①★燃焼ガスは 節炭器 → 空気予熱器 → 電気集じん装置。
②熱を回収する装置は温度が高いうちに通す。
③水は「加圧してから加熱」。給水ポンプが先。
④★再熱した蒸気が戻るのは低圧タービン。
💡 覚え方
「熱を拾う装置が先、掃除する装置が後」——燃焼ガスの順序はこれで決まります。集じん装置は熱を使わないので、冷えてから通せばよいのです。
節炭器と空気予熱器は令和5年度上期 A問題3(火力:節炭器と空気予熱器)、電気集じん装置は令和3年度 A問題4(火力:電気集じん装置)にあります。
水と燃焼ガスは逆向きに流れる
ボイラの中では、2つの流れが向かい合っています。
| 位置 | 燃焼ガス | 水・蒸気 |
| 火炉 | ★最も高温 | 蒸発管(水→蒸気) |
| その先 | 過熱器・再熱器 | ★蒸気を高温にする |
| さらに先 | 節炭器 | ★給水を予熱(入口側) |
| 出口 | ★最も低温 | — |
ガスは高温から低温へ、水は低温から高温へ——互いに逆向きに進みます。
これを向流(対向流)といいます——どの位置でも温度差が保たれるので、熱がよく伝わるのです。
同じ向きに流すと、出口で温度が近づいて熱が移らなくなります——だから必ず逆向きに配置されることになります。
空気の流れも忘れずに
| 順 | 設備 | 状態 |
| ① | 押込通風機 | 外気を吸い込む |
| ★② | ★空気予熱器 | ★排ガスで温められる |
| ③ | バーナ | 燃料と混じって燃える |
空気予熱器は、ガスと空気の両方が通る装置——だから燃焼ガスの流れにも空気の流れにも登場します。
本問は燃焼ガス側から見た順序を問うている——どちらの流体の話なのかを確かめて読むことが大切です。
問題の解説:各選択肢の設備順序を照合する


5つの流れのうち、燃焼ガスが2つ——そこを重点的に見ます。
| 記述 | 流体 | 順序 | 判定 |
| (1) | 水 | 給水ポンプ→節炭器→蒸気ドラム | 正しい |
| (2) | 蒸気 | 蒸気ドラム→過熱器→高圧タービン | 正しい |
| (3) | 蒸気 | 再熱器→低圧タービン→復水器 | 正しい |
| (4) | 燃焼ガス | 火炉→過熱器→節炭器 | 正しい |
| ★(5) | ★燃焼ガス | ★節炭器→電気集じん装置→空気予熱器 | ★誤り |
(4)と(5)はつながっています——(4)の終わりが節炭器、(5)の始まりも節炭器。
合わせると「火炉→過熱器→節炭器→?→?」——残る2つの順序が問われていることになります。
空気予熱器は熱を回収する装置——節炭器の直後に置いて、まだ温かいうちに拾うのが自然です。
低温腐食という制約
排ガスを冷やしすぎてはいけない理由があります。
燃料に含まれる硫黄分は、燃えて SO₂ になり、一部が SO₃ になります——それが水分と結びつくと硫酸です。
ガス温度が酸露点(150 ℃ 前後)を下回ると、硫酸が結露して金属を侵します——低温腐食と呼ばれます。
だから空気予熱器の出口温度は、それより高く保たれる——熱をすべて回収できない理由がここにあります。
この1問で押さえること
燃焼ガスの順序は「火炉 → 過熱器・再熱器 → 節炭器 → 空気予熱器 → 電気集じん装置 → 脱硫装置 → 煙突」です。
熱を回収する装置を温度の高い順に並べ、その後で排ガスを掃除する——この原則さえ分かれば順序は復元できます。
水は「給水ポンプ → 節炭器 → ドラム」——加圧してから加熱。蒸気は「ドラム → 過熱器 → 高圧タービン → 再熱器 → 低圧タービン → 復水器」——再熱した蒸気が戻るのは低圧タービンです。
順序を問う問題の解き方
5つの選択肢を1つずつ検証するより、先に自分で正しい順序を書き出すほうが速いです。
水・蒸気・燃焼ガスの3系統を、それぞれ頭の中で並べておく——あとは選択肢と照らし合わせるだけになります。
本問のように「一部を切り出した記述」が並ぶ場合、全体の順序が分かっていれば即座に判定できるのです。
逆に順序があやふやだと、5つとももっともらしく見えてしまいます——だから流れを覚えることが最優先になります。
まとめ
| (1)水 | 給水ポンプ→節炭器→蒸気ドラム→正しい |
| (2)蒸気 | 蒸気ドラム→過熱器→高圧タービン→正しい |
| (3)蒸気 | 再熱器→低圧タービン→復水器→正しい |
| (4)燃焼ガス | 火炉→過熱器→節炭器→正しい |
| (5)燃焼ガス | 正しくは節炭器→空気予熱器→電気集じん装置→誤り |
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