今回は令和7年度上期 電力科目 A問題2を解説します。タービン出力175MW・蒸気タービンの効率92%・タービン入口の蒸気エンタルピー32500kJ/kg・復水器入口の蒸気エンタルピー30800kJ/kgのとき、使用蒸気量[t/h]を求める問題です。
考え方はシンプルで、蒸気1kgが持ち込む熱=入口と出口のエンタルピーの差(熱落差)。その熱にタービン効率を掛けたものが仕事になるので、あとは1kW·h=3600kJで電力量の単位に橋渡しするだけです。
出題のポイント:熱落差と効率から蒸気流量を求める

入口と出口のエンタルピー差から熱落差を求め、タービン出力=蒸気流量×熱落差×効率を流量について解きます。最後にkg/sをt/hへ換算して選択肢を照合します。
令和7年度上期 電力科目 A問題2:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題2
電験3種 電力科目 【火力】 令和7年度上期 A問題2
汽力発電設備において、タービン出力が175MW、蒸気タービンの効率が92%で、タービン入口における蒸気のエンタルピーが32500kJ/kg、復水器入口における蒸気のエンタルピーが30800kJ/kgであるとき、このタービンの使用蒸気量の値[t/h]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)86 (2)112 (3)248 (4)341 (5)403 t/h
解法の原理:熱落差×流量×効率=タービン出力

2つのエンタルピーの差が、蒸気1 kg が出せる仕事のもとです。
★熱落差
この1,700 kJ/kg は理論値——実際にはタービン効率92 % を掛けた分しか取り出せません。
★毎秒112 kg
kW と kJ/s は同じ単位——だから kW を kJ/kg で割れば kg/s になるのです。
問題の解説:蒸気流量をkg/sからt/hへ換算する


ここが本問最大の落とし穴——求められているのは t/hです。
★約403 t/h
×3600 して÷1000——つまり×3.6 です。kg/s から t/h へは3.6倍だと覚えておくと速い。
選択肢(2)の112 は、kg/s のままの値——換算を忘れた人を待ち構えています。
毎時400トンという量
1時間に400トンの蒸気——どれくらいの規模なのか確かめておきましょう。
| 量 | 本問の値 | 目安 |
| 蒸気量 | ★403 t/h | ★1日あたり約9,700 トン |
| 出力 | 175 MW | 中規模の火力発電所 |
| 1 t あたりの出力 | ★約434 kW | 蒸気1トンで434 kW·h ではなく kW |
この水はすべて循環しています——復水器で水に戻り、また蒸気になるのです。
だから毎時400トンの水を補給しているわけではありません——漏れた分だけを補給することになります。
⚠️ よくある間違い
t/h への換算を忘れる——112 となって選択肢(2)に一致します。最も多い誤りでしょう。
効率で掛けてしまう——175,000×0.92/1700=94.7 kg/s=341 t/h となり選択肢(4)に一致します。
出力が決まっているとき、効率が悪いほど多くの蒸気が要ります——だから割るのが正解です。
MW を kW に直し忘れる——175/1564=0.112 となって桁が3つずれます。選択肢と見比べれば気づけます。
選択肢(1)の86、(3)の248 も、それぞれ別の誤りに対応する値が用意されています。
⏱️ 本番での進め方
①熱落差=入口−出口のエンタルピー差。
②★出力÷(熱落差×効率)=蒸気量[kg/s]。効率で割る。
③★kg/s → t/h は×3.6。忘れると(2)に誘導される。
④kW と kJ/s は同じ。だから割り算で kg/s が出る。
💡 覚え方
「kg/s に3.6を掛ければ t/h」——×3600して÷1000だからです。そして効率で割る——効率が悪いほど蒸気がたくさん要ると考えれば向きを間違えません。
エンタルピーとランキンサイクルの効率は平成19年度 A問題2(火力:ランキンサイクルの効率計算)にあります。
計算の型を覚える
火力の蒸気量を求める問題は、この型に集約されます。
| 問われるもの | 式 |
| 出力 | P=mΔhη |
| ★蒸気量 | ★m=P/(Δhη) |
| 効率 | η=P/(mΔh) |
| 熱落差 | Δh=P/(mη) |
3つが分かれば残り1つが出る——どれを問われても同じ式を解き直すだけです。
単位をそろえる順番
| 段階 | やること | 本問 |
| ★① | ★出力を kW に直す | ★175 MW → 175,000 kW |
| ② | 熱落差を kJ/kg で求める | 1,700 kJ/kg |
| ③ | 割り算して kg/s を得る | 111.9 kg/s |
| ★④ | ★問われた単位に直す | ★×3.6 で t/h |
①と④を忘れると、桁が3つずれます——選択肢と見比べれば気づけます。
本問は選択肢(2)に「112」が用意されている——④を忘れた人がぴったり当たってしまうので要注意です。
タービン効率とは何か
本問の92 % は「タービンの内部効率」——理想と実際の差を表しています。
理想的な断熱膨張では、エントロピーが変わりません——実際には摩擦や渦で少し増えるのです。
その分だけ取り出せる仕事が減る——だから効率を掛けることになります。
| 効率の種類 | 意味 | 目安 |
| ★タービン内部効率 | ★理論熱落差のうち実際に得られる割合 | ★85〜92 % |
| 機械効率 | 軸受などの摩擦損失を除いた割合 | 99 % 前後 |
| 発電機効率 | 電気に変わる割合 | 98〜99 % |
本問は「タービン出力」を与えているので、発電機効率は不要——タービンの軸で測った出力だからです。
もし「発電機出力」と書かれていたら、もう一段効率を割る必要があります——問題文の言葉を正確に読むことが大切です。
蒸気量から発電所の規模をつかむ
蒸気量と出力の関係には、おおよその目安があります。
★蒸気1 t/h あたり約434 kW
「蒸気量[t/h]の約0.4倍が出力[MW]」——覚えておくと検算に使えます。
| 出力 | 蒸気量の目安 |
| 100 MW | 約230 t/h |
| ★175 MW | ★約403 t/h |
| 600 MW | 約1,400 t/h |
熱落差や効率が変われば係数も変わります——あくまで桁を確かめるための目安です。
計算結果が86 t/h や248 t/h だと、出力に対して少なすぎる——そう気づければ、誤りを避けられます。
エンタルピーの値が大きいことに戸惑わない
本問のエンタルピーは32,500 kJ/kg と30,800 kJ/kg——実際の蒸気(3,500 kJ/kg 前後)よりずっと大きい値です。
試験問題として作られた数値——実在の蒸気表とは一致しません。
それでも解き方は変わりません——差を取って熱落差を求め、出力を割るだけ。与えられた数値をそのまま使えばよいのです。
まとめ
| 熱落差Δh | 32500−30800=1700kJ/kg |
| 使う関係 | η_t=P×3600/(Z×Δh) |
| 式変形 | Z=P×3600/(η_t×Δh) |
| 代入 | 175×10³×3600/(0.92×1700)=6.3×10⁸/1564 |
| 答え | Z≒4.03×10⁵kg/h=403t/h→(5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・重油専焼火力の発電端効率と二酸化炭素発生量(火力2):【電力】令和7年度下期 B問題15
・この年度の問題を通しで解く:電験3種 令和7年度上期 問題一覧(全4科目)

コメント