誘導電動機の速度制御を、周波数・磁束・トルクの順に整理します。V/f一定制御とベクトル制御の役割を見分ける問題です。
問題文と選択肢|【電験3種】令和8年度上期 機械 問3

問題文
問3 次の文章は,誘導電動機の速度制御に関する記述である。電源周波数f を変えて速度を制御する方式の一つに(ア)一定制御がある。これは,f を変化させたときに(イ)の強さを一定に保つように入力電圧V も変化させる方式であり,二次抵抗制御方式と比べて効率が高いので小容量機から大容量機まで広く用いられてきた。周波数の可変装置には(ウ)電源装置やサイクロコンバータなどがある。(ア)一定制御には低速回転時に回転速度や負荷トルクが急変した直後の速度を正確に制御できないという課題があり,この点を改善した速度制御法として(エ)制御がある。(エ)制御は,速度とトルクを精密に制御でき,始動トルクが(オ),負荷変動の大きなクレーンや工作機械などに用いられる。
上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして,最も適切なものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
出典:電気技術者試験センター・公式問題PDF/公式解答PDF
解答・解説
解答
正答(1)
語句を補った問題文
問3 次の文章は,誘導電動機の速度制御に関する記述である。電源周波数f を変えて速度を制御する方式の一つに(ア)V / f一定制御がある。これは,f を変化させたときに(イ)回転磁界の強さを一定に保つように入力電圧V も変化させる方式であり,二次抵抗制御方式と比べて効率が高いので小容量機から大容量機まで広く用いられてきた。周波数の可変装置には(ウ)VVVF電源装置やサイクロコンバータなどがある。(ア)V / f一定制御には低速回転時に回転速度や負荷トルクが急変した直後の速度を正確に制御できないという課題があり,この点を改善した速度制御法として(エ)ベクトル制御がある。(エ)ベクトル制御は,速度とトルクを精密に制御でき,始動トルクが(オ)大きく,負荷変動の大きなクレーンや工作機械などに用いられる。
- STEP1周波数で回転磁界の速度が変わることを確認する同期速度 nₛ=120f/P
- STEP2V/fを一定にして磁束を保つ理由を確認する電圧と周波数を一緒に変える
- STEP3ベクトル制御の特徴から残りの語句を選ぶ磁束成分とトルク成分を分けて制御

STEP1|周波数で回転磁界の速度が変わることを確認する
三相交流の電流が作るのは回転電界ではなく、回転磁界です。磁界が1周する間に電気的にはP/2周期進むため、毎秒の回転数はf÷(P/2)。毎分に換算して次の式になります。
同期速度
\[n_s=\frac{120f}{P}\quad[\mathrm{min^{-1}}]\]
極数Pが一定なら、周波数fを下げると同期速度も下がります。実際の誘導電動機の回転速度は、すべりの分だけ同期速度より低くなります。

STEP2|V/fを一定にして磁束を保つ理由を確認する
巻線の誘導起電力は、正弦波ではE=4.44fNΦで表されます。巻線の電圧降下を小さいとみなすと入力電圧VはEに近いため、磁束ΦはV/fにおおむね比例します。
V/f一定制御の考え方
\[\Phi\simeq\frac{V}{4.44fN}\quad\Rightarrow\quad\Phi\propto\frac{V}{f}\]
周波数だけを下げて電圧を保つと、磁束が増えすぎます。fとともにVも変え、V/fを一定に保つことで回転磁界の強さをおおむね一定にします。可変電圧・可変周波数の電源がVVVFです。
極低速では巻線抵抗による電圧降下が無視しにくくなるため、電圧の補償が必要な場合があります。

STEP3|ベクトル制御の特徴から残りの語句を選ぶ
V/f一定制御は電圧と周波数の関係を決める方法なので、急な負荷変動の直後などに速度・トルクを精密に制御するのは苦手です。
ベクトル制御では、電流を磁束を作る成分とトルクを作る成分に分けて調整します。速度・トルクを精密に制御でき、始動トルクも大きいので、クレーンや工作機械に適します。
したがって、(ア)V/f、(イ)回転磁界、(ウ)VVVF、(エ)ベクトル、(オ)大きくとなり、選択肢(1)です。

最後に、3つだけ確認
速度の基本は同期速度nₛ=120f/P。
V/f一定制御は回転磁界の強さをほぼ一定に保つ。
VVVFは電源装置、ベクトル制御は精密な制御方法。

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