今回は令和5年度上期 法規科目 B問題12、B種接地工事の抵抗値と接地線に常時流れる電流の計算問題です。翌々年の令和6年度下期 B問題12でそっくりそのまま再出題されました。
(a)は遮断時間1.3秒=1秒を超え2秒以内なので300/I₁。(b)は接地されていない2相の対地電圧が線間電圧200V・位相差60°である点を押さえ、ベクトル和で電流を求めます。
令和5年度上期 法規科目 B問題12:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」法規科目 B問題12
電験3種 法規科目 【技術基準の計算】 令和5年度上期 B問題12
図は三相3線式高圧電路に変圧器で結合された変圧器低圧側電路を示したものである。低圧側電路の一端子にはB種接地工事が施されている。この電路の一相当たりの対地静電容量をC とし接地抵抗をRBとする。低圧側電路の線間電圧200V、周波数50Hz、対地静電容量C は0.1μFとして、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
ただし、(ア)変圧器の高圧電路の1線地絡電流は5Aとする。(イ)高圧側電路と低圧側電路との混触時に低圧電路の対地電圧が150Vを超えた場合は1.3秒で自動的に高圧電路を遮断する装置が設けられているものとする。
(a) 変圧器に施された、接地抵抗RBの抵抗値について「電気設備技術基準の解釈」で許容されている上限の抵抗値[Ω]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)20 (2)30 (3)40 (4)60 (5)100 Ω
(b) 接地抵抗RBの抵抗値を10Ωとしたときに、RBに常時流れる電流IBの値[mA]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、記載以外のインピーダンスは無視するものとする。
(1)11 (2)19 (3)33 (4)65 (5)192 mA



答えは(a)60Ω・(b)11mA
この問題は令和元年度・令和5年度上期・令和6年度下期と、6年で3回出題されています。
この記事は、(b)のベクトル和を主軸にします。
★(a)1.3秒は「1秒を超え2秒以下」
1秒を「超え」ている
(a)の答え
「1.3」の小数点以下を見落とすと1秒以内と誤読します——600/5=120Ωになります。
遮断装置を見落とすと150/5=30Ω(選択肢(2))——3つの誤答が用意されています。
★★(b)接地相はほぼ大地電位
C=0.1μF、f=50Hz
★3桁以上の差がある
RB=10Ωは、対地容量の31.8kΩに比べて無視できるほど小さい——接地された相はほぼ大地電位です。
だからa相自身の対地容量へ分流する電流は無視できます——この近似が計算を簡単にします。
桁を比較して近似する——工学的な思考です。
★★b相・c相の対地電圧と位相
| 相 | 対地電圧 | a相を基準とした位相 |
| ★a相(接地) | ★★ほぼ0V | ★★— |
| ★b相 | ★★200V(線間電圧) | ★★— |
| ★c相 | ★★200V(線間電圧) | ★★b相と60°の差 |
a相が大地電位なので、b相・c相の対地電圧は線間電圧200Vです——a相を基準に測るから。
V_ba と V_ca のなす角は60度——三相のベクトル図からです。
ここが本問の山場——ベクトル図を描くと分かります。
★b相・c相の充電電流を合成する
対地電圧÷インピーダンス
★合成すると√3倍になる
(b)の答え
60度をなす同じ大きさの2つのベクトルの和は√3倍です——2cos30°=√3。
単純に2倍(12.6mA)としないこと——位相差があるからです。
これが「ベクトル和」の意味——理論科目の知識が生きます。
★なぜ常時電流が流れるのか
混触事故がなくても、対地静電容量を通じて電流が流れます——これが常時流れる電流です。
B種接地線には、常にこの充電電流が流れている——接地線の電流を測れば、対地容量がわかります。
この電流が大きすぎると、漏電と区別がつかなくなります——実務上の注意点です。
ベクトル図を描く
| ベクトル | 大きさ | 向き |
| ★V_ba(a相→b相) | ★★200V | ★★基準 |
| ★V_ca(a相→c相) | ★★200V | ★★V_baから60度 |
| ★合成 | ★★√3×200=346V相当 | ★★2つの中間 |
三相のベクトル図で、a相を原点に置くと見えてきます——b相とc相は120度離れているが…
a相を基準にした電圧ベクトルどうしは60度——ここが混乱しやすいところです。
図を描くのが確実——暗算では間違えます。
計算の手順をまとめる
| 手順 | やること |
| ★① | ★★遮断時間で150/300/600を選び、I₁で割る |
| ★② | ★★対地容量のインピーダンス1/(ωC)を求める |
| ★③ | ★★RBと比較し、接地相を大地電位と近似する |
| ★④ | ★★他の2相の対地電圧=線間電圧、各相の電流を計算 |
| ★⑤ | ★★60度のベクトル和=√3倍 |
5ステップですが、③の近似と⑤のベクトル和が肝です——ここを理解すれば確実。
6年で3回という頻出度
| 年度 | 問題番号 |
| ★令和元年度 | ★★B問題13 |
| ★令和5年度上期 | ★★B問題12(本問) |
| ★令和6年度下期 | ★★B問題12 |
数値も選択肢も同一の問題が3回——法規のB問題では異例の頻度です。
ここを固めれば3回分の得点——優先して押さえたいところです。
対地静電容量とは
| 設備 | 1相あたりの対地静電容量の目安 |
| ★低圧屋内配線(小規模) | ★★0.1μF程度 |
| ★高圧ケーブル | ★★1kmあたり0.2〜0.5μF |
| ★架空配電線 | ★★ケーブルよりはるかに小さい |
電線と大地の間には必ず静電容量があります——コンデンサとして働くのです。
そこを通って常時わずかな電流が流れます——それが本問の充電電流です。
三相回路のベクトル図
| 中性点接地 | 一端子接地(本問) | |
| ★各相の対地電圧 | ★★線間電圧÷√3 | ★★接地相0V、他の2相は線間電圧 |
| ★接地線の電流 | ★★平衡時はほぼ0 | ★★2相分のベクトル和(√3倍) |
接地方式で対地電圧の分布が変わります——だから接地線の電流も変わるのです。
ベクトル図を描けば、60度という角度が見えてきます。
⏱️ 本番での進め方
① 1.3秒は「1秒を超え2秒以下」——300/I₁。
② 対地容量のインピーダンス1/(ωC)≒31.8kΩはRBよりはるかに大きい。
③ 接地相はほぼ大地電位と近似できる。
④ 60度をなす2つの電流の和は√3倍——2倍ではない。
💡 覚え方
B種接地線に常時流れる電流=①遮断時間で150/300/600を選びI₁で割る ②対地容量のインピーダンス1/(ωC)を求める ③RBがそれより十分小さければ接地相は大地電位と近似 ④他の2相の対地電圧は線間電圧、各相の充電電流を求める ⑤60度のベクトル和なので√3倍。
⚠️ よくある間違い
1.3秒を「1秒以下」と誤読しない——300/I₁。2相の電流は単純に2倍しない——60度の位相差があるので√3倍。
まとめ
| (a)遮断時間 | 1.3秒=1秒超2秒以内 → 300/I₁ |
| (a)答え | 300/5=60 Ω →(4) |
| (b)対地電圧 | b相・c相とも線間200V、位相差60° |
| (b)ベクトル和 | 2×200×cos30°=346.4 V |
| (b)電流 | ωC×346.4≒10.9 mA →11mA →(1) |
| 再出題 | 令和6年度下期 B問題12と同一 |
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・B種接地工事の計算(技術基準の計算3):【法規】令和6年度下期 A問題4

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