今回は令和4年度下期 法規科目 B問題12、トップランナー制度に適合した変圧器への更新による損失の変化を計算する問題です。省エネ基準達成率の式と、負荷損の性質を組み合わせて解きます。
核心は「負荷損は負荷率の2乗に比例する」こと(負荷損∝電流²∝負荷率²)。省エネ基準達成率の式から負荷率40%時の負荷損を出し、定格負荷損に換算します。
答えは(a)4640W・(b)65%
省エネ法のトップランナー制度が題材です——制度と計算の両方。
令和4年度下期 法規科目 B問題12:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度下期 第三種電気主任技術者試験」法規科目 B問題12
電験3種 法規科目 【電気施設管理】 令和4年度下期 B問題12
定格容量500kV·A、無負荷損500W、負荷損(定格電流通電時)6700Wの変圧器を更新する。更新後の変圧器はトップランナー制度に適合し、無負荷損150W、省エネ基準達成率140%である。
(省エネ基準達成率=1250/(W_i+W_C40)×100、W_i=無負荷損、W_C40=負荷率40%時の負荷損。)
定格容量500kV·A、無負荷損500W、負荷損(定格電流通電時)6700Wの変圧器を更新する。更新後の変圧器はトップランナー制度に適合した変圧器で、変圧器の容量、電圧及び周波数仕様は従来器と同じであるが、無負荷損は150W、省エネ基準達成率は140%である。このとき、次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし、省エネ基準達成率=基準エネルギー消費効率/(W_i+W_C40)×100で与えられ、基準エネルギー消費効率は1250W、W_iは無負荷損[W]、W_C40は負荷率40%時の負荷損[W]とする。
(a) 更新後の変圧器の負荷損(定格電流通電時)の値[W]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)1860 (2)2450 (3)3080 (4)3820 (5)4640 W
(b) 変圧器の出力電圧が定格状態で、300kW遅れ力率0.8の負荷が接続されているときの更新前後の変圧器の損失を考える。この状態での更新前の変圧器の全損失をW₁、更新後の変圧器の全損失をW₂とすると、W₂のW₁に対する比率[%]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、電圧変動による無負荷損への影響は無視できるものとする。
(1)45 (2)54 (3)65 (4)78 (5)85 %

★★(a)達成率の式から逆算する
負荷率40%時の負荷損
達成率が高いほど、分母(損失)が小さい——140%は基準より4割優秀。
式を変形して分母を求めるのが第一歩です。
そこから無負荷損を引けば、負荷損が出ます。
★★負荷率40%から定格に換算する
I²Rだから
(a)の答え
0.4²=0.16で割る——0.4で割ると誤りです。
2乗の関係を忘れると、答えが2.5倍ずれます——最大の落とし穴。
更新前の6700Wから4640Wへ、約31%の削減です。
★★なぜ負荷率40%で評価するのか
| 理由 | 内容 |
| ★実態に近い | ★★配電用変圧器の平均的な負荷率は30〜50% |
| ★軽負荷が長い | ★★夜間や休日は負荷が小さい |
| ★定格点では評価にならない | ★★実際にはほとんど使われない条件 |
変圧器は定格で使われることがほとんどありません——だから40%で評価する。
実際の使われ方に近い条件で比較する——合理的な基準です。
全日効率の考え方と同じ発想です。
★(b)実負荷での全損失を比べる
★負荷損は皮相電力で決まる
(b)の答え≒65%
負荷を皮相電力に換算してから負荷率を出します——300kWのままでは誤り。
力率0.8なので375kV·A、負荷率0.75です。
損失が35%削減される——更新の効果です。
★無負荷損の削減が大きい
| 更新前 | 更新後 | 削減率 | |
| ★無負荷損 | ★★500W | ★★150W | ★★70% |
| ★負荷損(定格) | ★★6700W | ★★4640W | ★★31% |
無負荷損が70%も減っています——アモルファス鉄心などの技術。
無負荷損は24時間発生するので、削減効果が大きい——年間では大きな差になります。
トップランナー制度が無負荷損の低減を促したのです。
★年間の削減量を試算する
★一般家庭3世帯分に相当
年間13000kW·h以上の削減——電気代にすれば数十万円。
更新費用を数年で回収できることもあります——経済的な判断材料。
だから省エネ法が更新を促しているのです。
トップランナー制度とは
| 項目 | 内容 |
| ★根拠法 | ★★省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律) |
| ★対象 | ★★変圧器・エアコン・照明・自動車など |
| ★考え方 | ★★市場で最も優れた製品を基準にする |
「トップランナー」=最も効率のよい製品を基準値にする——業界全体の底上げを狙う。
変圧器は平成18年度から対象——第二次基準もあります。
法規科目では制度の問題としても出題されます。
計算の手順をまとめる
| 手順 | やること | 落とし穴 |
| ★① | ★★達成率の式を変形して(W_i+W_C40)を出す | ★★— |
| ★② | ★★無負荷損を引いてW_C40を出す | ★★— |
| ★③ | ★★0.4²=0.16で割って定格負荷損に | ★★★2乗を忘れない |
| ★④ | ★★実負荷を皮相電力に換算して負荷率を出す | ★★力率で割る |
| ★⑤ | ★★全損失=無負荷損+定格負荷損×負荷率² | ★★— |
③と⑤で「負荷率の2乗」が2回出てきます——この性質が全体を貫くのです。
変圧器の効率を上げる技術
| 技術 | 効果 |
| ★アモルファス鉄心 | ★★無負荷損を大幅に低減(従来の1/3程度) |
| ★高配向性ケイ素鋼板 | ★★ヒステリシス損を低減 |
| ★導体断面積の拡大 | ★★負荷損(銅損)を低減 |
本問で無負荷損が500→150Wに減ったのは、こうした材料技術の進歩によるものです。
ただし価格は上がるので、運転年数と削減額で判断します——経済性の検討。
⏱️ 本番での進め方
① 達成率=1250÷(W_i+W_C40)×100から逆算する。
② 負荷損は負荷率の2乗に比例——0.4²=0.16。
③ 実負荷は皮相電力に換算してから負荷率を出す。
④ 無負荷損は24時間発生するので削減効果が大きい。
💡 覚え方
トップランナー変圧器の計算=①省エネ基準達成率=基準エネルギー消費効率÷(無負荷損+負荷率40%時の負荷損)×100 ②負荷損は負荷率の2乗に比例するのでW_C40=定格負荷損×0.16 ③実負荷での全損失=無負荷損+定格負荷損×負荷率²。負荷率は皮相電力÷定格容量。
⚠️ よくある間違い
0.4で割らない——負荷率の2乗なので0.16で割る。負荷率は皮相電力で計算——300kWのままでは誤り。
まとめ
| W_C40 | 1250/1.4−150≒742.9 W |
| (a)定格負荷損 | 742.9/0.16≒4643→4640 W →(5) |
| 負荷率 | 375/500=0.75(²=0.5625) |
| 更新前W₁ | 500+6700×0.5625≒4269 W |
| 更新後W₂ | 150+4643×0.5625≒2762 W |
| (b)比率 | 2762/4269≒65% →(3) |
▼あわせて解きたい関連問題
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