電気設備技術基準の解釈55【電験3種 法規】誘導障害防止は並行・2m・ねん架・D種・電磁誘導=(3) 平成29年度 A問題8 完全解説

電験3種 法規科目 電気設備技術基準の解釈 平成29年度 A問題8 弱電流電線への通信障害を防ぐ!2m以上離す

今回は平成29年度 法規科目 A問題8架空弱電流電線路への誘導作用による通信障害の防止(電気設備技術基準の解釈第52条)に関する空欄補充問題です。並行時の離隔距離や誘導障害の対策が問われます。

骨格は「並行時の離隔2m以上」「対策=ねん架・D種接地の遮へい線・地絡電流制限」「中性点接地式は並行しなくても電磁誘導作用に注意」。誘導障害は電磁誘導が主役です。

目次

答えは(3):並行・2m・ねん架・D種・電磁誘導

電気設備技術基準の解釈 第52条(架空弱電流電線路への誘導作用による通信障害の防止)

1 低圧又は高圧の架空電線路(き電線路を除く。)と架空弱電流電線路とが並行する場合は、次により施設すること。/a 架空電線と架空弱電流電線との離隔距離は、2m以上とすること。/b なお障害を及ぼすおそれがあるときは、次の対策のうち1つ以上を施すこと。①離隔距離を増加する ②交流架空電線路の場合は架空電線を適当な距離でねん架する ③引張強さ5.26kN以上の金属線又は直径4mm以上の硬銅線を2条以上施設し、これにD種接地工事を施す ④中性点接地式高圧架空電線路の場合は地絡電流を制限する等/3 中性点接地式高圧架空電線路は、並行しない場合においても、大地に流れる電流の電磁誘導作用により通信上の障害を及ぼすおそれがあるときは、上記の対策を施すこと。

誘導障害の主役は電磁誘導。静電誘導ではありません。

電力線のそばに通信線があると、雑音が乗ります——それを防ぐための条文です。

平成29年度 法規科目 A問題8:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 法規科目 配電 平成29年度 A問題8 問題文
平成29年度 法規科目 A問題8 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成29年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題8

電験3種 法規科目 【電気設備技術基準の解釈】 平成29年度 A問題8

 次の文章は、「電気設備技術基準の解釈」における架空弱電流電線路への誘導作用による通信障害の防止に関する記述の一部である。上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

1 低圧又は高圧の架空電線路(き電線路を除く。)と架空弱電流電線路とが(ア)する場合は、誘導作用により通信上の障害を及ぼさないように、次により施設すること。a 架空電線と架空弱電流電線との離隔距離は、(イ)以上とすること。

b なお障害を及ぼすおそれがあるときは、次の対策のうち1つ以上を施すこと。①離隔距離を増加する。②交流架空電線路の場合は架空電線を適当な距離で(ウ)する。③架空電線と架空弱電流電線との間に引張強さ5.26kN以上の金属線又は直径4mm以上の硬銅線を2条以上施設し、これに(エ)接地工事を施す。④中性点接地式高圧架空電線路の場合は地絡電流を制限する等。

3 中性点接地式高圧架空電線路は、架空弱電流電線路と(ア)しない場合においても、大地に流れる電流の(オ)作用により通信上の障害を及ぼすおそれがあるときは、上記1のbの①から④の対策のうち1つ以上を施すこと。

(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)
(1)並行3m遮へいD種電磁誘導
(2)接近又は交差2m遮へいA種静電誘導
(3)並行2mねん架D種電磁誘導
(4)接近又は交差3mねん架A種電磁誘導
(5)並行3mねん架A種静電誘導
答え(ア)並行・(イ)2m・(ウ)ねん架・(エ)D種・(オ)電磁誘導 = (3)

★電磁誘導と静電誘導の違い

電磁誘導静電誘導
★原因★★電流がつくる磁束★★電圧がつくる電界
★大きくなる条件★★地絡等で不平衡電流が流れたとき★★電圧が高いとき
★対策★★ねん架・遮へい線・地絡電流の制限★★遮へい・離隔

通信障害で問題になるのは、圧倒的に電磁誘導です——地絡時に大きな不平衡電流が流れるから

だから(オ)は静電誘導ではありません——「大地に流れる電流の」という書き出しが手がかりです。

★なぜねん架が効くのか

\dot{I_a} + \dot{I_b} + \dot{I_c} = 0
平衡三相電流の和
3相の電流の和はゼロなので、遠方では磁界が打ち消し合う
M_a \neq M_b \neq M_c
各相と通信線との相互インダクタンス
距離が違うと打ち消しきれず、誘導電圧が残る

3相の電流の和はゼロでも、各相と通信線の距離が違えば誘導は打ち消されません

ねん架は、各相の位置を一定区間ごとに入れ替える工法です——平均すれば距離が等しくなるのです。

「遮へい」というダミーがありますが、それは③の対策——②はねん架です。

★遮へい線とD種接地

電力線と通信線の間に金属線を張り、これを接地します——これが遮へい線です。

遮へい線に誘導電流が流れ、その電流が通信線への誘導を打ち消します——逆位相の磁束を作るのです。

接地はD種(100Ω以下)で足ります——高圧が侵入するわけではないからです。

★5.26kN・直径4mmという条件

要件
★引張強さ★★5.26kN以上
★直径(硬銅線)★★4mm以上
★条数★★2条以上
★接地★★D種接地工事

遮へい線も架空に張るので、機械的強度が要ります——5.26kN・4mmは低圧保安工事より1段下の値です。

2条以上というのは、遮へい効果を確保するため——1本では足りません

「並行」と「接近又は交差」

条文の言葉ダミー語違い
並行★★並行★接近又は交差★★長い区間を沿って走る/一点で近づく
誘導障害(52条)★★誘導障害(52条)★混触防止(他条)★★問題になる現象が違う

誘導は距離ではなく「どれだけ長く沿っているか」で決まります——だから条文は「並行」と書きます

一瞬交差するだけなら、誘導電圧はほとんど生じません——「接近又は交差」というダミーは意味的に外れるのです。

き電線路が除かれる理由

き電線路は、電気鉄道に電気を送る電線路です——レールを帰線に使うので、大地に電流が流れます

そもそも誘導の性質がまったく違う——だから52条の対象から外し、別に扱います

括弧書きの除外にも理由がある——読み飛ばさないことです。

中性点接地式が特別扱いされる理由

方式1線地絡時の地絡電流
★非接地式★★対地静電容量を通る小さな電流
★中性点接地式★★大地を通って大きな電流が流れる

中性点を接地すると、地絡時に大電流が大地を流れます——これが強い電磁誘導を生むのです。

だから並行していなくても、対策が必要になることがあります——第3項が置かれている理由です。

日本の高圧配電は非接地式が主流——誘導障害を避ける狙いもあります

電技16条との関係

条文の言葉ダミー語違い
電技16条=電気設備の電磁的障害の防止★★電技16条=電気設備の電磁的障害の防止★解釈52条=具体的な数値と対策★★省令が枠、解釈が手段
電技27条の2=人の健康影響★★電技27条の2=人の健康影響★電技16条=他の設備への障害★★守る相手が違う

16条は「他の電気設備や機器の機能に障害を及ぼさない」——27条の2は「人の健康に影響を及ぼさない」

同じ電磁誘導でも、守る相手で条文が分かれます——ここを整理しておくと迷いません

現代の通信線はどうか

光ファイバは金属を含まないので、電磁誘導を受けません——誘導障害の問題は大きく減りました

それでもメタルの通信線はまだ残っています——条文が生きている理由です。

技術が変わっても、条文は残る——試験では条文どおりに答えます

誘導障害の3つの型

内容
★電磁誘導障害★★電流の磁束が通信線に電圧を誘起する
★静電誘導障害★★電圧の電界が通信線に電位を生じさせる
★高調波障害★★ひずみ波が雑音として乗る

解釈52条が扱うのは、主に電磁誘導障害です——地絡時の不平衡電流が最大の原因だからです。

静電誘導は特別高圧で問題になりますが、低高圧では影響が小さいのです。

⏱️ 本番での進め方
① (ア)は並行——「接近又は交差」ではない。
② (イ)は2m——3mではない。
③ (ウ)はねん架、(エ)はD種
④ (オ)は電磁誘導——「静電誘導」ではない。

💡 覚え方
解釈52条=低圧・高圧の架空電線路(き電線路を除く)と架空弱電流電線路が並行する場合、離隔距離2m以上。なお障害のおそれがあるときは①離隔増加 ②ねん架 ③5.26kN以上又は直径4mm以上の金属線を2条以上施設しD種接地 ④中性点接地式は地絡電流の制限——のいずれか。中性点接地式は並行しなくても電磁誘導作用に注意。

⚠️ よくある間違い
(ア)は「接近又は交差」ではなく並行(イ)は「3m」ではなく2m(ウ)は「遮へい」ではなくねん架(遮へい線は③)。(オ)は「静電誘導」ではなく電磁誘導

まとめ

(ア)対象並行する場合
(イ)離隔距離2m以上
(ウ)交流対策ねん架
(エ)遮へい線D種接地工事
(オ)中性点接地式電磁誘導作用に注意
答え(3)

▼あわせて解きたい関連問題
・低圧幹線の施設(電気設備技術基準の解釈54):【法規】平成29年度 A問題7
・低圧連系時の系統連系用保護装置(電気設備技術基準の解釈56):【法規】平成29年度 A問題9

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