今回は平成28年度 法規科目 A問題5、蓄電池の保護装置(電気設備技術基準の解釈第44条)に関する空欄補充問題です。発変電所等の蓄電池を自動的に電路から遮断すべき場合が問われます。
覚えるのは「蓄電池を自動遮断する4ケース=過電圧・過電流・制御装置の異常・断熱容器の内部温度著しく上昇」。過電圧と過電流、そして制御装置の異常がキーワードです。
平成28年度 法規科目 A問題5:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成28年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題5
電験3種 法規科目 【電気設備技術基準の解釈】 平成28年度 A問題5
次の文章は、「電気設備技術基準の解釈」における蓄電池の保護装置に関する記述である。上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)及び(ウ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
次の文章は、「電気設備技術基準の解釈」における蓄電池の保護装置に関する記述である。発電所又は変電所若しくはこれに準ずる場所に施設する蓄電池(常用電源の停電時又は電圧低下発生時の非常用予備電源として用いるものを除く。)には、次の各号に掲げる場合に、自動的にこれを電路から遮断する装置を施設すること。
a 蓄電池に(ア)が生じた場合
b 蓄電池に(イ)が生じた場合
c (ウ)装置に異常が生じた場合
d 内部温度が高温のものにあっては、断熱容器の内部温度が著しく上昇した場合
(ア) (イ) (ウ) (1) 過電圧 過電流 制御 (2) 過電圧 地絡 充電 (3) 短絡 過電流 制御 (4) 地絡 過電流 制御 (5) 短絡 地絡 充電

答えは(1):過電圧・過電流・制御装置
この4つは「電圧・電流・制御・温度」と並べると覚えやすい——蓄電池を壊す原因を網羅しています。
★なぜ過電圧と過電流なのか
| 異常 | 蓄電池に起きること |
| ★過電圧 | ★★過充電になり、ガス発生・電解液の分解・発熱 |
| ★過電流 | ★★内部抵抗による発熱で温度が急上昇 |
| ★過放電 | ★★極板が劣化し容量が回復しなくなる |
蓄電池は化学反応で電気をためる装置です——電圧も電流も、反応の速さを直接決めます。
過ぎれば反応が暴走し、発熱・発火に至ります——だから電圧と電流の両方を見張るのです。
★「短絡」「地絡」ではない理由
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 過電圧 | ★★過電圧 | ★短絡 | ★★短絡は原因、過電流はその結果 |
| 過電流 | ★★過電流 | ★地絡 | ★★地絡は電路から大地へ漏れる別の現象 |
| 制御装置 | ★★制御装置 | ★充電装置 | ★★充放電を管理するのは制御装置 |
短絡すれば過電流になります——条文は結果である「過電流」で書いているのです。
原因を列挙し始めるときりがない——検出できる量で書くのが技術基準の作法です。
★制御装置に異常が生じた場合
大容量の蓄電池は、必ず制御装置とセットで動きます——充放電の電流・電圧・温度を常時管理しています。
制御が止まれば、過充電も過放電も止められません——見張り役がいなくなるのです。
だから制御装置の異常そのものを遮断の理由にします——「充電装置」ではありません。
★断熱容器の内部温度——NAS電池のこと
| 電池 | 動作温度 | 特徴 |
| ★鉛蓄電池 | ★★常温 | ★★安価・重い・据置用に広く使われる |
| ★NAS電池 | ★★約300℃ | ★★高エネルギー密度・大容量電力貯蔵向け |
| ★リチウムイオン電池 | ★★常温 | ★★高効率・軽量・熱暴走に注意 |
| ★レドックスフロー電池 | ★★常温 | ★★長寿命・出力と容量を独立に設計できる |
第四号の「内部温度が高温のもの」はNAS電池を想定しています——約300℃で運転するので断熱容器に入っているのです。
その内部温度が著しく上昇したら、溶融ナトリウムが関わる重大事故になりかねません——だから条文に明記されています。
非常用予備電源が除かれる理由
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 常用電源の停電時の非常用予備電源は除く | ★★常用電源の停電時の非常用予備電源は除く | ★すべての蓄電池 | ★★非常時に切れては困る |
非常用予備電源は、停電したときこそ働く電池です——そこで自動遮断されては本末転倒です。
だから括弧書きで除外しています——括弧書きは飛ばさずに読むことが大切です。
設備の目的によって規制が変わる、法令らしい書き方です。
蓄電池が発変電所で果たす役割
| 用途 | 内容 |
| ★制御電源 | ★★遮断器の操作・保護継電器の電源 |
| ★電力貯蔵 | ★★負荷平準化・再生可能エネルギーの出力変動吸収 |
| ★非常用電源 | ★★停電時の照明・通信の確保 |
制御電源用の蓄電池は、停電しても遮断器を操作するために必須——変電所の心臓部です。
近年は再エネの調整用として、大容量の蓄電池が増えています——だから保護の規定が重要性を増しているのです。
解釈44条は他に何を定めているか
| 対象 | 自動遮断すべき場合 |
| ★蓄電池 | ★★過電圧・過電流・制御装置異常・断熱容器の内部温度上昇 |
| ★燃料電池 | ★★出力の異常低下・燃料ガスの異常・空気の供給停止 |
44条は「蓄電池の保護装置」ですが、45条には燃料電池等の保護装置が並びます。
どちらも「異常を検出して自動的に電路から切り離す」——発想は共通です。
鉛蓄電池の充電で気をつけること
| 方式 | 内容 |
| ★浮動充電(フロート) | ★★常時わずかに充電し、自己放電を補う |
| ★均等充電 | ★★セルのばらつきを定期的にそろえる |
| ★急速充電 | ★★大電流で短時間に充電する |
据置用では浮動充電が基本——常に満充電に近い状態で待機させます。
過充電になると水素ガスが発生し、爆発の危険があります——換気と過電圧保護が欠かせません。
蓄電池室の施設
鉛蓄電池からは水素が発生するので、換気が必要です——水素は空気より軽いので、上部に溜まります。
電解液は希硫酸なので、床や壁を耐酸仕様にします——漏れたときに建物を傷めないためです。
保護装置だけでなく、設置環境も安全の一部です。
蓄電池の容量はどう表すか
| 量 | 単位 | 意味 |
| ★容量 | ★★Ah(アンペア時) | ★★取り出せる電気量 |
| ★エネルギー | ★★Wh | ★★容量×電圧 |
| ★放電率 | ★★10時間率など | ★★何時間で放電しきる条件か |
同じ電池でも、大きな電流で放電すると取り出せる容量は減ります——だから放電率を添えて表示します。
10時間率100Ahなら、10Aで10時間流せるという意味です——100Aで1時間は流せません。
自動遮断という考え方
異常を検出したら、人の手を待たずに切り離す——これが保護装置の基本思想です。
人が気づいて操作するまでの数分で、事故は拡大します——だから「自動的に」と条文が明記しています。
解釈には発電機・変圧器・調相設備など、同じ形の保護規定が並びます——42条〜48条をまとめて押さえると効率的です。
発電機の自動遮断(解釈第42条)と比べる
| 設備 | 自動遮断すべき主な場合 |
| ★発電機 | ★★過電流・過電圧・軸受の温度上昇・水車/蒸気タービンの異常 |
| ★変圧器 | ★★内部故障(容量による)・冷却装置の故障・温度上昇 |
| ★蓄電池 | ★★過電圧・過電流・制御装置異常・断熱容器の内部温度上昇 |
どれも「電気的異常+その設備固有の異常」という構成です——蓄電池の固有部分が制御装置と内部温度にあたります。
この対応関係で覚えると、条文どうしが結びつきます。
⏱️ 本番での進め方
① (ア)(イ)は過電圧・過電流——短絡・地絡ではない。
② (ウ)は制御装置——充電装置ではない。
③ 第四号はNAS電池のような高温形を想定した規定。
④ 非常用予備電源は除かれる——括弧書きを読み飛ばさない。
💡 覚え方
解釈44条=発変電所等に施設する蓄電池(非常用予備電源を除く)は、①過電圧 ②過電流 ③制御装置の異常 ④高温形は断熱容器の内部温度が著しく上昇——の各場合に自動的に電路から遮断する装置を施設する。
⚠️ よくある間違い
(ア)は「短絡」「地絡」ではなく過電圧。(イ)は「地絡」ではなく過電流。(ウ)は「充電装置」ではなく制御装置。非常用予備電源として用いるものは対象外。
まとめ
| a | 蓄電池に過電圧→自動遮断 |
| b | 蓄電池に過電流→自動遮断 |
| c | 制御装置に異常→自動遮断 |
| d | 断熱容器の内部温度が著しく上昇→遮断 |
| 除外 | 非常用予備電源として用いるもの |
| 答え | (1) |
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