今回は令和5年度下期 電力科目 B問題16、短絡電流から百分率インピーダンスを求め、過電流継電器(OCR)のタップ整定を決める計算問題です。限時特性グラフとタイムレバー換算がポイントです。
(a)は%Z=基準電流/短絡電流×100。(b)はタイムレバー位置の比で動作時間を換算(時間∝レバー位置)し、位置10の限時特性グラフから倍数を読み、CT二次電流÷倍数でタップ整定値を求めます。
令和5年度下期 電力科目 B問題16:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 B問題16
電験3種 電力科目 【配電の計算】 令和5年度下期 B問題16
図のような系統において、昇圧用変圧器の容量は30MV·A、変圧比は11kV/33kV、百分率インピーダンスは自己容量基準で7.8%、計器用変流器(CT)の変流比は400A/5Aである。系統の点Fにおいて、三相短絡事故が発生し、1800Aの短絡電流が流れたとき、次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし、CTの磁気飽和は考慮しないものとする。
(a) 系統の基準容量を10MV·Aとしたとき、事故点Fから電源側をみた百分率インピーダンスの値[%]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)5.6 (2)9.7 (3)12.3 (4)29.2 (5)37.0 %
(b) 過電流継電器(OCR)を0.09sで動作させるには、OCRの電流タップ値を何アンペアの位置に整定すればよいか、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、OCRのタイムレバー位置は3に整定されており、タイムレバー位置10における限時特性は図示のとおりである。
(1)3.0 (2)3.5 (3)4.0 (4)4.5 (5)5.0 A




出題のポイント:短絡電流を%ZとOCR整定へつなぐ

事故点Fの33 kV側で基準電流を求め、短絡電流との比から系統全体の%インピーダンスを計算します。OCR整定では1800 AをCT二次電流へ換算し、タイムレバー3の0.09秒を図のタイムレバー10へ換算して倍率を読みます。
(a) の答えは(2):約 9.7 %
実測の短絡電流から、一気に%インピーダンスが求まります。
★
★答え
変圧器の7.8%や電源側のインピーダンスを足す必要はありません——実測値にすべて含まれているのです。
Is=In×100/%Z を逆に解いた形です——移項するだけ。
(a) 基準電流から系統全体の%インピーダンスを求める

3段階で整定値を決めます。
| 段階 | すること | 本問の値 |
| ★① | ★★タイムレバー位置10に換算する | ★★0.09×(10/3)=0.30 s |
| ★② | ★★限時特性グラフから倍数を読む | ★★5倍 |
| ★③ | ★★CT二次電流を倍数で割る | ★★22.5÷5=4.5 A |
★
★
★
★答え
限時特性のグラフは、タイムレバー位置10のものです——だからまず10に換算するのです。
動作時間はレバー位置に比例するので、3から10なら10/3倍——0.09が0.30になるのです。
グラフの横軸は「タップ整定値の何倍か」です——だから割ればタップ値が出るのです。
(b) CT二次電流と限時特性からOCRタップを求める

| 整定項目 | 意味 | 決め方 |
| ★★電流タップ | ★★何アンペアから動作させるか | ★★負荷電流では動かず短絡電流で動く値 |
| ★★タイムレバー | ★★動作時間の倍率 | ★★上位・下位との時間協調 |
| ★瞬時要素 | ★★大電流なら待たずに動作 | ★★近くの短絡を素早く切る |
タップとレバーの2つを組み合わせて、動作を決めます——電流の大きさと時間です。
上位の継電器より早く動くように整定します——それが保護協調です。
本問は、目標時間0.09 s から逆にタップを決める問題です——実務そのものです。
電気主任技術者の仕事に直結する内容といえます。
⚠️ よくある間違い
変圧器の7.8%を足そうとする——実測値に含まれています。
基準電流を11 kV 側で計算する——事故点は33 kV 側です。
レバー換算を3/10倍とする——10/3倍です。
CT変流比を逆に使う——一次側×(5/400)です。
倍数を掛けてしまう——割ってタップ値を出します。
⏱️ 本番での進め方
①★%Z=(基準電流/短絡電流)×100。
②★動作時間はタイムレバー位置に比例。
③★グラフの横軸はタップ整定値の倍数。
④★タップ=CT二次電流÷倍数。
💡 覚え方
「レバーで換算、グラフで倍数、割ってタップ」——3段階です。実測の短絡電流があれば%Zは一発——個別に足さなくてよいのです。
★同一の問題が平成18年度 B問題17(配電の計算:%ZとOCRのタップ整定(H18))にあります。
限時特性グラフの読み方
| 軸 | 表すもの | 本問での値 |
| ★横軸 | ★★タップ整定値の何倍の電流か | ★★5倍 |
| ★縦軸 | ★★動作時間(レバー位置10) | ★★0.30 s |
横軸が電流そのものではなく「倍数」であることが要点です——だから割ればタップ値が出ます。
縦軸はレバー位置10のときの時間です——だから換算してから読むのです。
2つの軸の意味を押さえれば、迷わず読めます。
CT変流比400A/5Aの意味
| 一次側 | 二次側 | |
| ★定格 | ★★400 A | ★★5 A |
| ★変流比 | ★★80分の1 | ★— |
| ★短絡時 | ★★1800 A | ★★22.5 A |
継電器は5 A 級で動くので、大電流をそのまま入れられません——だからCTで縮めるのです。
タップ整定値4.5 A も二次側の値です——一次側なら360 Aにあたります。
どちら側の値かを意識すると、混乱しません。
タップ整定値の意味
| 二次側(継電器) | 一次側(系統) | |
| ★タップ整定値 | ★★4.5 A | ★★360 A |
| ★短絡時の電流 | ★★22.5 A | ★★1800 A |
| ★倍数 | ★★5倍 | ★★同じく5倍 |
タップ整定値4.5 A は、一次側では360 A にあたります——ここから動作するのです。
CT定格400 A より少し低いので、過負荷でも動作しうる設定です。
実務では負荷電流と短絡電流の間に収まるよう選びます。
計算の流れを1枚で見る
| 段階 | すること | 本問の値 |
| ★(a)① | ★★基準電流を求める | ★★175 A |
| ★(a)② | ★★短絡電流で割る | ★★9.7 % |
| ★(b)① | ★★レバー位置10に換算 | ★★0.30 s |
| ★(b)② | ★★グラフで倍数を読む | ★★5倍 |
| ★(b)③ | ★★CT二次電流を倍数で割る | ★★4.5 A |
5段階のうち、(b)の3つが実務的な手順です——グラフを読む工程があるのが特徴。
手順を覚えれば、数値が変わっても同じように解けます。
OCRが守るもの
| 事故 | OCRの働き |
| ★★短絡 | ★★大電流を検出して遮断器に指令を出す |
| ★過負荷 | ★★定格を超える状態が続けば動作する |
| ★地絡 | ★★担当しない(地絡継電器の役目) |
OCRは電流の大きさだけを見ます——地絡電流は小さいので検出できないのです。
だから地絡には別の継電器を組み合わせます——DGRやOVGRです。
本問は短絡事故の整定を扱っています。
まとめ
| (a)基準電流 | 10e6/(√3·33000)=174.95A |
| (a)%Z | 174.95/1800×100=9.7% |
| (b)レバー換算 | 0.09×10/3=0.30s→倍数5 |
| (b)CT二次 | 1800×5/400=22.5A |
| (b)タップ | 22.5/5=4.5A |
| 答え | (a)-(2),(b)-(4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・OCRの限時特性とタップ(変電10):【電力】令和5年度上期 A問題13
・%Zと三相短絡電流(配電計算1):【電力】令和7年度下期 A問題12

コメント