今回は平成30年度 電力科目 B問題15を解説します。自然流量6m³/sの調整池式発電所を、最大使用水量10m³/sで6時間ピーク運用し、残り18時間はオフピーク運用するとき、(a)最低限必要な有効貯水量、(b)オフピーク運用中の発電機出力を求める問題です。
必要な貯水量は「ピーク中の不足分=(QP−QN)×t」で一発。オフピーク流量は「一日の自然流入量を全部使い切る」という条件から水収支で求めます。
平成30年度 電力科目 B問題15:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成30年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 B問題15
電験3種 電力科目 【水力】 平成30年度 B問題15
調整池の有効貯水量V[m³]、最大使用水量10m³/sであって、発電機1台を有する調整池式発電所がある。図のように、河川から調整池に取水する自然流量QNは6m³/sで一日中一定とする。この条件で、最大使用水量QP=10m³/sで6時間運用(ピーク運用)し、それ以外の時間は自然流量より低い一定流量で運用(オフピーク運用)して、一日の自然流量分を全て発電運用に使用するものとする。ここで、この発電所の一日の運用中の使用水量を変化させても、水車の有効落差、水車効率、発電機効率は変わらず、それぞれ100m、90%、96%で一定とする。この条件において、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
調整池の有効貯水量V[m³]、最大使用水量10m³/sであって、発電機1台を有する調整池式発電所がある。図のように、河川から調整池に取水する自然流量QNは6m³/sで一日中一定とする。この条件で、最大使用水量QP=10m³/sで6時間運用(ピーク運用)し、それ以外の時間は自然流量より低い一定流量で運用(オフピーク運用)して、一日の自然流量分を全て発電運用に使用するものとする。ここで、この発電所の一日の運用中の使用水量を変化させても、水車の有効落差、水車効率、発電機効率は変わらず、それぞれ100m、90%、96%で一定とする。
(a) このときの運用に最低限必要な有効貯水量V[m³]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。(1)86 200 (2)86 400 (3)86 600 (4)86 800 (5)87 000 m³
(b) オフピーク運用中の発電機出力[kW]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)2 000 (2)2 500 (3)3 000 (4)3 500 (5)4 000 kW



1日の水収支を立てる
「一日の自然流量分を全て発電運用に使用する」——この一句が式を与えてくれます。
調整池は水を溜めたり出したりするだけ——1日で見れば収支がゼロになります。
★約4.67 m³/s
自然流量6より小さい4.67——問題文の「自然流量より低い一定流量」と合致します。この確認が検算になります。
(a) 有効貯水量は「足りない分」
ピーク運用中は、入ってくる水より多く使います——その差を池から出すのです。
| 時間帯 | 入る | 出る | 池の水 |
| ★ピーク6時間 | 6 m³/s | ★10 m³/s | ★毎秒4 m³ 減る |
| オフピーク18時間 | 6 m³/s | 4.67 m³/s | ★毎秒1.33 m³ 増える |
★86,400 m³
時間を秒に直すのを忘れない——6時間=21,600秒です。
オフピーク側で確かめても同じ値になります——(6−4.667)×18×3600=86,400。1日で収支が合っているので当然です。
86,400 という数字に見覚えがあるかもしれません——1日の秒数(24×3600)と同じ。偶然ですが、覚えやすい一致です。
(b) オフピークの出力
0.90×0.96=0.864
★約4,000 kW
ピーク時の出力なら8,467 kW——流量が10/4.667=2.14倍ですから、出力も同じ倍率になります。
落差も効率も一定という設定ですから、出力は流量に正比例——比で求めてもかまいません。
⚠️ よくある間違い
(a)で時間を秒に直し忘れる——4×6=24 となって桁が3つ以上ずれます。m³/s の「s」を意識しましょう。
(a)でピーク流量10をそのまま使う——10×6×3600=216,000。池から出すのは自然流量で足りない分だけ——差を取るのが正解です。
(b)でオフピーク流量を自然流量6としてしまう——5,080 kW となって選択肢にありません。オフピークは「自然流量より低い」と問題文にあります。
(b)で効率を1つしか掛けない——0.90だけなら4,116、0.96だけなら4,391。どちらも4,000に近く、正解を選んでしまう可能性があるのでかえって危険です。
⏱️ 本番での進め方
①★1日の水収支:使った水=入ってきた水。
②★有効貯水量=(ピーク流量−自然流量)×ピーク時間×3600。
③(b) 出力は流量に正比例。比で求めてもよい。
④★水車効率と発電機効率の両方を掛ける。
💡 覚え方
「池は1日で収支ゼロ」——だから使う水の合計=入る水の合計。必要な貯水量は、足りない時間帯の不足分を積み上げたものです。
調整池式の位置づけは令和3年度 A問題1(水力:水力発電所の種類)にあります。
調整池の1日の水位変化
池の水がどう動くかを、時間を追って見てみましょう。
| 時間帯 | 出入りの差 | 池の水位 |
| ★ピーク6時間 | ★毎秒4 m³ ずつ減る | ★下がり続ける |
| ピーク終了時 | — | ★最低(86,400 m³ 使い切った) |
| オフピーク18時間 | ★毎秒1.33 m³ ずつ増える | ★戻っていく |
| 1日の終わり | — | ★元に戻る |
18時間で1.333×18×3600=86,400 m³——ピークで使った分をちょうど回復します。
だから翌日も同じ運用ができる——「日調整」と呼ばれるゆえんです。
有効貯水量とは
池に入る水すべてではなく、実際に出し入れできる分——それが有効貯水量です。
池の底のほうには、取水口より低くて使えない水が残ります——それを死水容量(デッドストレージ)と呼びます。
本問が「有効貯水量」と断っているのは、使える分だけを問うているという意味です。
ピーク運用の意味
なぜ6時間だけ全力で運転するのか——電気の価値が時間帯で違うからです。
| 時間帯 | 需要 | この発電所 |
| ★昼のピーク | ★最大 | ★10 m³/s で全力運転 |
| 夜間・早朝 | 少ない | 4.67 m³/s に絞る |
調整池がなければ、1日中6 m³/s で運転するしかありません——ピークに合わせられないのです。
池があれば、夜のうちに溜めて昼に出せる——同じ水量でも、価値の高い時間帯に発電できることになります。
本問の設定では、ピーク時に8,467 kW まで出せます——調整なしなら5,080 kW。ピーク供給力が1.67倍になる計算です。
B問題としての解き方
(a)と(b)は、どちらもオフピーク流量4.667 m³/s から出発します——まずこれを求めるのが最初の一手です。
| 手順 | やること | 使う条件 |
| ① | 水収支からオフピーク流量を出す | ★「自然流量分を全て使用」 |
| ② | 不足分×時間で貯水量を出す | (a) |
| ③ | 出力式に代入する | (b) |
①を間違えると(a)(b)の両方が外れます——ここだけは慎重に。
検算は簡単で、求めた QO が自然流量6より小さいこと——大きくなったら式の立て方が誤っています。
まとめ
| (a)ピーク中の不足 | QP−QN=10−6=4m³/s |
| (a)必要貯水量 | 4×6×3600=86400m³→(2) |
| (b)一日の流入 | 6×86400=518400m³ |
| (b)オフピーク流量 | 10×21600+QO×64800=518400→QO=4.667m³/s |
| (b)出力 | 9.8×4.667×100×0.9×0.96≒3951≒4000kW→(5) |
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