火力42【電験3種 電力】タービン発電機は高速・円筒形・直径小・軸方向に長い!平成24年度 A問題2 完全解説

電験3種 電力科目 火力 平成24年度 A問題2 なぜ細長い形なのか?タービン発電機の構造

今回は平成24年度 電力科目 A問題2を解説します。汽力発電所のタービン発電機について、回転速度・要求される強度・回転子の構造・直径と軸方向の寸法を、水車発電機と比較しながら埋める空欄補充問題です。

論理は一本道です。回転速度が高い→遠心力(機械的強度)→円筒形で直径を小さく→そのままでは出力が足りないので軸方向に長く。因果でつながっているので、最初の「高く」さえ取れれば全部つながります。

目次

平成24年度 電力科目 A問題2:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 火力 平成24年度 A問題2 問題文
平成24年度 電力科目 A問題2 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題2

電験3種 電力科目 【火力】 平成24年度 A問題2

 次の文章は、汽力発電所のタービン発電機の特徴に関する記述である。汽力発電所のタービン発電機は、水車発電機に比べ回転速度が(ア)なるため、(イ)強度を要求されることから、回転子の構造は(ウ)にし、水車発電機よりも直径を(エ)しなければならない。このため、水車発電機と同出力を得るためには軸方向に(オ)することが必要となる。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、最も適切なものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)
(1)高く熱的突極形小さく長く
(2)低く熱的円筒形大きく短く
(3)高く機械的円筒形小さく長く
(4)低く機械的円筒形大きく短く
(5)高く機械的突極形小さく長く
答え正解は (3)——(ア)高く (イ)機械的 (ウ)円筒形 (エ)小さく (オ)長く です。

高速回転が形を決める

タービン発電機は毎分3,000回転——この速さが、すべての形を決めています

回転体に働く遠心力
\( F=m r\omega^2 \)

半径 r に比例、角速度 ω の2乗に比例

\( \omega=\dfrac{2\pi\times 3000}{60}=314\ [\mathrm{rad/s}] \)
3,000 min⁻¹ の角速度
\( a=r\omega^2=0.5\times 314^2=49\,300\ [\mathrm{m/s^2}] \)
半径0.5 m の位置の加速度
★重力の5,000倍

重力の5,000倍もの力が、外向きにかかります——1 kg の部品が5トンで引っ張られるのと同じです。

だから直径を小さくするしかない——遠心力は半径に比例するからです。

そして出っ張りのある突極形では、その部分が飛んでしまいます——一体の円筒形にするのが答えになります。

直径を小さくした分、軸方向に長くする

同じ出力を得るには、それだけの体積が要ります——太くできないなら長くするしかありません。

★タービン発電機水車発電機
回転速度★3,000/3,600 min-1100〜1,200 min-1
極数★2極・4極多極
回転子★円筒形(一体鍛造)突極形
直径★1 m 程度と小さい大きい
軸長★長い(細長い)短い(扁平)
★横軸立軸が多い

細長い形になるので横軸——立てると自重で曲がってしまうからです。

長くすることにも限界がある

軸が長くなると、たわみやすくなります——回転中に共振する回転速度(危険速度)が下がるのです。

定格回転速度が危険速度と重なってはいけません——激しい振動で軸が壊れるからです。

だから長さにも限界があり、そこが容量の上限を決めます——大容量機では4極にして1,500 min-1 にすることで直径を大きく取れるようにしています

冷却も高速回転が理由

細長い形は、表面積が小さく熱がこもります——空気では冷やしきれません

冷却方式適用容量理由
空気冷却小容量構造が簡単
★水素冷却★中〜大容量★熱伝導がよく風損が小さい
水冷却超大容量導体の中に水を通す

水素は空気の7分の1の密度——高速で回る回転子の風損が大幅に減ります

しかも熱伝導率は空気の7倍——冷却能力も高いことになります。高速機だからこそ、この2つが効いてくるのです。

⚠️ よくある間違い
(イ)を「熱的」としてしまう——選択肢(1)がそれです。
熱の問題も確かにありますが、回転子の構造を決めているのは遠心力=機械的強度問題文が「回転速度が高くなるため」理由を示しているので機械的です。
(ウ)を「突極形」としてしまう——選択肢(1)(5)突極形は水車発電機出っ張りが遠心力に耐えられません
(ア)を「低く」としてしまう——選択肢(2)(4)汽力タービンは高速です。(ア)と(ウ)の2欄で確定できます。

⏱️ 本番での進め方
①(ア)★タービン発電機は高速(3,000/3,600 min-1)。
②(イ)(ウ)★遠心力に耐えるため機械的強度→円筒形。
③(エ)(オ) 遠心力は半径に比例→直径を小さく→軸方向に長く。
④★F=mrω²。これ1つで(イ)〜(オ)が説明できる。

💡 覚え方
「速く回るから細長い」——遠心力 F=mrω² がすべての出発点です。水車発電機は逆に低速だから平たい——回転速度が形を決めている点は共通しています。

水車発電機との比較は平成28年度 A問題2水力:水車発電機とタービン発電機・鉄機械)にあります。そちらは短絡比と鉄機械が主題です。

空欄の絞り込み手順

5つの空欄がありますが、2つで確定します。

確定させる欄正しい語残る選択肢
(ア)高く★(1)(3)(5)
(ウ)円筒形★(3)に確定

(ア)は水車発電機との比較——汽力タービンは3,000 min-1 ですから高く。これで2つ落ちます

(ウ)は回転子の構造——高速なので円筒形突極形は水車発電機ですから、2手で確定します。

なぜ2極なのか

同期速度
\( N=\dfrac{120f}{p} \)

極数が少ないほど高速

\( N=\dfrac{120\times 50}{2}=3000\ [\mathrm{min^{-1}}] \)
50 Hz・2極
★東日本
\( N=\dfrac{120\times 60}{2}=3600\ [\mathrm{min^{-1}}] \)
60 Hz・2極
★西日本

蒸気タービンは高速で回すほど効率がよい——だから極数を最小の2極にするのです。

2極では磁極が2つだけ——円筒にスロットを刻んで巻線を入れる形になります。突極のように出っ張らせる必要がないのです。

タービン発電機の容量と冷却

細長い形は、熱を逃がしにくい形でもあります——容量を上げるには冷却が鍵になります。

水素の性質(空気を1とすると)
\( \rho\ \fallingdotseq\ \dfrac{1}{14},\quad \lambda\ \fallingdotseq\ 7 \)

密度は14分の1、熱伝導率は7倍

項目空気★水素
密度1★約1/14(風損が小さい)
熱伝導率1★約7倍
★比熱1★約14倍(大きい)
注意点★空気と混ざると爆発するので純度管理が要る

水素は密度が小さいので、高速で回しても風損が小さい——3,000 min-1 で回る機械には決定的な利点です。

そのうえ熱をよく運ぶ——冷却能力も高いことになります。

「比熱が小さい」と書かれていたら誤り——比熱は大きいのです。比重(密度)が小さく、比熱が大きい——2つを取り違えないようにしましょう

軸の長さを制限するもの

「軸方向に長く」といっても、無制限ではありません

制約内容
★危険速度(共振)★軸が長いほど固有振動数が下がり、定格速度に近づく
★たわみ★自重で曲がり、軸受の当たりが偏る
製作・輸送一体鍛造できる大きさに限りがある

定格回転速度が危険速度と重なると、激しい振動が起きます——避けて設計する必要があるのです。

大容量機では4極にして1,500 min-1 に落とす——遠心力が4分の1になるので直径を大きく取れることになります。細長くしすぎないための工夫です。

まとめ

(ア)2極で3000/3600min⁻¹→水車発電機より高く
(イ)遠心力に耐える機械的強度が必要
(ウ)回転子は円筒形
(エ)直径を小さくする(遠心力は半径に比例)
(オ)同出力のため軸方向に長く→(3)

▼あわせて解きたい関連問題
・タービン発電機の構造と水素冷却(火力17・同テーマ):【電力】令和4年度上期 A問題2

・この年度の問題を通しで解く:電験3種 平成24年度 問題一覧(全4科目)

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