水力33【電験3種 電力】水路式水力発電所の出力低下!上部水槽の水位上昇から原因箇所を特定する?平成23年度 A問題1 完全解説

電験3種 電力科目 水力 平成23年度 A問題1 出力が落ちて水位が上がった!原因はどこ?

今回は平成23年度 電力科目 A問題1を解説します。水路式水力発電所の有効電力出力が突然低下し、出力低下後に安定した状態の各観測値から、原因が発生した箇所を推定する問題です。

計算ではなく状態からの原因切り分けを問う良問です。カギは上部水槽の水位が上昇したこと。入ってくる水は変わらないのに水が減らずに溜まったのだから、詰まっているのは上部水槽より下流です。

目次

平成23年度 電力科目 A問題1:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 水力 平成23年度 A問題1 問題文
平成23年度 電力科目 A問題1 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題1

電験3種 電力科目 【水力】 平成23年度 A問題1

 図のような水路式水力発電所において、有効電力出力が定格状態から突然低下した。出力低下の原因箇所を見定めるために、出力低下後に安定した当該発電所の状態を確認すると、出力低下前と比較して、以下のような状態となっていた。

・水車上流側の上部水槽で水位が上昇した。
・水車流量が低下した。
・水車発電機の回転数は定格回転数である。
・発電機無効電力は零(0)のまま変化していない。
・発電機電圧はほとんど変化していない。
・励磁電圧が低下した。
・保護リレーは動作していない。

 出力低下の原因が発生した箇所の想定として、次の(1)〜(5)のうちから最も適切なものを一つ選べ。

水位観測地点(上部水槽)より上流側水路
水車を含む水位観測地点(上部水槽)より下流側水路
電圧調整装置
励磁装置
発電機

図 水路式水力発電所(取水口・導水路・水位観測地点・上部水槽・水圧管・水車・発電機・励磁装置・電圧調整装置)(問題図)
図 水路式水力発電所(取水口・導水路・水位観測地点・上部水槽・水圧管・水車・発電機・励磁装置・電圧調整装置)(問題図)
図 水路式水力発電所(取水口・導水路・水位観測地点・上部水槽・水圧管・水車・発電機・励磁装置・電圧調整装置)(問題図)
図 水路式水力発電所(取水口・導水路・水位観測地点・上部水槽・水圧管・水車・発電機・励磁装置・電圧調整装置)(問題図)

症状から場所を絞る

7つの症状が並んでいます——1つずつ「何が正常で何が異常か」を判定します

症状読み取れること
★上部水槽の水位が上昇★水は来ている。使う量が減った
★水車流量が低下★水車へ流れる水が減った
回転数は定格系統に並列しているので当然
無効電力は零のまま★励磁系は正常に働いている
発電機電圧はほぼ変化なし★電圧調整は正常
励磁電圧が低下★有効電力が減ったことへの正常な応答
保護リレー不動作電気側に事故はない

電気側はすべて正常——電圧も無効電力も保たれていますだから発電機・励磁装置・電圧調整装置は原因ではありません

上部水槽の水位上昇が決め手

水位が上がったということは、入ってくる水より出ていく水が少ない——ここが判断の分かれ目です。

原因の場所上部水槽の水位判定
上流側水路★下がる(水が来なくなる)★症状と合わない
★下流側(水圧管・水車)★上がる(水がはけない)★症状と一致

上流で詰まれば、水槽へ入る水が減って水位は下がる——本問は逆に上がっているのですから、上流ではありません。

下流で詰まれば、水槽から出る水が減って水位は上がる——これが観測された状況です。

洗面台の排水口が詰まると水が溜まる——それと同じ理屈だと考えれば分かりやすいでしょう。

答え正解は (2)——水車を含む、水位観測地点(上部水槽)より下流側水路 です。

励磁電圧の低下は結果であって原因ではない

「励磁電圧が低下した」という症状を、原因と取り違えないこと——ここが本問の仕掛けです。

起きたこと
水が減って有効電力が下がった
★②★電機子電流が減り、電機子反作用が弱まる
★③★AVR が電圧を保つため励磁を絞る

有効電力が減れば、必要な励磁も減ります——AVR が自動的に調整した結果です。

もし励磁装置が故障していたら、電圧か無効電力が変化するはず——どちらも変わっていないのですから、正常に働いています。

⚠️ よくある間違い
「励磁電圧が低下」を見て(4)励磁装置を選ぶ——最も引っかかりやすい誤答です。
励磁装置が原因なら、発電機電圧が変動するはず——「ほとんど変化していない」と明記されています。症状どうしを突き合わせれば否定できます
(1)上流側を選ぶ——水位が「上昇」したことを見落としています上流が原因なら水位は下がるのです。
(3)電圧調整装置や(5)発電機を選ぶ——いずれも電気側水車流量が低下している時点で、水の側に原因があると読めます。

⏱️ 本番での進め方
①★水位が上昇=下流が詰まった。上流なら下がる。
②電圧・無効電力が正常なら電気側は無実。
③★励磁電圧の低下は出力低下の結果(AVR の応答)。
④症状どうしを突き合わせて矛盾を探す。

💡 覚え方
「詰まった手前に水が溜まる」——水位が上がったなら、原因はその下流です。励磁電圧の低下は原因ではなく結果——ここを取り違えないこと

AVR と調速機の役割分担は令和4年度上期 A問題1水力:吸出し管は反動水車用)にあります。

水車流量が低下する原因

下流側で何が起きると流量が減るのか——考えられる事象を挙げてみましょう

場所起こりうること
★水圧管★異物の詰まり・弁の異常
★ガイドベーン★開度が制限された・固着した
★ランナ★流木や土砂の噛み込み
吸出し管閉塞して水がはけない

いずれも「水の通り道が狭くなった」という点で共通——結果として上部水槽に水が溜まります

問題が「水車を含む」下流側と書いているのは、水車そのものの異常も含めて絞り込ませたいからでしょう。

上流が原因だったらどうなるか

症状上流が原因下流が原因(本問)
★上部水槽の水位★低下★上昇
水車流量低下低下
有効電力低下低下

流量も出力も、上流下流どちらでも下がります——区別できるのは水位だけだからこの1つが決め手になるのです。

有効電力と無効電力の担当

本問の症状を読むには、この分担が分かっている必要があります

決めるもの制御装置
★有効電力 P★水車への流量(原動機の入力)★調速機
★無効電力 Q★界磁電流(励磁)★AVR

水が減れば有効電力が減る——無効電力とは無関係です。本問で無効電力が零のまま変わらないのは、この分担どおり

もし励磁系に異常があれば、無効電力か電圧が動くはず——どちらも動いていないのですから、励磁系は正常だと判断できます。

なぜ励磁電圧は下がったのか

段階起きたこと
有効電力が減り、電機子電流が減る
★②★電機子反作用が弱まり、端子電圧が上がろうとする
★③★AVR が励磁を絞って電圧を元に戻す

電機子電流が流れると、その磁束が主磁束に影響します——これが電機子反作用です。

電流が減れば反作用も減る——同じ励磁なら電圧が上がってしまうので、AVR が励磁を下げて調整することになります。

つまり励磁電圧の低下は、AVR が正しく働いた証拠——故障の兆候ではありません

この問題の型を知っておく

複数の症状から原因箇所を切り分ける——電験3種では珍しい出題形式です。

解き方の段階やること
★「正常」を示す症状を先に消す
★「異常」を示す症状だけを残す
★異常の向き(上昇か低下か)で場所を絞る

本問なら、回転数・無効電力・電圧・保護リレーの4つが「正常」——電気側を丸ごと除外できます

残るのは水位上昇と流量低下——この2つだけで、上流か下流かを決めます

症状が多くても、判断に使えるのは1つか2つ——残りは「除外するための情報」だと考えると整理しやすいでしょう。

実務でも同じ考え方をする

発電所で異常が起きたとき、まず切り分けるのは電気側か機械側か——本問はその手順をそのまま問題にしたものです。

電圧・電流・無効電力が正常なら電気側は無実——水や蒸気の側を疑う実際の運転員が日々やっている判断だと言えます。

そして水位計や流量計が、どこで詰まったかを教えてくれる——計器の値の「向き」に意味があるのです。

上がったのか下がったのか——本問はその一点で答えが決まります

まとめ

上部水槽の水位上昇入る量>出る量→下流側で流れが妨げられた
水車流量の低下下流側閉塞の裏付け(上流原因なら水位は低下)
回転数・電圧・無効電力いずれも正常→電気設備に異常なし
励磁電圧の低下有効電力低下に伴うAVRの結果(原因ではない)
答え(2)水車を含む上部水槽より下流側水路

▼あわせて解きたい関連問題
・総落差・損失水頭・有効落差と出力の式(水力32):【電力】平成24年度 A問題1

・この年度の問題を通しで解く:電験3種 平成23年度 問題一覧(全4科目)

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