今回は平成25年度 電力科目 A問題1を解説します。水力発電に用いる水車について、エネルギー変換の仕方による分類(衝動・反動)と代表的な水車名、さらに小水力発電で注目される水車の空欄を補充する問題です。
ノズルで運動エネルギーに変えて噴流をぶつけるのが衝動水車=ペルトン、圧力エネルギーのまま作用させるのが反動水車=フランシス。軸方向に通過するのがプロペラ、少水量・低落差の小水力用がクロスフローです。
平成25年度 電力科目 A問題1:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成25年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題1
電験3種 電力科目 【水力】 平成25年度 A問題1
次の文章は、水力発電に用いる水車に関する記述である。水をノズルから噴出させ、水の位置エネルギーを運動エネルギーに変えた流水をランナに作用させる構造の水車を(ア)水車と呼び、代表的なものに(イ)水車がある。また、水の位置エネルギーを圧力エネルギーとして、流水をランナに作用させる構造の代表的な水車に(ウ)水車がある。さらに、流水がランナを軸方向に通過する(エ)水車もある。近年の地球温暖化防止策として、農業用水・上下水道・工業用水など少水量と低落差での発電が注目されており、代表的なものに(オ)水車がある。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 反動 ペルトン プロペラ フランシス クロスフロー (2) 衝動 フランシス カプラン クロスフロー ポンプ (3) 反動 斜流 フランシス ポンプ プロペラ (4) 衝動 ペルトン フランシス プロペラ クロスフロー (5) 斜流 カプラン クロスフロー プロペラ フランシス

水車は「何のエネルギーを使うか」で分かれる
本問は水車の分類そのものが主題——1枚の表にまとめて覚えるのが近道です。
| 分類 | 代表的な水車 | 利用するもの | 落差・流量 | 比速度 |
| 衝動水車 | ペルトン | ★速度水頭(運動エネルギー) | 高落差・少流量 | ★小さい |
| 反動水車 | フランシス | ★圧力水頭も利用 | 中〜高落差 | 中 |
| 反動水車(軸流) | プロペラ・カプラン | 圧力水頭も利用 | 低落差・大流量 | ★大きい |
| 小水力 | クロスフロー | 速度水頭 | 低落差・少流量 | — |
大きな分かれ目は「圧力を使うかどうか」——使わないのが衝動水車、使うのが反動水車です。この2つに分けてから、細かい種類を当てはめると整理しやすくなります。
(ア)はノズルで運動エネルギーに変えるのですから衝動水車、(イ)はその代表のペルトン——(ウ)は圧力エネルギーを使うのでフランシス になります。
(エ) 軸方向に通過する水車
「流水がランナを軸方向に通過する」——プロペラ水車の定義そのものです。船のスクリューを裏返したような形をしています。
| 水車 | 羽根 | 特徴 |
| ★プロペラ水車 | ★固定 | 構造が簡単。負荷変動に弱い |
| ★カプラン水車 | ★可動(角度を変えられる) | ★部分負荷でも効率が落ちにくい |
| 斜流(デリア)水車 | 可動 | 斜め方向に通過。中落差用 |
カプランはプロペラの羽根を可動にしたもの——流量が変わっても最適な角度に合わせられるのです。だから河川流量が変動する低落差の発電所に向いています。
本問の(エ)は「プロペラ水車」——カプランはその一種なので、より一般的な呼び方が入ることになります。
(オ) 小水力発電とクロスフロー水車
「農業用水・上下水道・工業用水など少水量と低落差」——小水力発電の典型的な設置場所です。
| クロスフロー水車 | |
| 形 | ★円筒形のランナを水が横切る(貫流) |
| 落差・流量 | 低落差・少流量 |
| 長所 | ★構造が簡単で安価・部分負荷に強い |
| 短所 | 効率はやや低い |
水がランナを外から内へ、さらに内から外へと2回通過する——だから「貫流(クロスフロー)」と呼ばれます。
大規模発電では効率が最優先ですが、小水力では建設費と保守のしやすさが決め手——だから構造の簡単なクロスフローが選ばれるのです。
「近年の地球温暖化防止策として」という問題文の前置き——再生可能エネルギーとして小水力が見直されている背景を示しています。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「反動」としてしまう——選択肢(1)(3)がそれです。
「ノズルから噴出させ、運動エネルギーに変えて」——圧力を使っていないので衝動。(ア)だけで2つ落とせます。
(イ)をフランシスとする選択肢(2)——フランシスは反動水車です。衝動=ペルトンという対応は絶対。
残るは(4)と(5)——(5)は(ア)が「斜流」で、そもそも分類の名前ではありません。2手で確定します。
⏱️ 本番での進め方
①まず「圧力を使うか」で衝動/反動に二分する。
②衝動=ペルトン、反動=フランシス。この対応は固定。
③(エ) 軸方向に通過=プロペラ(可動羽根ならカプラン)。
④(オ)★小水力・低落差・少流量=クロスフロー。
💡 覚え方
「衝動はペルトンだけ、あとは反動」——まずこの二分から。「軸方向ならプロペラ、可動羽根ならカプラン」「小水力ならクロスフロー」と足していけば、分類は完成します。
衝動水車の詳細は令和4年度下期 A問題2(水力:衝動水車の原理と特徴)、平成22年度 A問題1(位置水頭を速度水頭に変える)にあります。
落差で水車が決まる
どの水車を選ぶかは、まず落差で決まります——流量はその次です。
| 有効落差 | 適する水車 | 理由 |
| ★200 m 以上 | ★ペルトン | 高圧の噴流をつくれる |
| 40〜500 m | フランシス | 適用範囲が最も広い |
| ★80 m 以下 | ★プロペラ・カプラン | 大流量を通せる |
| 数m〜20 m | クロスフロー | 小規模で安価 |
フランシス水車がいちばん適用範囲が広い——だから日本の水力発電所で最も多く使われています。
高落差では流量が少なくて済み、低落差では大流量が要る——出力P=9.8QHη ですから、H が小さければ Q を大きくするしかないのです。
揚水発電とポンプ水車
選択肢に出てくる「ポンプ」は、揚水発電で使われるポンプ水車のこと——1台で水車にもポンプにもなります。
夜間の余剰電力で下池から上池へ水を汲み上げ、昼間に発電する——電力貯蔵の最大の手段です。本問の空欄には入りませんが、水車の一種として押さえておくとよいでしょう。
空欄の絞り込み手順
5つの空欄がありますが、2つで確定します。
| 確定させる欄 | 正しい値 | 残る選択肢 |
| (ア) | 衝動 | ★(2)(4) |
| (イ) | ペルトン | ★(4)に確定 |
(ア)は「ノズルから噴出させ、運動エネルギーに変えて」——圧力を使っていないので衝動。これで3つ落ちます。
残る(2)と(4)の違いは(イ)——衝動水車の代表がフランシスであるはずがありません。2手で確定します。
クロスフロー水車が注目される理由
日本には落差の小さい水路が無数にあります——農業用水路、上下水道、工場の排水。これまで使われずに捨てられていたエネルギーです。
出力は数kW〜数百kW と小さい——大規模発電所に比べれば微々たるものですが、数が多く、しかも安定して発電できるのが利点になります。
太陽光や風力と違って、水量は天候で大きくは変わりません——設備利用率が高い再生可能エネルギーだと言えます。
水車の選定は3つの条件で決まる
落差・流量・出力——この3つが決まれば水車が決まります。
| 段階 | やること |
| ① | ★有効落差から水車の型を絞る |
| ② | 流量と落差から出力を計算(P=9.8QHη) |
| ③ | ★比速度が限界以下になる回転速度を選ぶ |
回転速度は自由に選べません——発電機の極数と周波数で決まるからです。n=120f/p——同期速度でなければ系統につなげません。
だから極数を変えて、比速度が収まる回転速度を探すことになります——水車と発電機は一体で設計されるのです。
本問は分類の名前を問うだけですが、その背後にはこうした設計の流れがある——「なぜこの落差にこの水車なのか」を理解しておくと、記憶が定着します。
クロスフロー水車は水が2回はたらく
| 段階 | 水の動き | 取り出す力 |
| ★1回目 | ★★羽根の外側から内側へ通る | ★★全体の約7割 |
| ★中央 | ★★ランナの中を横切る | ★★— |
| ★2回目 | ★★内側から外側へ抜ける | ★★残り約3割 |
名前のクロスフローは、水がランナを横切ることから来ています——1つの流れで2度はたらくのが特徴です。
構造が簡単で、流量が変わっても効率が落ちにくい水車です——だから小水力に向いているのです。
効率の最大値は8割ほどと高くありませんが、安く作れる点が優先されます。
まとめ
| (ア) | ノズルで運動エネルギー→衝動水車 |
| (イ) | 代表はペルトン水車 |
| (ウ) | 圧力エネルギー→反動水車の代表フランシス |
| (エ) | 軸方向に通過=プロペラ水車 |
| (オ) | 少水量・低落差の小水力=クロスフロー→(4) |
▼あわせて解きたい関連問題
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