今回は平成26年度 電力科目 A問題1を解説します。水車の調速機(ガバナ)について、系統並列後に調整する量、事故時に防止する現象、そしてペルトン水車・フランシス水車それぞれで開度を調整する部位の空欄を補充する問題です。
調速機は並列前は回転速度を制御し、並列後は出力を調整します(電圧はAVRの役目)。流量調整部はペルトン=ニードル弁、フランシス=ガイドベーンという対応が要点です。
平成26年度 電力科目 A問題1:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題1
電験3種 電力科目 【水力】 平成26年度 A問題1
次の文章は、水車の調速機の機能と構造に関する記述である。水車の調速機は、発電機を系統に並列するまでの間においては水車の回転速度を制御し、発電機が系統に並列した後は(ア)を調整し、また、事故時には回転速度の異常な(イ)を防止する装置である。調速機は回転速度などを検出し、規定値との偏差などから演算部で必要な制御信号を作って、パイロットバルブや配圧弁を介してサーボモータを動かし、ペルトン水車においては(ウ)、フランシス水車においては(エ)の開度を調整する。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 出力 上昇 ニードル弁 ガイドベーン (2) 電圧 上昇 ニードル弁 ランナベーン (3) 出力 下降 デフレクタ ガイドベーン (4) 電圧 下降 デフレクタ ランナベーン (5) 出力 上昇 ニードル弁 ランナベーン

調速機は「並列の前と後」で役割が変わる
ガバナ(調速機)は回転速度を調整する装置——ところが系統につないだ後は、回転速度を自由に変えられません。
| 場面 | 調速機の役割 | 理由 |
| ★並列前 | ★回転速度を制御 | 系統の周波数に合わせて同期させる |
| ★並列後 | ★出力を調整 | ★回転速度は系統の周波数で決まってしまう |
| 事故時 | 回転速度の異常上昇を防止 | 負荷が急に切れると空回りする |
系統につながった発電機は、周波数に縛られます——N=120f/p ですから、f が50 Hz なら回転速度は勝手には変えられないのです。
では水量を増やすと何が起きるか——速くは回らず、代わりに出力が増える。だから並列後のガバナは「出力調整装置」になります。(ア)は電圧ではなく出力 です。
電圧を調整するのは自動電圧調整器(AVR)——界磁電流を加減する別の装置です。ガバナは水量、AVR は界磁——担当がはっきり分かれています。
(イ) 事故時に回転速度が上がる理由
負荷が急に切れると、発電機は発電をやめます——ところが水は流れ続けている。行き場を失ったエネルギーが、回転速度を押し上げるのです。
これを無拘束速度(暴走速度)といい、定格の1.5〜2倍にも達します。放置すれば遠心力で機械が壊れる——だから調速機が水量を絞ることになります。
「下降」ではなく「上昇」——負荷が減れば速くなるのは、自転車で坂を下るときにペダルが軽くなるのと同じです。
(ウ)(エ) 流量を絞る部品は水車で違う
| 水車 | 流量調整部 | 働き |
| ★ペルトン | ★ニードル弁 | ノズルの断面を変える |
| ★フランシス | ★ガイドベーン(案内羽根) | ランナへの入口を開閉する |
| カプラン | ガイドベーン+ランナベーン | ★2つを協調させる |
ペルトンは噴流をつくるノズルがある——その中心に針(ニードル)を出し入れして断面を変えるのです。断面が変われば流量が変わります。
フランシスにはノズルがありません——渦形室からランナへ入る通路に、可動の羽根を並べて開度を変える。これがガイドベーン です。
「ランナベーン」はカプラン水車の可動羽根——フランシスの羽根は固定なので当てはまりません。(エ)にランナベーンを入れる選択肢は誤りになります。
「デフレクタ」はペルトンの急停止用——噴流をそらす板であって、流量調整の部品ではありません。(ウ)をデフレクタとする選択肢も除外できます。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「電圧」としてしまう——選択肢(2)(4)がそれです。
電圧調整はAVR の仕事——調速機は水量を通じて出力を変える装置です。「調速機」という名前から回転速度を思い浮かべがちですが、並列後は速度が固定されるので出力に化けると押さえてください。
(エ)を「ランナベーン」とする選択肢(2)(5)——フランシスの羽根は固定です。可動羽根はカプランの特徴——水車の種類と部品の対応を押さえておきましょう。
(ア)と(エ)の2欄で確定します。
⏱️ 本番での進め方
①(ア)★並列後の調速機は出力を調整。電圧はAVR。
②(イ) 負荷が切れると回転速度は★上昇する。
③(ウ)(エ) ペルトン=ニードル弁、フランシス=ガイドベーン。
④ランナベーンはカプランの可動羽根。デフレクタは急停止用。
💡 覚え方
「ガバナは水量、AVR は界磁」——担当がきっぱり分かれています。並列後は速度が系統に縛られるので、水量を変えると出力が変わる——だから(ア)は出力です。
ペルトンのニードル弁とデフレクタは令和4年度下期 A問題2(水力:衝動水車の原理と特徴)でも触れています。
速度調定率という指標
調速機の働きを数値で表したもの——系統の周波数を保つ仕組みの要です。
「出力を100 % 変えたとき、回転速度が何 % 変わるか」——ふつう3〜5 % 程度に設定されます。
| 速度調定率 | 特性 |
| 小さい(1 %) | ★わずかな周波数変化で大きく出力が動く |
| ★3〜5 % | ★標準的な設定 |
| 大きい(10 %) | 周波数が変わっても出力が動きにくい |
複数の発電機が並列運転しているとき、この値で負荷の分担が決まります——調定率が小さい機ほど多く負担するのです。
系統の周波数が下がる=需要が供給を上回っている——各発電機の調速機が自動的に出力を増やすことで、周波数が元に戻るという仕組みになります。
だから調速機は「その発電機の装置」であると同時に、系統全体の周波数を支える仕組みの一部だと言えます。
調速機の信号の流れ
問題文が挙げる部品を順に並べると、制御の流れが見えます。
| 順 | 部分 | 働き |
| ① | 検出部 | ★回転速度を測る |
| ② | 演算部 | ★規定値との偏差から制御信号を作る |
| ③ | パイロットバルブ | 小さな力の信号を油圧に変える |
| ④ | 配圧弁 | 油の流れる向きを切り替える |
| ★⑤ | ★サーボモータ | ★大きな力で弁やベーンを動かす |
検出した信号は非常に小さい力——そのままでは重いガイドベーンを動かせません。そこで油圧で増幅するのがパイロットバルブと配圧弁の役目です。
「小さな信号 →油圧で増幅 →大きな力」——自動制御の典型的な構成です。機械科目の自動制御と考え方は共通しています。
フィードバック制御そのもの
回転速度を測り、目標との差を計算し、水量を変える——結果がまた回転速度に反映される。これは閉ループのフィードバック制御です。
調速機は、水力発電所で最も古くからある自動制御装置——蒸気機関の遠心調速機(ガバナ)が元祖で、制御工学の出発点にもなった仕組みだと言えます。
空欄の絞り込み手順
4つの空欄がありますが、2つで確定します。
| 確定させる欄 | 正しい値 | 残る選択肢 |
| (ア) | 出力 | ★(1)(3)(5) |
| (イ) | 上昇 | ★(1)(5) |
| (エ) | ガイドベーン | ★(1)に確定 |
(ア)は電圧か出力か——電圧調整はAVR の担当なので出力。これで2つ落ちます。
(イ)は事故時に回転速度がどうなるか——負荷が切れれば速くなる=上昇。さらに1つ落ちます。
最後に(エ)——フランシスの流量調整はガイドベーン。ランナベーンはカプランの可動羽根ですから、(5)が落ちて確定します。
調速機がゆっくり動く理由
| 内容 | |
| ★急に閉じると | ★★水撃作用で水圧管に高い圧力がかかる |
| ★だから | ★★閉鎖時間を数秒以上に取る |
| ★それでも足りない時 | ★★サージタンクや制圧機で吸収する |
水は重いので、急に止めると管をたたきます——これが水撃作用です。
だから調速機は、わざとゆっくり閉じるように作られています——速さより安全が優先されるのです。
速応性と水撃防止は相反する要求で、その折り合いが閉鎖時間の設計です。
まとめ
| (ア) | 並列後は出力を調整(電圧はAVR) |
| (イ) | 事故時の回転速度の異常上昇を防止 |
| (ウ) | ペルトン=ニードル弁 |
| (エ) | フランシス=ガイドベーン |
| 答え | (1) |
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